

土木一式工事業(略号「土」)で建設業許可を取るときに、他の業種と決定的に違う点が2つあります。
1つめは、土木一式工事業が「指定建設業」だということ。岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)は、指定建設業を土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種と定め、指定建設業で特定建設業の許可を取る場合、営業所に置く技術者は「1級の国家資格者又は技術士、1級相当と大臣が認定した者」に限られるとしています(PDF p.11)。指定建設業以外の業種で使える「指導監督的実務経験2年」による代替ルートは、土木一式工事業では使えません(同 p.11、岡山県「審査要領」令和7年9月1日 PDF p.7)。元請として下請に出す総額が税込5,000万円以上になる規模を目指すなら、1級土木施工管理技士等の確保が事実上の必須条件になります。
2つめは、土木一式の許可は専門工事の「上位互換」ではないこと。手引は、土木一式工事業(土木工事業)の許可を持っていても、土木系の各専門工事を500万円以上で施工するにはその専門工事ごとの許可が要る、と明記しています(PDF p.162)。土木一式を持っているから何でもできる、という理解は誤りです。
本記事では、岡山で建設業に特化する行政書士が、土木一式工事の対象範囲・区分の誤認ポイント・営業所技術者(旧:専任技術者)になれる資格・実務経験の証明と通算ルール・岡山県での手続き・許可のその先までを、一次資料に沿って整理します。許可要件そのものの全体像は建設業許可の6つの要件(自社が取れるか診断)をご覧ください。
※ 業種区分の該当・要件の充足は、個別の工事内容や事業者ごとの実態によって判断が分かれます。本記事の金額・期間・年数はいずれも記事作成時点の目安であり、制度改正で変わることがあります。最終判断は有資格者(行政書士)にご確認ください。
1. 土木一式工事とは——「土」の対象になる工事の範囲
土木一式工事は、建設業許可29業種のうちの1つで、許可業種の略号は「土」、許可業種名としては「土木工事業」と表記されます(岡山県「建設業許可の手引」PDF p.5)。29業種の全体像と、自社がどの業種を取るべきかの考え方は建設業許可29業種の一覧と選び方に整理しています。
1-1. 建設工事の内容(告示に定められた定義)
手引の業種区分表では、土木一式工事の内容がこう定義されています。
総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。)
(岡山県「建設業許可の手引」令和7年9月1日改訂 PDF p.158)
塗装工事や管工事のような専門工事の定義が「材料」と「動作」で書かれているのに対し、一式工事の定義は「総合的な企画、指導、調整」という役割で書かれています。ここが一式工事の本質です。何を施工するかではなく、土木工作物一式の完成・引渡しを目的として、全体をマネジメントする立場にあるかで判断されます。
1-2. 手引には土木一式工事の「例示」が置かれていない
他の業種と読み比べると、すぐに気づくことがあります。塗装工事なら「塗装工事、溶射工事、ライニング工事…」、屋根工事なら「屋根ふき工事」というように、業種区分表には「建設工事の例示」の欄があります。ところが土木一式工事と建築一式工事には、この例示が置かれていません(手引 PDF p.158)。
これは偶然ではありません。一式工事は「この工種を請け負えば一式」と列挙できる性質のものではなく、個別の工事ごとに、総合的な企画・指導・調整のもとに建設したのかどうかを見るしかないためです。「うちの工事は例示のどれに当たるか」という探し方が、そもそもできない業種だと理解してください。
そのかわり手引は、許可制度の説明の冒頭で一式工事の位置づけを明確に書いています。
一式工事とは、総合的な企画、指導及び調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事で、大規模又は施工内容が複雑な工事を、総合的にマネージメントする事業者向けの許可となります。
(手引 PDF p.5)
そして業種分類の解説では、この裏返しとして、一式工事が「大規模又は施工内容が複雑な工事」とも定義されている以上、あまりに少額な工事は一式として認められない、と説明されています(手引 PDF p.162)。
金額が小さい工事を土木一式として計上することは認められない——これは工事経歴書の作成でも実際に問題になる点です(→ §7-2)。
1-3. 手引が明記している「土木一式に該当する工事」
例示欄は空でも、手引の「建設工事の区分の考え方」欄には、土木一式工事に該当すると明記された工事がいくつかあります。土木一式の輪郭は、ここから読み取ります(いずれも手引 PDF p.158、解体は PDF p.161)。
| 手引の記載 | 結論 |
|---|---|
| 「プレストレストコンクリート工事」のうち、橋梁等の土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事 | 土木一式工事に該当(PC構造物工事としてとび・土工・コンクリート工事の例示にもある「プレストレストコンクリート工事」との切り分けに注意) |
| 公道下等の下水道の配管工事 | 土木一式工事に該当 |
| 下水処理場自体の敷地造成工事 | 土木一式工事に該当 |
| 農業用水道、かんがい用配水施設等の建設工事 | 『水道施設工事』ではなく土木一式工事に該当 |
| 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を解体する工事 | 土木一式工事に該当(それのみを解体する工事は各専門工事/手引 PDF p.161) |
岡山県で実務上とくに効いてくるのが、4番目の「農業用水道、かんがい用配水施設等」です。農業用の水路・ため池・かんがい施設に関わる工事は、名称に「水道」が入るために業種判定を誤りやすい分野です。この分野の工事を「水道の工事だから水道施設工事業だろう」と整理してしまうと、業種の取得そのものを間違えることになります。手引は明確に「水道施設工事ではなく土木一式工事に該当する」としていますので、農業土木を主戦場にしている事業者は、まずこの一文を確認してください。
1-4. 下請の立場でも「土木一式工事」になる場合がある
一式工事は元請が取るもの、という印象が強いのですが、手引は例外を明記しています。
土木一式工事
・例外的に、民間工事における合法的な一括下請負工事や、公道下の下水道本管埋設工事(一括下請負に当たらず、かつ、複数の孫請業者を使用する一次下請業者)等については、下請工事であっても土木一式工事となる場合があります。
(手引 PDF p.162)
一次下請の立場で、複数の孫請を使って公道下の下水道本管埋設を施工しているようなケースは、下請でありながら土木一式工事と整理される場合がある、ということです。ただし括弧書きのとおり「一括下請負に当たらず」という条件が付いています。一括下請負(丸投げ)は、契約を分割したり他人の名義を用いたりしていても、実態が一括下請負に該当するものは一切禁止とされています(手引 PDF p.21)。この整理は個別性が高い領域ですので、自己判断で結論を出さず、契約書と施工体制の実態をもってご相談ください。
1-5. 土木一式工事で「許可が必要になる」タイミング
建設業許可が必要になるのは、1件の請負代金が税込500万円以上の工事を請け負う場合です(建築一式工事だけは税込1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅なら許可不要という別ルールがあります/手引 PDF p.5)。土木一式工事は建築一式工事ではありませんので、1,500万円のラインは使えません。500万円で判断します。
ここは実務で本当によく誤解される点です。「一式工事だから1,500万円まで大丈夫」という理解は、建築一式工事にしか当てはまりません。土木一式工事は、他の27の専門工事とまったく同じ税込500万円のラインです。建築一式工事側の要件・一棟請けの範囲については建築一式工事の建設業許可|要件・一棟請けの範囲と実務経験をご覧ください。
