ドローンの海上飛行(港や海岸からのドローン飛行は可能?)
ドローン飛行許可を取得したら海上での飛行はできるの?
航空法上の許可や承認を取得しただけでは不十分ですが、正しい手順に沿って、各機関と調整すれば飛行できる場合があります。
そこで・・・
チェック
- ドローンを海上で飛ばしたい場合どうすればいいの?
- ドローンで海上を空撮したい!
なんて悩んでいませんか?
このようなお悩みをお持ちの方へドローン飛行許可申請を担う行政書士がドローンをとりまく手続きを徹底解説します。
この記事を読むと
「ドローンの海上飛行の手続き」
がよくわかります。
それでは具体的な中身を見ていきましょう。
ドローン飛行許可を取ったら、海上飛行はできる?
航空法による無人航空機飛行許可または承認を受けた場合であっても、飛行する場所によっては個別に許可を受けなければならない場合があります。
今回紹介するケースでは、「海上飛行を目的として、①港からの離着陸、②海岸からの離着陸」を想定して解説していきます。
さっそく、結論から申し上げます。
共通事項
飛行する場所の都道府県や市町村の条例もあわせて調査する必要があります。
どの地域(都道府県・市区町村)にも各地域の特性を考慮した規制(条例等)があります。
そのため、ドローン飛行する場合は、条例等を確認し、問題がないことが必要となります。
①港からの離着陸での海上飛行
法令
【港則法】による規制に該当する場合があります。
対策
港長の許可が必要かどうかを調査してから飛行しましょう。許可が不要であっても事前に飛行する旨を伝えておくことが大切です。
②海岸からの離着陸での海上飛行
法令
【海岸法】による規制に該当する場合があります。
対策
海岸管理者の許可が必要かどうかを調査してから飛行しましょう。許可が不要であっても事前に飛行する旨を伝えておくことが大切です。
このように、港で飛行する場合や、海岸で飛行する場合は、該当する法令に従って事前に確認しておく必要があります。
では、具体的にどのような法律があり、どのような制約を受けるのかを見ていきましょう。
ドローンの海上飛行に関する法令について
ドローンの海上飛行に関する内容は「ドローン飛行に関係する海上交通3法についてポイント解説!」でも詳しく説明しています。
海上交通三法
海上保安庁のホームページを見ると海上交通三法に関する記載があります。
- 海上衝突予防法
- 海上交通安全法
- 港則法
海上衝突予防法(昭和52年法律第62号)
海上衝突予防法は、国際的な海上交通ルールである「1972年の海上における衝突の予防のための国際規則」(COLREG)に準拠して制定された法律で、(イ)船舶の遵守すべき航法、(ロ)船舶の表示すべき灯火・形象物、(ハ)船舶の行うべき信号について定めることにより、船舶の衝突を予防して船舶交通の安全を図ることを目的としています。
引用元:海上保安庁ホームページ
「海上衝突予防法」は国際規則に準拠しているため、世界中の海上で守らなくてはいけないルールが明記されています。
そのため、海上交通において「海上衝突予防法」が基本法の位置付けとなります。
海上交通安全法(昭和47年法律第115号)
海上交通安全法は、海上衝突予防法の特別法として船舶交通がふくそうしている東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の三海域について特別の海上交通ルールを定めることにより船舶交通の安全を図ることを目的としています。
同法は、狭水道でしかも船舶交通が集中する浦賀水道等11ヶ所に航路を設定し、(イ)航路航行義務、航路出入船等の避航義務等特別の交通ルールを定めるとともに、(ロ)航路を航行する巨大船等に対して航行管制を行うこととし、また、(ハ)工事・作業等に対する規制を定めています。引用元:海上保安庁ホームページ
「海上交通安全法」は「東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の三海域」に限定して適用される法律です。
「海上交通安全法」は「海上衝突予防法」の特別法の位置づけです。
港則法(昭和23年法律第174号)
港則法は、海上衝突予防法の特別法として港内における海上交通ルールを定めることにより船舶交通の安全及び港内の整とんを図ることを目的としています。同法は平成22年4月現在、入出港の多い500港を適用港とし、(イ)防波堤付近の航法等港内における特別の交通ルールを定め、(ロ)港内の交通管制を行うとともに、(ハ)工事・作業、漁ろう等についての規制を定めています。また、特に船舶交通がふくそうする京浜、名古屋、大阪、神戸、関門等86港を特定港に指定して港長を任命し、上記に加えて、(ニ)入出港届の提出、(ホ)錨地の指定、(ヘ)危険物荷役の規制等により港内の安全と整頓を図っています。
引用元:海上保安庁ホームページ
「港則法」は「入出港の多い500港を適用港」とされる海上での交通ルールを定めています。
「港則法」は「海上衝突予防法」の特別法の位置づけです。
海上交通三法の適用例
「海上交通安全法」と「港則法」の関係についてみていきましょう。
海上保安庁のホームページにわかりやすく図で説明されていたので引用しています。
引用元:海上保安庁ホームページ
ドローンの海上飛行における法律の適用範囲
これまで、ドローンの海上飛行に関係する可能性のある法律を説明してきました。
では、具体的にどの条文に該当する恐れがあるかさらに詳しく見ていきましょう。
ドローンの海上飛行で関係するおそれのある法律の条文
港則法
(工事等の許可及び進水等の届出)
