

塗装工事業で建設業許可を取るときに、実務でつまずくポイントはほぼ2つに絞られます。①自社の工事が本当に「塗装工事」なのか(防水・内装仕上・鋼構造物との区分)②営業所技術者(旧:専任技術者)を、資格で満たすのか実務経験10年で満たすのか——この2点です。
そして塗装工事業には、他業種の感覚のままだと見落としやすい固有の事実があります。塗装工事業では、1級建築士も技術士も営業所技術者にはなれません。岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)の資格一覧表を見ると、建築士法の資格(1級・2級・木造建築士)も技術士法の全区分も、塗装工事業の欄は空白です(PDF p.163)。使えるのは施工管理技士・施工管理技士補・塗装系の技能検定・登録基幹技能者に限られます。「うちは1級建築施工管理技士がいるから大丈夫」は正解ですが、「1級建築士がいるから大丈夫」は誤りです。一方で塗装工事業は指定建設業(土・建・電・管・鋼・舗・園の7業種)に含まれないため、他の指定建設業では封じられている実務経験の代替ルートが使えます(4章)。
本記事では、岡山で建設業に特化する行政書士が、塗装工事業の対象範囲・区分の誤認ポイント・営業所技術者になれる資格の現物一覧・実務経験の証明と通算ルール・岡山県での手続きまでを、一次資料に沿って整理します。許可要件そのものの全体像は建設業許可の6つの要件(自社が取れるか診断)をご覧ください。
※ 業種区分の該当・要件の充足は、個別の工事内容や事業者ごとの実態によって判断が分かれます。本記事の金額・期間・年数はいずれも記事作成時点の目安であり、制度改正で変わることがあります。最終判断は有資格者(行政書士)にご確認ください。
1. 塗装工事業とは——「塗」の対象になる工事の範囲
塗装工事業は、建設業許可29業種のうちの1つで、許可業種の略号は「塗」です(岡山県「建設業許可の手引」PDF p.5)。
1-1. 建設工事の内容(告示に定められた定義)
手引の業種区分表では、塗装工事の内容がこう定義されています。
塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事
(岡山県「建設業許可の手引」令和7年9月1日改訂 PDF p.160)
押さえるべきは、定義が「材料」と「動作」で書かれている点です。「どんな建物か」「屋内か屋外か」「新築か改修か」では区分されていません。この構造を理解しておくと、2章の他業種との境界が整理しやすくなります。
1-2. 建設工事の例示(6つ)
手引が示す塗装工事の例示は、次の6つです(PDF p.160)。
| 例示された工事 | 現場での呼び方・イメージ |
|---|---|
| 塗装工事 | 住宅・店舗・ビル・工場の外壁塗装、屋根塗装、内部塗装など、いわゆる本業の塗装 |
| 溶射工事 | 溶融させた金属・セラミック等を吹き付けて皮膜を形成する工事 |
| ライニング工事 | タンク・配管の内面等に樹脂・ゴム等の防食層を形成する工事 |
| 布張り仕上工事 | 手引に説明がなく、該当範囲は個別判断(2-2参照) |
| 鋼構造物塗装工事 | 橋梁・鉄塔・水門・タンクなど鋼構造物への塗装(重防食塗装を含む) |
| 路面標示工事 | 道路の区画線・横断歩道・文字標示などの標示工事 |
※ 右列は現場でのイメージを補足したもので、手引に例示語の解説は掲載されていません。特に「布張り仕上工事」の内容は手引に説明がないため、該当性は個別にご確認ください。
「外壁塗装業=塗装工事業」という理解は正しいのですが、塗装工事業のカバー範囲は一般的なイメージよりかなり広いことがわかります。特に鋼構造物塗装工事と路面標示工事が塗装工事業の側に例示されている点は、後述する区分の誤認ポイントに直結します。
1-3. 下地調整工事・ブラスト工事は「塗装に含まれる」
手引の業種区分表で、塗装工事の行に付されている「区分の考え方」の注記は、次の1点だけです。
下地調整工事及びブラスト工事については、通常、塗装工事を行う際の準備作業として当然に含まれているものである。
(手引 PDF p.160)
塗装業の実務では、ケレン・素地調整・高圧洗浄・ブラストといった下地処理が工程全体の時間とコストの相当部分を占めます。この注記はそれらが塗装工事の一部として扱われることを示すものですので、下地調整やブラストを含む見積であっても、そのために別業種の許可を追加取得しなければならないという整理にはなりません。ただしこれらだけを単独で請け負う場合の扱いは手引に記載がなく、契約の実態を踏まえて個別に確認すべき領域です。
1-4. 塗装工事業で「許可が必要になる」タイミング
建設業許可が必要になるのは、1件の請負代金が税込500万円以上の工事を請け負う場合です(建築一式工事は税込1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅なら許可不要という別ルール/手引 PDF p.5、p.51)。塗装工事は建築一式工事ではないため、税込500万円のラインで判断します。
外壁塗装の単価が上がり、足場・高圧洗浄・シーリング打ち替え・屋根塗装をまとめて請ける形態が一般化した結果、戸建て1棟でも500万円に接近し、集合住宅・工場・倉庫の大規模修繕なら1件で超えるという状況になっています。「これまでは許可なしで足りていたが、直請の単価が上がって現実的に超え始めた」という段階の事業者が、塗装工事業で最も相談の多い層です。
この500万円の判定には、税込か税抜か・注文者からの支給材料をどう扱うか・工区や工期を分けた場合に合算されるかといった論点があり、誤ると無許可営業のリスクに直結します。判定の実務は軽微な工事(500万円未満)とは?建設業許可が不要になる範囲に一本化しています。すでに500万円以上を無許可で受けてしまった場合の対処は無許可で500万円以上を受注してしまったらをご覧ください。
2. 区分の誤認ポイント——防水・内装仕上・左官・鋼構造物・路面標示との境界
塗装工事業は隣接する業種が多く、「これは塗装で取れるのか、別業種の許可が要るのか」と迷う場面が繰り返し発生します。
先に重要な前提をお伝えします。手引の業種区分表には、塗装工事と防水工事の境界、塗装工事と内装仕上工事の境界を直接論じた注記は存在しません。塗装工事の行にある注記は、1-3の「下地調整・ブラストは塗装に含まれる」の1点のみです。以下では、手引に何が書いてあり、何が書かれていないのかを切り分けて整理します。
2-1. 塗装 vs 防水——「塗膜防水工事」は防水の例示に入っている
| 塗装工事 | 防水工事 | |
