

冷暖房設備、給排水衛生設備、空調ダクトなど、建物の「配管」に関わる工事を請け負う場合、建設業許可の6つの要件に定める基準額(1件あたり税込500万円以上)を超えると、管工事業の建設業許可が必要になります。管工事業は建設業法上の「指定建設業」の一つで、営業所技術者(旧:専任技術者)になれる資格や実務経験のルートに他業種と異なる制約があります。本記事では岡山県における管工事業の許可要件、対応資格、まぎらわしい業種との境界線、費用・期間を整理します。
1. 管工事業とは|対象となる工事の範囲
管工事業は、建設業法上「冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」と定義されています。
具体的には次のような工事が該当します。
- 冷暖房設備工事
- 冷凍冷蔵設備工事
- 空気調和設備工事
- 給排水・給湯設備工事
- 厨房設備工事
- 衛生設備工事
- 浄化槽工事
- 水洗便所設備工事
- ガス管配管工事
- ダクト工事
- 管内更生工事
これらの工事を、1件あたり税込500万円以上の請負代金で施工する場合に管工事業の許可が必要です(500万円未満の工事のみを請け負う場合は許可不要です)。
建設業許可全般に共通する要件(経営業務の管理責任者、営業所技術者、財産的基礎、誠実性、欠格要件非該当、社会保険加入)については、建設業許可の6つの要件で解説しています。本記事では管工事業に固有のポイントに絞って解説します。
2. 管工事業とまぎらわしい業種の境界線
管工事は給排水・空調・ガス配管など対象が広く、隣接する業種との線引きに迷うケースが少なくありません。岡山県の「建設業許可の手引」が示す考え方は次のとおりです。
浄化槽・し尿処理関連(管工事業/水道施設工事業/清掃施設工事業)
浄化槽(合併処理槽を含む)によりし尿を処理する施設の工事は、規模の大小を問わず「管工事」に該当します。一方、公共団体が設置し下水道により収集された汚水を処理する施設は「水道施設工事」、公共団体が設置し汲取方式により収集されたし尿を処理する施設は「清掃施設工事」に区分されます。
上下水道関連(管工事業/土木一式工事業/水道施設工事業)
公道下等の下水道の配管工事や下水処理場自体の敷地造成工事は「土木一式工事」、家屋その他の施設の敷地内の配管工事や上水道等の配水小管を設置する工事は「管工事」、上水道等の取水・浄水・配水等の施設や下水処理場内の処理設備を築造・設置する工事は「水道施設工事」に区分されます。なお、農業用水道やかんがい用配水施設等の工事は「水道施設工事」ではなく「土木一式工事」に該当します。
空調機器関連(管工事業/機械器具設置工事業)
建築物の中に設置される通常の空調機器の設置工事は「管工事」に該当し、トンネル・地下道等の給排気用に設置される機械器具に関する工事は「機械器具設置工事」に区分されます。
機械器具全般(管工事業/電気工事業/電気通信工事業/消防施設工事業)
機械器具設置工事には広くすべての機械器具類の設置工事が含まれるため、機械器具の種類によっては電気工事、管工事、電気通信工事、消防施設工事等と重複することがあります。この場合は原則として電気工事等それぞれの専門工事の方に区分し、いずれにも該当しない機械器具・複合的な機械器具の設置のみが機械器具設置工事に区分されます。
公害防止施設関連(管工事業/機械器具設置工事業)
公害防止施設を単体で設置する工事は「清掃施設工事」ではなく、施設ごとに区分されます。例えば排水処理設備であれば「管工事」、集塵設備であれば「機械器具設置工事」に区分されます。
ダクト工事の三重資格ゾーン(管工事業/屋根工事業/板金工事業)
ダクト工事は管工事の例示に含まれる一方、技能検定「建築板金(ダクト板金作業)」は屋根・管・板金の3業種すべてで営業所技術者の資格として有効とされており、実務上も複数業種にまたがる領域であることがうかがえます。
このように、管工事業ともっとも境界が紛らわしいのは水道施設工事業・清掃施設工事業・機械器具設置工事業・土木一式工事業の4業種です。取得すべき業種区分に迷う場合は、個別の工事内容を確認したうえで判断する必要があります。
3. 管工事業の許可要件|経営業務の管理責任者・営業所技術者
管工事業の許可を取得するには、他業種と同様に次の要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者:建設業の経営業務について一定の経験を有する者を、原則として常勤役員等として配置すること
