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建設業許可の誠実性の要件|不正・不誠実な行為とは【岡山】

建設業許可の誠実性の要件|不正・不誠実な行為とは【岡山】

建設業許可の要件のなかで、説明がいちばん短いのに、いちばん問い合わせが多いのが「誠実性」です。

結論から言います。誠実性の要件とは、「請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」です。そして岡山県の手引が対象として掲げているのは、法人の場合は法人そのもの・役員等・支店長など従たる営業所の代表者・支配人、個人の場合は事業主及び支配人です(手引 PDF p.9)。

ここからが実務で効く話です。誠実性には、それを証明するための専用の書類も、専用の誓約書もありません。 経営業務の管理責任者なら様式第7号、営業所技術者(旧:専任技術者)なら様式第9号や資格証、財産的基礎なら残高証明——というように、他の要件には「これを出せば示せる」という書類があります。誠実性だけが、それを持たないのです。

さらに言えば、岡山県の「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂・全210ページ)のなかで「誠実性」「不誠実」という語が登場するのは2か所だけです。ひとつは許可要件を並べた PDF p.9、もうひとつは巻末の監督処分基準 PDF p.204。「審査要領」(令和7年9月1日・全38ページ)に至っては1か所も出てきません。つまり、誠実性は「基準を読んで当てはめる要件」ではなく、申請書全体と会社の実態から評価される要件なのです。

本記事では、岡山県で建設業に特化する行政書士が、①誠実性の要件そのものの読み方、②誰が対象になるのか、③よく混同される欠格要件とはどこが違うのか、④岡山県の監督処分基準が示す「不誠実な行為」の輪郭、⑤申請書のどこに現れるのか——を、手引と審査要領から引ける事実だけで整理します。

なお、欠格要件(建設業法第8条各号)の列挙と読み方、証明書2種の取得実務は本記事では扱いません。そちらは建設業許可の欠格要件とは|破産・前科があっても取れる?にまとめています。6つの要件の全体像は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)からご確認ください。

※ 誠実性の要件を満たすかどうかは、会社と関係者の個別の実態によって判断が分かれます。本記事は岡山県知事許可・一般建設業を前提とした一般的な整理であり、特定の方・特定の会社について結論を保証するものではありません。とくに刑事責任や過去の処分の評価に関わる見通しは、刑事事件に関わる点であれば弁護士にご相談ください。最終判断は有資格者(行政書士)または岡山県の担当窓口にご確認ください。

1. 誠実性とは——手引の条文をそのまま読む

1-1. 要件の本文

岡山県の手引は、一般建設業の許可要件を(1)経営業務の管理を適正に行うに足りる能力、(2)営業所技術者等、(3)誠実性、(4)財産的基礎、(5)欠格要件に該当しないこと——という順で並べています。このうち(3)が本記事の主題です(手引 PDF p.9)。

なお、手引の並びは(1)〜(5)の5項目ですが、(1)は①建設業に関し経営業務の管理経験等を有する常勤役員等を置くことと②適切な社会保険に加入していることという2つの要件で構成されています(手引 PDF p.7-8)。当サイトでは、この①と②を分けて数え、「建設業許可の6つの要件」として整理しています。どちらの数え方でも、誠実性は3番目に置かれる要件です。

「(3)誠実性

法人にあっては法人、役員等(※)、支店長など従たる営業所の代表者及び支配人が、個人にあっては事業主及び支配人が、請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です。」(手引 PDF p.9)

短い一文ですが、実務上の論点はすべてこの中に入っています。分解すると次の3つです。

  1. 誰について見るのか(法人/役員等/支店長など従たる営業所の代表者/支配人/個人事業主)
  2. 何について見るのか(請負契約に関しての行為)
  3. どういう状態を求めているのか(不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと)

1-2. 「〜でないこと」——満たす要件ではなく、当たってはいけない要件

まず押さえるべきは、誠実性が「◯◯を満たしていること」ではなく「◯◯でないこと」という形で書かれている点です。

経営業務の管理責任者であれば「5年以上の経験があること」、営業所技術者であれば「資格または実務経験があること」、財産的基礎であれば「500万円以上の資金調達能力があると認められること」(手引 PDF p.9)——いずれも積み上げて示す要件です。だから証明書類があります。

誠実性は逆で、何もなければ満たしているという構造です。積み上げるものがないので、証明書類も存在しません。この非対称性を理解しておかないと、「誠実性の書類は何を用意すればいいですか」という問いの答えが出ないまま準備が止まります。答えは「誠実性のためだけに用意する書類はありません」です。

1-3. 「請負契約に関して」——見られている範囲は限定されている

もうひとつ見落とされやすいのが、対象行為が「請負契約に関して」に限定されている点です。手引の条文は、私生活上の素行一般や、建設業と無関係な分野での振る舞いを直接の対象にしていません。

