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経営業務の管理責任者がいない|外部招へい・補佐者体制の3ルート【岡山】

経営業務の管理責任者がいない|外部招へい・補佐者体制の3ルート【岡山】

建設業許可のご相談で、しばしば聞く「詰まり方」がこれです。

「営業所技術者(旧:専任技術者)はうちの職人で満たせそうだが、経営業務の管理責任者(経管)になれる人がいない」。

結論から言えば、経管が社内にいないからといって、そこで許可申請が終わるわけではありません。打ち手は大きく3つあります。

  1. 社内・身内に埋もれている経験を掘り起こす(過去の役員経験/個人事業主だった期間/執行役員などの「準ずる地位」/親族が事業主を補佐していた期間)
  2. 外部から、建設業の経営経験を持つ人を常勤役員として招へいする
  3. 令和2年10月改正で整備された「常勤役員等+その人を直接に補佐する者」という体制で満たす(建設業法施行規則第7条第1号ロ)

一方で、やってはいけない打ち手も1つはっきりしています。名義貸し(名前だけ役員に載せて実際には勤務しない形)です。 岡山県は審査要領のなかで、名義貸しによる虚偽申請を防ぐための具体的な運用(報酬額の下限、常勤性の確認方法、事後に発覚した場合の取扱い)を明文化しています。ここは「グレーで押し切る」余地がない領域です。

本記事では、岡山県で建設業に特化する行政書士が、3つの打開ルートの中身と、岡山県の実際の審査運用で何がどこまで確認されるのかを整理します。経管そのものの基本要件・経験年数・証明書類の基礎は経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法にまとめています。

※ 経管(常勤役員等)の要件充足は、事業者ごとの経歴・組織・書類の残り方という個別の実態によって判断が分かれます。本記事は岡山県知事許可・一般建設業を前提とした一般的な整理であり、特定の会社について結論を保証するものではありません。最終判断は有資格者(行政書士)または岡山県の担当窓口にご確認ください。

1. まず確認:本当に「いない」のか、要件を狭く読んでいるだけか

ご相談のなかには、「経管がいない」と思い込んでいたものの、実は候補者を見落としていたというケースがあります。よくある誤解を先に潰しておきます。

誤解①「代表者本人でなければならない」

岡山県の手引では、常勤役員等とは「法人の場合は常勤の役員、個人の場合はその者又は支配人」と定義されています(手引 PDF p.7・※1)。代表取締役である必要はありません。 常勤の取締役であれば、代表者以外でも経管になり得ます。「社長の自分に経営経験がないから無理だ」と諦める前に、他の常勤役員、あるいは役員に迎え入れられる人がいないかを検討する価値があります。

誤解②「今の会社での経験でなければならない」

経管の経験は、自社での経験に限られません。手引が例示しているのは「建設業を営業していた法人の常勤の役員(取締役・理事等)、個人事業主、令3条の使用人(支店長等従たる営業所の代表者、個人事業主の支配人等)の経験」です(手引 PDF p.7・※2)。前職の建設会社で取締役だった、以前は個人事業主として建設業を営んでいた、前の会社で支店長として営業所を任されていた——いずれも候補になります。

誤解③「取締役として登記されていた期間しか数えられない」

これも違います。「経営業務の管理責任者に準ずる地位」という枠があり、執行役員等の立場での経験や、経管を補佐していた立場での経験も、条件を満たせば認められます(手引 PDF p.7・イ(2)(3))。

誤解④「現場一筋だったから経営経験はない」

これは逆に正しい注意点です。経管に必要なのは施工経験ではなく、事業の経営に携わった経験です。ここは楽観できません。

一方で、手引の要件は「建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験」と規定されており、業種の限定は付されていません(手引 PDF p.7)。とび・土工でも塗装でも、建設業の経営経験であること自体は明文上の要件を満たします。ただし個別の判断は岡山県土木部監理課建設業班の確認が必要です。営業所技術者の実務経験が業種ごとに必要とされている点とは、条文の書きぶりが異なります。

チェックの起点:まずは「①現在の常勤役員全員」「②これから常勤役員に迎えられる身内・知人」「③過去に自社で執行役員・部長級だった人」の3つの母集団を、紙に書き出すところから始めてください。ここを丁寧にやるかどうかで、外部招へいという重いカードを切らずに済むかが決まります。

2. ルート①|社内・身内に埋もれた経験を掘り起こす

経管の経験の入口は、手引が掲げるイ(1)(2)(3)の3類型です(手引 PDF p.7-8)。このうちイ(3)には、岡山県が審査要領で詳細な認定基準を定める「親族が個人事業主を補佐していた期間」という実務上きわめて重要な枝があるため、本記事では便宜上これを入口Dとして分けて解説します(審査要領 PDF p.12-13)。いずれにせよ、「5年の役員経験」だけが道ではありません。

2-1. 入口A:前職の支店長・営業所長(令3条の使用人)という見落とし

イ(1)は「建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験」で、標準ルートです。対象となるのは、建設業を営業していた法人の常勤の役員(取締役・理事等)個人事業主令3条の使用人の経験です(手引 PDF p.7・※2)。要件の一般的な解説は経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法に譲ります。

「いない」と詰まっている会社で拾い直す価値があるのは、3つ目の令3条の使用人です。建設業法施行令第3条に規定する使用人とは、「支配人及び支店又は常時建設工事の請負契約を締結する営業所の代表者(支配人である者を除く。)」を指します(手引 PDF p.87)。前職で支店長・営業所長として契約締結権限を持っていた人は、取締役として登記されたことが一度もなくても、この入口に入る可能性があります。

問題は「契約締結権限があったか」をどう確認するかです。本人の記憶では足りません。掘り起こしの段階で、当時の組織図(支店・営業所の代表者だったと読み取れるか)、辞令・人事発令書、そして当時の契約書・注文書の署名者欄——この3点が手元にあるか、前職から取得できそうかを先に見てください。

とりわけ重いのが3点目です。「支店長という肩書きはあったが、契約はすべて本社決裁だった」というケースでは、令3条の使用人には当たりません。 肩書きではなく、対外的に契約を締結する立場だったかどうかが分かれ目です。

2-2. 入口B:経営業務の管理責任者に準ずる地位で5年以上(イ(2)=執行役員型)

条文上は「建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として5年以上経営業務を管理した経験を有する者」です(手引 PDF p.7)。いわゆる執行役員型です。

岡山県の審査要領は、このルートで確認される書類を具体的に列挙しています(審査要領 PDF p.14/書類名は11章の現存確認シート)。工事実績については提示・提出の密度まで指定されており、年4件程度(四半期に1件以上で工期の終期と始期の間が4か月以上空かないこと)の原本を提示し、そのうち年1件程度の写しを提出する運用です。イ(3)の補佐経験(後述の入口C)にも同じ注記があります(審査要領 PDF p.15)。