この500万円の判定には、税込か税抜か・注文者からの支給材料をどう扱うか・工区や工期を分けた場合に合算されるかといった論点があり、誤ると無許可営業のリスクに直結します。判定の実務は軽微な工事(500万円未満)とは?建設業許可が不要になる範囲に一本化しています。すでに500万円以上を無許可で受けてしまった場合の対処は無許可で500万円以上を受注してしまったらをご覧ください。
2. 区分の誤認ポイント——専門工事・管・水道施設・解体との境界
土木一式工事は、「取り過ぎ」と「取り足りない」の両方向で誤認が起きるという、他の業種にない特徴を持っています。手引が業種区分に厳しく注意を促しているのも、この業種です。区分を誤れば、許可のない業種で工事を請けてしまう(無許可営業)、技術者の配置義務を果たせない、一括下請負に当たる——といった法令違反にそのままつながるため、関係法令等に基づいて適切に整理する必要がある、と手引は述べています(手引 PDF p.162)。
2-1. ★最大の誤認:土木一式の許可は専門工事をカバーしない
手引は、土木一式工事業(土木工事業)の許可を有していても、土木系の各専門工事を500万円以上で施工する場合には、その各専門工事の許可が別に必要だと定めています(手引 PDF p.162)。
一式の許可は、専門工事の上位互換ではありません。土木一式工事業の許可を持っている会社が、法面処理工事だけを税込600万円で請け負えば、それは「とび・土工・コンクリート工事」であって、その業種の許可が別に必要です。舗装だけを税込800万円で請け負えば舗装工事業の許可が要ります。
このズレは、次のような形で表面化します。
- 元請から業種を指定されて初めて気づく——「その工事は舗装で発注するので、舗装の許可を出してください」と言われ、自社は土木一式しか持っていないことが判明する。
- 入札参加資格の申請でつまずく——発注者は工種ごとに資格を審査するため、土木一式だけでは希望する工種にエントリーできない。
- 工事経歴書の作成でつまずく——許可を取った後、専門工事の実績を土木一式の欄に計上してしまう(→ §7-2)。
手引も、工事経歴書の記載要領のところで【一式工事と専門工事】という項目を立て、専門工事であるにもかかわらず一式工事として計上されている例が多いとして注意を促しています。とくに多い業種として名指しされているのが、とび・土工、大工、内装仕上工事です(手引 PDF p.49)。名指しされた側から見た誤認の実際は大工工事業の建設業許可|要件と実務経験の証明で扱っています。
つまり、「一式で計上しておけば足りる」という誤解は、県が実際に多数見ている典型的な誤りだということです。逆にいえば、自社の受注実態を棚卸ししたときに専門工事の比重が高いなら、土木一式ではなく(あるいは土木一式に加えて)専門工事の許可を取るべきという結論になることがあります。どの業種を取るかは、許可を取ってから直すと業種追加の手数料と手間が発生しますので、最初の設計がすべてです。一式工事と専門工事の区分そのものの考え方は一式工事と専門工事の違い|一式を取れば全部できる誤解にまとめていますので、あわせてご覧ください。
2-2. 上下水道の工事は「三分」される——土木一式/管/水道施設
手引の業種区分表には、上下水道に関する施設の建設工事について、3業種の切り分けが明記されています(PDF p.158)。土木一式を扱ううえで、必ず押さえるべき整理です。
| 工事の内容 | 該当する業種 |
|---|---|
| 公道下等の下水道の配管工事 | 土木一式工事 |
| 下水処理場自体の敷地造成工事 | 土木一式工事 |
| 家屋その他の施設の敷地内の配管工事 | 管工事 |
| 上水道等の配水小管を設置する工事 | 管工事 |
| 上水道等の取水、浄水、配水等の施設を築造・設置する工事 | 水道施設工事 |
| 下水処理場内の処理設備を築造・設置する工事 | 水道施設工事 |
| 農業用水道、かんがい用配水施設等の建設工事 | 土木一式工事(水道施設工事ではない) |
(出典:岡山県「建設業許可の手引」令和7年9月1日改訂 PDF p.158)
境目は「どこに」「何を」造るかです。公道の下は土木一式、敷地の中は管工事、施設そのものは水道施設工事——という軸で覚えると整理しやすくなります。そして農業用水・かんがいだけは、施設であっても土木一式に振られます。
管工事業側からの視点は管工事業の建設業許可|要件・対応資格をご覧ください。水道施設工事業については、別途解説予定です。
2-3. 解体——「それだけを壊す」のか「総合的に解体する」のか
解体工事についても、手引は一式との関係を明記しています。専門工事で建設される目的物を、それだけ壊す工事は各専門工事に振られ、総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ土木一式工事・建築一式工事に振られるという整理です(手引 PDF p.161)。解体をどちらに振るかという考え方は、前述の一式工事と専門工事の違いの記事でも扱っています。
つまり、土木構造物の撤去を総合的な企画・指導・調整のもとに行うのであれば土木一式工事、単体の目的物をそれだけ壊すのであれば各専門工事(または解体工事)という整理です。なお、1-1で引用した告示の定義自体に「補修、改造又は解体する工事を含む」という括弧書きが入っている点も、あわせて押さえてください。
解体工事業には建設業法以外の登録制度も関わりますので、解体工事業の建設業許可|登録との違いもご確認ください。
2-4. とび・土工・コンクリート工事との境界
現場感覚としていちばん近いのが、とび・土工・コンクリート工事です。土工事・掘削工事・根切り工事・盛土工事・地盤改良工事・法面保護工事・道路付属物設置工事などは、とび・土工・コンクリート工事の例示に置かれています(手引 PDF p.158)。
判断の軸は、繰り返しになりますが「個別の専門工事として施工が可能な工事かどうか」です。
・個別の専門工事として施工が可能な工事は、一式工事ではなく各専門工事に該当します。
(手引 PDF p.162)
同じページには、主たる工事として施工する専門工事に附帯工事(附帯的に発生する他の専門工事)が含まれていたとしても、判断は主たる工事の部分で行われるため一式工事とは認められない、という整理も置かれています(手引 PDF p.162)。この附帯工事の考え方が最も切実になるのは、内装に塗装や電気が付いてくるリフォームの現場です。業種の当てはめはリフォーム工事に必要な建設業許可はどの業種かで詳しく扱っています。
「掘削もやるし、コンクリートも打つし、法面もやるから一式だろう」——これは成り立ちません。複数の工種が出てくることではなく、土木工作物一式の完成・引渡しを目的として総合的にマネジメントしているかが分かれ目です。とび・土工工事業側の解説はとび・土工工事業の建設業許可をご覧ください。
2-5. 区分の誤認ポイント・早見表
| よくある誤解 | 手引の記載にもとづく整理 | 出典 |
|---|---|---|
| 「土木一式を持っていれば土木系の工事は全部できる」 | ✕ 土木系の各専門工事(500万円以上)は各専門工事の許可が必要 | 手引 PDF p.162 |
| 「一式工事だから1,500万円まで許可不要」 | ✕ 1,500万円は建築一式工事だけのルール。土木一式は税込500万円 | 手引 PDF p.5 |
| 「複数の工種が混ざるから一式」 | ✕ 個別の専門工事として施工可能な工事は各専門工事。附帯工事があっても主たる工事の部分で判断 | 手引 PDF p.162 |
| 「小さい工事でも一式で計上してよい」 | ✕ 一式工事は「大規模又は施工内容が複雑な工事」とも定義され、余りにも少額な工事は認められない | 手引 PDF p.162 |
| 「農業用水路・かんがい施設は水道施設工事」 | ✕ 土木一式工事に該当 | 手引 PDF p.158 |
| 「下水道の配管はすべて管工事」 | ✕ 公道下等は土木一式、敷地内の配管が管工事 | 手引 PDF p.158 |
| 「一式は元請だけが取るもの」 | △ 例外的に、下請工事であっても土木一式工事となる場合がある | 手引 PDF p.162 |