この「請負契約に関し」の範囲がどこまでかは、後述する監督処分基準(手引 PDF p.204)が明示しています。

「建設業者が請負契約に関し(入札、契約の締結・履行、契約不適合責任の履行その他の建設工事の請負契約に関する全ての過程をいう。)、社会通念上建設業者が有すべき誠実性を欠くものと判断されるものについては、次のとおり監督処分を行うこととする。」(手引 PDF p.204)

つまり、入札の段階から、契約後の不具合対応(契約不適合責任の履行)までが「請負契約に関し」の射程です。工事が終わったら終わり、ではありません。この点は §4-2 で詳しく見ます。

1-4. ★「誠実性」の語は、岡山県の資料に2か所しか出てこない

ここが本記事のいちばん重要な事実です。

  • 手引(全210ページ)で「誠実性」「不誠実」が登場するのは、PDF p.9(許可要件)と PDF p.204(監督処分基準)の2か所だけ
  • 審査要領(全38ページ)には、一度も登場しない

審査要領は、様式ごとに「何を確認するか」を細かく定めた文書です。常勤役員等の常勤性の認定、個人事業主補佐の経験の認定、営業所の実態確認——といった論点には、それぞれ具体的な運用が置かれています。にもかかわらず、誠実性には運用細目が一切置かれていないのです。

このことから、実務上は次のように理解しておくのが妥当です。

  • 誠実性は、チェックリストに当てはめて可否を出す要件ではない
  • したがって、「この事情があると誠実性を欠きます」「この事情なら該当しません」といった当てはめを、一次資料から機械的に導くことはできない
  • 一方で、輪郭を知る手がかりは監督処分基準(手引 PDF p.204)にある——ここに「社会通念上建設業者が有すべき誠実性を欠く」と判断される行為が類型で並んでいる

以降の章は、この理解の上に組み立てています。なお、手引・審査要領のいずれにも「不正な行為」「不誠実な行為」という語の定義規定は置かれていません。本記事は定義を創作せず、監督処分基準に並ぶ具体的な行為の類型から輪郭をつかむ方法をとります。

2. 誰が対象になるのか——「法人そのもの」まで含まれる要件

2-1. 対象者の一覧

手引 PDF p.9 の条文から対象者を抜き出すと、次のとおりです。

申請者の区分誠実性の対象になる者
法人① 法人そのもの ② 役員等 ③ 支店長など従たる営業所の代表者 ④ 支配人
個人① 事業主 ② 支配人

法人の場合、対象は最大で4カテゴリに広がります。代表者本人にまったく問題がなくても、役員のうち1人、あるいは支店長1人の事情で会社全体の要件に影響し得るという構造です。

2-2. 「役員等」とは(建設業法第5条第3号)

手引は「役員等」に注を付け、次のように定義しています。

「※役員等とは (建設業法第5条第3号)

役員(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくはこれらに準ずる者)又は相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し役員と同等以上の支配力を有するものと認められる者をいう。」(手引 PDF p.9)

ポイントは後半です。登記された取締役だけではありません。 相談役・顧問といった、登記簿に出てこない立場の人も「役員等」に入ります。

手引は、様式第1号 別紙1(役員等の一覧表)の説明のなかで、この範囲をさらに具体化しています(手引 PDF p.37)。要点だけ挙げると次のとおりです。

  • 役員に当たる:取締役、持分会社の業務を執行する社員、委員会設置会社の執行役、これらに準ずる者(法人格のある各種組合等の理事等)
  • 役員に当たらない:執行役員、監査役、会計参与、監事、事務局長等。ただし「業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等」は役員の対象になる
  • 役員ではないが「役員等」として一覧表に載る:相談役、顧問、総株主の議決権の100分の5以上を有する株主および出資の総額の100分の5以上に相当する出資をしている者(個人であるものに限る)——手引はこれを「株主等」と呼びます。加えて、役職の如何を問わず取締役と同等以上の支配力を有する者

役員等の名簿づくりそのものは、欠格要件の確認とまったく同じ作業になります。 誰を洗い出し、誰について証明書を取るのか、自己株式がある場合の5%の数え方といった実務は、建設業許可の欠格要件とは|破産・前科があっても取れる?に整理しています。本記事では、同じ名簿を誠実性の観点からどう見るかに絞ります。

2-3. ★誠実性だけが「法人そのもの」を名指ししている

対象者リストを見比べたときに、いちばん目を引くのが「法人にあっては法人」という書き出しです。

他の要件は「人」を見ます。経営業務の管理責任者は人、営業所技術者も人。欠格要件も、法人については「不正の手段により許可を受けた」「暴力団員等がその事業活動を支配する」といった法人自身の事由を列挙したうえで、「役員等、支配人、従たる営業所の代表者のうちに該当する者がいるもの」という形で人の側に広げる構造です(手引 PDF p.10)。