|---|---|---|
| 内容(告示) | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によつて防水を行う工事 |
| 例示 | 塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事 | アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
(いずれも手引 PDF p.160)
塗装業者にとって最も紛らわしいのが、塗膜防水工事が「防水工事」の例示に入っているという事実です。ウレタン塗膜防水やFRP防水は、施工の動作としては「塗る」ですが、手引の例示上は防水工事業の側です。またシーリング工事も防水工事の例示にあります。
なお防水工事の行には注記が2つあり(手引 PDF p.160)、うち1つは「防水モルタルを用いた防水工事は左官工事業、防水工事業どちらの業種の許可でも施工可能である」というものです。同じ工事が複数業種の許可で施工できる場合があることを手引自身が認めている例ですが、これは左官と防水の話であり、塗装と防水の関係について同様の記述は手引にありません(もう1つは、トンネル防水等の土木系防水は『とび・土工・コンクリート工事』に該当するという注記です)。
実務上の意味:外壁塗装と一緒に、ベランダ・屋上の防水やシーリングの打ち替えを請けている事業者は珍しくありません。ここで効いてくるのが、許可の要否は「工事1件の請負代金」で判定されるという点です(1-4)。塗装・防水・シーリングを1本の契約でまとめて請けると契約全体が1件として扱われるため、外壁塗装だけなら400万円で収まる工事が、防水とシーリングを足して500万円を超えるということが起こります。見積を組むときは、次の2点を意識してください。
- 契約を分けるかどうかを、金額調整のために決めない。工期・工区を分けても実態が1件の工事であれば合算して判断されます(判定の実務は軽微な工事(500万円未満)とは)。
- どの工種が主たる目的かを整理しておく。500万円以上の工事で防水が主たる目的になっているなら、塗装工事業の許可だけで足りるとは限らず、防水工事業の許可(または業種追加)を検討すべき領域です。塗装と防水を両方押さえておけばこの判断に悩まずに済みますが、実務経験ルートで2業種を取る場合の制約(5-5)は必ずご確認ください。
2-2. 塗装 vs 内装仕上——壁紙・クロスは内装仕上の「内容」に明記されている
内装仕上工事の内容と例示は次のとおりです(手引 PDF p.160)。
内容:木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事
例示:インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事
注意が必要なのは、塗装工事の例示に「布張り仕上工事」があり、内装仕上工事の例示に「壁張り工事」があるという点です。名称が近く、しかも両者の切り分けを説明した注記は手引にありません。手引から言える事実は、壁紙(クロス)が内装仕上工事の「内容」に材料として明記されている一方、塗装工事の材料は「塗料、塗材等」で壁紙は挙げられていない、という2点だけです。
実務上の意味:室内の塗り壁・塗装仕上げは塗装工事、クロス貼りは内装仕上工事、という整理が定義からは自然に導かれます。ただし内装リフォームを一括で請ける形態では塗装・内装仕上・大工などが混在します。混在する工事をどの業種で受けるかは工事全体の目的と金額構成で判断する必要があり、手引の記述だけで機械的に決まるものではありません。
2-3. 塗装 vs 左官——分かれ目は「塗料・塗材」か「壁土・モルタル・漆くい」か
左官工事の内容は次のとおりです(手引 PDF p.158)。
内容:工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事
例示:左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事
塗装工事と左官工事は、定義の文の構造がほぼ同じです。違うのは材料だけで、塗装が「塗料、塗材等」、左官が「壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等」となっています。
さらに左官工事の行には、「『左官工事』における『吹付け工事』とは、建築物に対するモルタル等を吹付ける工事をいい、『とび・土工・コンクリート工事』における『吹付け工事』とは、法面処理等のためにモルタル又は種子を吹付ける工事をいう」という注記があります(PDF p.158)。同じ「吹付け」でも材料と対象で業種が分かれるという考え方が手引の中で明示されているわけですが、塗装と左官の境界を直接論じた注記は手引にありませんので、断定はできません。
実務上の意味:意匠性の高い「塗り壁」系の仕上げ材が増えるほど、この境界は微妙になります。使用する材料が塗料・塗材に該当するのか、それとも壁土・モルタル・漆くい・プラスターに該当するのか——見積書の材料名レベルまで下りて確認するのが現実的です。
2-4. 塗装 vs 鋼構造物——橋梁の塗装は「塗装工事業」の側にある
塗装業者から最もよく受ける誤解が、「橋梁や鉄塔の塗装をやるなら鋼構造物工事業の許可が要るのでは?」というものです。手引の記述にもとづく答えは「必要なのは塗装工事業の許可です」という方向になります。根拠は、①塗装工事の例示に「鋼構造物塗装工事」が明記されている(PDF p.160)②資格一覧表で「2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)」が塗装工事業の営業所技術者になれる資格として掲げられている(PDF p.163)——の2点です。
一方、鋼構造物工事の内容は「形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事」で、例示は鉄骨工事・橋梁工事・鉄塔工事などです(PDF p.160)。鋼構造物工事は「造る」工事、塗装工事は「塗る」工事という整理になります。ただし両者の境界を直接論じた注記は手引にありませんので、上記は手引内の2つの事実から導かれる整理です。
実務上の意味:橋梁・水門・鉄塔などの塗り替え・重防食塗装を目的とする工事は塗装工事業の領域であり、公共工事の比重が高い分野でもあります(7章参照)。
2-5. 路面標示——塗装工事の例示にあり、技能検定も塗装欄に置かれている