実務的な壁になるのは「取締役会の決議」の証跡です。中小企業では執行役員を「肩書きだけ」で運用しているケースが多く、規程も議事録も残っていないことが珍しくありません。このルートを狙うなら、当時の規程・議事録・人事発令書が現存しているかを最初に確認してください。書類が残っていなければ、経験の実態があっても立証できません。

2-3. 入口C:準ずる地位で6年以上、経管を補佐した経験(イ(3)=補佐型)

「建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験」です(手引 PDF p.7)。5年ではなく6年である点に注意してください。

手引は、この「補佐」の中身を次のように具体化しています(手引 PDF p.8・※3)。

  • 法人の場合:取締役等に次ぐ地位であって、資金調達、技術者等配置、契約締結等の業務全般に従事した経験があること
  • 個人事業主の場合:事業主を補佐していた親族(事業専従者及びそれに準じる者に限る)で、経営業務を管理した経験があること

法人の場合に確認される書類は、審査要領 PDF p.14-15「(10)経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験(法人)について」に列挙されています(詳細は11章)。なかでも「過去の稟議書」が明示されている点が実務上のポイントです。稟議のかたちで意思決定に関与していた記録が残っている会社では、このルートが現実味を帯びます。

2-4. 入口D:親族が事業主を補佐していた期間(岡山県が詳細な運用を明文化)

事業承継の場面で、もっとも使い出があるのがこの入口です。 「父が個人事業主として長年やってきた。息子である自分は職人として働いてきたが、役員でも事業主でもなかった」——このケースで、息子側の経管就任を認めるための運用を、岡山県は審査要領で細かく定めています(審査要領 PDF p.12-13「(7)個人事業主又は個人事業主補佐としての経験の認定について」)。

条件は次のとおりです。

  1. 建設業を営む個人事業主(元事業主)の親族であること
  2. 常勤性等について、元事業主の税金の申告書に申請する側の氏名が青色事業専従者又は白色事業専従者として明記されている、または給与受給者として明記され支給額が常勤従業者に相当すること。いずれの場合も6年以上元事業主の事業に専ら従事していたことが確認できること
  3. 申告書等から、申請する側が元事業主に次ぐ職制上の地位にあったことが確認できること
  4. 工事の見積、契約の締結、資金の調達、技術者の手配等に関する書類、その他関係者の説明等から、元事業主の事業を補佐していたことが確認できること

提示を求められる資料も明示されています(元事業主の確定申告書6年間分を軸に、親族関係を示すもの、給与受給者の場合の所得証明・決算書/収支内訳書、元事業主が建設業の請負をしていたことが分かる契約書等——詳細は11章の現存確認シートに整理しました)。

さらに、実務で効く3つの補足が置かれています。

  • 元事業主に建設業許可があったかどうかは問わない(建設業の請負をしていたことが確認できればよい)
  • 元事業主が死亡又は廃業した場合以外でも、補佐経験の認定を行う(=親が現役でも使える)
  • 認定できる者は原則として元事業主1名につき1名。ただし、兄弟がほぼ同様の業務で事業主を補佐しており、元事業主の死亡等によりそれぞれ独立しようとする場合などはこの限りではない

なお、これらの確認は申請書を受理する際に行われ、受理後の県民局調査では事業主補佐経験の認定以外の要件調査が行われる、という審査の順序も明記されています(審査要領 PDF p.13)。つまり、6年分の申告書がそろっていなければ、受理の段階で止まる可能性が高いということです。 県民局調査まで進んでから揃えればよい、という順序ではありません。

重要:入口B(イ(2))と入口C(イ(3))での申請・届出については、手引に「事前に建設業班にご相談ください」と明記されています(手引 PDF p.7・注)。この事前相談は、経験の構成方針と提示できる書類を決めたうえで臨まなければ意味がありません。当事務所では、どの入口を狙うかの整理と資料の当たりを付けたうえで、事前相談の内容も含めてご依頼者と一緒に組み立てています。岡山県は事前審査を一切行わない運用ですが(後述)、この2ルートについては例外的に事前相談が求められている、と理解してください。

3. ルート②|外部から常勤役員を招へいする(登記・社会保険・常勤性の実務)

社内を掘っても候補が出ない場合、次の現実解が外部からの招へいです。建設業の経営経験を5年以上持つ人を、常勤の役員として迎えるという方法です。

このルートは「人さえ見つかれば終わり」ではありません。岡山県の審査で確認されるのは、招へいした人が本当にその会社に常勤しているかであり、ここに複数の関門があります。

3-1. 関門1:登記と地位

法人が経管を置く場合、常勤役員等は常勤の役員である必要があります(手引 PDF p.7・※1)。したがって、招へいした人を取締役として登記するのが基本形です。役員変更登記は司法書士の領域であり、登記が完了しなければ許可申請の前提が整いません。ここは許可申請とは別のリードタイムとして見込んでおく必要があります。

なお、建設業法上の「役員等」は、役員(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者)又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し役員と同等以上の支配力を有するものと認められる者と定義されています(建設業法第5条第3号/手引 PDF p.9)。この定義は誠実性・欠格要件の審査対象範囲にも直結します。

3-2. 関門2:欠格要件のチェック(招へい前に必ず)

外部招へいで最も見落とされやすいリスクがここです。 欠格要件は法人本体だけでなく、役員等、支配人、従たる営業所の代表者のうちに該当者がいる場合にも及びます(手引 PDF p.10)。つまり、招へいした役員1人の事情で、会社全体の許可が下りなくなることがあり得ます。

該当し得る事由として手引が挙げているのは、①不正の手段により許可を受けたこと等により建設業の許可を取り消されてから5年を経過しない者(許可取り消しを免れるために廃業届を提出した者を含む)、②拘禁刑以上の刑、若しくは建設業法・建築基準法・労働基準法・刑法等の一定の法令違反で罰金の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者、③暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、④破産者で復権を得ない者——などです(抜粋)。

「経営経験は申し分ないが、前にいた会社が許可を取り消されている」というケースは実在します。招へいの話を進める前に、この点を確認してください。

申請書には、役員等全員について「許可申請者の住所、生年月日等に関する調書」(様式第12号)を添付し、賞罰が申告事項になります(監査役は含まれません/手引 PDF p.89)。この調書は、現住所・氏名・生年月日・賞罰・誓約の各欄について本人以外による訂正が認められない書式です。