業種の区分に迷ったときの正規ルートも、手引に用意されています。工事ごとの内容は様々で関係者も多数に上ることから、区分に疑義があるときは、工事台帳・現場写真・施工体制台帳・施工体系図など工事内容や施工体制の詳細が分かる資料を示したうえで、個別に監理課建設業班へ相談するよう案内されています(手引 PDF p.162)。
裏を返せば、書面だけで機械的に決まるものではないということです。ご自身での整理が難しい案件は、当事務所の無料相談でお持ちください。必要に応じて、岡山県土木部監理課建設業班へ照会したうえでご回答します。
3. 土木一式工事業の許可要件(全体像と、土木一式で詰まる2つの要件)
要件そのものは全業種共通の次の6つです。
| 要件 | 概要 | 土木一式工事業での詰まりやすさ |
|---|---|---|
| 経営業務の管理責任者(経管) | 建設業の経営について5年以上の経験を持つ常勤役員等を置くこと(6年以上の補佐経験によるルート、補佐する者を置くルートなど複数の型があります/手引 PDF p.7) | ★★ 個人事業から法人成りした直後の事業者で問題になりやすい |
| 営業所技術者 | 営業所ごとに、資格または実務経験を満たす技術者を専任で置くこと | ★★★ 土木一式は指定建設業。特定建設業では実務経験で代替できない |
| 誠実性 | 請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと | ★ |
| 財産的基礎 | 500万円以上の資金調達能力、自己資本500万円以上、直前5年間の許可継続営業実績のいずれか | ★★ 特定建設業を目指す場合は要件が大幅に上がる(3-1) |
| 欠格要件に該当しないこと | 拘禁刑以上の刑・一定の法令違反による罰金刑等から5年を経過しない者等に該当しないこと | ★ |
| 社会保険への適切な加入 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入 | ★★ |
(要件の根拠:手引 PDF p.7〜10)
要件の詳細は建設業許可の6つの要件(自社が取れるか診断)に集約していますので、本記事では土木一式工事業で相談が集中する論点に絞ります。
3-1. ★土木一式は「指定建設業」——特定建設業のハードルが別格
これが本記事で最も重要な事実です。手引は、特定建設業の許可要件についてこう定めています。
(1)一級相当の特定営業所技術者の設置
許可を受ける営業所ごとに、次のいずれかに該当する専任の技術者を置く必要があります。
① 指定建設業(土、建、電、管、鋼、舗、園)の場合
1級の国家資格者又は技術士、1級相当と大臣が認定した者
② 指定建設業以外の業種の場合
ア 1級の国家資格者、技術士
イ 一般建設業の営業所技術者等となる資格要件を満たす者で、許可を受けようとする業種について、発注者から直接請け負う工事の請負代金の額が4,500万円以上であるものに関して、2年以上指導監督的な実務の経験を有する者
(手引 PDF p.11)
土木一式工事(「土」)は①に含まれます。したがって、特定建設業の土木一式工事業では、「イ」の指導監督的実務経験2年による代替が使えません。岡山県の「審査要領」も、営業所技術者等の有資格区分コードの説明で同じことを明記しています。
※ g)、h)及び i)については指定建設業(土、建、電、管、鋼、舗、園)を除く。
(岡山県「審査要領」令和7年9月1日 PDF p.7。g)〜i) はいずれも「指導監督的実務経験(2年以上)」を組み合わせたコード)
塗装工事業や内装仕上工事業のような指定建設業以外の業種では、一般建設業の資格要件+指導監督的実務経験2年で特定建設業に到達できます(塗装工事業の建設業許可で解説しています)。土木一式工事業には、その道がありません。
そして、特定建設業が必要になる場面自体は業種を問わず同じです。
発注者から直接請け負う建設工事につき、下請代金の額(その工事に係る下請契約が2以上あるときは、その総額)が、建築工事業は8,000万円以上、その他の工事業は5,000万円以上となる下請契約を締結して施工する場合は(中略)特定建設業の許可が必要です(金額はいずれも消費税及び地方消費税を含む額。また、元請負人が提供する材料等の価格は含めない。)。
(手引 PDF p.10〜11)
土木一式工事は、性質上、元請として多数の専門業者に下請発注する形態が中心になります。つまり、土木一式で規模を伸ばそうとすると、他の業種より早く5,000万円のラインに到達します。「一般で取っておいて、必要になったら特定に切り替える」という発想が、土木一式ではもっとも危険です。切り替えの瞬間に1級国家資格者または技術士がいなければ、その工事は受けられません。
あわせて、特定建設業には財務要件も課されます。
| 特定建設業の財務要件 | 基準 |
|---|---|
| 資本金の額 | 2,000万円以上(直前決算時に達していなくても、その後の増資により申請前に満たせば可。資本金の額の変更届の提出が必要) |
| 自己資本の額 | 4,000万円以上 |
| 欠損の額 | 資本金の額の20%を超えないこと |
| 流動比率 | 75%以上 |
(出典:手引 PDF p.11)
一般建設業の財産的基礎(500万円以上の資金調達能力等/手引 PDF p.9〜10)とは、桁が違います。財産的基礎の500万円の実務は建設業許可の財産的要件|500万円・残高証明の準備にまとめていますので、まずは一般建設業のラインからご確認ください(この500万円は、1-5で扱った請負金額の500万円とはまったく別の話ですので混同しないでください)。
※ 本記事の主題は一般建設業の土木一式工事業です。特定建設業への切り替え(般特新規)の進め方は、体制・決算・資格保有者の状況によって組み立てが変わりますので、個別にご相談ください。
3-2. 経営業務の管理責任者——法人成り直後がいちばん危ない
経管は、建設業の経営について5年以上の経験を持つ常勤役員等を置く要件です。ただしルートは1本ではなく、手引は経営業務の管理責任者に準ずる地位で6年以上補佐した経験による型や、常勤役員等を直接補佐する者(財務管理・労務管理・業務運営の経験5年以上)を置く型も定めています(手引 PDF p.7。準ずる地位・補佐者による申請は事前に建設業班へ相談することとされています)。詳細は経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法をご覧ください。
土木の世界でも、「個人事業主として長年やってきて、最近法人化した」というケースは多くあります。個人事業主としての経営経験も期間に算入できますが、それを証明する書類が必要です。岡山県の営業所調査では、法人の役員等については商業登記事項証明書・社会保険関係書類(加入履歴等)・出勤簿・賃金台帳等、個人事業主については確定申告書の控え(税務署の収受印があるもの、または申告書等情報取得サービスで取得した税務署提出日が分かる控え)や所得証明等で確認されます。あわせて請負工事実績として、工事請負契約書(原本)または注文書(原本)及び請書(写し)、建設業の許可通知書等が確認されます(手引 PDF p.17)。
経管を確保できない場合の打開策は経営業務の管理責任者がいない場合はどうする?にまとめています。
3-3. 営業所技術者——土木一式では「誰を置くか」が経営判断になる
営業所技術者を満たすルートは、①資格ルート ②実務経験ルートの2つです。ここまで見たとおり、土木一式工事業では特定建設業に進む可能性を織り込むと、資格者の確保が事業計画そのものに直結します。
そして、もうひとつ土木一式で必ず問題になるのが営業所技術者と現場配置技術者の関係です。手引は、税込4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)の公共性のある工作物の工事について、主任技術者・監理技術者はその工事現場ごとに専任でなければならないとしています(PDF p.21、p.181)。そして「公共性のある工事」とは次のようなものだと例示されています。
・国、地方公共団体発注の施設又は工作物
