建設業法【第3章:建設工事の請負契約 第2節:元請負人の義務】逐条解説
建設業を営むうえで建設業法をはとても重要な法律です。
建設業法は建設業を営む方にとって大切な法律ですが、とっても読みにくいんです。
このような思いの方へ向けて、
わかりにくい建設業法について建設業許可を取扱う行政書士が建設業法についてわかりやすく解説します。
この記事を読むと
「建設業法 第3章 建設工事の請負契約 第2節 元請負人の義務」
について確実に理解が深まります。
まず、「建設業法 第3章 建設工事の請負契約 第2節 元請負人の義務」は次のような構成になっています。
- 第3章 建設工事の請負契約
- 第2節 元請負人の義務
- 下請負人の意見の聴取
- 下請代金の支払
- 検査及び引渡し
- 不利益取扱いの禁止
- 特定建設業者の下請代金の支払期日等
- 下請負人に対する特定建設業者の指導等
- 施工体制台帳及び施工体系図の作成等
- 第2節 元請負人の義務
「建設業法 第3章:建設工事の請負契約 第2節 元請負人の義務」は、
「元請人が負う義務」について書かれています。
「建設業法 第3章 建設工事の請負契約 第2節 元請負人の義務」は元請人(発注者)が下請人(下請業者)に対して負う義務を明記しています。
「建設業法 第3章 建設工事の請負契約 第2節 元請負人の義務」は発注者としての責任と義務が明記されています。元請人として何をしなければいけなくて、何をしてはいけないのかが明記されています。
元請人(発注者)だけでなく下請け業者の方も理解しておく必要がある内容です。
それでは具体的な中身を見ていきましょう。
建設業法 第3章 建設工事の請負契約
第2節 元請負人の義務
建設業法 第24条の2(下請負人の意見の聴取)
第二十四条の二 元請負人は、その請け負つた建設工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは、あらかじめ、下請負人の意見をきかなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の2では元請負人の義務について明記されています。具体的には下請負人の意見を聞かなければいけない旨が明記されています。
元請負人の義務
請け負つた建設工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは、下請負人の意見をきかなければならない。
元請負人であっても下請負人と協力して工事を進めていく必要があるということだね。
建設業法 第24条の3(下請代金の支払)1項
第二十四条の三 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の3:1項では元請負人が下請負人に対して支払う請負代金の支払い時期について明記されています。
請負代金の支払時期の条件
①元請負人が発注元から「出来高部分に対する支払」「工事完成による支払」を受けたとき
②下請工事を請負った下請負人に対して
③支払を受けた日から1ヶ月以内で、できるだけ短い期間に支払わないといけない。
元請負人が支払いを受けたんなら実際に工事をした下請負人にもきちんと支払いましょうということ。
建設業法 第24条の3(下請代金の支払)2項
2 前項の場合において、元請負人は、同項に規定する下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の3:2項では労務費の現金払いについての配慮を明記しています。
下請代金の支払い方法
元請負人は労務費に関する部分は、現金で支払うように配慮する必要があります。
労務費は人件費とほぼ同じなんで給与に関することは現金で払えるように考えてほしいということだね。
建設業法 第24条の3(下請代金の支払)3項
3 元請負人は、前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の3:3項では元請人が前払金の支払いを受けた場合の下請負人への配慮内容が明記されています。
前払金の支払い配慮
対象者:下請負人に対して
条件①:元請負人が前払金の支払を受けたとき
条件②:資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用
配慮内容:前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。
元請人が必要費を発注者から前受したら、きちんと下請負人にも渡してねということかな。
建設業法 第24条の4(検査及び引渡し)1項
第二十四条の四 元請負人は、下請負人からその請け負つた建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から二十日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の4:1項では元請負人の迅速な完成確認の検査について明記されています。
完成確認の検査
下請負人から「工事完成の通知」を受けた場合、元請負人は下記の期間で「完成確認の検査」を完了させなければいけません。
完成確認の検査の期間
20日以内で最短の日
下請負人が工事を完成させたら検査を迅速にしないとね。
建設業法 第24条の4(検査及び引渡し)2項
2 元請負人は、前項の検査によつて建設工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに、当該建設工事の目的物の引渡しを受けなければならない。ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から二十日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りでない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の4:2項では完成確認後の迅速な引渡しについて明記されています。
