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大工工事業の建設業許可|要件と実務経験の証明【岡山】

大工工事業の建設業許可|要件と実務経験の証明【岡山】

大工工事業(略号「大」)の建設業許可で最初に確認すべきことは、2つあります。ひとつは、自社がやっている工事は本当に「大工工事」なのかという業種区分の問題。もうひとつは、営業所技術者(旧:専任技術者)を、資格で満たせるのか実務経験10年で証明するのかという要件の問題です。

このうち区分については、岡山県が手引の中で名指しで注意を促しています。工事経歴書の記載方法の説明で、「専門工事であるにもかかわらず、一式工事として計上されている例が多いので注意してください(特にとび・土工、大工、内装仕上工事で多いようです。)」と書かれているのです(岡山県「建設業許可の手引」令和7年9月1日改訂 PDF p.49)。つまり、大工工事業は岡山県が「取り違えが多い」と認識している3業種のひとつです。

そして資格については、大工工事業には他の28業種にない特徴があります。木造建築士と建築大工技能士は、29業種のうち大工工事業でしか使えません(手引 PDF p.163・p.164)。「うちには木造建築士がいる」という工務店にとって、この1点が申請の組み立てを大きく変えることがあります。

本記事は、岡山県で建設業に特化する行政書士事務所が、大工工事業の許可に絞って、岡山県の手引・審査要領にもとづいて整理したものです。

※ どの業種に当たるか、要件を満たすかは、契約の形態・工事の実態・書類の残り方によって判断が分かれます。本記事は一般的な整理であり、最終判断は有資格者(行政書士)にご確認ください。

1. 大工工事業とは——「大」の対象になる工事の範囲

1-1. 建設工事の内容(告示に定められた定義)

建設業の29業種は、それぞれ「建設工事の内容」が告示で定められています(29業種の全体像と自社がどれを取るべきかは建設業許可29業種の一覧と選び方をご覧ください)。大工工事の定義は次のとおりです。

大工工事 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事

(岡山県「建設業許可の手引」令和7年9月1日改訂 PDF p.158)

読み解くべき言葉は2つあります。

  • 「木材の加工又は取付け」——大工工事業の中心は木材です。同じ「取付け」でも、扱う材料が木材でなければ大工工事から外れます。
  • 「工作物を築造し」/「工作物に木製設備を取付ける」——建物そのものを木で組み上げる工事と、既にある建物に木製の設備を取り付ける工事の両方が含まれます。新築の建て方だけが大工工事ではありません。

手引の許可業種一覧(29種類)では「大工工事 (大)」と示されており、申請書のカラムには略号「」を記入します(手引 PDF p.5・p.34)。

1-2. 建設工事の例示(3つ)

手引の業種区分表は、大工工事の例示として次の3つを挙げています(PDF p.158)。

例示(手引の記載)内容のイメージ(当事務所による説明)
大工工事木造建築物の建て方・軸組・木構造の施工など
型枠工事コンクリートを打設するための型枠の製作・組立て・解体
造作工事建物内部の木製の下地組み・棚・カウンター・木製設備の取付けなど

※ 左列の3つの工事名が手引 PDF p.158 の記載です。右列は手引に書かれているものではなく、一般的な工事内容についての当事務所の説明です。

ここで多くの方が意外に思われるのが、「型枠工事」が大工工事の例示に入っていることです。型枠は現場では「型枠大工」と呼ばれ、実態としても木材(合板)の加工・組立てが中心の仕事ですから、業種としては大工工事に位置づけられています。この点は §2-4 で改めて扱います。

1-3. ★大工工事は「区分の考え方」欄が空欄——これが誤認の温床になる

手引の業種区分表は、4つの列で構成されています。「建設工事の種類」「建設工事の内容(告示)」「建設工事の例示(建設業許可事務ガイドライン)」、そして「建設工事の区分の考え方(建設業許可事務ガイドライン)」です。

この4列目「区分の考え方」には、他業種との境界についての注記が書かれています。たとえば屋根工事には「板金屋根工事も『板金工事』ではなく『屋根工事』に該当する」、とび・土工・コンクリート工事には「鉄骨の製作、加工から組立てまでを一貫して請け負うのが『鋼構造物工事』における『鉄骨工事』であり、既に加工された鉄骨を現場で組立てることのみを請け負うのが『とび・土工・コンクリート工事』における『鉄骨組立て工事』である」——といった具合です(手引 PDF p.158〜161)。

ところが、大工工事の「区分の考え方」欄は「-」、つまり空欄です(手引 PDF p.158)。

これは重要な事実です。大工工事と、内装仕上工事・建具工事・建築一式工事との境界について、ガイドラインが正面から論じた注記は存在しないということだからです。境界線の答えが公表資料に書かれていない一方で、後述のとおり定義文の重なりは大きい——この「答えが書かれていない領域の広さ」こそが、大工工事業で区分の誤認が起きる構造的な理由です。

だからこそ手引は、業種の区分に迷ったときの相談ルートを別に用意しています。工事ごとの内容は多様で関係者も多数にのぼることから、区分に疑義がある場合は、工事台帳・現場写真・施工体制台帳・施工体系図など、工事内容や施工体制の詳細が分かる資料を示したうえで、監理課建設業班へ個別に相談してほしいというのが手引の求め方です(手引 PDF p.162)。この相談ルートそのものの使い方は、§1-1 でご案内した「建設業許可29業種の一覧と選び方」で正面から整理しています。

そして手引は、この相談ルートの直前で、業種の区分が「無許可営業、技術者配置義務違反、一括下請負等の法令違反に直結する」と明記しています(PDF p.162)。区分の話は、後から書類を直せば済む話ではないということです。

1-4. 大工工事業で「許可が必要になる」タイミング

大工工事業は建築一式工事ではありません。したがって許可が不要な「軽微な建設工事」の範囲は、1件の請負代金が税込500万円に満たない工事です(手引 PDF p.5)。建築一式工事の1,500万円・延べ面積150㎡という基準は、大工工事業には適用されません。

ここが、工務店・大工職の方の相談で最初に食い違うところです。「住宅の仕事だから1,500万円まで大丈夫」という理解は、その契約が建築一式工事である場合にしか成り立ちません。木造住宅の建て方・造作を下請として請け負う契約は大工工事であり、税込500万円のラインで判定されます。金額の判定については軽微な工事(500万円未満)とは?建設業許可が不要になる範囲で、税込判定・支給材料の加算・分割契約の合算まで詳しく整理しています。

税込500万円以上の大工工事を受注できる体制に切り替えるまでの全体の流れは500万円以上の工事を受注したい|建設業許可を取るまでのロードマップで順を追って整理しています。

なお、金額のラインに達していなくても、元請や取引先が許可を条件にするケースは増えています。この文脈は §7-2 で扱います。

2. 区分の誤認ポイント——建築一式・内装仕上・建具・とび・土工との境界

大工工事業は、4つの業種と境界を接しています。しかも §1-3 で見たとおり、その境界を直接論じた注記が手引にありません。ここでは、定義文と例示を突き合わせて、実務で判断が割れる地点を整理します。

2-1. 大工 vs 建築一式——★岡山県が名指しする最頻出の誤認

冒頭で触れた一文を、原文で確認します。工事経歴書(様式第2号)の記載方法についての注意書きです。

・【一式工事と専門工事】専門工事であるにもかかわらず、一式工事として計上されている例が多いので注意してください(特にとび・土工、大工、内装仕上工事で多いようです。)。一式工事は、土木工作物(建築物)一式の完成・引渡しを目的とし、総合的な企画・指導・調整に基づいて当該土木工作物(建築物)を建設する工事となります。