・鉄道、索道、道路、上下水道などの公共性のある施設又は工作物
・電気事業用施設、ガス事業用施設
・学校、図書館、寺院、工場、病院、デパート、事務所、ホテル、共同住宅など
(手引 PDF p.181。「個人住宅を除くほとんどの工事」が該当するとされています)
土木一式工事の主戦場は、まさにこのリストの中にあります。道路・上下水道・国や地方公共団体発注の工作物——土木一式で規模のある工事を受けるということは、ほぼ自動的に「現場専任が必要な工事」に入るということです。
そして手引は、営業所技術者の扱いをこう定めています。
許可上の営業所技術者等は営業所に常勤でなければなりませんので、このような専任性を求められる工事に配置することは原則できません。(中略)営業所技術者等を工事現場に配置することは原則的にはできません。これは主任技術者及び監理技術者としては無論のこと、一般作業員としても同じです。
(手引 PDF p.181)
岡山県の審査要領も、工事経歴書の提出時に次の違反があった場合は業務改善報告書を徴したうえで申請等を受け付けるという運用を明記しています。挙げられているのは、①法第26条第3項により技術者の専任が必要な工事に営業所技術者等を配置していた、②専任が必要な工事に配置している技術者を、その工期の途中で他の工事の技術者としても配置していた、③営業所技術者等を隣接県を超える遠方の工事に技術者として配置していた——の3つです(岡山県「審査要領」令和7年9月1日 PDF p.7)。
③にあるとおり、岡山県は営業所技術者等を遠方の工事現場に配置していたケースも、業務改善報告書を求める対象として明示しています。
ただし、手引は同じページで例外も定めています。①技術者の専任性が求められない工事であって、当該営業所で請負契約が締結された工事であり、工事現場と営業所が近接し、常時連絡をとりうる体制にあり(直接かつ恒常的な雇用関係が必要)、営業所の職務にも実質的に従事しうる場合は、営業所技術者等を工事現場に配置できるとされています。また②監理技術者を補佐する者(1級技士補等)を置いたときなど、技術者が2現場まで兼務できる場合があります(いずれも手引 PDF p.181)。なお、ここでいう技士補は現場側で監理技術者を補佐する立場の話で、営業所技術者そのものになれるかどうかは別の論点です(土木一式では技士補は営業所技術者になれません/→ §4-1)。
実務上の意味:土木一式工事業では、「有資格者が1人いるから許可は取れる」で終わらせないでください。その1人を営業所技術者に据えると、専任が必要な工事の現場には、原則としてその人を出せなくなります(上記の例外に当たるかは個別の実態で判断が分かれます)。1級土木施工管理技士が社内に1人しかいない状態で土木一式の許可を取り、その人を営業所技術者に置いた場合、専任が必要な現場に配置できる技術者が残らない——これが土木一式でもっとも多い設計ミスです。しかも§3-3の冒頭で見たとおり、土木一式の主戦場である道路・上下水道・公共発注の工作物は、そもそも専任が必要な工事に該当しやすい分野です。営業所技術者に据える人と、現場に出す人を分けるという体制設計を、申請の前段階で行う必要があります。
4. 営業所技術者になれる資格——土木一式工事業で使えるルートと使えないルート
手引は、営業所技術者等になれる要件を次の5つに整理しています(PDF p.9)。
| ルート | 内容 |
|---|---|
| ① 国家資格 | 土木施工管理技士、建築士、技能士等一定の国家資格を有すること(資格一覧=手引 PDF p.163〜164) |
| ② 学歴+実務経験 | 高等学校・専修学校の専門課程の指定学科卒業後5年以上、または大学(短大含む)・高等専門学校・専修学校の専門課程(専門士・高度専門士に限る)の指定学科卒業後3年以上の実務経験 |
| ③ 1級の第1次/第2次検定合格+3年 | (指定建設業及び電気通信工事業を除く) |
| ④ 2級の第1次/第2次検定合格+5年 | (指定建設業及び電気通信工事業を除く) |
| ⑤ 実務経験10年 | 許可を受けようとする業種について10年以上の実務経験 |
(出典:手引 PDF p.9、p.165)
4-1. ★③④のルートは、土木一式工事業では使えない
上の表で太字にしたとおり、③と④には「指定建設業及び電気通信工事業を除く」という限定が付いています。土木一式工事は指定建設業ですから、③④は使えません。
これは実務でかなり大きな意味を持ちます。近年の技術検定制度では、第1次検定に合格すると「技士補」の称号が得られ、他の業種では技士補+実務経験で営業所技術者になれる道が開けました。しかし土木一式工事業では、この道が塞がれています。「うちの若手が1級土木施工管理技士補を取ったから営業所技術者に据えられる」という組み立ては、土木一式工事業では成り立ちません。
したがって、土木一式工事業で営業所技術者を確保するルートは、実質的に次の3つに絞られます。
- 資格ルート(施工管理技士・技術士など、手引 PDF p.163〜164 の資格一覧表で土木一式工事の列に記号が付されている資格)
- 学歴+実務経験ルート(指定学科卒業後5年または3年/→ 4-3)
- 実務経験10年ルート(→ 5章)
4-2. 資格一覧表の読み方と、土木一式工事業で確認できる資格
手引の資格一覧表(PDF p.163〜164)は、縦に資格、横に29業種を並べたマトリクスです。凡例は次のとおりです。
● 指定建設業(網掛け部分)でも特定許可を取得できる ◎ 特定許可も取得できる ○ 一般許可が取得できる(指定建設業以外は指導監督的実務経験があれば特定も可)
(手引 PDF p.164)
土木一式工事の列は網掛けされています=指定建設業です。この列で「●」が付いている資格は、特定建設業の特定営業所技術者にもなれる資格ということになります。
この一覧表(PDF p.163〜164)で、土木一式工事の列に記号が付されている資格は、次の9つだけです。
| 根拠法令 | 資格 | 資格コード | 土木一式の欄 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 建設業法(技術検定) | 1級 建設機械施工管理技士 | 11 | ● | 一般・特定とも可 |
| 建設業法(技術検定) | 2級 建設機械施工管理技士 | 12 | ○ | 一般のみ |
| 建設業法(技術検定) | 1級 土木施工管理技士 | 13 | ● | 一般・特定とも可 |
| 建設業法(技術検定) | 2級 土木施工管理技士(土木) | 14 | ○ | 一般のみ |
| 技術士法(登録証) | 技術士 建設・総合技術監理(建設) | 41 | ● | 一般・特定とも可 |
| 技術士法(登録証) | 技術士 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(同) | 42 | ● | 一般・特定とも可 |
| 技術士法(登録証) | 技術士 農業「農業土木」・総合技術監理(農業「農業土木」) | 43 | ● | 一般・特定とも可 |
| 技術士法(登録証) | 技術士 水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」) | 49 | ● | 一般・特定とも可 |
| 技術士法(登録証) | 技術士 森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」) | 51 | ● | 一般・特定とも可 |
(出典:岡山県「建設業許可の手引」令和7年9月1日改訂 PDF p.163〜164。資格一覧表の土木一式列を全行照合した結果です)
この表から読み取れることが3つあります。
1つめ:特定建設業まで見据えるなら、選択肢は実質「1級」と「技術士」だけです。●が付いているのは1級建設機械施工管理技士・1級土木施工管理技士・技術士5区分の7つで、2級(コード12・14)は○=一般許可までです。§3-1で見たとおり土木一式は指定建設業なので、2級保有者に指導監督的実務経験を積ませて特定に上げる、という道もありません。