完成後の引渡し時期
下請負人が引渡しを申し出た場合、直ちに、引渡しを受けなければいけません。
完成後の引渡し時期の例外
引渡し時期の特約がある場合(ただし、工事完成の時期から20日以内の時期)
完成確認がされたら引渡しをするのが当然だね。特約があっても工事完成の時期から最長20日まで。
建設業法 第24条の5(不利益取扱いの禁止)
第二十四条の五 元請負人は、当該元請負人について第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、前条又は次条第三項若しくは第四項の規定に違反する行為があるとして下請負人が国土交通大臣等(当該元請負人が許可を受けた国土交通大臣又は都道府県知事をいう。)、公正取引委員会又は中小企業庁長官にその事実を通報したことを理由として、当該下請負人に対して、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第25条の5では違反事実を監督官庁へ通知した際に元請負人から下請負人への不利益な取扱いを禁止することが明記されています。
監督官庁へ違反事実の通知による不利益の禁止
次の違反事実を下請負人が監督官庁へ通知した場合に元請負人による不利益な取り扱いを受けることを禁止しています。
- 不当に低い請負代金の禁止
- 不当な使用資材等の購入強制の禁止
- 下請代金の支払の超過
- 検査及び引渡し時期の超過
- 特定建設業者の下請代金の支払期日超過
違反を監督官庁へ通知されたことによる報復の禁止だね。
建設業法 第24条の6(特定建設業者の下請代金の支払期日等)1項
第二十四条の六 特定建設業者が注文者となつた下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、第二十四条の四第二項の申出の日(同項ただし書の場合にあつては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して五十日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の6:1項では特定建設業者が注文者となった下請契約の支払期日について明記されています。
特定建設業者が注文者となった下請契約の支払期日
仕事完成の申出の日から50日以内でできるかぎり短い期間
特定建設業者が注文者となった場合に該当するよ。
建設業法 第24条の6(特定建設業者の下請代金の支払期日等)2項
2 特定建設業者が注文者となつた下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかつたときは第二十四条の四第二項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第二項の申出の日から起算して五十日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の6:2項では特定建設業者が注文者となった下請契約の支払期日について50日を超過する支払期日を設けた場合に50日経過後に支払期日になると明記されています。
特定建設業者が注文者となった下請契約の支払期日(期日違反時)
仕事完成の申出の日から50日経過後が期日となります。
期日を指定しない場合は仕事完成の申出後、50日で強制的に期日となる
建設業法 第24条の6(特定建設業者の下請代金の支払期日等)3項
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の6:3項では特定建設業者が注文者となった下請契約の支払い方法の制限について明記されています。
特定建設業者が注文者となった下請契約の支払い方法の制限
支払期日までに金融機関による割引を受けられない場合は手形での支払いはしてはいけません。
将来割引できない手形を貰うのは少し怖いからね。
建設業法 第24条の6(特定建設業者の下請代金の支払期日等)4項
4 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金を第一項の規定により定められた支払期日又は第二項の支払期日までに支払わなければならない。当該特定建設業者がその支払をしなかつたときは、当該特定建設業者は、下請負人に対して、第二十四条の四第二項の申出の日から起算して五十日を経過した日から当該下請代金の支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に国土交通省令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の6:4項では特定建設業者が注文者となった下請契約の支払遅延時の遅延利息について明記されています。
特定建設業者が注文者となった下請契約の支払遅延
支払遅延時は、遅延利息を支払わなければいけません。
支払が遅れたら利息がかかるのは当然。
建設業法 第24条の7(下請負人に対する特定建設業者の指導等)1項
第二十四条の七 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、この法律の規定又は建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるものに違反しないよう、当該下請負人の指導に努めるものとする。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の7:1項では発注者から直接請負った特定建設業者の務めについて明記されています。
発注者から直接請負った特定建設業者の務め①