なお、招へいした方が常勤役員等(経管)となる場合は、様式第7号 別紙の「常勤役員等の略歴書」に建設業に関する職歴と賞罰を記載するため、その方については様式第12号の作成は不要とされています(手引 PDF p.89)。経歴(職歴)を書くのは調書ではなく略歴書のほうだ、という対応関係を取り違えないでください。

3-3. 関門3:常勤性の確認——岡山県の運用は具体的

前提として、一般建設業の許可要件には適切な社会保険への加入が含まれます。手引は「健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に関し、全ての適用事業所又は適用事業について、適用事業所又は適用事業であることの届出を行っていること(ただし、適用が除外される場合を除く。)」と定めています(手引 PDF p.8)。招へいした役員が健康保険・厚生年金の被保険者として処理されることは、そのまま常勤性の裏付けにも直結します。

営業所調査の場面では、常勤役員等の現在の常勤性が次の書類で確認されます(手引 PDF p.18)。

  • 法人:社会保険関係(有効期限内の健康保険証、被保険者標準報酬決定通知書 又は 被保険者資格取得確認通知書の原本)。ほか賃金台帳・出勤簿等
  • 個人:雇用保険(被保険者資格取得等確認通知書 又は 雇用保険被保険者証の原本)、従業員5人以上の場合は社会保険、賃金台帳 等
  • 建設国保の加入者は政府管掌健康保険の被保険者になれないため、組合員証(有効期限内)+厚生年金の標準報酬決定通知書 又は 資格取得確認通知書等で確認されます(審査要領 PDF p.11)

さらに、審査要領には外部招へいで直撃する運用が2つ書かれています。

① 同一事務所・同一建物に他法人があり、そこで健康保険に加入している場合

「同一事務所又は同一建物内に他の法人(事業所)がある場合で、建設業の許可を申請している法人以外の法人で健康保険に加入している場合には、基本的に当該業者において常勤していることが推定されるので、申請のあった建設業者で常勤しているものとは認められない」(審査要領 PDF p.11)

グループ会社・関連会社から役員を回す構成では、どちらの会社の常勤者なのかが問われます。「同じビルに入っている別法人で社会保険に入ったまま、こちらの経管になる」という組み方は、原則として常勤性を認められません(審査要領は「基本的に…推定される」という書きぶりであり、個別の事情によって判断が分かれる余地はあります)。

関連して、代表者の兼務についても運用が明示されています。法人の役員は2社以上の代表者を兼務できますが、1社で常勤の役員となっていれば、その他の法人では非常勤の役員でなければならないとされています(審査要領 PDF p.5)。「2社の常勤役員」は制度上そもそも成立しない、という前提を押さえておいてください。

② 出向者の常勤性

出向元(X)から出向先(Y)に出向している取締役(A)について、社会保険の加入・給与の支払いともXで行っている場合、YにおけるAの常勤性は、XとYの間の出向契約又は出向辞令と、YにおけるAの出勤簿の2点で確認されます(審査要領 PDF p.14)。この取扱いは、新たに経管に就任しようとする場合の現在の常勤性と、経管経験の認定で確認する過去の常勤性の両方に適用されます。親会社から人を出す形を検討している場合は、この2点セットを事前に準備できるかが分かれ目になります。

3-4. 関門4:報酬——常勤性を認めるための下限額

外部招へいを検討する方にとって、最も現実的で、かつ最も知られていない論点がこれです。岡山県の審査要領は、無報酬・低報酬の経管について次のように定めています(審査要領 PDF p.12)。

  • 原則として、無報酬では申請・届出は認めない(経管本人との面談や出勤簿等で常勤性を信用するに足りる状況であれば、初回に限り認める)
  • 名義貸しによる虚偽申請を防ぐため、報酬の額について下限を定め、これを常勤性認定の条件とする(審査要領が報酬額の下限を定めています。具体額は面談でご案内します)
  • 無報酬又は低報酬の場合、その理由と今後は適正な報酬等を支払う旨を誓約する顛末書を3部提出
  • 誓約に反して再度該当した場合は、交替できる者の有無・出勤簿等を確認したうえで、廃業指導を含めた個別対応(財務状況により役員全員の報酬を抑える合理的な理由が見いだせる場合は、2回目の顛末書提出により認める)
  • 顛末書の提出に応じない場合は、立入検査等により経管の常勤性の確認を行う

つまり、外部招へいには継続的な人件費が伴います。 「名前だけ貸してもらって形ばかりの報酬」という設計は、岡山県の運用上そもそも成立しません。招へいを検討する段階で、審査要領が定める下限額以上の役員報酬を継続的に支払える体力があるかを事業計画のなかで先に確認してください。これは、ルート③(補佐者体制)やルート①(社内の掘り起こし)を優先的に検討すべき経済的な理由でもあります。

なお、後期高齢者(75歳以上)を招へいする場合は、社会保険に代えて、後期高齢者医療資格確認書又はマイナンバーカード、直前5年間の賃金台帳・源泉徴収票、常勤していること等についての申立書で常勤性が確認されます(審査要領 PDF p.15)。

4. ルート③|常勤役員等+直接に補佐する者の体制(令和2年改正のロ要件)

令和2年10月の改正で新設されたのが、「1人で5年」を満たせなくても、チームで満たすという考え方です。建設業法施行規則第7条第1号ロに該当するルートで、手引 PDF p.7 に要件が置かれています。

4-1. 常勤役員等の側(2パターン)

次の(1)又は(2)のいずれかに該当する常勤役員等を置きます。

  • (1) 建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営を担当する者に限る)としての経験を有する者
  • (2) 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し2年以上役員等としての経験を有する者

(2)は、他業種で長く経営してきた人が、建設業では2年しか役員経験がないという場合に効きます。異業種から建設業に参入したオーナー経営者、あるいは他業種の会社が建設部門を立ち上げたケースが典型です。

4-2. 補佐する者の側

上記の常勤役員等を直接に補佐する者を置きます。要件は次のとおりです(手引 PDF p.7)。

  • 当該申請者において、建設業の財務管理・労務管理・業務運営の業務経験をそれぞれ5年以上有すること
  • 同一人でも3名別々でも可。ただし、常勤役員等とは別の者であること
  • 常勤役員等及び直接に補佐する者については、常勤であることが必要(手引 PDF p.7)

3つの業務経験の中身も定義されています(手引 PDF p.8・※5)。財務管理=資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験。労務管理=社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験。業務運営=会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験。

また「直接に補佐する」とは、常勤役員等との間に他の者を介在させることなく、組織体系上及び実態上、当該常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を行うことをいいます(手引 PDF p.8・※4)。組織図上、間に部長が挟まっているような配置では要件を満たしません。