2つめ:技術士は「建設部門」だけではありません。土木一式に●が付く技術士には、建設部門(41・42)に加えて農業「農業土木」(43)・水産「水産土木」(49)・森林「森林土木」(51)が含まれます。§1-3で見たとおり、手引の業種区分表では農業用水道・かんがい用配水施設等の建設工事が土木一式に該当するとされています。農業土木の技術士は、対象となる工事と資格の両面で土木一式につながります。一方、上下水道部門(47・48)・衛生工学部門(52〜54)・機械部門(45・46)などは、土木一式の欄が空白です。
3つめ:土木施工管理技士補(コード1H・1J・1K・1L)は、土木一式の欄が空白です。4-1で述べた「③④のルートは指定建設業では使えない」という条文上の帰結が、資格一覧表の上でもそのまま現れています。
⚠️ 上の表は土木一式工事(列01)についての一覧です。他の28業種の扱いは業種ごとに異なり、また2級土木施工管理技士は「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の種別によって対応業種が変わります(土木一式に○が付くのは「土木」種別のコード14のみで、鋼構造物塗装15・薬液注入16は空白です)。お手元の合格証明書・登録証の等級・種別・部門・合格年度を現物でご確認ください。判断に迷う場合は、証明書のコピーをお持ちのうえご相談ください。
注意していただきたいのが、建築士です。手引の資格一覧表で、建築士法の資格(1級建築士・2級建築士・木造建築士)は、土木一式工事の欄が空白です。1級建築士は建築一式工事の特定営業所技術者にもなれる強力な資格ですが、土木一式工事業の営業所技術者にはなれません。「1級建築士がいるから大丈夫」は、土木一式工事業では成り立ちません。
また、職業能力開発促進法による技能検定(技能士)は、塗装工事業や内装仕上工事業では有力な選択肢になりますが、土木一式工事の列は、技能検定のすべての行が空白です(手引 PDF p.164)。つまり技能検定では、土木一式工事業の営業所技術者にはなれません。一式工事が「総合的な企画、指導、調整」を求める業種であることと整合する結果です。土木一式工事業では、施工管理技士・技術士・学歴+実務経験・実務経験10年が現実的な組み立てになります。
4-3. 学歴による実務経験の短縮——土木一式の指定学科は4つ
学歴があると、実務経験の必要年数を短縮できます。土木一式工事業で認められる指定学科は「土木工学」「都市工学」「衛生工学」「交通工学」の4つです(手引 PDF p.166)。
| 学歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 高等学校・中等教育学校・専修学校の専門課程で指定学科を修了して卒業 | 卒業後5年以上 |
| 大学(短期大学を含む)・高等専門学校・専修学校の専門課程(専門士・高度専門士に限る)で指定学科を修了して卒業 | 卒業後3年以上 |
| 指定学科なし | 10年以上(→ 5章) |
(手引 PDF p.9・p.165・p.166)
そして、土木一式工事業でとくに効いてくるのが、指定学科表に付された次の注記です。
この表で「土木工学」には、農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地または造園に関する学科を含みます。
また、指定学科は、ここに掲げる学科と同一名称でなくとも、その内容又は実態がここに掲げる学科と同程度のものであれば構いません。
(手引 PDF p.166)
「土木工学」の範囲は、名称から想像するよりずっと広いということです。農業土木・森林土木・砂防・治山を学んだ方は、土木一式工事業の指定学科を修了していることになります。§1-3で触れたとおり、岡山県では農業用水道・かんがい用配水施設等の工事が土木一式に該当しますので、農業土木系の学科を出た技術者が、そのまま土木一式の営業所技術者候補になり得るという接続になります。
実務上の意味:工業高校の土木科を卒業していれば、10年ではなく5年で足ります。大学・高専・短大の土木系学科なら3年です。「10年分の書類を集めるのは無理そうだ」と諦める前に、まず学歴を確認してください。卒業証明書1通で必要年数が半分以下になる可能性があります。なお、学歴+実務経験のルートを使う場合は、卒業証明書(原本)の添付が必要です(原則として卒業証書の写しは不可/手引 PDF p.83)。
5. 実務経験ルートの証明と通算ルール
資格も指定学科もない場合、土木一式工事について10年以上の実務経験で営業所技術者の要件を満たします(手引 PDF p.9 ⑤)。証明の考え方そのものは業種共通ですので、全体像は営業所技術者(旧:専任技術者)の実務経験10年を証明する方法をご覧ください。本章では、土木一式工事の申請で実際に問題になるルールに絞って整理します。
5-1. 何で証明するのか——「経験があった」では通らない
実務経験は、様式第9号(実務経験証明書)を作成して証明します(監理技術者資格者証で実務経験が確認できる場合は、その写しで代えられます/手引 PDF p.82)。そして、様式第9号を出して終わりではありません。
実務経験証明書に記載した工事については、申請書又は届出書の受付後、別途実施される調査の際に契約書(原本)又は注文書(原本)及び請書(写し)等を提示していただいて工事内容の確認を行うことになります。これらが揃わないときは、実務を経験したことの証明ができないことになりますので、専任技術者になることはできません。
(手引 PDF p.165。引用は手引の原文表記。「専任技術者」の現行名称が営業所技術者です)
土木一式工事では、この裏付け確認が他業種より重くなりがちです。理由は§2で見たとおり、工事名だけでは業種が判別しにくいからです。手引は、工事経歴書の記載要領のところで次のように定めています。
それぞれの業種の工事経歴書に記載した根拠について、工事名だけでは分かりにくい場合には、(中略)( )書きで工事内容を具体的に補記しますが、それでもいずれの許可業種に当たるかが分かりにくいとき(特に、土木一式工事及び建築一式工事)は、当該工事について、現場写真、設計図、工事台帳、施工体制台帳、施工体系図等の資料を提示してください(鮮明であれば写しで構いません。)。
(手引 PDF p.50)
「特に、土木一式工事及び建築一式工事」と名指しされている点に注目してください。土木一式は、契約書があるだけでは業種の裏付けとして足りない場合がある業種です。実務経験を積み上げるつもりなら、現場写真・設計図・工事台帳・施工体制台帳・施工体系図を、今のうちから工事ごとに残しておくことが、そのまま将来の申請コストを下げます。
5-2. 期間の通算ルール——空白が「3か月」か「4か月」かで結果が変わる
実務経験期間の通算について、手引は明確な基準を置いています。実務経験証明書に書いた工事の工期と、次の工期とのあいだの空白が3か月以内であれば実務経験は途切れていないものとして扱われ、空白が4か月以上になるとその期間は差し引いて指定年数を計算します(手引 PDF p.83)。この空白期間の数え方は業種を問わず共通で、天候によって工事が途切れやすい業種での当てはめは防水工事業の建設業許可|要件・対応資格と実務経験で扱っています。
土木工事は工期が長い一方、年度末に完成が集中し、年度当初に端境期が生まれるという受注のリズムを持つことがあります。「最初の工事から最後の工事まで10年経っているから足りるはず」ではなく、4か月以上の空白を控除した実質の期間で10年を満たす必要があります。手元の工事記録を時系列に並べ、4か月以上の空白がどこにいくつあるかを最初に確認すると、必要な年数の見通しが立ちます。
5-3. 誰が証明するのか——自分で自分を証明することはできない
証明は原則として実務経験を積んでいた時期の使用者(法人または個人事業主)が行いますが、手引は次の点も明記しています(PDF p.82)。まず、当時の使用者が倒産や死亡によって証明できない場合には、その当時から営業を続けている同業他者2者に証明してもらう必要があります。ただしそのルートを使う場合でも、工事請負契約書等による書類の裏付けが取れなければ許可は下りません。証明を頼む同業他社の側に求められるのは、継続的に建設業を営んでいることだけで、許可を持っているかどうか、どの業種で営業しているかは問われません。そして、自分で自分の実務経験を証明することはできません。個人事業主本人はもちろん、法人成りした場合も、法人ができる前の期間について会社が証明することはできませんので、いずれも同業他者2者の証明によることになります。この2者証明の実務は、前述の防水工事業の記事でも整理しています。