(手引 PDF p.49)

岡山県が名指しした3業種のうち2つが、大工と内装仕上です。この2業種は §5-4 で見るとおり実務経験の振替も相互に認められている近接業種であり、大工・内装仕上の周辺で「一式で計上する」誤りが集中していることが読み取れます。

では、どこで分かれるのか。一式工事と専門工事の切り分けそのものは一式工事と専門工事の違い|一式を取れば全部できる誤解で正面から扱っていますが、ここでは大工工事に効く部分を確認します。手引は一式工事を、個々の専門工事とは性格の異なるもの——総合的な企画・指導・調整を行いながら土木工作物や建築物を建てていく工事——として位置づけています(手引 PDF p.162)。この定義そのものの読み解きは上記の記事に譲り、ここでは大工工事の判定に直結する一文を引きます(同 PDF p.162)。

個別の専門工事として施工が可能な工事は、一式工事ではなく各専門工事に該当します。

手引はこれに2点を補っています。ひとつは、主たる工事として施工する専門工事のなかに附帯工事(附帯的に発生する他の専門工事)が含まれていても、判断は主たる工事の部分で行われるため、一式工事とは認められないこと。もうひとつは、一式工事が「大規模又は施工内容が複雑な工事」とも定義されている以上、余りにも少額な工事は一式として認められないことです(いずれも手引 PDF p.162)。附帯工事の扱いは、次段落でご案内する「リフォーム工事に必要な建設業許可はどの業種か」§4 が正面から扱っています。

さらに手引は、建築一式工事と判断されるものを2つの類型に整理しています(同 PDF p.162)。①建物の躯体——柱や梁など建物本体の構造を支える部分——に変更を加える場合(耐震補強を含みます)と、②軽微ではない専門工事(500万円以上)を2つ以上、有機的に組み合わせた1件の建築工事です。②について手引が挙げている例は、内訳が電気工事700万円+内装仕上工事800万円=1,500万円という1件のリフォーム工事でした。この2類型を判定の道具としてどう使うかは、前掲の「一式工事と専門工事の違い」§3-1 が扱っています。

②の例が示すとおり、リフォーム・改修工事は、契約の内訳の組み方によって必要な業種が変わります。木造住宅の改修でどの業種の許可が要るかはリフォーム工事に必要な建設業許可はどの業種かで整理しています。

実務上の意味を整理します。

  • 元請として住宅一棟を請け負い、基礎・木工事・屋根・内装・設備を取りまとめているなら、それは総合的な企画・指導・調整に当たり、建築一式工事の領域です。
  • 元請から木工事の部分だけを請け負っているなら、それは個別の専門工事として施工が可能な工事ですから、大工工事です。「住宅の工事だから建築一式」ではありません。
  • 大工工事のなかに、少額の内装や建具の取付けが附帯的に含まれていても、主たる工事の部分で判断されます(PDF p.162)。附帯工事が混じることを理由に一式として扱うことはできません。

そして手引は、一式の許可があっても専門工事は別だと明記しています。建築一式工事(建築工事業)の許可を持っていても、建築系の専門工事を500万円以上で施工するには、その専門工事の許可が別に必要だと書かれているのです(手引 PDF p.162)。前掲の「一式工事と専門工事の違い」は、この一点を §4 で記事の核心として扱っています。

「建築一式を持っているから大工工事もカバーされる」ということはありません。税込500万円以上の大工工事を請け負うなら、大工工事業の許可が別に要ります。工務店が建築一式に加えて大工工事業を追加取得するのは、この理由によります。建築一式工事そのものの要件と「一棟請け」の範囲は建築一式工事の建設業許可にまとめています。

2-2. 大工 vs 内装仕上——定義文が「木材」で重なっている

大工工事業と最も混同されやすいのが内装仕上工事業です。理由は定義を並べれば一目瞭然です。

業種建設工事の内容(告示)建設工事の例示
大工工事木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事大工工事、型枠工事、造作工事
内装仕上工事木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事

(出典:手引 PDF p.158(大工)/PDF p.160(内装仕上))

内装仕上工事の定義文の冒頭にも「木材」が入っています。つまり「木を使う内装の仕事」は、文言だけを見れば両方に読めてしまいます。

手引に区分の考え方の注記はありませんが、定義文から読み取れる違いは次のとおりです。

  • 大工工事は「工作物を築造」「木製設備を取付ける」——建物や設備をつくる側の言葉で書かれています。
  • 内装仕上工事は「建築物の内装仕上げを行う」——仕上げる側の言葉で書かれています。

また、内装仕上工事の「家具工事」には、手引の注記が付いています。建築物に家具を据え付ける工事だけでなく、家具の材料を現場で加工したり組み立てたりして据え付ける工事までを家具工事に含める、という内容です(手引 PDF p.160)。この定義の位置づけは、前掲の「リフォーム工事に必要な建設業許可はどの業種か」§5-2 でまとめて扱っています。

現場で材料を加工して据え付ける造作家具の工事は、内装仕上工事の側に例示されているという点は、造作を手がける大工にとって見落とせません。「現場加工だから大工工事」と単純には言えないということです。

内装仕上工事業そのものの範囲・要件は内装仕上工事業の建設業許可にまとめています。大工と内装仕上は、後述のとおり実務経験を相互に振り替えられる関係にあります(§5-4)。両業種にまたがる仕事をしている事業者は、どちらで許可を取るか・両方取るかを含めて設計する価値があります。

2-3. 大工 vs 建具——「木製建具の取付け」は建具工事の例示にある

もうひとつ紛らわしいのが建具工事業です。

建具工事 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事

例示:金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事ふすま工事

(手引 PDF p.161)

大工工事の定義は「工作物に木製設備を取付ける工事」ですが、木製の建具(ドア・引戸・障子など)の取付けは、建具工事の例示に明記されています。「木製のものを取り付けるのは全部大工工事」という理解は成り立ちません。

さらに注意していただきたいのが、「ふすま工事」が内装仕上工事と建具工事の両方の例示に載っているという点です(手引 PDF p.160・p.161)。同じ工事名が2つの業種に例示されているのですから、工事名だけで業種を決めることはできないことがよく分かります。実際、手引は工事経歴書について次のように求めています。

契約書・注文書における工事名が不適切であったことが判明した場合又は一見して許可業種を容易に判断しにくい場合には、契約書上の工事名の後に続けて( )書きで工事内容を具体的に補記してください。

(手引 PDF p.50)

業種は工事名ではなく工事内容で決まる——この原則は、大工工事業の周辺でとりわけ強く効きます。

2-4. 大工 vs とび・土工——型枠工事はどちらか

§1-2 のとおり、型枠工事は大工工事の例示です(手引 PDF p.158)。一方、とび・土工・コンクリート工事の例示はイ〜ホの5区分(イ 足場・とび・鉄骨組立て等/ロ くい工事/ハ 土工事・掘削工事等/ニ コンクリート工事・打設工事・圧送工事等/ホ 地すべり防止・地盤改良・法面保護等その他基礎的ないしは準備的工事)にわたりますが、そのいずれにも「型枠工事」は含まれていません(PDF p.158)。

この関係は、資格の側からも裏づけられます。技能検定の「型枠施工」(資格コード64)は、手引の資格一覧表で大工工事業ととび・土工・コンクリート工事業の2業種に○が付されています(PDF p.164)。型枠が両業種にまたがる性格の工事であることが、資格の対応関係にも表れているわけです。