区画線・横断歩道・道路文字などの路面標示工事は、塗装工事の例示に含まれています(手引 PDF p.160)。加えて、技能検定「路面標示施工」(資格コード67)が、塗装工事業に関係する資格として資格一覧表に掲げられています(PDF p.164)。「道路にやる仕事だから舗装工事業では?」と考えたくなりますが、舗装工事の行に路面標示との区分を論じた注記はありません。この2つの事実から、路面標示は塗装工事業の側にあるという整理になります。
2-6. 区分の誤認ポイント・早見表
| 迷いやすい工事 | 手引に書かれている事実 | 手引に記載がない事項 |
|---|---|---|
| 下地調整・ブラスト | 塗装工事に当然に含まれる(唯一の明示注記・PDF p.160) | 下地調整のみを単独で請け負う場合の扱い |
| ウレタン塗膜防水・FRP防水 | 「塗膜防水工事」は防水工事の例示 | 塗装と防水の境界を論じた注記 |
| クロス貼り | 「壁紙」は内装仕上工事の内容に材料として明記 | 塗装の「布張り仕上工事」と内装仕上の「壁張り工事」の切り分け |
| 塗り壁・吹付け仕上げ | 左官の材料は「壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等」(PDF p.158)/塗装の材料は「塗料、塗材等」(PDF p.160) | 塗装と左官の境界を論じた注記 |
| 橋梁・鉄塔の塗り替え | 「鋼構造物塗装工事」は塗装工事の例示/2級土木(鋼構造物塗装)は塗装の資格として資格一覧表に掲載 | 塗装と鋼構造物の境界を論じた注記 |
| 区画線・路面標示 | 「路面標示工事」は塗装工事の例示/技能検定「路面標示施工」は塗装の資格として資格一覧表に掲載 | 舗装工事との区分を論じた注記 |
この表の右列(記載がない事項)が、まさに個別相談で判断すべき領域です。手引に答えが書いていない以上、契約書・見積書・工事の実態を見ずに決めることはできません。
3. 塗装工事業の許可要件(全体像と、塗装で詰まる2つの要件)
塗装工事業だからといって、許可要件そのものが特別になるわけではありません。要件は全業種共通の次の6つです。
| 要件 | 概要 | 塗装工事業での詰まりやすさ |
|---|---|---|
| 経営業務の管理責任者(経管) | 建設業の経営について5年以上の経験を持つ常勤役員等を置くこと | ★★★ 個人事業から法人成りした直後の事業者で問題になりやすい |
| 営業所技術者 | 営業所ごとに、資格または実務経験を満たす技術者を専任で置くこと | ★★★ 塗装は建築士・技術士が使えないため、選択肢が限られる |
| 誠実性 | 請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと | ★ |
| 財産的基礎 | 500万円以上の資金調達能力、自己資本500万円以上、直前5年間の許可継続営業実績のいずれか | ★★ |
| 欠格要件に該当しないこと | 拘禁刑以上の刑・一定の法令違反による罰金刑等から5年を経過しない者等に該当しないこと | ★ |
| 社会保険への適切な加入 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入 | ★★ 職人の社会保険整備が後回しになっている場合に影響 |
(要件の根拠:手引 PDF p.7〜10)
要件の詳細は建設業許可の6つの要件(自社が取れるか診断)に集約していますので、本記事では塗装工事業で相談が集中する2つの要件だけを取り上げます。
3-1. 経営業務の管理責任者——法人成り直後がいちばん危ない
経管は、建設業の経営について5年以上の経験を持つ常勤役員等を置く要件です(詳細は経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法)。
塗装業で多いのは、「個人事業主として15年やってきて、去年法人化した」というケースです。個人事業主としての経営経験も期間に算入できますが、それを証明する書類が必要です。岡山県の営業所調査では、確定申告書の控え(税務署の収受印があるもの等)や所得証明で確認されます(手引 PDF p.17)。「確定申告は税理士任せで手元に控えがない」「収受印のない控えしか残っていない」というパターンは頻繁に発生しますので、書類の棚卸しは申請準備で最初にやるべき作業です。経管を確保できない場合の打開策は経営業務の管理責任者がいない場合はどうする?にまとめています。
3-2. 営業所技術者——塗装工事業では選択肢が限られる
営業所技術者を満たすルートは、①資格ルート(塗装工事業に対応する資格を持つ人を置く→4章)と②実務経験ルート(塗装工事の実務経験を書類で証明する→5章)の2つだけです。そして冒頭でお伝えしたとおり、塗装工事業では建築士も技術士も使えません。これが塗装工事業の最大の特徴であり、他業種向けの一般的な解説をそのまま当てはめると行き違いが起きやすい部分です。
なお、必要書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧|新規・一般、財産的基礎の500万円と残高証明の実務は建設業許可の財産的要件|500万円・残高証明の準備をご覧ください(財産的基礎の500万円は、1章で扱った請負金額500万円とはまったく別の話ですので混同しないでください)。
4. 営業所技術者になれる資格——塗装工事業の対応資格一覧
ここが本記事の中核です。営業所技術者を資格で満たせるかは、岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)の資格一覧表(PDF p.163〜164)で確認します。以下では、塗装工事業(業種コード17)に該当し得る資格を、根拠法令ごとに整理します。
★先にお読みください:資格一覧表は、建設業29業種を横に、多数の資格を縦に並べた大きなマトリクス(一覧表)です。どの資格が塗装工事業の列で「一般許可のみ(○)」なのか「特定許可も取得できる(◎)」なのか、また合格後に何年の実務経験が上乗せで必要かは、資格ごと・等級ごと・種別ごと・合格年度ごとに異なり、表のマス目を1つずつ読み解く必要があります。本記事は該当し得る資格の「所在」を示すものであり、個別の可否・必要年数までは断定しません。お手元の合格証明書の現物と、手引 PDF p.163〜164 の塗装工事業の列とを突き合わせて確認してください(資格の種別・等級・合格年度を取り違えると「その資格では営業所技術者になれない」という実害に直結します)。判断に迷う場合は無料相談でお預かりします。
4-0. 表の読み方(手引の凡例)