4-3. このルート最大の制約——「申請事業者における経験に限られる」

ここが実務での分水嶺です。手引の様式説明は、次のように明記しています(手引 PDF p.65)。

「財務管理、労務管理又は業務運営のうち複数を担当する地位での経験については、それぞれの業務経験としてその期間を計算することができます。ただし、これらの経験は、申請事業者における経験に限られます。

つまり、補佐する者の5年は「よそでの経験」を持ち込めません。自社で5年以上その業務に携わってきた人が必要です。経理をずっと見てきた配偶者・総務部長・番頭格の従業員がいる会社であれば現実的ですが、創業間もない会社では、このルートは物理的に使えません(自社に5年の蓄積がないため)。

一方で朗報もあります。1人が財務・労務・業務運営を兼務してきた場合、その1人で3つすべてを兼ねることができます。 「経理も労務も自分がやってきた」という会社は少なくありません。ただし、証明書は業務経験ごとに作成が必要です(手引 PDF p.65)。

4-4. 必要な様式

このルートでは、通常の様式第7号(常勤役員等証明書)ではなく、様式第7号の2(常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書)を使用します。あわせて様式第7号の2 別紙2(常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書)が必要です(手引 PDF p.65・p.68)。

別紙2は、現住所・氏名・生年月日・賞罰・誓約日及び署名欄について本人以外による訂正が認められない書式です。「職歴」欄には建設業に関する全ての職歴を記載したうえで、財務管理・労務管理・業務運営についての業務経験内容を具体的に書く必要があります(手引 PDF p.68)。補佐する者本人の協力なしには作れない書類だ、という点を押さえておいてください。

そして、手引は次のように付け加えています。

「【財務管理等の業務経験の確認方法】常勤役員等や常勤役員等を直接に補佐する者の財務管理等の業務経験については、別に経験を証明する書類が必要となります。本様式を用いた申請(届出)については、事前に建設業班にご相談ください。」(手引 PDF p.65)

ロ要件も、イ(2)(3)と同様に事前相談が前提です。「どんな書類で財務管理5年を示すか」は事案により異なるため、書類を集める前に方針をすり合わせるほうが、結果として遠回りになりません。

5. 3ルート比較表|自社はどれを狙うべきか

3つの打開ルートを、意思決定に必要な観点で並べます。

観点①社内・身内の掘り起こし②外部から常勤役員を招へい③常勤役員等+補佐者体制(ロ)
向いている会社先代が個人事業主/前職で役員・支店長・執行役員だった人がいる社内にも身内にも候補がゼロ他業種で長く経営してきた/自社に5年以上勤める財務・労務の担い手がいる
主な根拠手引 PDF p.7-8(イ(1)(2)(3))/審査要領 PDF p.12-15手引 PDF p.7(イ(1))+常勤性の運用手引 PDF p.7(ロ)+様式第7号の2
最大の関門当時の書類が現存するか(申告書6年分・議事録・稟議書・契約書)常勤性と報酬(審査要領が定める報酬下限・社会保険・出勤の実態)補佐者の5年が自社での経験に限られる
追加コスト主に書類収集の手間と時間継続的な役員報酬+役員変更登記主に体制整備と証明書類の作成
事前相談イ(2)(3)は必須(手引 PDF p.7 注)不要(イ(1)の標準ルート)必須(手引 PDF p.65)
撤退の容易さ高い(体制を変えない)低い(人を入れた後に要件を満たさないと分かると損失が大きい)中(体制整備は自社内で完結)

優先順位としては、①→③→② の順に検討するのが、費用対効果の面でも撤退可能性の面でも合理的です。②の外部招へいは、要件を満たす人材を直接確保できる一方で、ランニングコストと不可逆性が最も大きい選択肢だからです。

6. 最後の関門は「証明」——経験は書類で立証できて初めて経験になる

3ルートのどれを選んでも、最終的には「その経験を書類で立証できるか」に収束します。ここが経管の本当の難所です。岡山県の運用は、この点でかなり具体的です。

6-1. 誰が証明するのか(証明者ルール)

様式第7号(常勤役員等証明書)の証明は、経営業務の管理経験等を積んでいた時期の使用者(法人の代表者又は個人事業主)が行うのが原則です(手引 PDF p.59)。掘り起こしたルートほど、この証明者の確保が難所になります。

とりわけ効くのが、「自分が個人事業主だった期間」の扱いです。手引は、個人事業主は経営を補佐していた者に対してしか証明することができず、自分自身を証明することはできないとしています(手引 PDF p.59)。「昔は自分で一人親方をやっていたから、その5年を使う」という構成でも、自営していた経験は同業他者による証明が必要になります。当時の取引先で今も営業している業者に頭を下げられるか、が実際の分かれ目です。

審査要領は、証明者の適正についてさらに踏み込んでいます(審査要領 PDF p.12)。

  • 個人事業主としての経験で経管になる場合 → その経営経験があることを知っている同業他者(1者)の証明
  • 個人事業主の補佐経験による場合 → 元事業主又は同業他者(1者)の証明(元事業主が死亡している場合は同業他者1者の証明)
  • 役員・執行役員等、役員に準ずる地位の経験による場合 → 役員等に就任していた法人による証明(代表者による証明)。ただし当該法人が倒産している場合や、離職時の経緯等により証明を受けることが困難な場合は、当該者の経営経験を知っている同業他者1者の証明でも可
  • 証明できる同業者について、建設業許可の有無や申請者と同一の業種かどうかに特に制限はないが、申請日時点で営業中の者に限る

なお、証明書は原則として証明者ごとに別葉で作成します(手引 PDF p.59)。前職・自営期間・現職と経歴をつなぎ合わせて5年を作る構成では、その分だけ証明者と書類の枚数が増えます。

実務上の注意:「前の会社と喧嘩別れした」「代表者と連絡が取れない」というケースは決して珍しくありません。その場合でも同業他者1者の証明という逃げ道が用意されている点は、知っておく価値があります。ただし、同業他者の証明があっても、契約書等の書類確認ができなければ許可は取得できません(手引 PDF p.59)。証明者は「書類の代わり」ではありません。

6-2. どこまで裏付け書類を出すのか(年4件・四半期1件・4か月ルール)

ここが最も見落とされる岡山県の運用です。審査要領は、経験年数の確認について次のように定めています(審査要領 PDF p.10)。

「経験年数欄に記載された年数について、県民局調査において、1年当たり4件程度(四半期に1件以上で工期の終期と始期の間が4月以上空かないこと)の経験を契約書等に基づいて確認を行う。」