実務上の判断としては、型枠の製作・組立て・解体そのものを請け負うなら例示のとおり大工工事、コンクリートの打設・圧送や躯体工事全体を請け負うならとび・土工・コンクリート工事の領域、という整理が出発点になります。ただし現場では型枠と配筋・打設がひと続きの契約になることも多く、契約の内訳をどう組んでいるかで結論が変わり得ます。とび・土工工事業側の範囲はとび・土工工事業の建設業許可をご覧ください。

2-5. 区分の誤認ポイント・早見表

迷いやすい工事手引の記載出典
元請として住宅一棟を請け負う総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事=建築一式工事PDF p.162
元請から木工事の部分だけを請け負う個別の専門工事として施工が可能な工事は各専門工事=大工工事PDF p.162
型枠の製作・組立て大工工事の例示(型枠工事)PDF p.158
現場で加工して据え付ける造作家具内装仕上工事の例示「家具工事」の注記に該当PDF p.160
木製建具(ドア・引戸等)の取付け建具工事の例示(木製建具取付け工事)PDF p.161
ふすま工事内装仕上工事と建具工事の双方に例示ありPDF p.160・p.161
大工工事に少額の内装が附帯した附帯工事が含まれても主たる工事の部分で判断PDF p.162
建築一式の許可で大工工事500万円以上各専門工事の許可が必要PDF p.162

※ 上表は手引の記載を整理したものです。実際の該当性は契約書・工事内訳・施工体制などの実態で判断されます。判断に迷う案件は、契約前にご相談ください。

3. 大工工事業の許可要件(全体像と、大工で詰まる2つの要件)

大工工事業だからといって、許可の要件そのものが特別になるわけではありません。要件は全業種共通の次の6つです。

要件概要大工工事業での詰まりやすさ
経営業務の管理責任者(経管)建設業の経営について5年以上の経験を持つ常勤役員等を置くこと★★★ 一人親方から法人成りした直後の事業者で問題になりやすい
営業所技術者(旧:専任技術者)営業所ごとに、資格または実務経験を満たす技術者を専任で置くこと★★★ 木造建築士・建築大工技能士という大工専用ルートがある一方、技術士は1区分も使えない
誠実性請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと
財産的基礎500万円以上の資金調達能力、自己資本500万円以上、直前5年間の許可継続営業実績のいずれか★★
欠格要件に該当しないこと拘禁刑以上の刑・一定の法令違反による罰金刑等から5年を経過しない者等に該当しないこと
社会保険への適切な加入健康保険・厚生年金保険・雇用保険に関する届出を行っていること★★ 職人の社会保険整備が後回しになっている場合に影響

(要件の根拠:手引 PDF p.7〜10)

要件の詳細は建設業許可の6つの要件(自社が取れるか診断)に集約していますので、本記事では大工工事業で相談が集中する2つの要件だけを取り上げます。

3-1. 経営業務の管理責任者——一人親方からの法人成り直後がいちばん危ない

経管は、建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持つ常勤役員等を置く要件です(手引 PDF p.7/詳細は経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法)。

大工職で多いのが、「一人親方として20年やってきて、去年会社にした」というケースです。個人事業主としての経営経験も期間に算入できますが、それを証明する書類が必要です。岡山県の営業所調査では、個人事業主については確定申告書の控え(税務署収受印のあるもの、または申告書等情報取得サービスで取得した税務署提出日が分かる控え)や所得証明等、あわせて工事請負契約書(原本)または注文書(原本)及び請書(写し)等による請負工事実績が確認されます(手引 PDF p.17)。

大工の一人親方は、注文書・請書を交わさずに口頭と請求書だけで仕事を受けてきたという方が珍しくありません。この形だと、経営経験は事実として20年あっても、証明できる期間は書類が残っている期間だけになります。書類の棚卸しは、申請準備で最初に取りかかるべき作業です。経管を確保できない場合の打開策は経営業務の管理責任者がいない場合はどうする?にまとめています。

なお、法人成りの前後で許可をどう扱うかは法人成りで建設業許可は引き継げる?、個人のまま取るか法人化してから取るかの判断は個人事業主の建設業許可、一人親方の立場からの整理は一人親方が建設業許可を取るにはをご覧ください。

3-2. 営業所技術者——大工工事業は資格ルートの「幅」が独特

営業所技術者を満たすルートは、①資格ルート(大工工事業に対応する資格を持つ人を置く→4章)と②実務経験ルート(大工工事の実務経験を書類で証明する→5章)の2つです。

大工工事業のルート構成には、他業種にない特徴があります。

  • 木造建築士建築大工技能士は、29業種のうち大工工事業だけで使えます(手引 PDF p.163・p.164)。
  • 一方で、技術士法の資格は1区分も使えません(手引 PDF p.163)。
  • 建設機械施工管理技士・土木施工管理技士も使えません。使えるのは建築系の施工管理技士です(同)。

つまり、「建築の資格を持っているか」で道が大きく分かれるのが大工工事業です。詳細は次章で表にします。

なお、必要書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧|新規・一般、財産的基礎の500万円と残高証明の実務は建設業許可の財産的要件|500万円・残高証明の準備をご覧ください(財産的基礎の500万円は、§1-4 で扱った請負金額500万円とはまったく別の話ですので混同しないでください)。

4. 営業所技術者になれる資格——大工工事業の対応資格一覧

ここが本記事の中核です。以下は岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)の資格一覧表(PDF p.163〜164)で、大工工事業の列に記号が付されている資格だけを抜き出したものです。

4-0. 表の読み方(手引の凡例)

手引の凡例は、記号3種類の使い分けです(PDF p.164)。は、網掛けで示された指定建設業でも特定許可を取得できる資格。は、特定許可も取得できる資格。は一般許可を取得できる資格で、指定建設業以外の業種であれば指導監督的実務経験があるときは特定許可も取得できる、と括弧書きが添えられています。この凡例と「網掛け=指定建設業」の効き方は、土木一式工事の建設業許可§4-2 が正面から扱っています。

大工工事業は指定建設業ではありません。指定建設業は土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種です(手引 PDF p.11)。凡例の括弧書きのとおり、○の資格でも、指導監督的実務経験があれば特定建設業の許可を取得できる(詳細は §4-7)というのが、この事実の実務上の意味です。

4-1. 建設業法(技術検定)の資格——使えるのは「建築」系だけ

資格コード資格名大工欄の記号追加で必要な実務経験
201級 建築施工管理技士不要(特定建設業の特定営業所技術者にもなれる)
222級 建築施工管理技士(躯体)注記記号なし(追加の実務経験を求める注記は付されていない)
232級 建築施工管理技士(仕上げ)注記記号なし(同上)
212級 建築施工管理技士(建築)○*13合格後5年
2C1級 建築施工管理技士補○*12合格後3年
2D2級 建築施工管理技士補○*13合格後5年

出典:岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)PDF p.163。注記の原文は「*12 合格後3年間の実務経験が必要です(実務経験証明書の添付が必要)。」「*13 合格後5年間の実務経験が必要です(〃)。」です(PDF p.164)。