資格一覧表のマス目に入る記号は●・◎・○の3種類で、手引の凡例は次の意味を与えています(PDF p.164)。●は網掛けされた指定建設業でも特定許可を取得できること、◎は特定許可も取得できること、○は一般許可が取得できること(このうち指定建設業以外の業種については、指導監督的実務経験があれば特定も取得できる)を表します。この凡例そのものを表の構造から読み解く手順は土木一式工事の建設業許可で扱っていますので、記号の理解に迷う場合はそちらもご覧ください。
塗装工事業の列は網掛けされていません。これは塗装工事業が指定建設業ではないことを意味します。指定建設業は土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種で(手引 PDF p.11)、塗装工事業はここに含まれません。○についての上記の説明のとおり、指導監督的実務経験があれば特定建設業の許可も視野に入る(詳細は4-6)というのが、この事実の実務上の意味です。
4-1. 建設業法(技術検定)の資格
技術検定系では、施工管理技士(土木・建築・造園)とその施工管理技士補が、塗装工事業の営業所技術者になれる資格として資格一覧表に掲げられています(手引 PDF p.163〜164)。ただし、同じ「施工管理技士」でも、1級か2級か・種別(土木/建築/仕上げ/躯体 など)・技士補かどうか・合格年度によって、塗装工事業でそのまま使えるのか、合格後に何年の実務経験が上乗せで必要かが変わります。手引はこの上乗せ年数を、次の注記で定めています。
*12 合格後3年間の実務経験が必要です(実務経験証明書の添付が必要)。
*13 合格後5年間の実務経験が必要です(実務経験証明書の添付が必要)。
(手引 PDF p.164)
つまり、施工管理技士補や2級の一部には合格後3年または5年の実務経験が上乗せで必要になるものがあります。どの資格がどの扱いになるか(*12なのか*13なのか、あるいは上乗せ不要なのか、一般許可のみか特定許可も可か)は、資格一覧表(PDF p.163〜164)で塗装工事業の列を1マスずつ照合し、合格証明書の等級・種別・合格年度と突き合わせて個別に確認してください。本記事ではマス目の記号を断定的に転記しません(種別・合格年度の取り違えが実害に直結するためです)。
特に取り違えやすいのが「2級建築施工管理技士」の種別です。同じ2級建築施工管理技士でも、種別が「仕上げ」なのか「建築」「躯体」なのかで扱いが分かれ得ます。「2級建築施工管理技士を持っている」というだけでは判断できず、合格証明書に記載された種別・合格年度まで確認してはじめて、塗装工事業の営業所技術者になれるか(上乗せの実務経験が要るか)が決まります。現物をお持ちのうえでご相談ください。
4-2. 職業能力開発促進法(技能検定)の資格
塗装工事業には、技能検定(技能士)で営業所技術者になれるという厚みがあります。現場叩き上げの塗装業者にとって、ここが最も現実的な選択肢になることが少なくありません。手引の資格一覧表で、塗装に関係する技能検定として掲げられているのは、次のような資格です(手引 PDF p.164)。
- 塗装・木工塗装(工)(コード88)
- 建築塗装(工)(コード89)
- 金属塗装(工)(コード90)
- 噴霧塗装(コード91)
- 路面標示施工(コード67)
これらの技能検定で塗装工事業の営業所技術者になれるか、また合格後に上乗せの実務経験が必要かは、資格一覧表(PDF p.163〜164)で塗装工事業の列を照合し、合格証書の等級・合格年度と突き合わせて個別に確認してください。塗装工事業は指定建設業ではないため、一般建設業に加え、指導監督的実務経験があれば特定建設業も視野に入ります(4-6)。
技能検定に関する注記は次のとおりです(手引 PDF p.164)。
*5 職業能力開発促進法による技能検定のうち「2級」資格取得後3年間(平成15年度以前の合格の場合には1年)の実務経験が必要です(実務経験証明書の添付が必要)。
*11 昭和48年改正政令による改正後の塗装とするものにあっては、選択科目をどの作業としても「塗装」に該当します。
2つの注記の実務的な意味
- *5(等級による差):手引の注記*5は、技能検定のうち「2級」についてのみ、資格取得後3年間(平成15年度以前の合格の場合は1年)の実務経験を求めています。1級について実務経験を求める記載は手引にありません(*5は等級「2級」に対して付された注記です)。ベテランの2級技能士であれば、平成15年度以前の合格として短縮規定に該当する可能性がありますので、合格証書の等級と合格年度を現物で確認したうえで、必要年数を個別にご確認ください。
- *11(選択科目を問わない):昭和48年改正政令後の「塗装」の技能検定であれば、選択科目がどの作業であっても「塗装」に該当します。技能検定は作業ごとに選択科目が分かれますが、塗装についてはこの点で融通が利く、ということです。
4-3. その他(講習修了証)
登録基幹技能者(資格コード36)も、資格一覧表に営業所技術者になれる資格として掲げられています(手引 PDF p.164)。ただし、これは注記*8が付されており、塗装工事業に使えるかどうかは修了証の記載しだいです。注記*8は次のとおりです(手引 PDF p.164)。
*8 受講した登録基幹技能者講習の種類によって、要件を満たす者と認められる建設業の種類は異なります。また、登録基幹技能者講習修了証の表面に「この者は、(建設業の種類)について、建設業法第26条第1項の主任技術者の要件を満たす者であると認められます。」との記載があることが必要です
つまり、登録基幹技能者であればどれでもよいわけではなく、修了証の表面に「塗装工事業について主任技術者の要件を満たす」旨の記載があるかを確認する必要があります。修了証の現物を見ずに判断できない資格です。
4-4. ★塗装工事業で「使えない資格」——建築士・技術士
ここが本記事で最も強調したい点です。手引の資格一覧表(PDF p.163)で、塗装工事業の欄が空白=使えない資格は次のとおりです。
| 根拠法令 | 資格 | 塗装工事業での可否 |
|---|---|---|
| 建築士法 | 1級建築士(コード37)/2級建築士(38)/木造建築士(39) | ✕ 使えない(塗装欄は空白) |
| 技術士法 | 技術士の全区分(コード41〜54) | ✕ 使えない(塗装欄は空白) |
このほか、電気工事士法・電気事業法・電気通信事業法・水道法・消防法にもとづく資格(電気工事士、電気主任技術者、電気通信主任技術者、給水装置工事主任技術者、消防設備士等)も、いずれも塗装工事業の欄は空白です。