実務経験に算入できる範囲についても、手引は次のとおり定めています(PDF p.82)。
- 見習中の技術的経験も含まれる(建設工事の雑務のみの経験は含まれない)
- 建設工事の発注に当たって設計技術者として設計に従事した経験も含む
- 実務経験年数は原則として社会保険加入期間の年月を記入する。未加入期間がある場合は、出勤簿・賃金台帳・源泉徴収票・所得証明書の写し等の提示が必要
土木一式では、発注者側や建設コンサルタント側での設計従事経験が算入され得るという点が、他業種より効いてくる場合があります。ただし、算入の可否は経験の内容と証明資料によりますので、経歴書をお持ちのうえで個別にご確認ください。
5-4. ★土木一式は実務経験振替の「出し手」——もらう側にはなれない
手引には、技術的な共通性がある業種間で実務経験を振り替えられる緩和規定があります。土木一式工事は、この規定の中心に置かれています。
① 一式工事から専門工事への実務経験の振替えを認める場合
土木一式 → とび・土工、しゅんせつ、水道施設、解体
建築一式 → 大工、屋根、内装仕上、ガラス、防水、熱絶縁、解体
注) 矢印の方向にのみ振り替え可となります。右側の業種間での振替えはできません。
② 専門工事間での実務経験の振替えを認める場合
大工 ←→ 内装仕上/とび・土工 ←→ 解体(両方向に向かって振替え可)
(手引 PDF p.167)
ここを正確に読んでください。矢印は「土木一式 →(から)とび・土工等(へ)」の一方向です。
- できること:土木一式工事の実務経験を、とび・土工・コンクリート工事/しゅんせつ工事/水道施設工事/解体工事の実務経験として振り替える。
- できないこと:とび・土工工事などの実務経験を、土木一式工事の実務経験として振り替える。
つまり、土木一式工事の営業所技術者を実務経験で立てるなら、土木一式工事として積んだ期間で証明するほかありません。「とび・土工なら15年やっている」は、土木一式の10年には使えないということです。ここは、土木一式の実務経験証明がもっとも重くなる原因です。
逆に、すでに土木一式で経験を積んでいる技術者は、業種追加のときに強いということでもあります。土木一式を軸に、とび・土工・しゅんせつ・水道施設・解体へ展開する設計は、この規定に支えられています。
5-5. 振替を使う場合の年数ルール
振替は「タダで年数がもらえる」制度ではありません。手引は年数の条件を定めています。
(3)実務経験要件の緩和年数
営業所技術者等となろうとする業種での実務経験とその他の業種での実務経験を合わせて12年以上(営業所専任技術者となろうとする業種については、最低条件としてそれぞれ8年を超える実務経験が必要です。)有していれば、営業所技術者等となる資格を有することができます。
(4)短縮効果の例
「許可を受けようとする業種に関して10年以上の実務経験を有する者」として、2業種の営業所技術者等となろうとする場合、通常は20年間の実務経験が必要ですが、最短16年(4年の期間短縮)の実務経験で2業種の営業所技術者等となることが可能となります。
一式工事から専門工事への実務経験の振替えの場合→最大2年の期間短縮
専門工事間での実務経験振り替えの場合→最大4年の期間短縮
(手引 PDF p.167)
また、この緩和には適用範囲の限定があります。
建設業法第7条第2号ロ該当(10年以上の実務経験)について、実務経験要件が緩和されます。同条第2号イ該当(学歴+実務経験)の場合では認められません。
(手引 PDF p.167)
学歴で年数を短縮しているケースには、振替を重ねられないということです。「工業高校の土木科を出て5年でとび・土工を取り、その経験を土木一式に…」という組み立ては、方向の面でも根拠条文の面でも成り立ちません。
なお、振替を使わずに1人が2業種を実務経験で担当する場合は、期間の重複が認められません。資格を持たない人が2業種を受け持つのであれば、業種ごとに10年ずつ、合わせて20年分の経験を証明することになります(手引 PDF p.82)。同じ趣旨は手引 PDF p.165 にも置かれており、ひとつの期間を複数の業種に重ねて計上することはできないとされています。実務経験で2業種を取りにいく場合にこの制約がどう効くかは、前述の防水工事業の記事で塗装と防水の組み合わせを例に扱っています。
5-6. 実務経験の証明で、最初にやるべき3つの確認
10年ルートを検討する場合、次の3点を先に確認すると見通しが立ちます。
- 学歴:土木工学・都市工学・衛生工学・交通工学(農業土木・森林土木・砂防・治山等を含む)の指定学科なら、10年ではなく5年または3年で足ります(4-3)。卒業証明書が取得できるかを確認してください。
- 資格:施工管理技士は等級と種別、技術士は部門と選択科目を、合格証明書・登録証の現物で確認します。組み合わせで扱いが変わります(4-2)。
- 工事書類の棚卸し:注文書・請書・契約書の原本がどの年のぶんまで残っているか。4か月以上の空白がどこにあるか(5-2)。そして土木一式の場合はさらに、業種の裏付けとなる現場写真・設計図・工事台帳・施工体制台帳・施工体系図が残っているか(5-1)。
まず資格と学歴、次に書類——この順番で確認すると、最も重い作業を回避できる場合があります。
6. 岡山県での手続き——提出先・営業所調査・費用と期間
ここからは、岡山県で実際に申請する場合の手続きです。土木一式工事に限らず全業種に共通しますが、岡山県特有の運用が複数あります。
6-1. 申請書の提出先は「県庁6階」の一元窓口
まず、最も誤解されている点です。建設業許可の申請書・変更届は、県民局では受け付けていません。
岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)
〒700-8570 岡山市北区内山下2-4-6/直通 086-226-7463
窓口受付時間 9:00〜11:30、13:00〜16:30(閉庁日を除く)
郵送での提出も受付(送付先は同じ)
(手引 PDF p.16)
手引には「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記されています(PDF p.168)。津山市・真庭市・新見市など県北の事業者、笠岡市・井原市など県西部の事業者にとっては、郵送が現実的な選択肢になります。
そして、岡山県の運用で最も重要なのが次の一文です。
事前審査は一切行いません。正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。
(手引 PDF p.16)
加えて、11時30分から13時00分まで、および16時30分から翌開庁日の9時00分までの間は窓口を閉じ、審査も休止します。原則として、審査の途中であっても窓口閉鎖の時刻をもって審査は終了します(手引 PDF p.16)。
つまり、「窓口で相談しながら少しずつ整えていく」ことができません。土木一式工事のように、業種区分の判断(§2)と実務経験の裏付け資料(§5-1)という2つの重い論点を同時に抱える申請では、この運用が実際の負担として効いてきます。
6-2. 県民局が担うのは「営業所調査」
申請そのものは本庁一元ですが、営業所調査は所轄の県民局が担当します。
営業所調査については、許可申請受付後、半月程度で所轄の県民局から実施の連絡を行います。
(手引 PDF p.17)
岡山県では、所在地に応じて備前・備中・美作の3つの県民局建設部ごとに担当区域を設け、建設業に関わる事務の一部を行っています(手引 PDF p.168)。市町村ごとの担当区域と地域別の進め方は岡山市で建設業許可を取るには・倉敷市で建設業許可を取るにはをご覧ください。
なお、営業所調査が早く終わったからといって許可が早く出るわけではありません。本庁の土木部監理課でも所要の調査が別途進行しているためです(手引 PDF p.16)。