押さえていただきたい点が3つあります。

  • 土木系は使えません。建設機械施工管理技士(コード11・12)、土木施工管理技士(13〜16)、その技士補(1H・1J・1K・1L)は、いずれも大工工事業の欄が空白です(手引 PDF p.163)。「1級土木施工管理技士がいるから大丈夫」とはなりません。造園・電気工事・管工事・電気通信工事の施工管理技士も同様に使えません。
  • 同じ2級建築施工管理技士でも、種別で扱いが違います。大工工事業の列では、「躯体」種別(コード22)と「仕上げ」種別(コード23)に注記記号が付されていませんが、「建築」種別(コード21)には*13(合格後5年)が付されています(PDF p.163)。「2級建築施工管理技士を持っている」だけでは足りず、合格証明書に記載された種別まで確認しないと判断できません
  • ただし、要件を満たすかどうかは、合格証明書の種別・合格年度と申請内容を突き合わせて個別に判断されます。現物をお手元にご用意のうえご相談ください。

4-2. ★建築士法——木造建築士が使えるのは29業種で大工工事業だけ

資格コード資格名大工欄の記号備考
371級建築士特定建設業の特定営業所技術者にもなれる
382級建築士一般建設業
39木造建築士一般建設業。手引の資格一覧表で、木造建築士に記号が付されているのは29業種中この大工工事業の列だけです

出典:岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)PDF p.163

これは大工工事業だけの特徴です。木造建築士は、資格一覧表の全29業種のうち大工工事業にしか対応していません。逆にいえば、木造建築士を持っている方にとって、建設業許可の営業所技術者として活かせる唯一の業種が大工工事業だということでもあります。

木造住宅を手がける工務店・設計事務所が大工工事業の許可を取ろうとするとき、この事実が申請の組み立てを変えることがあります。実務経験10年の証明に取りかかる前に、社内に木造建築士・2級建築士・1級建築士がいないかを必ず確認してください。いれば、10年分の注文書を集める作業そのものが不要になり得ます。

4-3. ★職業能力開発促進法(技能検定)——建築大工技能士も大工工事業だけ

資格コード資格名大工欄の記号追加で必要な実務経験
71建築大工○*51級=不要/2級=合格後3年(平成15年度以前の合格は1年)
64型枠施工○*5同上

出典:岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)PDF p.164

なお、建築大工に記号が付されているのは、手引の資格一覧表の全29業種のうちこの大工工事業の列だけです。一方、型枠施工は大工工事業ととび・土工・コンクリート工事業の2業種に対応しています(→§2-4)。

技能検定には注記*5 が付されています。職業能力開発促進法による技能検定のうち「2級」については、資格取得後3年間平成15年度以前の合格の場合には1年)の実務経験が必要で、実務経験証明書の添付も要る、という内容です(手引 PDF p.164)。*5 の全体像は、同じ注記がかかる塗装工事業の記事(→§7-4)の §4-2 でも扱っています。

注記*5 の実務的な意味:手引の注記*5 は、技能検定のうち「2級」についてのみ、資格取得後3年間(平成15年度以前の合格の場合は1年)の実務経験を求めています。1級について実務経験を求める記載は手引にありません(*5 の本文が対象を「2級」に限定しているためです。*5 は技能検定全体に係る注記として、資格一覧表の根拠法令欄「職業能力開発促進法〈旧職業訓練法〉(技能検定合格証書)」に付されています)。ベテランの2級技能士であれば、平成15年度以前の合格として短縮規定に該当する可能性がありますので、合格証書の等級と合格年度を現物で確認したうえで、必要年数を個別にご確認ください。

したがって、建築大工・型枠施工の技能士を営業所技術者に据える場合は、等級の確認が先です。1級であれば合格証書だけで足りますが、2級の場合は合格後3年(平成15年度以前の合格なら1年)の実務経験証明書の添付が別途必要になります。

現場叩き上げの大工にとって、建築大工技能士は最も現実的な資格ルートです。「資格は何も持っていない」とお考えの方でも、若い頃に取った技能士の合格証書が見つかれば、10年分の実務経験の証明によらずに要件を満たせるケースがあります。まずは合格証書の有無と等級を確認してください。

4-4. その他(講習修了証)

資格コード資格名大工欄
36登録基幹技能者○*8

この○には注記*8 が付いており、*8 は2つのことを定めています。ひとつは、受講した登録基幹技能者講習の種類によって、要件を満たす者と認められる建設業の種類が変わること。もうひとつは、登録基幹技能者講習修了証の表面に、建設業の種類を明示したうえで「建設業法第26条第1項の主任技術者の要件を満たす者であると認められます」という趣旨の記載があることが必要だということです(手引 PDF p.164)。この*8 の読み方も、前述の塗装工事業の記事 §4-3 が資格コードまで示して扱っています。

つまり、登録基幹技能者であればどれでもよいわけではなく、修了証の表面に「大工工事業について主任技術者の要件を満たす」旨の記載があるかを確認する必要があります。修了証の現物を見ずに判断できない資格です。

4-5. ★大工工事業で「使えない資格」

手引の資格一覧表(PDF p.163)で、大工工事業の欄が空白=使えない主な資格は次のとおりです。

根拠法令資格大工工事業での可否
技術士法技術士の全区分(コード41〜54)✕ 使えない(大工欄は空白)
建設業法建設機械施工管理技士/土木施工管理技士(+各技士補)✕ 使えない
建設業法電気工事施工管理技士/管工事施工管理技士/電気通信工事施工管理技士/造園施工管理技士(+各技士補)✕ 使えない

このほか、電気工事士法・電気事業法・電気通信事業法・水道法・消防法にもとづく資格(電気工事士、電気主任技術者、電気通信主任技術者、給水装置工事主任技術者、消防設備士等)も、いずれも大工工事業の欄は空白です。

したがって大工工事業で営業所技術者を確保するルートは、実質的に①建築系の施工管理技士・技士補 ②建築士(1級・2級・木造) ③建築大工または型枠施工の技能検定 ④登録基幹技能者 ⑤実務経験10年(→5章)の5つになります。

4-6. 学歴による実務経験の短縮——大工工事業の指定学科は「建築学」と「都市工学」

学歴があると、実務経験の必要年数を短縮できます。大工工事業で認められる指定学科は「建築学」と「都市工学」の2つです(手引 PDF p.166)。

学歴必要な実務経験
高等学校・中等教育学校・専修学校の専門課程で指定学科を修了して卒業卒業後5年以上
大学(短期大学を含む)・高等専門学校・専修学校の専門課程(専門士・高度専門士に限る)で指定学科を修了して卒業卒業後3年以上
指定学科なし10年以上(→5章)

(手引 PDF p.9・p.165)

★ここに大工工事業特有の落とし穴があります。手引 PDF p.166 の指定学科の表で、大工工事業に○が付されているのは建築学と都市工学の2つだけで、「土木工学」は含まれていません。塗装工事業など土木工学が指定学科に含まれる業種とは扱いが違います。

つまり、工業高校の建築科なら5年に短縮できますが、土木科では短縮できません。「工業高校を出ているから5年でいい」という思い込みで準備を進めると、途中で10年ルートへの切り替えが必要になります。卒業証明書を取り寄せる前に、学科名を確認してください。

なお手引は、指定学科について「ここに掲げる学科と同一名称でなくとも、その内容又は実態がここに掲げる学科と同程度のものであれば構いません」と補足しています(PDF p.166)。学科名が完全一致しない場合でも、諦める前にご相談ください。

学歴+実務経験のルートを使う場合は、卒業証明書(原本)の添付が必要です(原則として卒業証書の写しは不可/手引 PDF p.83)。

4-7. 特定建設業を取る場合(大工工事業は指定建設業ではない)