「設計事務所を兼ねていて1級建築士がいる」「技術士を採用した」という会社でも、その資格で塗装工事業の営業所技術者を満たすことはできません。管工事業や電気工事業では技術士が有効に働く場面がありますが、塗装工事業では技術士法の資格は1区分も使えません。
したがって塗装工事業で営業所技術者を確保するルートは、実質的に①施工管理技士(土木・建築・造園)または技士補 ②塗装系の技能検定を持つ職人 ③登録基幹技能者 ④実務経験10年(→5章)の4つになります。
4-5. 学歴による実務経験の短縮——塗装工事業の指定学科は2つ
学歴があると、実務経験の必要年数を短縮できます。塗装工事業で認められる指定学科は「土木工学」と「建築学」の2つです(手引 PDF p.166)。
| 学歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 高等学校・中等教育学校・専修学校の専門課程で指定学科を修了して卒業 | 卒業後5年以上 |
| 大学(短期大学を含む)・高等専門学校・専修学校の専門課程(専門士・高度専門士に限る)で指定学科を修了して卒業 | 卒業後3年以上 |
| 指定学科なし | 10年以上(→5章) |
(手引 PDF p.9・p.165)
指定学科について手引は、「土木工学」には農業土木・鉱山土木・森林土木・砂防・治山・緑地または造園に関する学科を含むこと、および同一名称でなくとも内容・実態が同程度であれば構わないことを補足しています(PDF p.166)。
実務上の意味:工業高校の建築科・土木科の卒業者は、5年で足りるということです。卒業証明書1通で必要年数が半分になる可能性があるわけですから、「10年は無理そうだ」と諦める前に、まず学歴を確認してください。なお、学歴+実務経験のルートを使う場合は、卒業証明書(原本)の添付が必要です(卒業証書の写しは原則不可/手引 PDF p.83)。
4-6. 特定建設業を取る場合(塗装工事業は指定建設業ではない)
元請として、1件の工事について下請に出す総額が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)になる場合は、特定建設業の許可が必要です(手引 PDF p.10・p.11/金額はいずれも税込で、元請負人が提供する材料等の価格は含めません)。塗装工事業は指定建設業ではないため、特定営業所技術者は次のいずれかで満たせます(PDF p.11)。手引が「指定建設業以外の業種の場合」として掲げるのは、ア=1級の国家資格者または技術士、イ=一般建設業の営業所技術者等となる資格要件を満たしたうえで、許可を受けようとする業種について発注者から直接請け負う請負代金の額が4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務の経験を持つ者、の2ルートです。なお指定建設業の側でこの「イ」が封じられる仕組みは、前述の土木一式工事の記事で詳しく整理しています。
ここが塗装工事業の有利な点です。指定建設業(電気・管・鋼構造物など)では特定建設業の技術者が1級国家資格者・技術士・大臣認定者に限られ、実務経験では代替できません。しかし塗装工事業では「イ」の指導監督的実務経験2年のルートが使えます。この経験は元請として請け負った4,500万円以上の工事1件ごとに記載して証明し(様式第10号/PDF p.85)、下請工事の経験では要件を満たしません。
4-7. ★「社長=職長」の会社がいちばん詰まるところ——営業所技術者の専任性
塗装業の相談で、資格の話が片付いた直後に必ず出てくるのが「その資格を持っているのは社長本人(または唯一の職長)だが、現場にも出たい」という問題です。小規模な塗装会社では、営業所技術者になれる資格を持つ人が現場の主戦力を兼ねているのが普通だからです。
前提として、営業所技術者は専任——手引の定義では「その営業所に常勤して専らその職務に従事すること」——でなければなりません(PDF p.8)。一方、工事現場には主任技術者を配置する義務があり、税込4,500万円(建築一式は9,000万円)以上の公共性のある工作物の工事では、主任技術者はその現場ごとに専任で、他の工事との掛け持ちができません(PDF p.21)。
そして岡山県の「審査要領」(令和7年9月1日)には、この2つがぶつかったときにどう扱われるかが明記されています。工事経歴書の提出時に配置技術者について次の3つの違反があった場合、業務改善報告書を徴したうえで申請等を受け付けるという運用です(岡山県「審査要領」令和7年9月1日 PDF p.7)。1つ目は、建設業法第26条第3項により技術者の専任が必要な工事に、営業所技術者等を配置していた場合。2つ目は、専任が必要な工事に配置している技術者を、その工事の工期内に他の工事の技術者としても配置していた場合。3つ目は、営業所技術者等を隣接県を超える遠方の工事に技術者として配置していた場合です。この運用を手引の常勤規定と突き合わせた整理は建築一式工事の建設業許可にまとめていますので、あわせてご覧ください。
つまり、営業所技術者を、専任が必要な工事の現場技術者として配置することは想定されていません。しかも3つ目のとおり、隣接県を超える遠方の工事に営業所技術者を出すこと自体が指摘の対象になります。これは許可の取得時だけでなく、取得後に毎年提出する工事経歴書でチェックされ続ける点が重要です。
実務上の意味:塗装工事業で許可を取るときは、「誰を営業所技術者に据えるか」を資格の有無だけで決めないでください。社長1人に資格が集中している会社では、①資格者を増やす(技能検定は現実的な選択肢です)②実務経験10年ルートで別の人を営業所技術者に立て、社長は現場に専念する——といった組み立てを申請の前段階で設計しておく必要があります。許可を取った後に「現場に出せない」と気づくと体制の組み直しになります。答えは会社の人員構成によって変わりますので、無料相談で実情をお聞かせください。
5. 実務経験ルートの証明と通算ルール
資格がない場合、塗装工事業について10年以上の実務経験で営業所技術者の要件を満たします(手引 PDF p.9 ⑤)。塗装業では、この10年ルートを使う事業者が最も多いのが実情です。
そしてこの章が、塗装工事業の申請で最も時間がかかり、最も差がつくところです。証明の考え方そのものは業種共通ですので、より詳しい全体像は営業所技術者(旧:専任技術者)の実務経験10年を証明する方法をご覧ください。本章では、塗装工事業の申請で実際に問題になるルールに絞って整理します。
5-1. 何で証明するのか——「経験があった」では通らない