- 営業所技術者:管工事業に関する国家資格または実務経験を有する者を、営業所ごとに常勤で配置すること
- 財産的基礎:一般建設業・特定建設業それぞれで定められた財産的な基準を満たすこと
- 誠実性・欠格要件非該当・社会保険加入
経営業務の管理責任者の要件・証明方法については経営業務の管理責任者の要件・証明、申請に必要な書類一式については建設業許可の必要書類一覧をあわせてご確認ください。
管工事業で実務上もっとも判断に迷いやすいのが営業所技術者の資格・実務経験要件です。次章で詳しく整理します。
4. 営業所技術者になれる資格・実務経験ルート
4-1. 国家資格等で直接なれるケース
岡山県の手引が示す管工事業の資格一覧を整理すると、次のとおりです。
| 資格 | 根拠法令 | 一般建設業 | 特定建設業 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1級管工事施工管理技士 | 建設業法(技術検定合格証明書) | ○ | ○ | 追加の実務経験なしで直接可 |
| 2級管工事施工管理技士 | 同上 | ○ | × | 特定建設業の技術者要件は満たさない(詳細は5章) |
| 技術士「機械(流体工学又は熱工学)」・総合技術監理(同) | 技術士法(登録証) | ○ | ○ | |
| 技術士「上下水道」・総合技術監理(同) | 同上 | ○ | ○ | |
| 技術士「上下水道(上水道及び工業用水道)」・総合技術監理(同) | 同上 | ○ | ○ | |
| 技術士「衛生工学」・総合技術監理(同) | 同上 | ○ | ○ | |
| 技術士「衛生工学(水質管理)」・総合技術監理(同) | 同上 | ○ | ○ | |
| 技術士「衛生工学(廃棄物管理)」・総合技術監理(同) | 同上 | ○ | ○ | |
| 給水装置工事主任技術者 | 水道法(免状) | ○(資格取得後1年間の実務経験が必要) | × | |
| 建築設備士 | その他(免状) | ○(資格取得後1年間の実務経験が必要) | × | |
| 計装士(1級) | その他(免状) | ○(資格取得後1年間の実務経験が必要) | × | |
| 登録基幹技能者 | その他(講習修了証) | ○ | × | 講習修了証に「管工事について主任技術者の要件を満たす」旨の記載が必要。講習の種類による |
※表中の「○」「×」は一般建設業・特定建設業それぞれの技術者要件を直接満たせるかどうかの整理です。管工事業は指定建設業のため、特定建設業は1級管工事施工管理技士等または国土交通大臣認定者に限られます(詳細は5章)。
4-2. 技能検定(技能士)で営業所技術者になれるケース
次の技能検定(職業能力開発促進法)は、いずれも管工事業の資格として利用できます。
- 空気調和設備配管・冷凍空気調和機器施工
- 給排水衛生設備配管
- 配管(工)(建築配管作業)
- 建築板金(ダクト板金作業)(屋根工事業・板金工事業とも共通で使える資格)
これらは1級合格者であれば追加の実務経験なしで直接資格として使えます。一方、2級合格者は、資格取得後3年間の実務経験(平成15年度以前の合格の場合は1年間)が必要で、実務経験証明書の添付が求められます。この「2級合格後3年(H15年度以前合格は1年)」というルールは他業種の技能検定と共通で、管工事業に固有の緩和・加重はありません。
4-3. 指定学科と実務経験によるルート
学歴と実務経験の組み合わせで営業所技術者になる場合、管工事業の指定学科は次の5学科です。
- 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地または造園に関する学科を含む)
- 都市工学
- 衛生工学
- 建築学
- 機械工学
(交通工学・電気工学・電気通信工学・林学・鉱山学は管工事業の指定学科に含まれません。)
学歴・実務経験による一般建設業の技術者要件は次のとおりです。
| ルート | 必要な実務経験年数 |
|---|---|
| 高校・中等教育学校+指定学科(上記5学科)修了+実務経験 | 5年 |
| 大学・高専・短大+指定学科修了+実務経験 | 3年 |
| 専修学校専門課程+指定学科修了+実務経験 | 5年(専門士・高度専門士は3年) |
| 学歴を問わない実務経験のみ | 10年 |
指定学科を問わない10年の実務経験ルートについては、営業所技術者の実務経験10年証明で証明方法を解説しています。