元請として、発注者から直接請け負う建設工事につき下請代金の額(下請契約が2以上あるときはその総額)が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)となる下請契約を締結して施工する場合は、特定建設業の許可が必要です(手引 PDF p.10〜11/金額はいずれも税込で、元請負人が提供する材料等の価格は含めません)。

大工工事業は指定建設業ではないため、特定営業所技術者は次の2つのどちらかで満たせます(手引 PDF p.11)。手引が「② 指定建設業以外の業種の場合」として挙げるのは、ア=1級の国家資格者または技術士であること、イ=一般建設業の営業所技術者等になれる資格要件を満たしたうえで、許可を取ろうとする業種について、発注者から直接請け負った請負代金4,500万円以上の工事に関し、2年以上の指導監督的な実務経験を持つこと、の2ルートです。この「イ」が指定建設業では使えないという対比は、前述の土木一式工事の記事 §3-1 が記事の柱として扱っています。

ここが大工工事業の有利な点です。指定建設業(建築一式・電気・管など)では特定建設業の技術者が1級国家資格者・技術士・大臣認定者に限られ、実務経験では代替できません。しかし大工工事業では「イ」の指導監督的実務経験2年のルートが使えます。この経験は元請として発注者から直接請け負った4,500万円以上の工事について証明するもので、下請工事の経験では要件を満たしません。

4-8. ★「社長=棟梁」の会社がいちばん詰まるところ——営業所技術者の専任性

大工工事業の相談で、資格の話が片付いた直後に必ず出てくるのが「その資格を持っているのは社長本人(棟梁)だが、現場にも出たい」という問題です。少人数の工務店・大工工事業者では、営業所技術者になれる資格や経験を持つ人が、そのまま現場の主戦力であるのが普通だからです。

前提として、営業所技術者は専任——手引の定義では「その営業所に常勤して専らその職務に従事すること」——でなければなりません(手引 PDF p.8)。一方、工事現場には主任技術者を配置する義務があり、税込4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上の公共性のある工作物の工事では、主任技術者はその工事現場ごとに専任の者でなければならないとされています(手引 PDF p.21)。

そして岡山県の「審査要領」(令和7年9月1日)には、この2つがぶつかったときにどう扱われるかが明記されています。工事経歴書の提出時に、配置技術者について次の3類型の違反が確認された場合、業務改善報告書を徴した上で申請等を受け付けるという運用です(審査要領 PDF p.7)。①技術者の専任が必要な工事(法第26条第3項)に営業所技術者等を配置していた場合、②専任が必要な工事に配置している技術者を、その工期内に他の工事にも技術者として配置していた場合、③営業所技術者等を、隣接県を超える遠方の工事に技術者として配置していた場合——の3つです。この運用と手引の常勤規定を組み合わせた整理は、前掲の「建築一式工事の建設業許可」§7-1 に置いています。

つまり、営業所技術者を、専任が必要な工事の現場技術者として配置することは想定されていません。しかも③のとおり、隣接県を超える遠方の工事に営業所技術者を出すこと自体が指摘の対象になります。これは許可の取得時だけでなく、取得後に毎年提出する工事経歴書でチェックされ続ける点が重要です。

実務上の意味:大工工事業で許可を取るときは、「誰を営業所技術者に据えるか」を資格の有無だけで決めないでください。棟梁1人に資格が集中している会社では、①若手に建築大工技能士を取らせて資格者を増やす ②実務経験10年ルートで別の人を営業所技術者に立て、棟梁は現場に専念する——といった組み立てを申請の前段階で設計しておく必要があります。許可を取った後に「現場に出せない」と気づくと、体制の組み直しになります。答えは会社の人員構成によって変わりますので、無料相談で実情をお聞かせください。

なお、配置技術者は申請(届出)のあった建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係を有していなければならないとされています(審査要領 PDF p.7)。応援・常用で人を融通し合う慣行のある大工工事業では、ここも確認が必要な論点です。

5. 実務経験ルートの証明と通算ルール

資格がない場合、大工工事業について10年以上の実務経験があれば営業所技術者の要件を満たします(手引 PDF p.9 ⑤)。証明の考え方そのものは業種共通ですので、より詳しい全体像は営業所技術者(旧:専任技術者)の実務経験10年を証明する方法をご覧ください。本章では、大工工事業の申請で実際に問題になるルールに絞って整理します。

5-1. 何で証明するのか——「経験があった」では通らない

実務経験は、実務経験証明書(様式第9号)に工事ごとに記載して証明します。その記載内容は、工事請負契約書の原本、または注文書の原本及び請書の写し等にもとづくものでなければならず、後日行う県民局調査で原本等を確認されます(手引 PDF p.83)。

手引はさらに踏み込んで、実務経験証明書に書いた工事については、申請書・届出書の受付後に別途行われる調査の場で、契約書の原本、または注文書の原本と請書の写し等を提示して工事内容の確認を受けることになる、としています。そして、これらが揃わなければ実務を経験したこと自体を証明できず、営業所技術者(手引の原文では「専任技術者」)になることはできないと明記しています(手引 PDF p.165)。この後日調査の重さと業種ごとの事情は、前述の土木一式工事の記事 §5-1 が詳しく扱っています。

大工工事は、元請の工務店から口頭で依頼され、請求書だけで完結している取引が今なお多い分野です。「10年どころか30年やっている」ことと、「10年分を書類で証明できる」ことは別問題だと考えてください。

なお「実務経験」の範囲は広く取られています。手引は、施工を指揮・監督した経験や実際に施工に携わった経験はもちろん、これらの技術を習得するためにした見習中の技術的経験も含まれるとしています(PDF p.82)。ただし建設工事の雑務のみの経験は含まれません(同)。若い頃の見習期間も算入できる可能性があるということです。

また、実務経験年数は雇用されて工事に従事していることを確認するため、原則として社会保険加入期間の年月を記入します。社会保険未加入期間がある場合は、出勤簿・賃金台帳・源泉徴収票・所得証明書の写しなど、雇用されていたことが分かる書類の提示が必要です(手引 PDF p.82)。

5-2. 期間の通算ルール——空白が「3か月」か「4か月」かで結果が変わる

実務経験の期間計算には、明確なルールがあります。

実務経験期間は、記載された工事の工期と次の工期の間の空白期間が3か月以内であれば、実務経験は継続しているとみなします。一方、空白期間が4か月以上の場合、当該期間を控除して指定年数を計算します

(手引 PDF p.83)

このルールは大工工事業で強く効きます。大工工事は、木造住宅の建て方・造作といった案件が断続的に入る働き方になりやすく、繁忙期と閑散期の差も大きい分野です。工期と工期の間が4か月以上空いた回数が多ければ、暦の上では12年でも、控除後の年数が10年に届かないということが起こり得ます。

対策は、空白期間を埋める工事を追加で洗い出すことです。記載枠が足りない場合は複数枚作成すればよいとされています(手引 PDF p.83)。まずは残っている注文書・請書・契約書をすべて時系列に並べ、4か月以上の穴がどこにあるかを可視化するところから始めてください。