実務経験は、様式第9号(実務経験証明書)を作成して証明します(監理技術者資格者証で確認できる場合は、その写しで代えられます/手引 PDF p.82)。重要なのは、様式第9号を出して終わりではないという点です。申請書・届出書が受け付けられた後には別途調査が実施され、そこで証明書に書いた工事について契約書(原本)、または注文書(原本)+請書(写し)等の提示を求められて工事内容が確認されます。これらを揃えられなければ実務を経験したことの証明ができない、というのが手引の定めです(手引 PDF p.165)。この後日確認そのものの進み方は、前述の土木一式工事の記事で詳しく扱っています。
つまり、記載した工事の裏付け書類(原本)を、後日の営業所調査で現物提示できるかが勝負です。塗装業では、小口の工事が数多く積み上がる一方、注文書・請書のやりとりを省いて口頭と請求書だけで回してきたというケースが珍しくありません。ここが最大の関門です。
5-2. 期間の通算ルール——空白が「3か月」か「4か月」かで結果が変わる
実務経験期間の通算について、手引は明確な基準を置いています。証明書に書いた工事の工期と次の工期のあいだにできた空白が3か月以内であれば、実務経験は継続しているものとして扱われます。逆に、空白が4か月以上になると、その期間は控除して指定年数を数えることになります(手引 PDF p.83・記載例あり)。この3か月/4か月の線引きをどう当てはめるかは防水工事業の建設業許可|要件・対応資格と実務経験で詳しく扱っています。
これは実務に直結する重要なルールです。塗装工事は気候の影響を受ける工種であり、冬期や梅雨期に工事が途切れることがあります。つまり、単純に「最初の工事から最後の工事まで10年」ではなく、4か月以上の空白を控除した実質の期間で10年を満たす必要があるということです。手元の工事記録を時系列に並べたとき、4か月以上の空白がどこにいくつあるか——ここを最初に確認すると、必要な年数の見通しが立ちます。
5-3. 誰が証明するのか——自分で自分を証明することはできない
証明は原則として実務経験を積んでいた時期の使用者が行いますが、手引は次の2点も明記しています(PDF p.82)。1つ目は証明者の制限で、個人事業主が自分自身を証明することはできず、法人成りをした場合も法人を設立する前のことについては証明する能力がないとされ、この場合は同業他者2者による証明が必要になります。2つ目は、その同業他社に求められる条件です。継続して建設業を営んでいることは必要ですが、許可を持っているかどうかも、どの業種を営んでいるかも問われません(同)。つまり、無許可の同業者でも証明者になれるということです。
塗装業は一人親方からの独立・法人成りが非常に多い業種です。そのため「個人事業として10年やってきて、法人化してから許可を取りたい」という最頻パターンが、そのまま同業他者2者証明が必要なケースに当たります。組み立て方は次のとおりです。
- 証明を頼む相手は「実態を知っている人」に限られる。手引は許可の有無・営業業種を問わないとしていますが、証明後も工事請負契約書等による裏付け確認が別途行われます。当時の取引や工事の実態を実際に把握している同業者でなければ成り立ちません(実務経験証明書は虚偽記載が許可の取消し・罰則につながり得る書類です)。
- 証明書だけでは足りない。2者の証明をもらっても、工事請負契約書等の書類確認ができなければ許可は取得できません。元請だった会社に注文書の控えが残っていないか、併せて確認します。
- 早い段階で相手を洗い出す。廃業・代替わりで連絡が付かなくなる前に、該当しそうな相手をリストアップしておくと進めやすくなります。
5-4. 実務経験に含まれる範囲と、年数の確認方法
実務経験の範囲と年数の確認方法についても、手引に定めがあります(いずれも PDF p.82)。全業種共通の内容ですので詳細は営業所技術者(旧:専任技術者)の実務経験10年を証明する方法に譲り、ここでは塗装業で効いてくる2点だけを挙げます。
- 見習い期間も算入できる:手引は「これらの技術を習得するためにした見習中の技術的経験も含まれます」と明記しています(雑務のみの経験は含まれません)。「入社して半人前だった最初の2年は数えられないだろう」と思われがちですが、そうではありません。
- 年数は原則として社会保険加入期間で確認される:手引は「原則として社会保険加入期間の年月を記入してください」とし、未加入期間については出勤簿・賃金台帳・源泉徴収票・所得証明書の写しの提示を求めています。塗装業は社会保険の整備が近年になって進んだ業種でもあり、10年前の期間ほどこれらの書類で補う必要が出てきます。年数が経つほど揃えにくくなるため、思い立った時点で着手するのが最も安全です。
5-5. 業種をまたいだ通算はできない——塗装は振替の対象外
実務経験の通算について、絶対に押さえておくべき制限が2つあります。
制限①:同一期間に複数業種を並行して計上できない
手引は様式第9号の作成枚数について、申請する業種ごとに分けて作ること、そして1人が複数の業種をいずれも実務経験で担当する場合には担当期間の重複を認めないことを定めています。資格を持たない人が2業種を担当するなら、業種ごとに10年ずつ、合わせて20年分の経験を証明しなければならないという趣旨です。同一の期間に複数の業種を並行して計上できない旨は、別の箇所でも重ねて示されています(手引 PDF p.82・p.165)。この制約を正面から扱っているのは、前述の防水工事業の記事です。
つまり、塗装工事業と防水工事業の2業種を1人の実務経験で取ろうとすると、原則として合計20年分の経験が必要になります。2-1で触れた「外壁塗装と防水を一緒に請けている」事業者が、両方を実務経験で押さえようとすると、ここで行き詰まります。
制限②:塗装工事業は実務経験の「振替(緩和)」の対象外
手引には、技術的な共通性がある業種間で実務経験を振り替えられる緩和規定があり、認められる範囲は次のとおりです(手引 PDF p.167)。
① 一式工事から専門工事への振替え(矢印の方向にのみ可)
土木一式 → とび・土工、しゅんせつ、水道施設、解体
建築一式 → 大工、屋根、内装仕上、ガラス、防水、熱絶縁、解体
② 専門工事間での振替え(両方向に可)
大工 ←→ 内装仕上/とび・土工 ←→ 解体
このリストに塗装工事業は登場しません。建築一式から振り替えられる先には防水・内装仕上は入っていますが、塗装は入っていない点に注意してください。したがって、塗装工事業の実務経験は、塗装工事業として積んだ期間で証明するほかありません。なお緩和の対象は建設業法第7条第2号ロ該当(10年以上の実務経験)に限られ、同条第2号イ該当(学歴+実務経験)では認められません。