なお、他業種の実務経験と合算して合計12年以上(1業種あたり最低8年超)あれば足りる実務経験の緩和措置がありますが、対象業種の組み合わせはあらかじめ定められており、管工事業はこの振替対象に含まれていません(管工事業の実務経験を他業種に、または他業種の実務経験を管工事業に振り替えることはできません)。
5. 特定建設業を目指す場合の注意点|管工事業は「指定建設業」
管工事業は、土木一式工事業・建築一式工事業・電気工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業とあわせて建設業法上の7指定建設業の一つに位置づけられています。指定建設業に該当することで、特定建設業の技術者要件に次の制約が生じます。
- 2級管工事施工管理技士だけでは特定建設業の技術者要件を満たせません。 一般建設業の営業所技術者にはなれますが、特定建設業は1級管工事施工管理技士等または国土交通大臣認定者に限られます。
- 「1級・2級の技術検定(第1次・第2次)合格+実務経験3年/5年」という他業種で使えるルートは、管工事業には使えません。 このため、第1次検定のみ合格した「管工事施工管理技士補」も、それ単体では管工事業の営業所技術者にはなれません。
- 指導監督的実務経験による特定建設業の技術者要件緩和ルートも、管工事業では使えません。 指定建設業(土・建・電・管・鋼・舗・園)以外の業種であれば、1級相当の資格がなくても指導監督的実務経験2年等を組み合わせて特定建設業の技術者要件を満たせるルートがありますが、管工事業を含む指定建設業ではこの代替ルートは認められていません。
したがって、管工事業で特定建設業許可を取得する場合は、1級管工事施工管理技士等の国家資格保有者を営業所技術者として配置するか、国土交通大臣認定者を確保する必要があります。将来的に特定建設業許可(下請契約の代金額が一定基準を超える元請工事等を行う場合に必要な許可)を見据えている場合は、早い段階から1級資格の取得計画を立てておくことが重要です。
どの資格・実務経験の組み合わせが自社の状況に当てはまるかは個別の事情によって判断が分かれるため、最終的な該当可否は有資格者(行政書士)への確認をおすすめします。
6. 管工事業許可の費用と期間
管工事業の許可取得にかかる法定手数料と標準処理期間は、業種を問わず建設業許可全般で共通です。建設業許可の6つの要件で確認済みの目安は次のとおりです。
| 区分 | 法定手数料 | 標準処理期間 |
|---|---|---|
| 新規許可 | 90,000円 | おおむね2ヶ月程度 |
| 業種追加 | 50,000円 | おおむね2ヶ月程度 |
標準処理期間は書類の状況等により変動する場合があります。すでに他業種の許可を持っている事業者が管工事業を追加する場合は「業種追加」の扱いとなり、法定手数料は50,000円です。
許可取得までの流れや必要書類の詳細は建設業許可の必要書類一覧、許可申請サービス全体については建設業許可サービスをご覧ください。
7. 許可取得後の展開|経営事項審査・入札参加資格・顧問契約
管工事業の許可を取得したあと、公共工事の受注を目指す場合は次のステップが必要になります。
- 経営事項審査(経審):公共工事の入札に参加するために必須の審査です。管工事業の完成工事高や技術者数などが評点に反映されます。詳細は経審サービスをご覧ください。
- 入札参加資格審査申請:経審の結果をもとに、発注者(岡山県・岡山市等)ごとに入札参加資格を申請します。詳細は入札参加資格サービスをご覧ください。
- 顧問契約:許可取得後は、毎年の決算変更届や5年ごとの更新など継続的な手続きが発生します。当事務所では月5,500円〜の3プラン(ライト5,500円/スタンダード11,000円/フル15,000円、税込)で継続的な手続きサポートを提供しています。詳細は顧問契約サービスをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
管工事業は冷暖房・給排水・空調ダクトなど対象工事の範囲が広く、水道施設工事業や機械器具設置工事業など隣接業種との境界が紛らわしい場面が多い業種です。加えて建設業法上の指定建設業に該当するため、2級管工事施工管理技士だけでは特定建設業の技術者要件を満たせない、技能検定合格+短縮年数の実務経験ルートが使えないなど、営業所技術者の資格・実務経験には他業種にはない制約があります。自社の資格・実務経験がどのルートに該当するか、また取得すべき業種区分が管工事業で間違いないかは、個別の工事内容や経歴によって判断が分かれるため、最終的な判断は有資格者(行政書士)への確認をおすすめします。