5-3. 誰が証明するのか——自分で自分を証明することはできない

実務経験の証明は、その経験を積んでいた当時の使用者(法人または個人事業主)が行うのが原則です。倒産・死亡等でその使用者から証明を受けられないときは、当時から営業を行っている同業他者2者の証明を取得することになります。ただし、その2者証明があっても、工事請負契約書等の書類確認ができなければ許可を取得することはできません。証明を頼む同業他社には、継続的に建設業を営んでいることが求められる一方で、許可の有無や営業している業種に制限はありません。そして、個人事業主が自分自身を証明することはできず、法人成りの場合も法人設立より前の期間については証明能力がないため、やはり同業他者2者の証明が要ります(以上いずれも手引 PDF p.82)。この証明主体まわりのルールは、防水工事業の建設業許可|要件・対応資格と実務経験§5-3 がまとめて扱っています。

一人親方から法人成りした大工の方が、ここでつまずきます。「20年間、自分で仕事を取ってきた」経験を、自分自身では証明できないからです。当時仕事を出してくれていた工務店に証明を依頼するか、それが難しければ当時から営業している同業他者2者からの証明を取ることになります。

証明を依頼する相手に許可の有無や業種の制限はありませんが、当時の工事の実態を把握している相手である必要があります。そして2者の証明があっても、工事請負契約書等の書類確認ができなければ許可は取得できません(同)。書類が先、証明が後です。

5-4. ★大工は「実務経験の振替」が使える数少ない業種

大工工事業には、他の多くの業種にない大きな救済ルートがあります。実務経験の振替(実務経験要件の緩和)です。

(2)実務経験要件緩和を認める業種の範囲

① 一式工事から専門工事への実務経験の振替えを認める場合

 建築一式 → 大工、屋根、内装仕上、ガラス、防水、熱絶縁、解体

 注) 矢印の方向にのみ振り替え可となります。右側の業種間での振替えはできません。

② 専門工事間での実務経験の振替えを認める場合

 大工 ←→ 内装仕上

 とび・土工 ←→ 解体

 注) 両方向に向かって振替え可となります。

(手引 PDF p.167)

大工工事業は、①と②の両方に登場する唯一の業種です。

  • 建築一式工事の実務経験を、大工工事業の実務経験に振り替えられます(一方向)。
  • 大工工事業と内装仕上工事業は、相互に振り替えられます(両方向)。

振替を使う場合の必要年数は、手引の「(3)実務経験要件の緩和年数」に定めがあります。営業所技術者等になろうとする業種での実務経験と、その他の業種での実務経験とを合わせて12年以上持っていること。加えて、営業所専任技術者になろうとする業種については、最低条件としてそれぞれ8年を超える実務経験があること。この2つを満たせば、営業所技術者等となる資格を有することができるとされています(手引 PDF p.167)。この年数ルールの位置づけは、前掲の「建築一式工事の建設業許可」§5-5 が扱っています。

手引が示している短縮効果の例は次のとおりです(PDF p.167)。

パターン通常必要な年数振替を使った場合短縮効果
一式工事 → 専門工事(例:建築一式 → 大工20年(10年+10年)18年(一式10年+専門8年)最大2年
専門工事間(大工 ←→ 内装仕上20年(10年+10年)16年(大工8年+内装仕上8年)最大4年

つまり、大工工事業と内装仕上工事業をそれぞれ8年ずつ経験した人は、合計16年で2業種の営業所技術者になれるという計算です。これは全業種の振替パターンの中でも最大の短縮効果(4年)にあたります。

★ただし、重要な制限が2つあります。

  1. 振替が使えるのは「10年以上の実務経験」(建設業法第7条第2号ロ該当)のルートだけです。学歴+実務経験(同条第2号イ該当)の場合には認められません(手引 PDF p.167)。指定学科を出ていて5年・3年ルートを使う方は、振替の対象外です。
  2. 振替を使った場合、営業所技術者等の有資格区分コードは「99」になります(同)。通常の実務経験10年(コード「4」)とは別枠の扱いです。

実務上の意味:大工と内装仕上の両方をやってきた職人は、日本の住宅工事では珍しくありません。「大工8年・内装仕上8年」で通算16年という組み立てができれば、どちらか一方で20年を待つ必要はありません。§2-2 で見たとおり、この2業種は工事の内容も定義文も重なっており、実際の職歴が両業種にまたがっている方ほど、この振替の恩恵が大きいということになります。ご自身の職歴が振替に当たるかは、工事の内訳を見ないと判断できませんので、無料相談でご確認ください。

内装仕上工事業側の要件は内装仕上工事業の建設業許可をご覧ください。

5-5. 業種ごとに期間は重複できない

振替の話と混同されやすいので、原則も確認しておきます。

申請業種ごとに分けて作成してください。一人が複数の業種をいずれも実務経験で担当する場合、担当する期間の重複は認められません。例えば、資格を有しない者が2業種を担当する場合、業種ごとに10年間、合計20年間の経験を証明する必要があります。

(手引 PDF p.82)

同じ期間を2業種に二重計上することはできません。§5-4 の振替は、この原則の上に置かれた例外的な緩和です(合計12年以上・それぞれ8年超)。「大工も内装も同時にやっていたから、10年で2業種取れる」ということにはなりません。

5-6. 実務経験の証明で、最初にやるべき3つの確認

大工工事業で実務経験ルートを検討する前に、まず次の3つを確認することをおすすめします。

  1. 社内の資格の棚卸し——建築士(1級・2級・木造)、建築施工管理技士(種別まで)、建築大工・型枠施工の技能検定、登録基幹技能者。ひとつでも当たれば、10年分の書類集めは不要になり得ます(→4章)。ただし2級の技能士(建築大工・型枠施工)は、合格後3年(平成15年度以前の合格は1年)の実務経験証明が別途必要です(→§4-3)。また2級建築施工管理技士の「建築」種別・技士補にも追加の実務経験年数があります(→§4-1)。
  2. 学歴の確認——高校・専修学校・大学の建築学または都市工学の指定学科なら、5年または3年に短縮できます(→§4-6)。土木科は対象外である点にご注意ください。
  3. 注文書・請書・契約書の時系列並べ——4か月以上の空白がどこにあるか、証明者は誰になるかを先に把握します(→§5-2・§5-3)。大工・内装仕上の両方の職歴がある方は、振替(→§5-4)の可否もここで判断できます。

この3つが分かれば、必要な作業量と期間の見通しが立ちます。

6. 岡山県での手続き——提出先・営業所調査・費用と期間

ここからは、岡山県で実際に申請する場合の手続きです。大工工事業に限らず全業種に共通しますが、岡山県特有の運用が複数あります。

6-1. 申請書の提出先は「県庁6階」の一元窓口

まず、最も誤解されている点です。建設業許可の申請書・変更届は、県民局では受け付けていません。

岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)

〒700-8570 岡山市北区内山下2-4-6/直通 086-226-7463

窓口受付時間 9:00〜11:30、13:00〜16:30(閉庁日を除く)

郵送での提出も受付(送付先は同じ)

手引には「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記されています(PDF p.168)。倉敷市・津山市など県庁から距離のある地域の事業者にとっては、郵送が現実的な選択肢になります。

そして、岡山県の運用で最も重要なのが次の一文です。

事前審査は一切行いません。正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。

(手引 PDF p.16)

つまり、「窓口で相談しながら少しずつ整えていく」ことができません(加えて11:30〜13:00と16:30以降は窓口を閉じるとともに審査を休止し、原則として審査の途中であっても窓口閉鎖の時刻で審査は終了します/PDF p.16)。大工工事業のように業種区分の判断と実務経験の証明という2つの論点を同時に抱える申請では、この運用が実際の負担として効いてきます。