つまり、5年分を主張するならおおむね20件前後の工事について、契約書原本又は注文書原本及び請書の写し等を提示できる必要があります。しかも、それらが四半期ごとに散らばっていて、工期に4か月以上の空白がないことが求められます。「まとめて年度末に数件」では、期間が連続していると認めてもらえない可能性があります。

さらに、5年を超えた経験年数を記載した場合も、原則として計上した全期間について確認が行われます。5年を確認したうえで5年超の期間を抽出的に確認する場合であっても、経験年数の「始期」については必ず確認が行われます。

「多めに書いておけば安全」は逆効果です。 立証できない期間を書き足すと、その分だけ確認対象が広がります。書くべきは「間違いなく立証できる期間」だけです。

6-3. 経験期間の通算ルールで落ちる3点——候補を選ぶ段階で見るべきこと

掘り起こしで浮上した候補者は、経歴が細切れであることが少なくありません。「通算すれば5年ある」と思っていたものが、通算ルールを当てると足りない——これが典型的な落ち方です。候補者を絞る段階で、次の3点を先に確認してください。

  1. 常勤だった期間か。 常勤役員等の略歴書の「職歴」欄は、常勤・非常勤の別を明記して記載させる書式です(手引 PDF p.62)。名前だけ役員に載っていた時期は、候補期間から外して数え直します。
  2. その期間に受注実績があるか。 手引は「実際に建設工事を施工し、完成させて初めて経験となりますので、営業所に看板を掲げていただけであるとか、営業は行っていたが受注実績がないという場合には、管理経験を積んだ期間には計上できません」と明記しています(手引 PDF p.59)。休眠に近い時期を含む経歴は、その分だけ短くなります。
  3. 経歴が途中で切れていないか。 中断期間がある場合、経験年数は二段書き等にして記載します(手引 PDF p.59)。連続していない経験を1本の期間として書くことはできません。

この3点を先に当てておくと、「そもそも5年に届く候補か」が選定の段階で見えます。書類を集め始めてから足りないと分かるのが、経管不在ケースで最も時間を失うパターンです。経験年数そのものの一般的な計算ルールは経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法に整理しています。

なお役職名は経験期間中の役職名を記載します。「単なる役員であった期間と代表取締役の期間がある場合に、現在の役職のみを記載していないか」は、岡山県が審査で明示的にチェックする項目です(審査要領 PDF p.11)。

技術側の証明も考え方が似ています。あわせて営業所技術者(旧:専任技術者)の実務経験10年を証明する方法もご覧ください。経管の5年と営業所技術者の10年を同じ人・同じ期間で両方主張する設計は、書類収集の負荷が跳ね上がります。誰にどちらを持たせるかは、申請設計の最初に決めるべき論点です。

7. ⛔名義貸しは打ち手ではない|岡山県の運用と、失うもの

「知り合いの許可業者の社長に、名前だけ役員に入ってもらう」——ご相談の場で出てくることがある案ですが、これは選択肢に入りません。 理由は倫理だけではなく、制度設計上、割に合わないからです。

7-1. 岡山県は名義貸しを名指しで警戒している

前述のとおり、審査要領は報酬の下限を定める理由を「名義貸しによる虚偽申請を防ぐため」と明記しています(審査要領 PDF p.12)。制度の側が、この抜け道を前提に運用を組んでいるということです。常勤性は、社会保険・出勤簿・賃金台帳・面談・立入検査という複数の手段で確認されます。

7-2. 申請段階で判明すれば不許可、事後に判明すれば取消し+5年

手引は、欠格要件の説明に続けて「許可申請書及びその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、又は重要な事実の記載が欠けている場合も許可できません」と書いています(手引 PDF p.10)。虚偽が申請段階で判明すれば、その時点で不許可です。

さらに重いのが、許可取得後に発覚した場合です。欠格要件には「不正の手段により許可を受けたこと、又は営業停止処分に違反したこと等により建設業の許可を取り消されてから後5年を経過しない者(許可取り消しを免れるため、廃業届を提出した者を含む。)」が含まれます(手引 PDF p.10)。許可取消しを免れるために廃業届を出しても、5年の欠格期間からは逃れられないと明記されている点に注目してください。逃げ道は塞がれています。

加えて、監督処分とともに、建設業法第47条等の罰則の対象となり得ます(手引 PDF p.23)。

7-3. 「実は出勤していなかった」が発覚した場合の取扱い

名義貸しとまでは言えなくても、結果的に経管が常勤していなかったというケースについて、岡山県は具体的な処理を定めています(審査要領 PDF p.11-12・「⑤経管の一時的な不在について」)。経管が入院等のやむを得ない事情で出勤していなかったことが事後に判明した場合、交替できる者がいれば業務改善報告書を添付のうえ変更届を提出して受理となりますが、交替できる者がいなければ原則として自主廃業を求められます(指導に従わない場合には許可取消し)。ただし不在期間が2か月未満であれば、業務改善報告書を徴したうえで営業の継続が認められます。

「やむを得ない入院」ですらこの扱いです。意図的に常勤していない経管を置いた場合に、より緩い扱いを期待できる理由はありません。

7-4. 名義を貸す側のリスクも同じだけ重い

見落とされがちですが、名義を貸す側も無傷ではいられません。貸した側が自社で経管を務めている場合、二重に常勤することはできないため、貸した側の会社の許可要件が崩れる可能性があります。前掲のとおり、同一事務所・同一建物内の別法人で健康保険に加入している場合には、そちらで常勤していると推定されます(審査要領 PDF p.11)。また、代表者を兼務する場合であっても、1社で常勤の役員であれば他の法人では非常勤でなければならないとされています(審査要領 PDF p.5)。

それ以外の配置であっても、常勤性は出勤簿・賃金台帳・社会保険・面談等で個別に確認されるため、二重に常勤していると主張することはできません

名義貸しは、頼む側と頼まれる側の両方の許可を同時に危険にさらす行為です。「お互い困ったときは助け合い」という発想が最も通用しない領域だと理解してください。

正しい代替案:知り合いの経営者に協力してもらうのであれば、実際に常勤役員として経営に関与していただく以外に方法はありません。報酬額や社会保険は、あくまで常勤性を確認するための一要素です。これらを形式的に整えても、実際に出勤し経営業務に従事している実態がなければ虚偽申請にほかなりません。実態を伴う就任が難しいのであれば、ルート①か③に立ち戻るのが結論です。

8. 経管を確保したあと|1人依存の許可は、その人が欠けた瞬間に消える

経管の問題は「取得できたら終わり」ではありません。むしろ外部招へいや高齢の親族に依存して取得した会社ほど、取得後のリスクが高いという現実があります。ここが、経管不在から出発した会社に固有の弱点です。