6-3. 営業所調査で確認されるもの
確認項目は営業所の所在・経管の経験・営業所技術者の資格・常勤性・財務内容まで多岐にわたりますが(手引 PDF p.17〜19)、押さえるべきは次の点です。
| 確認項目 | 確認されるもの |
|---|---|
| 営業所の所在 | 看板(容易に確認できるもの)、机、電話及びファクシミリ、営業所の賃貸借契約書(原本)等 |
| 経管の経験 | 商業登記事項証明書・社会保険関係書類(加入履歴等)/個人事業主は確定申告書の控え(税務署収受印のあるもの等)・所得証明等/請負工事実績として工事請負契約書(原本)又は注文書(原本)及び請書(写し)、許可通知書等 |
| 営業所技術者の資格・実務経験 | 国家資格等の場合は免状・合格証明書等(いずれも原本)/実務経験の場合は様式第9号に記入した工事の契約書(原本)等 |
そして手引は、はっきりこう書いています。
※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません。
(手引 PDF p.17)
営業所そのものの要件にも注意が必要です。手引は「営業所は居住部分と共用することはできません」「賃貸借契約を締結している場合には、契約書上で営業活動に利用することが認められていることが必要です」と定めています(PDF p.17)。現場事務所や作業場の一角、自宅の一室を営業所としている形態では、ここで引っかかることがあります。看板・机・電話・FAXという物理的な備えも、調査当日までに整えてください。
6-4. 費用と期間
| 項目 | 金額・期間 |
|---|---|
| 岡山県知事許可・新規(許可換え新規・般特新規を含む)の法定手数料 | 90,000円 |
| 岡山県知事許可・更新/業種追加の法定手数料 | 50,000円 |
| 当事務所の報酬(法人・新規) | 132,000円(税込目安)/合計 222,000円 |
| 当事務所の報酬(業種追加=既存許可に土木一式工事業を足す) | 55,000円(税込目安)/合計 105,000円 |
| 申請受付から許可まで | 特に問題がないケースで概ね2か月程度 |
(法定手数料の出典:手引 PDF p.14/期間の出典:手引 PDF p.16)
※ 当事務所の報酬額はいずれも税込の目安です。業種数・営業所数・実務経験証明の分量など案件内容により変動します。正確な金額は事前にお見積りをお出ししたうえで着手しますので、まずは無料相談でご確認ください。証明書等の取得実費は別途必要です。
法定手数料について、実務で誤解されやすい点を補足します。
- 法定手数料は、申請する業種の数と関係ありません(手引 PDF p.14)。土木一式1業種でも、土木一式+とび・土工+舗装の3業種でも、新規なら90,000円です。土木一式で許可を取るなら、同時に関連業種をまとめて申請したほうが手数料の面では効率的です(要件を満たす技術者を業種ごとに確保できることが前提です)。あとから業種を足す場合の手続きと要件は建設業許可の業種追加とは|岡山で許可業種を増やす手続きと要件をご覧ください。
- 複数の申請を同時に行う場合の手数料は合算されます(例:一般許可追加5万円+特定許可新規9万円=14万円/手引 PDF p.14)。
- 法定手数料は、所定の様式に納付済証を貼付して納付する方式です(手引 PDF p.14)。納付の具体的な手続は、ご依頼いただいた場合に当事務所からご案内します。
費用の詳しい内訳(証明書の取得実費・条件別の総額)は建設業許可の費用はいくら?にまとめています(当事務所の料金表もこちらに一本化しています)。行政書士に依頼する場合の報酬の考え方・見積の読み方は建設業許可を行政書士に依頼する費用相場をご覧ください。必要書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧|新規・一般にまとめています。
なお、「標準処理期間◯日」と断定できる記載は手引にありません。手引にあるのは「特に問題がないケースで概ね2か月程度かかります」という記述です(PDF p.16)。そしてこの2か月は申請を受け付けてもらってからの期間ですので、実際にはここに書類収集の期間が加わります。土木一式では、業種の裏付け資料(§5-1)の収集にどれだけかかるかで全体の期間が大きく変わります。「入札参加資格の申請に間に合わせたい」「元請から◯月までに」と期日が決まっている場合は、逆算のためにも早い段階でご相談ください。
7. 許可のその先——公共工事・経審・工事経歴書の一式特則
7-1. 公共工事に入るには、許可の次に2段階ある
土木一式工事業を取得する方の多くが、公共工事を視野に入れています。手引の記載は明確で、許可を受けた業者が公共工事の入札に参加しようとするなら、経営事項審査を受審したうえで、その公共事業を発注する自治体の入札参加資格を得ておく必要があるとされています(手引 PDF p.24)。
つまり順序は、①建設業許可 → ②経営事項審査(経審)の受審 → ③発注自治体の入札参加資格の3段階です。許可を取っただけでは入札には参加できません。そして各段階には申請時期・有効期間・審査基準日といった時間の制約があり、1つ遅れると1年単位で参入が後ろにずれることがあります。
この3段階の逆算と手順は、公共工事に入りたい|建設業許可が入札参加への第一歩に一本化しています。本記事では扱いませんので、公共工事参入のスケジュールを組みたい方はそちらをご覧ください。
経審そのものについては、依頼を検討する段階の考え方・当事務所での進め方を経審申請を岡山で依頼するならにまとめています。経審のサービス内容・対応範囲は当事務所の経営事項審査(経審)サービスページ、入札参加資格の申請サービスは入札参加資格ページをご覧ください(記事とサービスページは内容が異なります)。
7-2. ★土木一式にだけ課される、工事経歴書の特則
ここは土木一式工事業を取得したあと、毎年効いてくる固有の負担です。岡山県の審査要領は、工事経歴書の記載についてこう定めています。
(8)工事経歴書には、報告対象年度内に完成した当該業種の工事請負額の概ね7割を超えるところまで、請負代金の大きい順に記載する。ただし、施行令第1条の2第1項に規定する軽微な工事については、10件を超えて記載することを要しない。
ただし、土木一式工事、建築一式工事については、上記の軽微な工事の有無に関わらず、当該業種に係る完成工事高の総額の少なくとも7割を超えるところまで記載することとし、小口工事として記載することはできない。
(岡山県「審査要領」令和7年9月1日 PDF p.8)
他の27業種では、軽微な工事(税込500万円未満)については10件を超えて記載する必要がありません(審査要領 PDF p.8)。土木一式工事と建築一式工事には、この緩和がありません。軽微な工事の有無に関わらず、完成工事高の総額の少なくとも7割を超えるところまで大きい順に記載することとされ、「小口工事として記載することはできない」と明記されています。
同じ審査要領は、記載要領の概略として次のようにも書いています。
ア 元請工事について、大きい順に元請工事の7割まで記載(元請工事に係る軽微な工事は10件まで記載すればよい。ただし、土木・建築工事業を除く。)
イ ア以外の元請工事及び下請工事について、当該業種の完成工事高の7割まで大きい順に記載(軽微な工事は10件まで記載すればよい。ただし、土木・建築工事業を除く。)
(審査要領 PDF p.8)
実務上の意味:土木一式工事業を取るということは、毎年の事業年度終了報告(決算日から4か月以内/手引 PDF p.22)の作業量が、他業種より構造的に増えるということです。しかも§5-1で見たとおり、土木一式は工事名だけでは業種が判別しにくく、県から現場写真・設計図・工事台帳・施工体制台帳・施工体系図の提示を求められ得る業種でもあります(手引 PDF p.50)。
さらに、JV(共同企業体)で受注する機会が多いのも土木一式の特徴です。ここにも決まりがあります。
JV が元請で受注した工事について、JV の構成員は出資比率に応じた売上を計上すべきところを、誤って JV からの下請として記載しないように注意すること。
(審査要領 PDF p.8)