下請負人に対して法令等に違反しないように指導に努める必要があります。
元請負人の責任だね。
建設業法 第24条の7(下請負人に対する特定建設業者の指導等)2項
2 前項の特定建設業者は、その請け負つた建設工事の下請負人である建設業を営む者が同項に規定する規定に違反していると認めたときは、当該建設業を営む者に対し、当該違反している事実を指摘して、その是正を求めるように努めるものとする。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の7:2項でも発注者から直接請負った特定建設業者の務めについて明記されています。
発注者から直接請負った特定建設業者の務め②
下請負人が法令等に違反している場合は、その事実を指摘し是正を求めるように努めなければいけません。
違反も取り締まらないといけないよ。
建設業法 第24条の7(下請負人に対する特定建設業者の指導等)3項
3 第一項の特定建設業者が前項の規定により是正を求めた場合において、当該建設業を営む者が当該違反している事実を是正しないときは、同項の特定建設業者は、当該建設業を営む者が建設業者であるときはその許可をした国土交通大臣若しくは都道府県知事又は営業としてその建設工事の行われる区域を管轄する都道府県知事に、その他の建設業を営む者であるときはその建設工事の現場を管轄する都道府県知事に、速やかに、その旨を通報しなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の7:3項では引き続き発注者から直接請負った特定建設業者の義務が明記されています。
発注者から直接請負った特定建設業者の義務
下請負人に対して是正を求めたにもかかわらず下請負人が応じない場合は、監督官庁へ速やかにその旨を通報しなければいけません。
元請負人の責任だね。
「通報するよう努める」のではなく「通報しなければいけない」です。つまり任意ではなく義務です。
建設業法 第24条の8(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)1項
第二十四条の八 特定建設業者は、発注者から直接建設工事を請け負つた場合において、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になるときは、建設工事の適正な施工を確保するため、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事について、下請負人の商号又は名称、当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の8:1項では元請の特定建設業者は請負代金の額が政令で定める金額以上になるときは「施工体制台帳」を作成し、工事現場に備え置かなければいけないと明記されています。
発注者から直接請負った特定建設業者が管理する台帳等
施工体制台帳:工事現場ごとに備え置き(必須)
(要件)下請契約の請負代金の額が政令で定める金額以上となる場合
高額の下請負契約をした場合は施工体制を管理する必要があるからだね。
建設業法 第24条の8(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)2項
2 前項の建設工事の下請負人は、その請け負つた建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときは、国土交通省令で定めるところにより、同項の特定建設業者に対して、当該他の建設業を営む者の商号又は名称、当該者の請け負つた建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の8:2項では1項の下請負契約をした下請負人の義務について明記されています。
下請契約の請負代金の額が政令で定める金額以上の下請負人の義務
請負った工事をさらに下請負人へ請け負わせる場合は、元請となる特定建設業者に必要事項を通知しなければいけません。
必要事項
- 建設業を営む者の商号又は名称
- 当該者の請け負つた建設工事の内容及び工期
- その他の国土交通省令で定める事項
さらに下請けに出した場合は元請へ通知しましょうということ。
建設業法 第24条の8(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)3項
3 第一項の特定建設業者は、同項の発注者から請求があつたときは、同項の規定により備え置かれた施工体制台帳を、その発注者の閲覧に供しなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の8:3項では元請となる特定建設業者の責任について明記されています。
元請となる特定建設業者の責任
発注者から請求がある場合は施工体制台帳を発注者へ閲覧させなければいけません。
建設工事のトップは発注者だからね。
建設業法 第24条の8(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)4項
4 第一項の特定建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事における各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を作成し、これを当該工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。
【引用元:建設業法】
<逐条解説>
第24条の8:4項では元請となる特定建設業者の施工体系図の掲示義務について明記されています。
元請となる特定建設業者の施工体系図の掲示義務
施工体系図を作成し、工事現場の見やすい場所に掲示しなければいけません。
工事関係者が施工体系図を確認できるようにね。