手引は次のように警告しています(手引 PDF p.22)。

「常勤性を要する経営業務の管理責任者等や営業所技術者等を欠く状態になった場合、代わりになる方がいなければ許可を失うことになりますので、十分注意してください(変更届は、変更後2週間以内に提出しなければなりません。)。

なお、『欠く』状態とは、退職、死亡した場合はもちろんのこと、毎日出勤することができなくなった場合も含みます。病気や事故等で長期入院されるような場合には、社会保険等の資格が継続されていても『欠く』状態とみなされますので十分に注意してください。」

ここで、7-3 で見た運用を思い出してください。経管が出勤していなかったことが事後に判明したとき、交替できる者がいなければ、岡山県は原則として自主廃業を求めます(審査要領 PDF p.11-12)。つまり、「1人しかいない」という状態は、その人の入院・退職・死亡がそのまま許可の消滅につながる構造だということです。

したがって、経管不在から出発した会社の結論は1つに絞られます。取得の時点で、2人目の設計をセットで行うことです。 外部招へいなら、招へいした役員が抜けたときに誰が引き継ぐのかを契約を結ぶ段階で決めておく。同時に社内の若手を「準ずる地位」で走らせ始めれば、5年後・6年後には自前の候補が育ちます。高齢の親族で取得した場合は、本人が元気なうちに次の世代の経験期間を積み上げ始めることです。経験は遡って作れません。 取得できた安心感で放置すると、5年後に同じ行き止まりに戻ります。

なお、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)の変更届は変更後2週間以内です(手引 PDF p.22)。この期限を落とすと、手引は「期限内の提出を怠っている場合には許可の更新・追加申請等はできません。また、監督処分や罰則の対象にもなります」と明記しています(手引 PDF p.22)。届出事項ごとの期限と提出書類は、手引の「変更届出事項及び提出書類等一覧表」(手引 PDF p.170)にまとまっています。

苦労して経管を確保した会社ほど、2人目の設計と期限管理を仕組みにしておく価値があります。当事務所では、変更届・事業年度終了報告・更新の期限をまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。

9. 経管不在ケースの進め方|事前相談を通す前提でスケジュールを組む

経管不在ケースは、本来「相談しながら組み立てる」必要がある案件です。ところが、岡山県の窓口運用はそれを前提としていません。ここを知らずに動くと、時間を大きく損します。

9-1. 窓口で相談しながら整える進め方はできない

手引は、申請書の提出について次のように明記しています。

事前審査は一切行いません。 正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。」(手引 PDF p.16)

経管の経験をどう構成するかは、窓口に持ち込む前に決着させておかなければなりません。 「とりあえず出してみて、足りなければ言ってもらう」という進め方は、経管不在ケースでは特に危険です。入口Dの親族補佐であれば、6年分の申告書の有無が受理の時点で確認されます(審査要領 PDF p.13)。

なお、申請書・変更届の提出先は、岡山県土木部監理課建設業班(県庁)です。手引は「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記しています(手引 PDF p.168)。県民局は申請窓口ではありません。

9-2. ただし、イ(2)(3)とロ要件は「事前にご相談ください」

例外がこれです。前述のとおり、経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験(イ(2)(3))と、常勤役員等+補佐者体制(ロ)については、手引が事前相談を求めています(手引 PDF p.7・p.65)。

つまり、経管不在ケースで選ぶことになるルートは、そのほとんどが事前相談を織り込んだスケジュールで進めるべきものだということです。当事務所にご依頼いただければ、どの入口を狙うかの整理と、相談の場に持ち込む書類の設計からお手伝いします。何を持って行くかは11章に整理しました。

9-3. 経験の確認は県民局の営業所調査で行われる

申請受付後、半月程度で所轄の県民局から営業所調査実施の連絡が来ます。ここで経管の経験確認書類(法人なら商業登記事項証明書・社会保険関係書類・出勤簿・賃金台帳、個人事業主なら確定申告書の控え・所得証明等、共通で請負工事実績を示す契約書原本等)が確認されます(手引 PDF p.16-17)。

申請=本庁、営業所調査=所轄の県民局(岡山市なら備前県民局、倉敷市なら備中県民局)という役割分担です(手引 PDF p.168)。なお、営業所調査が早く終わったからといって、許可が早く取得できるわけではありません(本庁の調査が別途進行するため)。

地域別の手続きの流れは岡山市で建設業許可を取るには倉敷市で建設業許可を取るにはにまとめています。

10. 外部招へい前チェックリスト|招へいを決める前に潰しておく6点

ルート②は、人を入れてから要件を満たさないと判明したときの損失が最も大きい選択肢です。招へいの話を進める前に、次の6点を順に潰してください。いずれも一次資料に根拠のある確認項目です。

① 欠格要件に触れていないか(最優先)

前にいた会社が許可を取り消されていないか、取消しから5年を経過しているか、罰金刑等の欠格期間中でないか。欠格要件は役員等・支配人・従たる営業所の代表者にも及ぶため、招へいした1人の事情で会社全体の許可が下りなくなります(手引 PDF p.10)。本人に賞罰を確認したうえで、様式第12号の賞罰欄に何を書くことになるのかを、招へいの合意前に詰めておきます。

② 他社で健康保険に加入したままにならないか

同一事務所・同一建物内の別法人で健康保険に加入している場合、そちらでの常勤が推定されます(審査要領 PDF p.11)。また、代表者を兼務する場合、1社で常勤役員であれば他の法人では非常勤でなければなりません(審査要領 PDF p.5)。「今の会社に籍を残したまま」という条件で話が進んでいるなら、そこが最初の障害です。

③ 出向の形にするなら、出向契約(辞令)と出勤簿を出せるか

社会保険・給与を出向元に残す形にする場合、確認されるのは出向契約または出向辞令出向先での出勤簿の2点です(審査要領 PDF p.14)。出勤簿は「これから付ける」では間に合わないことがあります。いつから記録を残すのかを、就任前に決めておきます。

④ 審査要領が定める報酬下限を継続して支払えるか

審査要領は、名義貸しによる虚偽申請を防ぐため、報酬額の下限を定め、これを常勤性認定の条件としています(審査要領 PDF p.12。具体額は面談でご案内します)。単月ではなく継続です。下限額以上の固定費が、許可を維持し続ける限り発生すると考えて事業計画を作ってください。

⑤ 役員変更登記のリードタイムを工程に入れているか

常勤役員等は常勤の役員である必要があるため、取締役として登記するのが基本形です(手引 PDF p.7・※1)。登記が完了しなければ許可申請の前提が整いません。 登記は司法書士の領域であり、許可申請とは別の期間・別の費用が発生します。