会計上も、共同企業体により施工した工事については、共同企業体全体の完成工事高に出資の割合を乗じた額又は分担した工事額を計上するとされています(手引 PDF p.176)。JVの計上方法を誤ると、工事経歴書と財務諸表の両方を直すことになります。
なお、経営事項審査を受審する際に添付する工事経歴書は、記載要領が異なります(審査要領 PDF p.8、手引 PDF p.49)。事業年度終了報告用のものをそのまま流用することはできませんので注意してください。
この「毎年の手間が構造的に重い」という点こそ、土木一式工事業で顧問契約をご検討いただく最大の理由です。当事務所では、毎年の事業年度終了報告・5年ごとの更新・経審・入札参加資格の更新までをまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。期限管理を含めて定額でお任せいただくほうが、結果的に負担が軽くなるケースが多くあります。
7-3. 技術者の配置義務——許可を取った後がむしろ本番
許可を取得すると、元請・下請の別や請負金額の多寡を問わず、工事現場に主任技術者を配置する義務が生じます。
許可を受けた業種については元請・下請の別や請負金額の多寡を問わず技術者配置の義務がありますので、元々は許可を要しない小規模の工事であっても、それぞれきちんと配置しなければなりません。
(手引 PDF p.180)
そして特定建設業者が元請として税込5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の工事を下請させる場合は、監理技術者を別途配置する必要があります(手引 PDF p.180)。監理技術者になるには、特定建設業の営業所技術者等になることができる資格及び経験が必要です——つまり土木一式では、§3-1で見たとおり1級の国家資格者・技術士・大臣認定者に限られます。
特定建設業の許可を取るということは、監理技術者を配置できる人材を確保するということです。この2つは切り離せません。土木一式で規模を伸ばす計画を立てるときは、許可の種類・営業所技術者・監理技術者の3点をセットで設計してください。
あわせて、許可取得後は次の義務が続きます。
- 標識(許可票)の掲示義務:店舗および建設工事の現場(元請工事のみ)ごとに、公衆の見やすい場所に掲示(手引 PDF p.21)
- 許可の有効期間は5年間。更新許可申請は有効期間満了の日の30日前までに受付を済ませておく必要があります(建設業法施行規則第5条/手引 PDF p.21)。更新せずに満了すると改めて新規に許可を取り直すことになります
- 事業年度終了報告:決算日から4か月以内(手引 PDF p.22)
- 経管・営業所技術者が欠けた場合:代わりになる方がいなければ許可を失います。変更届は変更後2週間以内(手引 PDF p.22)
§5-4で見たとおり、土木一式の実務経験は他業種から振り替えられません。実務経験10年ルートで取った許可を失効させると、10年分の証明をゼロから再現することになります。5年前に残っていた注文書の原本が、5年後にも残っているとは限りません。期限管理の重要性は、土木一式ではとくに高いとお考えください。
7-4. 取引先要求がきっかけの場合
土木一式工事業の許可取得は、公共工事だけがきっかけではありません。元請から「その規模の工事を出すには土木一式の許可が要る」と言われて動き出すケースも多くあります。この文脈での進め方は元請から建設業許可を求められたら|下請が取る手順・ゼネコンの協力会社になるには|取引口座開設と建設業許可をご覧ください。
個人事業として土木工事を続けてきた方が許可を機に法人化を検討される場合は、個人事業主の建設業許可|個人で取る?法人化してから取る?・法人成りで建設業許可は引き継げる?・一人親方が建設業許可を取るにはもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
土木一式工事業の建設業許可で、他業種と違う対応が必要になるポイントを改めて整理します。
- ★土木一式は指定建設業です。指定建設業は土・建・電・管・鋼・舗・園の7業種で、特定建設業の特定営業所技術者は1級の国家資格者・技術士・1級相当の大臣認定者に限られ、指導監督的実務経験2年による代替が使えません(手引 PDF p.11、審査要領 PDF p.7)。規模を伸ばす計画があるなら、資格者の確保は経営課題そのものです。
- 1級・2級の第1次/第2次検定合格+3年/5年のルートも、土木一式では使えません(「指定建設業及び電気通信工事業を除く」/手引 PDF p.9・p.165)。技士補を営業所技術者に据える組み立ては成り立ちません。
- ★一式の許可は専門工事の上位互換ではありません。「土木一式工事(土木工事業)の許可を有していても、土木系の各専門工事(500万円以上)の施工に当たっては、各専門工事の許可が必要です」(手引 PDF p.162)。
- 1,500万円のラインは建築一式工事だけのものです。土木一式工事は他の専門工事と同じ税込500万円で判断します(手引 PDF p.5)。
- 手引には土木一式工事の「例示」が置かれていません(PDF p.158)。判断軸は「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設したか」であり、余りにも少額な工事は一式と認められません(PDF p.162)。
- 上下水道は三分されます。公道下等の下水道の配管工事・下水処理場の敷地造成工事は土木一式、敷地内の配管や配水小管は管工事、取水・浄水・配水施設や下水処理場内の処理設備は水道施設工事。そして農業用水道・かんがい用配水施設等は土木一式です(手引 PDF p.158)。
- 指定学科は土木工学・都市工学・衛生工学・交通工学の4つで、「土木工学」には農業土木・鉱山土木・森林土木・砂防・治山・緑地または造園に関する学科を含みます(手引 PDF p.166)。工業高校の土木科卒業なら10年ではなく5年です。
- ★実務経験の振替は一方向です。土木一式 → とび・土工、しゅんせつ、水道施設、解体(手引 PDF p.167)。逆方向はできませんので、土木一式の実務経験は土木一式として積んだ期間で証明するほかありません。
- ★工事経歴書に一式だけの特則があります。土木一式工事・建築一式工事は、軽微な工事の有無に関わらず完成工事高の7割超まで記載し、小口工事としてまとめることができません(審査要領 PDF p.8)。毎年の事業年度終了報告の負担が構造的に重い業種です。
- 公共工事は許可の次に2段階あります。経営事項審査の受審と、発注自治体の入札参加資格です(手引 PDF p.24)。
そして最も申し上げたいのは、土木一式は「取ってから直す」のがいちばん高くつく業種だということです。専門工事を土木一式でカバーできると誤解したまま受注すれば無許可営業の問題になり、有資格者が1人しかいない状態で営業所技術者に据えれば現場に出せなくなり、一般で取ってから特定が必要になれば資格者の採用から始めることになります。業種の選び方・誰を営業所技術者に据えるか・一般と特定のどちらで組むか——この3つは、申請書を書き始める前に決めるべき論点です。
「自社の工事は土木一式でよいのか、それとも専門工事なのか」「農業用水路の工事はどの業種になるのか」「うちの技術者の資格で営業所技術者を満たせるのか」「将来の特定建設業まで見据えるとどう組むべきか」——こうしたご相談は、無料相談で個別に整理できます。
土木一式工事業の許可のご相談は無料相談から(30秒入力のフォーム)
自社の工事が土木一式工事に該当するか、営業所技術者を資格で満たせるか実務経験が必要か、一般と特定のどちらで組むべきかを、岡山県の建設業に特化した行政書士が診断します。LINEでは、合格証明書・技術士登録証・卒業証明書に記載された等級・種別・部門・合格年度などをお知らせいただければ、要件を満たすかどうかの当たりを付けられます(お預かりした資格・学歴に関する情報はご相談対応の目的にのみ使用し、行政書士の守秘義務に基づいて管理します)。お電話は070-8567-3197。※顧問契約・報酬の金額は税込の目安です。ご契約内容・業務範囲により変動しますので、正確な金額は事前にお見積りいたします。