第三十一条 特定港内又は特定港の境界附近で工事又は作業をしようとする者は、港長の許可を受けなければならない。
2 港長は、前項の許可をするに当り、船舶交通の安全のために必要な措置を命ずることができる。
第31条では「特定港内又は特定港の境界附近で工事又は作業をしようとする者」とあります。
この「作業をしようとする者」が怪しいですね。
ドローンの飛行が「作業」に該当する場合は、「港長の許可」を受ける必要があります。
罰則
第五十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
四 第二十四条第一項又は第三十一条第一項(第四十三条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
五 第二十四条第三項又は第二十六条、第三十一条第二項、第三十六条第二項若しくは第三十八条第四項(これらの規定を第四十三条において準用する場合を含む。)の規定による処分に違反した者
第50条で31条に違反した場合は「3か月以下の懲役または30万円以下の罰金」となります。
海岸法
(海岸保全区域の占用)
第七条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(公共海岸の土地に限る。)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下次条、第九条及び第十二条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 海岸管理者は、前項の規定による許可の申請があつた場合において、その申請に係る事項が海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、これを許可してはならない。(一般公共海岸区域の占用)
第三十七条の四 海岸管理者以外の者が一般公共海岸区域(水面を除く。)内において、施設又は工作物を設けて当該一般公共海岸区域を占用しようとするときは、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。(一般公共海岸区域における行為の制限)
第三十七条の五 一般公共海岸区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りではない。
一 土石を採取すること。
二 水面において施設又は工作物を新設し、又は改築すること。
三 土地の掘削、盛土、切土その他海岸の保全に支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定める行為をすること。
第7条と第37条の4、第37条の5にある「施設又は工作物」に該当するものを設ける場合は「海岸管理者の許可」が必要になります。
ただし、基本的にドローン飛行するだけであれば「施設又は工作物」は設置しないと思うので、この点は該当しない可能性が高いです。
罰則
第四十一条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者第四十二条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
五 第三十七条の四の規定に違反して一般公共海岸区域を占用した者
六 第三十七条の五の規定に違反して同条各号の一に該当する行為をした者
第7条に違反した場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」となります。
第37条の4、第37条の5に違反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」となります。
(両罰規定)
第四十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するのほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
さらに罰則には「両罰規定」があり、法人の場合は従業者が行った違反であっても法人にも罰金刑が科されます。
結局、ドローン飛行許可を取ったら、海上飛行はできるの?
このように、航空法による無人航空機飛行許可や承認を受けていても、どこでも飛行できるわけではありません。
あくまでも、航空法による許可ですので、上空以外の場所を使用するうえではその場所の法令に従わなければいけないというわけです。
海上飛行を目的として、海岸からの離着陸、港からの離着陸の場合
共通事項
飛行する場所の都道府県や市町村の条例もあわせて調査する必要があります。
港からの離着陸での海上飛行
法令
【港則法】による規制に該当する場合があります。
対策
港長の許可が必要かどうかを調査してから飛行しましょう。許可が不要であっても事前に飛行する旨を伝えておくことが大切です。
海岸からの離着陸での海上飛行
法令
【海岸法】による規制に該当する場合があります。
対策
海岸管理者の許可が必要かどうかを調査してから飛行しましょう。許可が不要であっても事前に飛行する旨を伝えておくことが大切です。
このように、該当する法令に従って事前に確認しておくことが望ましいです。
結局のところ、紙申請時と同じく、法令の理解から始まり、要件と申請内容の理解、そして許可制度の内容まで理解しておかなければそもそも安心してドローン飛行ができません。
航空法上の飛行許可・承認をとっているからといってもどこででもドローン飛行ができるわけではありません。その点、正しい手順で手続きを行うことで、自信をもってドローン飛行ができるようになります。