⑥ 退任時に許可をどう維持するかを、招へい契約で決めてあるか

これが最も抜けやすい項目です。招へいした役員が抜けた瞬間、交替できる者がいなければ原則として自主廃業を求められます(審査要領 PDF p.11-12)。招へいの合意には、最低在任期間/退任時の予告期間(後任の確保に要する期間から逆算する)/在任中に社内の後継候補へ経験を積ませることへの協力を織り込んでおいてください。「取れたら終わり」の契約にしないことです。

このチェックリストは、招へい候補と条件交渉に入る前に当てるものです。順番が逆になると、断りにくくなってから問題が見つかります。

11. 事前相談に何を持って行くか|書類の現存確認シート

イ(2)(3)とロ要件は事前相談が求められています(手引 PDF p.7・p.65)。ただし、手ぶらで行っても得られるものはほとんどありません。岡山県は事前審査を行わない運用であり、相談は「この構成で組むならこの書類が要る」を確認する場だからです。ルート別に、現存を確認しておくべき書類を整理します。○=手元にある/△=取得できそう/×=存在しない、の3段階で当たりを付けてから臨むと、相談が具体的になります。

入口B(イ(2)=執行役員型)を狙う場合

確認すること現存を見る書類
職制上の地位当時の組織図
建設業に関する事業部門だったか業務分掌規程
取締役会の決議による権限委譲定款・執行役員規程・執行役員職務分掌規程・取締役会規則・取締役就業規程・取締役会の議事録
経験の期間取締役会の議事録・人事発令書
経験期間中の工事実績契約書・注文書及び請書の写し・許可通知書・経営事項審査副本等(原本)

(審査要領 PDF p.14)。工事実績は年4件程度(四半期に1件以上・工期の終期と始期の間が4か月以上空かないこと)の原本提示+そのうち年1件程度の写しの提出が求められます。

入口C(イ(3)=補佐型・法人)を狙う場合

組織図/業務分掌規程・過去の稟議書/人事発令書/工事実績書類(原本)——という構成です(審査要領 PDF p.15)。「過去の稟議書」が明示されている点が実務上の分かれ目で、稟議のかたちで意思決定に関与した記録が残っている会社では、このルートが現実味を帯びます。

入口D(親族の事業主補佐)を狙う場合

  • 元事業主の確定申告書(6年間分)——税務署収受印のあるもの、又は申告書等情報取得サービスで取得した税務署提出日が分かる控え
  • 親族関係が確認できるもの(専従者給与を受けている場合は当該申告書で足りることがあります)
  • 給与受給者の場合は当該期間分の所得証明および元事業主の決算書/収支内訳書
  • 元事業主が建設業の請負をしていたことが分かる契約書・注文書及び請書の写し・経営事項審査申請副本等
  • 補佐の実態を示す見積・契約締結・資金調達・技術者手配に関する書類

(審査要領 PDF p.12-13)。6年分の確定申告書が揃うかどうかが、このルートの成否をほぼ決めます。 先代の書類がどこにあるかの捜索から始まる案件も珍しくありません。

ロ要件(補佐者体制)を狙う場合

常勤役員等側の役員経験を示す商業登記事項証明書と、補佐者側の財務管理・労務管理・業務運営それぞれ5年を示す書類です。手引は「別に経験を証明する書類が必要となります」とするのみで、書式を限定していません(手引 PDF p.65)。だからこそ事前相談が要る、という構造です。あわせて様式第7号の2 別紙2(補佐する者の略歴書)に、財務管理・労務管理・業務運営の業務経験内容を具体的に記載する必要があります(手引 PDF p.68)。

順序の話:現存確認 → 方針決定 → 事前相談 → 書類作成 → 提出、という順で進めます。書類を作り込んでから相談に行くと、方針ごと組み替えになったときの手戻りが大きくなります。当事務所では、この現存確認の段階からご一緒します。

12. 費用と期間の逆算|経管不在ケースはいつから動くべきか

12-1. 期間の目安

申請が受け付けられてから許可までは、特に問題がないケースで概ね2か月程度、営業所調査の連絡は申請受付後半月程度です(手引 PDF p.16-17。手引に「標準処理期間◯日」という日数規定はありません)。

ただし、「概ね2か月」は、書類が完全に整った状態で受け付けられてからの話です。経管不在ケースでは、その手前——ルートの選定と書類の現存確認(申告書6年分・議事録・契約書の収集が必要なら長期化)、イ(2)(3)・ロ要件の事前相談、外部招へいなら役員変更登記——のほうが長くなるのが通例で、しかも事案による幅が大きい部分です。元請から許可取得を求められている場合は、逆算して早めに着手してください(元請から建設業許可を求められたら)。

12-2. 経管不在ケースだけに上乗せされるコスト

新規許可そのものにかかる法定手数料・行政書士報酬の一般的な目安は、建設業許可の費用はいくら?岡山県知事許可の総額目安建設業許可を行政書士に依頼する費用相場に整理しています。ここでは、経管不在ケース特有の上乗せ分だけを扱います。

上乗せされるもの内容発生するルート
招へい役員の報酬岡山県の運用上、常勤性認定の条件として審査要領が報酬額の下限を定めています(審査要領 PDF p.12。具体額は面談でご案内)。継続費用のため、下限額以上の固定費が許可を維持する限り発生②外部招へい
役員変更登記常勤役員等は常勤の役員である必要があるため、取締役として登記する(手引 PDF p.7・※1)。許可申請とは別のリードタイムと費用。登記は司法書士の領域のため、金額は本記事の資料範囲外②外部招へい
経管交替時の変更届招へいした役員が抜けたときの変更届。届出そのものに法定手数料は不要(手引 PDF p.22)。当事務所の報酬は33,000円(税込)②③および取得後全般
6年分の申告書等の取得実費元事業主の確定申告書の控え、所得証明書、住民票・戸籍抄本等の取得費用と、収集に要する時間①入口D(親族補佐)
当時の書類の再取得前職からの組織図・議事録・人事発令書・契約書の写しの取得(相手方の協力が前提のため、時間が読みにくい)①入口B・C

この表で最も重いのは、1行目の継続費用です。 許可を取るための一時的な費用ではなく、許可を維持し続ける限り毎月発生する固定費として事業計画に載せてください。「①→③→②の順に検討する」という優先順位は、ここから導かれます。

金額・期間は時点や個別事情により変動します。正確な金額は事前にお見積りします。

12-3. 許可待ちの期間に、受注をどう分割・調整するか

経管の設計に相応の準備期間がかかる見込みなら、その期間中の受注をどう扱うかを先に決める必要があります。 経管不在で許可取得が止まっている会社ほど、目の前の話が動いてしまうためです。