6-2. 県民局が担うのは「営業所調査」

申請そのものは本庁一元ですが、営業所調査は所轄の県民局が担当します。手引は「営業所調査については、許可申請受付後、半月程度で所轄の県民局から実施の連絡を行います」としています(PDF p.17)。担当するのは営業所の所在地を所轄する県民局建設部(備前・備中・美作の3県民局)で(PDF p.168)、岡山市は備前県民局、倉敷市は備中県民局です。市町村ごとの担当区域と地域別の進め方は岡山市で建設業許可を取るには倉敷市で建設業許可を取るにはをご覧ください。

なお、営業所調査が早く終わったからといって許可が早く出るわけではありません。本庁の調査は別途進行しているためです(手引 PDF p.16)。

6-3. 営業所調査で確認されるもの

確認項目は経管の経験・常勤性・財務内容まで多岐にわたりますが(手引 PDF p.17〜19)、大工工事業の申請で実際に詰まるのは次の2点です。

確認項目確認されるもの大工工事業で詰まる理由
営業所の所在看板(容易に確認できるもの)、机、電話及びファクシミリ、営業所の賃貸借契約書(原本)自宅の一室や作業場(加工場)の隅を事務所にしている形態が多く、看板とFAXが未整備のことが多い
営業所技術者の実務経験様式第9号に記入した工事の請負契約書(原本)又は注文書(原本)+請書(写し)元請の工務店から口頭で受けて請求書だけで完結していた場合、記載した工事の原本が出せない

そして手引は、はっきりこう書いています。

※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません。

(手引 PDF p.17)

大工工事業で特に注意していただきたいのが、営業所そのものの要件です。手引は「営業所は居住部分と共用することはできません」「賃貸借契約を締結している場合には、契約書上で営業活動に利用することが認められていることが必要です」と定めています(PDF p.17)。自宅の一室や、加工場の一角を事務所にしている形態では、ここで引っかかることがあります。看板・机・電話・FAXという物理的な備えも、調査当日までに整えてください。

6-4. 費用と期間

項目金額・期間
岡山県知事許可・新規(許可換え新規・般特新規を含む)の法定手数料90,000円
岡山県知事許可・更新/業種追加法定手数料50,000円
当事務所の報酬(法人・新規)132,000円(税込目安)/合計 222,000円
当事務所の報酬(業種追加=既存許可に大工工事業を足す)55,000円(税込目安)/合計 105,000円
申請受付から許可まで特に問題がないケースで概ね2か月程度

(法定手数料の出典:手引 PDF p.14/期間の出典:手引 PDF p.16)

※ 当事務所の報酬額はいずれも税込の目安です。業種数・営業所数・実務経験証明の分量など案件内容により変動します。正確な金額は事前にお見積りをお出ししたうえで着手しますので、まずは無料相談でご確認ください。証明書等の取得実費は別途必要です。

法定手数料について、実務で誤解されやすい点を2つ補足します。

  • 法定手数料は、申請する業種の数と関係ありません。大工工事業1業種でも、大工+内装仕上+建具の3業種でも、新規なら90,000円です(手引 PDF p.14)。
  • 納付は「岡山県手数料等(POS)納付連絡票」を印刷して収納専用窓口で支払い、納付済証を様式第1号 別紙三に貼付する方式です(手引 PDF p.14)。必ず岡山県の最新の手引でご確認ください(本記事は令和7年9月1日改訂版にもとづいています)。

費用の詳しい内訳と条件別の総額は建設業許可の費用はいくら?にまとめています(料金表はこちらに一本化しています)。行政書士報酬の考え方・見積書の読み方は建設業許可を行政書士に依頼する費用相場をご覧ください。

なお、「標準処理期間◯日」と断定できる記載は手引にありません。手引にあるのは「特に問題がないケースで概ね2か月程度かかります」という記述です(PDF p.16)。そしてこの2か月は申請を受け付けてもらってからの期間ですので、実際にはここに書類収集の期間が加わります。とくに実務経験10年ルートでは、必要な期間は書類がどれだけ残っているかで大きく変わります。「元請から◯月までに許可を」と期日が決まっている場合は、逆算のためにも早い段階でご相談ください。

7. 許可のその先——木造住宅・公共工事・毎年の維持管理

7-1. 大工工事業の許可が「元請への転換」の入口になる

大工工事業の許可取得は、下請として木工事を請け負う立場から、元請として住宅一棟を請け負う立場へ移行する過程で検討されることが多い許可です。

ここで押さえておきたいのが、§2-1 で見た構造です。元請として住宅一棟を総合的な企画・指導・調整のもとに建設するなら、それは建築一式工事の領域になります(手引 PDF p.162)。つまり、事業の伸ばし方によっては、大工工事業だけでなく建築一式工事(建築工事業)の許可も視野に入るということです。建築一式側の要件・一棟請けの範囲・実務経験の考え方は建築一式工事の建設業許可をご覧ください。

逆に、建築一式工事の許可だけを取っても、税込500万円以上の大工工事を請け負うには大工工事業の許可が別に必要です(手引 PDF p.162)。どちらを先に取るか、両方取るかは、今後3年でどういう受注構成にしたいかによって答えが変わります。この設計は、申請の前に一度整理しておく価値があります。

なお、業種を追加する場合の法定手数料は50,000円で、業種の数によって金額は変わりません(手引 PDF p.14)。新規申請の時点で必要な業種をまとめて申請するほうが、後から追加するより費用の総額は抑えられます。すでに許可をお持ちの方が大工工事業を足す場合の手続きと要件は建設業許可の業種追加とは、その費用と期間は業種追加にかかる費用をご覧ください。

7-2. 取引先要求がきっかけの場合

大工工事業で許可取得のきっかけとして多いのが、取引先からの要求です。1件500万円未満の工事しかしていなくても、「協力会社として登録するには建設業許可が必要」「取引口座の開設条件になっている」と言われるケースが増えています。この文脈での進め方は元請から建設業許可を求められたら|下請が取る手順ゼネコンの協力会社になるには|取引口座開設と建設業許可をご覧ください。

すでに税込500万円以上の大工工事を無許可で受注してしまっている場合の整理は、無許可で500万円以上を受注してしまったら|今すぐ取るべき対処をご覧ください。

7-3. 公共工事に進む場合

公共工事の入札に参加したい場合、許可は出発点にすぎません。手引は明確で、許可を受けた業者が公共工事の入札に参加するには、経営事項審査を受審することと、その公共事業を発注する自治体の入札参加資格を得ることの両方が必要だとしています(手引 PDF p.24)。

岡山県内では、公営住宅や学校施設などの改修工事で木工事が発生します。その順番と逆算は公共工事に入りたい|建設業許可が入札参加への第一歩、経審そのものは経審申請を岡山で依頼するならをご覧ください。

7-4. 実務経験10年で取った許可ほど、更新切れの代償が大きい

建設業許可は取って終わりではありません。有効期間は許可日から5年間で、毎年の事業年度終了報告(決算変更届)と5年ごとの更新が続きます(手引 PDF p.21〜23)。

大工工事業で特に強調しておきたいのは、実務経験10年ルート(または振替の12年ルート)で取った許可ほど、更新切れの代償が大きいという点です。更新申請をせずに有効期間が満了すると、改めて新規に許可を取り直すことになり(手引 PDF p.21)、法定手数料が50,000円から90,000円に上がるだけでなく、10年分(または12年分)の実務経験の証明を最初からやり直すことになります。5年前には残っていた注文書の原本が、5年後にも残っているとは限りません。5章で苦労して組み立てた証明を、ゼロから再現できるかという問題です。