※ 手引に「塗装工事業は振替の対象外」と明記した文言があるわけではなく、振替が認められる業種のリストに塗装が挙げられていないという事実にもとづく整理です。
5-6. 実務経験の証明で、最初にやるべき3つの確認
10年ルートを検討する場合、次の3点を先に確認すると見通しが立ちます。
- 学歴:工業高校の建築科・土木科の卒業なら、10年ではなく5年で足りる可能性があります(4-5)。卒業証明書が取得できるかを確認してください。
- 資格:技能検定(等級・合格年度)、施工管理技士(種別)、登録基幹技能者の修了証を現物で確認します。等級・種別・合格年度の組み合わせで必要年数が変わります(4-1・4-2)。
- 工事書類の棚卸し:注文書・請書・契約書の原本がどの年のぶんまで残っているか。4か月以上の空白がどこにあるか(5-2)。
まず資格と学歴、次に書類——この順番で確認すると、「10年分の書類を集める」という最も重い作業を回避できる場合があります。
6. 岡山県での手続き——提出先・営業所調査・費用と期間
ここからは、岡山県で実際に申請する場合の手続きです。塗装工事業に限らず全業種に共通しますが、岡山県特有の運用が複数あります。
6-1. 申請書の提出先は「県庁6階」の一元窓口
まず、最も誤解されている点です。建設業許可の申請書・変更届は、県民局では受け付けていません。
岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)
〒700-8570 岡山市北区内山下2-4-6/直通 086-226-7463
窓口受付時間 9:00〜11:30、13:00〜16:30(閉庁日を除く)
郵送での提出も受付(送付先は同じ)
手引には「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記されています(PDF p.168)。倉敷市・津山市など県庁から距離のある地域の事業者にとっては、郵送または電子申請が現実的な選択肢になります(事業承継等の認可申請は電子申請できません/PDF p.20)。
そして、岡山県の運用で最も重要なのが次の一文です。
事前審査は一切行いません。正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。
(手引 PDF p.16)
つまり、「窓口で相談しながら少しずつ整えていく」ことができません(加えて11:30〜13:00と16:30以降は窓口閉鎖で、審査の途中であっても窓口閉鎖の時刻で審査は終了します)。塗装工事業のように業種区分の判断と実務経験の証明という2つの論点を同時に抱える申請では、この運用が実際の負担として効いてきます。
6-2. 県民局が担うのは「営業所調査」
申請そのものは本庁一元ですが、営業所調査は所轄の県民局が担当します。手引は「営業所調査については、許可申請受付後、半月程度で所轄の県民局から実施の連絡を行います」としています(PDF p.17)。担当するのは営業所の所在地を所轄する県民局建設部(備前・備中・美作の3県民局)で(PDF p.168)、岡山市は備前県民局、倉敷市は備中県民局です。市町村ごとの担当区域と地域別の進め方は岡山市で建設業許可を取るには・倉敷市で建設業許可を取るにはをご覧ください。
なお、営業所調査が早く終わったからといって許可が早く出るわけではありません。本庁の調査は別途進行しているためです(PDF p.17)。
6-3. 営業所調査で確認されるもの
確認項目は経管の経験・常勤性・財務内容まで多岐にわたりますが(手引 PDF p.17〜19)、塗装業の申請で実際に詰まるのは次の2点です。
| 確認項目 | 確認されるもの | 塗装業で詰まる理由 |
|---|---|---|
| 営業所の所在 | 看板(容易に確認できるもの)、机、電話及びファクシミリ、営業所の賃貸借契約書(原本)等 | 自宅の一室・作業場の隅を事務所にしている形態が多く、看板とFAXが未整備のことが多い |
| 営業所技術者の実務経験 | 様式第9号に記入した工事の請負契約書(原本)又は注文書(原本)+請書(写し)等 | 小口工事を口頭と請求書だけで回してきた場合、記載した工事の原本が出せない |
そして手引は、はっきりこう書いています。
※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません。
(手引 PDF p.17)
塗装業で注意していただきたいのが、営業所そのものの要件です。手引は「営業所は居住部分と共用することはできません」「賃貸借契約を締結している場合には、契約書上で営業活動に利用することが認められていることが必要です」と定めています(PDF p.17)。自宅の一室や作業場の隅を事務所にしている形態では、ここで引っかかることがあります。看板・机・電話・FAXという物理的な備えも、調査当日までに整えてください。
6-4. 費用と期間
| 項目 | 金額・期間 |
|---|---|
| 岡山県知事許可・新規(許可換え新規・般特新規を含む)の法定手数料 | 90,000円 |
| 岡山県知事許可・更新/業種追加の法定手数料 | 50,000円 |
| 当事務所の報酬(法人・新規) | 132,000円(税込目安)/合計 222,000円 |
| 当事務所の報酬(業種追加=既存許可に塗装工事業を足す) | 55,000円(税込目安)/合計 105,000円 |
| 申請受付から許可まで | 特に問題がないケースで概ね2か月程度 |
(法定手数料の出典:手引 PDF p.14/期間の出典:手引 PDF p.16)
※ 当事務所の報酬額はいずれも税込の目安です。業種数・営業所数・実務経験証明の分量など案件内容により変動します。正確な金額は事前にお見積りをお出ししたうえで着手しますので、まずは無料相談でご確認ください。証明書等の取得実費は別途必要です。
法定手数料について、実務で誤解されやすい点を2つ補足します。
- 法定手数料は、申請する業種の数と関係ありません。塗装工事業1業種でも、塗装+防水+内装仕上の3業種でも、新規なら90,000円です(手引 PDF p.14)。
- 納付は「岡山県手数料等(POS)納付連絡票」を印刷して収納専用窓口で支払い、納付済証を様式第1号 別紙三に貼付する方式です(手引 PDF p.14)。納付方法は令和5年10月以降に変更されていますので、必ず岡山県の最新の手引でご確認ください(本記事は令和7年9月1日改訂版にもとづいています)。
費用の詳しい内訳(証明書の取得実費・条件別の総額)は建設業許可の費用はいくら?、行政書士報酬の考え方は建設業許可を行政書士に依頼する費用相場にまとめています。