ここで重なるのが無許可受注の問題です。許可待ちの間に許可が必要な規模の工事を受けてしまうと、経管の要件とはまったく別の問題が上乗せされます。しかも、その事実が後の申請の場で顔を出します。「経管を整えている最中だから」は、無許可受注の理由にはなりません。

したがって、経管の設計と同時に、今動いている案件のうち金額ラインを超えるものはどれか、それを分割・時期調整できるか、できないなら元請にどう説明するか——を並行して決めてください。金額の線引きは軽微な工事(500万円未満)とは、すでに受けてしまった場合の対処は無許可で500万円以上を受注してしまったらに整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q経営業務の管理責任者になれる人が社内にいません。建設業許可は諦めるしかありませんか?
A諦める前に3つのルートを検討する価値があります。①社内・身内に埋もれた経験の掘り起こし(前職の支店長等=令3条の使用人、執行役員等の「準ずる地位」で5年、準ずる地位で経管を補佐して6年、親族が個人事業主を6年以上補佐していた期間など)、②外部から建設業の経営経験がある方を常勤役員として招へいする、③令和2年10月改正で整備された「常勤役員等+その方を直接に補佐する者」の体制で満たす、という3つです。どれが現実的かは、当時の書類が今も残っているかで決まります。
Q外部から役員を招へいすれば、名前を貸してもらうだけで要件を満たせますか?
Aできません。岡山県の審査要領は、名義貸しによる虚偽申請を防ぐため、経管の報酬について報酬額の下限を定めてこれを常勤性認定の条件とし、原則として無報酬では申請・届出を認めないと定めています(具体的な下限額は面談でご案内します)。常勤性は社会保険・出勤簿・賃金台帳・面談等で確認され、必要に応じて立入検査も行われます。虚偽の記載があれば許可できず、許可後に発覚すれば取消しにつながり、取消しから5年間は再取得できません(取消しを免れるための廃業届も同様です)。
Q招へいする役員が、今の会社の役員を兼ねたままでも常勤と認められますか?
A兼ねたままにする形は、原則として認められないとお考えください。ただし審査要領の書きぶりは「基本的に…当該業者において常勤していることが推定される」という反証可能な運用であり、実態次第で判断が分かれる余地があります。個別事情によりご相談ください。岡山県の審査要領は、法人の役員が2社以上の代表者を兼務すること自体は可能としつつ、1社で常勤の役員となっていれば、その他の法人では非常勤の役員でなければならないとしています(審査要領 PDF p.5)。また、同一事務所・同一建物内に他の法人があり、申請している法人以外の法人で健康保険に加入している場合は、そちらでの常勤が推定され、申請のあった建設業者で常勤しているとは認められないとされています(審査要領 PDF p.11)。社会保険・給与を出向元に残す出向の形をとる場合は、出向契約または出向辞令と、出向先での出勤簿の2点で常勤性が確認されます(審査要領 PDF p.14)。いずれも個別の実態で判断が分かれるため、構成が固まる前にご相談ください。
Q父が個人事業主として建設業をしてきました。息子である私は役員でも事業主でもありませんが、経管になれますか?
A岡山県は、個人事業主(元事業主)の親族が事業主補佐としての経験で経管となる場合の認定基準を審査要領で定めています。元事業主の申告書に青色・白色の事業専従者または給与受給者として氏名が明記され、6年以上専ら従事していたことが確認できること、元事業主に次ぐ職制上の地位にあったこと、見積・契約締結・資金調達・技術者の手配等の書類から補佐していたことが確認できること等が条件です。元事業主に建設業許可があったかどうかは問われず、元事業主が現役でも認定は行われます。6年分の確定申告書の控えが必要になるため、書類の現存確認が出発点です。
Q経管を確保して許可を取った後、その人が辞めたらどうなりますか?
A代わりになる方がいなければ許可を失います。変更届は変更後2週間以内の提出が必要です。「欠く」状態には退職・死亡だけでなく、毎日出勤できなくなった場合も含まれ、長期入院は社会保険等の資格が継続していても「欠く」状態とみなされます。岡山県の運用では、経管の一時的な不在が事後に判明した場合、交替できる方がいなければ原則として自主廃業を求められます(不在期間が2か月未満であれば業務改善報告書の提出により営業継続が認められます)。1人に依存しない体制づくりと期限管理が重要です。

まとめ

「経営業務の管理責任者(経管)がいない」は、建設業許可でよく聞く行き止まりですが、行き止まりに見えて実は3本の抜け道があるというのが結論です。

  • ルート①|掘り起こし:常勤役員等の入口は「5年の役員経験」だけではありません。令3条の使用人(支店長等)、執行役員等の「準ずる地位」で5年、準ずる地位で経管を補佐して6年、そして親族が個人事業主を6年以上補佐していた期間(岡山県が審査要領で詳細な認定基準を定めています)——見落としがないか、まず社内と身内を洗い直してください。
  • ルート②|外部招へい:候補者を直接確保できる一方、登記・社会保険・常勤性・そして審査要領が下限を定める報酬という継続コストが伴います。同一事務所・同一建物内の別法人で健康保険に入ったままでは常勤と認められず、出向者には出向契約(辞令)+出勤簿が必要です。欠格要件のチェックは招へい前に必ず行ってください(10章のチェックリスト)。
  • ルート③|補佐者体制(令和2年改正のロ要件):他業種で長く経営してきた方に効くルートですが、補佐する者の財務管理・労務管理・業務運営 各5年は「自社での経験」に限られるという強い制約があります。1人で3役を兼ねることは可能です。

そして、名義貸しだけは打ち手になりません。岡山県は報酬下限の運用を「名義貸しによる虚偽申請を防ぐため」と明示しており、虚偽記載は不許可、事後発覚は取消し+5年の欠格(廃業届で免れることもできません)につながります。頼まれた側の許可まで危うくなります。

どのルートを選ぶかは、「どの書類が今も残っているか」でほぼ決まります。経験の記憶ではなく、書類の現存状況から逆算するのが現実的です。「うちはどのルートなら現実的か」を、まずは無料相談で棚卸ししてみてください。要件の全体像は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)から確認できます。

「経管になれる人がいない」状態からの3ルート診断は無料相談から

①掘り起こし ②外部招へい ③補佐者体制 のどれが現実的かを、建設業特化の行政書士が個別に診断します。「父の下で10年働いてきたが経管になれるか」「前職の支店長経験は使えるか」など、まず1問だけ聞きたい方はLINEでどうぞ。お電話(070-8567-3197/平日9〜18時)・メール・LINE からお気軽にご相談ください。岡山県全域に対応しています。

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