また、営業所技術者が退職して後任者がいない場合、その許可は要件の欠如として取り消されます(建設業法第29条第1項第1号/手引 PDF p.8)。棟梁1人に資格が集中している会社ほど、この点のリスク管理が要ります。

当事務所では、毎年の決算変更届・5年ごとの更新・経審・入札参加資格の更新までをまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。期限管理を含めて定額でお任せいただくほうが、結果的に負担が軽くなるケースが多くあります。

他の業種の許可については建築一式工事内装仕上工事業とび・土工工事業塗装工事業管工事業電気工事業解体工事業の各記事をご覧ください。どの業種を取るべきか迷う場合は建設業許可29業種の一覧と選び方から確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q木造建築士を持っています。大工工事業の営業所技術者になれますか?
A岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)の資格一覧表では、木造建築士(資格コード39)の欄に記号が付されているのは29業種中、大工工事業の列だけです(PDF p.163)。したがって木造建築士は、大工工事業の一般建設業の営業所技術者として位置づけられています。1級建築士(コード37)は◎で特定建設業の特定営業所技術者にもなれ、2級建築士(コード38)は○です。いずれも免許証の原本を営業所調査で確認されますので、現物をご用意のうえご相談ください。
Q型枠工事は大工工事業ですか、それともとび・土工工事業ですか?
A手引の業種区分表では、「型枠工事」は大工工事の例示に挙げられています(PDF p.158)。一方、とび・土工・コンクリート工事の例示はイ〜ホの5区分(足場・とび、くい、土工、コンクリート、その他基礎的ないしは準備的工事)にわたりますが、そのいずれにも「型枠工事」は含まれていません(同)。また技能検定の「型枠施工」(資格コード64)は、資格一覧表で大工工事業ととび・土工・コンクリート工事業の2業種に対応しています(PDF p.164)。もっとも、現場では型枠と配筋・打設がひと続きの契約になることも多く、実際の該当性は契約の内訳と工事の実態で判断されます。判断に迷う場合は、工事台帳・現場写真等を示して個別に岡山県土木部監理課建設業班へ相談するルートが手引に明記されています(PDF p.162)。
Q大工と内装仕上の経験が8年ずつあります。10年に満たなくても許可は取れますか?
A手引は、大工工事業と内装仕上工事業の間では実務経験の振替が両方向に認められるとしています(PDF p.167)。営業所技術者等となろうとする業種での実務経験とその他の業種での実務経験を合わせて12年以上(それぞれの業種について最低8年を超える実務経験が必要)あれば、営業所技術者等となる資格を有することができるとされ、手引は「大工8年+内装仕上8年=16年で2業種」という短縮効果の例を示しています。ただし、この緩和が使えるのは10年以上の実務経験(建設業法第7条第2号ロ該当)のルートだけで、学歴+実務経験(同条第2号イ該当)の場合は認められません(同)。年数の充足は工事の内訳と書類の残り方で判断が分かれますので、個別にご確認ください。
Q一人親方として20年大工をしてきました。実務経験10年は自分で証明できますか?
Aご自身で証明することはできません。手引には「個人事業主は自分自身を証明することはできず、法人成の場合も法人設立以前のことについては証明能力がないため、同業他者の2者による証明が必要です」と明記されています(PDF p.82)。その2者の証明があっても、工事請負契約書等の書類確認ができなければ許可は取得できません。証明を依頼する同業他者に許可の有無や営業業種の制限はありませんが、当時の工事の実態を把握している相手である必要があります。あわせて、実務経験期間は工期と工期の間の空白が4か月以上あればその期間が控除される点にもご注意ください(PDF p.83)。
Q建築一式工事の許可を持っています。大工工事業の許可も必要ですか?
A税込500万円以上の大工工事を請け負うのであれば、必要です。手引は「建築一式工事(建築工事業)の許可を有していても、建築系の各専門工事(500万円以上)の施工に当たっては、各専門工事の許可が必要です」と明記しています(PDF p.162)。一式工事は「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」であり、個別の専門工事として施工が可能な工事は各専門工事に該当します(同)。なお、業種追加の法定手数料は50,000円で、申請する業種の数によって金額は変わりません(PDF p.14)。将来的に必要になる業種が見えているなら、まとめて申請するほうが総額は抑えられます。

まとめ

大工工事業の建設業許可で、他業種と違う対応が必要になるポイントを改めて整理します。

  1. 大工工事の範囲は「木材の加工又は取付け」。例示は大工工事・型枠工事・造作工事の3つで、型枠工事も大工工事業の領域です(手引 PDF p.158)。
  2. 区分の答えが手引に書かれていない。大工工事の「区分の考え方」欄は空欄(-)であり、内装仕上・建具・建築一式との境界を直接論じた注記が存在しません(手引 PDF p.158)。だからこそ誤認が起きます。
  3. ★岡山県は「一式工事として計上されている例が多い」業種として大工を名指ししています(手引 PDF p.49)。元請から木工事の部分だけを請け負うなら、それは建築一式ではなく大工工事です。建築一式の許可があっても、税込500万円以上の大工工事には大工工事業の許可が別に必要です(PDF p.162)。
  4. ★木造建築士と建築大工技能士は、29業種のうち大工工事業だけで使えます(手引 PDF p.163・p.164)。10年分の書類集めに取りかかる前に、社内の資格を棚卸ししてください。ただし技能検定の「2級」(建築大工・型枠施工)は、合格後3年(平成15年度以前の合格は1年)の実務経験証明が別途必要です(手引 PDF p.164 注記*5)。
  5. 技術士も土木施工管理技士も使えません。大工工事業で使えるのは建築系の施工管理技士・技士補、建築士、建築大工/型枠施工の技能検定、登録基幹技能者です(手引 PDF p.163〜164)。
  6. 指定学科は「建築学」と「都市工学」の2つで、土木工学は含まれません(手引 PDF p.166)。工業高校の建築科なら5年に短縮できますが、土木科では短縮できません。
  7. ★大工工事業は実務経験の振替が使える数少ない業種です。建築一式→大工(一方向)、大工⇔内装仕上(両方向)。合計12年以上・それぞれ8年超で、大工8年+内装仕上8年=16年で2業種という組み立てが可能です(手引 PDF p.167)。ただし学歴+実務経験のルートでは使えません
  8. 通算ルールは厳密です。工期の間の空白が4か月以上あればその期間は控除され、個人事業主は自分自身を証明できません(手引 PDF p.82〜83)。
  9. 「誰を営業所技術者に据えるか」を資格の有無だけで決めない。営業所技術者は専任であり、岡山県の審査要領は専任が必要な工事に営業所技術者を配置していた場合等を業務改善報告書の対象としています(審査要領 PDF p.7)。棟梁1人に資格が集中している会社ほど、申請前の体制設計が要ります。なお大工工事業は指定建設業ではないため、特定建設業では指導監督的実務経験2年のルートが使えます(手引 PDF p.11)。

そして最も申し上げたいのは、まず資格と学歴を確認してくださいということです。木造建築士の免許証が1枚あるだけで、あるいは若い頃に取った建築大工の合格証書が1枚出てくるだけで、必要な作業量がまったく変わることがあります。

「うちの工事は大工工事業でいいのか、内装仕上も要るのか」「棟梁の資格で営業所技術者を満たせるか」「大工と内装の経験を合わせて16年で足りるのか」——こうしたご相談は、無料相談で個別に整理できます。

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