なお、「標準処理期間◯日」と断定できる記載は手引にありません。手引にあるのは「特に問題がないケースで概ね2か月程度かかります」という記述です(PDF p.16)。そしてこの2か月は申請を受け付けてもらってからの期間ですので、実際にはここに書類収集の期間が加わります。とくに実務経験10年ルートでは、必要な期間は書類がどれだけ残っているかで大きく変わります(注文書・請書の原本が揃っていれば短く、同業他者2者証明から組み立てるなら長くなります)。「元請から◯月までに許可を」と期日が決まっている場合は、逆算のためにも早い段階でご相談ください。
7. 許可のその先——公共工事・経審・毎年の維持管理
7-1. 塗装工事業と公共工事の相性
2章で見たとおり、橋梁・鉄塔・水門などの鋼構造物塗装工事も、道路の路面標示工事も、塗装工事業の例示に含まれています(手引 PDF p.160)。これらはいずれも公共インフラの維持補修に直結する分野です。
民間の外壁塗装は景気と住宅着工の影響を受けますが、インフラの塗り替え・重防食塗装・区画線の引き直しは、維持管理の必要から継続的に発生します。塗装工事業の許可取得は、民間直請の高単価案件を受けられるようになると同時に、公共工事という別の収益柱への入口を開くことでもあります。ただし許可を取っただけでは入札には参加できず、経営事項審査(経審)と入札参加資格申請という段階が続きます。その順番と逆算は公共工事に入りたい|建設業許可が入札参加への第一歩をご覧ください。
7-2. 取引先要求がきっかけの場合
塗装業で許可取得のきっかけとして最も多いのは、取引先からの要求です。1件500万円未満の工事しかしていなくても、「協力会社として登録するには建設業許可が必要」「取引口座の開設条件になっている」と言われるケースが増えています。この文脈での進め方は元請から建設業許可を求められたら|下請が取る手順・ゼネコンの協力会社になるには|取引口座開設と建設業許可をご覧ください。
7-3. 塗装業こそ「更新切れ」の痛手が大きい
建設業許可は取って終わりではありません。有効期間は許可日から5年間で、毎年の事業年度終了報告(決算変更届)と5年ごとの更新が続きます(手引 PDF p.21〜23)。
塗装工事業で特に強調しておきたいのは、実務経験10年ルートで取った許可ほど、更新切れの代償が大きいという点です。更新申請をせずに有効期間が満了すると、改めて新規に許可を取り直すことになり(手引 PDF p.21)、法定手数料が50,000円から90,000円に上がるだけでなく、10年分の実務経験の証明を最初からやり直すことになります。5年前には残っていた注文書の原本が、5年後にも残っているとは限りません。5章で苦労して組み立てた証明を、ゼロから再現できるかという問題です。
塗装業は現場が忙しく、事務手続きが後回しになりやすい業種でもあります。当事務所では、毎年の決算変更届・5年ごとの更新・経審・入札参加資格の更新までをまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。期限管理を含めて定額でお任せいただくほうが、結果的に負担が軽くなるケースが多くあります。
経審そのものについては経審申請を岡山で依頼するなら、他の業種の許可についてはとび・土工工事業・電気工事業・管工事業・解体工事業の各記事をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
塗装工事業の建設業許可で、他業種と違う対応が必要になるポイントを改めて整理します。
- 塗装工事業の範囲は広い。塗装・溶射・ライニング・布張り仕上・鋼構造物塗装・路面標示が例示で、下地調整とブラストは塗装に当然に含まれます(手引 PDF p.160)。橋梁の塗り替えも区画線も塗装工事業の領域です。
- 区分の境界は、手引に答えが書かれていない部分がある。塗膜防水は防水工事の例示に置かれ、壁紙は内装仕上の内容に明記されていますが、塗装との境界を直接論じた注記は手引にありません。契約の実態を見て個別に判断すべき領域です。
- ★塗装工事業では、1級建築士も技術士も営業所技術者になれません。使えるのは施工管理技士・施工管理技士補・塗装系の技能検定・登録基幹技能者です(手引 PDF p.163〜164)。
- 2級でも種別によって扱いが違う。施工管理技士は、等級・種別・合格年度によって、塗装工事業でそのまま使えるか、上乗せの実務経験が要るかが変わります。資格一覧表のマス目は種別・合格年度の取り違えが実害に直結するため本記事では断定的に転記せず、合格証明書の種別と合格年度を手引の資格一覧表(PDF p.163〜164)と現物で照合して、個別に判断することになります。
- 指定学科は土木工学と建築学の2つ。工業高校の建築科・土木科の卒業なら10年ではなく5年で足ります(手引 PDF p.166)。
- 実務経験の通算には明確なルールがあります。空白期間が4か月以上あればその期間は控除され、個人事業主は自分自身を証明できず、塗装工事業は業種間の実務経験振替の対象外です(手引 PDF p.82〜83・p.165・p.167)。
- 「誰を営業所技術者に据えるか」は資格の有無だけで決めない。営業所技術者は専任であり、岡山県の審査要領は専任が必要な工事に営業所技術者を配置していた場合等を業務改善報告書の対象としています(審査要領 PDF p.7)。社長1人に資格が集中している会社ほど、申請前の体制設計が要ります。なお塗装工事業は指定建設業ではないため、特定建設業では指導監督的実務経験2年のルートが使えます(手引 PDF p.11)。
そして最も申し上げたいのは、まず資格と学歴を確認してくださいということです。10年分の書類集めに取りかかる前に、手元の合格証明書の種別を確認し、卒業証明書が取れるかを調べるだけで、必要な作業量が変わることがあります。
「自社の工事は塗装工事業で合っているのか」「うちの職人の資格で営業所技術者を満たせるのか」「10年分の注文書は残っていないが証明できるのか」——こうしたご相談は、無料相談で個別に整理できます。
塗装工事業の許可のご相談は無料相談から(30秒入力のフォーム)
自社の工事が塗装工事業に該当するか、営業所技術者を資格で満たせるか実務経験が必要かを、建設業特化の行政書士が診断します。LINEでは、合格証明書や卒業証明書に記載された等級・種別・合格年度などをお知らせいただければ、要件を満たすかどうかの当たりを付けられます(お預かりした資格・学歴に関する情報はご相談対応の目的にのみ使用し、行政書士の守秘義務に基づいて管理します)。お電話は070-8567-3197。