誠実性は、その先頭に法人そのものを置いています。読み方としては、「会社としての請負契約の運び方が問われる」ということです。役員個人の事情に還元されない、組織としての契約実務——見積の出し方、契約書の交わし方、工期や施工の管理、不具合が出たときの対応——が評価の対象になり得る、と理解しておくのが実務的です。

2-4. 支店長・支配人——従たる営業所を置く会社は対象が増える

「支店長など従たる営業所の代表者及び支配人」は、建設業法施行令第3条に規定する使用人(いわゆる令3条の使用人)と実質的に重なります。手引は令3条の使用人を「支配人及び支店又は常時建設工事の請負契約を締結する営業所の代表者(支配人である者を除く。)」と定義しています(手引 PDF p.87)。

つまり、主たる営業所だけで営業している会社と、支店・営業所を置いている会社とでは、誠実性の対象者の数がそもそも違います。従たる営業所を1つ増やすことは、営業所技術者を1人配置することであり、令3条の使用人を1人立てることであり、そして誠実性・欠格要件の確認対象を1人増やすことでもあります。

従たる営業所を置くときの要件セット(営業所技術者の配置と令3条の使用人)や、様式第11号の実務は、令3条の使用人とは|複数営業所の建設業許可要件で扱います。

2-5. 個人事業主の場合——対象は2つだけ

個人の場合、対象は「事業主及び支配人」の2つです(手引 PDF p.9)。支配人を登記していなければ、実質的に事業主本人だけということになります。

なお、個人事業主が支配人を置いている場合は、様式第1号の「支配人の氏名」欄にその者の氏名を記載します(手引 PDF p.34 の記載要領、および 手引 PDF p.35 の注記)。支配人を置いていないのに欄を埋める、逆に置いているのに空欄にする——という記載ミスは、そのまま対象者の取り違えにつながります。

3. ★欠格要件との違い——同じ人を見ているが、見ているものが違う

ご相談でもっとも多い誤解が、「誠実性=欠格要件」という理解です。両者は隣り合って規定されており、対象者もほぼ重なるため無理もないのですが、性質・判定の仕方・書類のいずれも別物です。本記事がもっとも力を入れて説明する章です。

3-1. 3つの決定的な違い

観点誠実性(手引 PDF p.9)欠格要件(手引 PDF p.10)
条文の形「不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」という評価の規定建設業法第8条各号に事由が列挙され、当たれば許可できないという列挙の規定
判定の性質将来の見込みを含む評価(「おそれ」が要件になっている)過去の事実の有無(取消しから5年、刑の執行終了から5年、破産で復権を得ない、など)
期間で切れるか期間の定めがない(「5年経てば自動的に満たす」といった規定は置かれていない)期間で切れるものが多い(5年など)
専用の書類無い有る——誓約書(様式第6号)、登記されていないことの証明書、身分証明書など
対象者法人/役員等/支店長など従たる営業所の代表者/支配人(個人は事業主・支配人)申請者本人(法人・個人)+役員等・支配人・従たる営業所の代表者、未成年者の場合は法定代理人

とくに重要なのが「期間で切れるか」です。 欠格要件は「取り消されてから後5年を経過しない者」(手引 PDF p.10)のように、時の経過で外れる設計になっています。誠実性には、そうした期間の定めが手引にも審査要領にも置かれていません。

だからといって「一度でも問題を起こしたら永久に許可を取れない」という意味ではありません。要件が求めているのは、あくまで申請の時点で「不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者」でないことです。ただし、期間で自動的に処理される欠格要件とは、判断の性質が違うということです。

3-2. 対象者の範囲——重なるが、完全には一致しない

対象者は大部分が重なりますが、両端がずれています。

誰か誠実性(p.9)欠格要件(p.10)
法人そのもの明示されている法人自身の事由(不正手段による許可取得、暴力団員等による事業活動の支配 等)として規定
役員等○○
支配人○○
支店長など従たる営業所の代表者○○
個人事業主○○
未成年者の法定代理人手引の誠実性の条文には記載がない○(「未成年者でその法定代理人が上記いずれかに該当する者」)

実務上の意味はこうです。役員等の名簿は、誠実性と欠格要件で共通して使えます。 ただし、未成年の役員がいる会社では、欠格要件のほうで法定代理人の分まで書類が増えます(詳細は欠格要件の記事へ)。

3-3. 書類の差——誓約書は「欠格要件だけ」の誓約である

ここは見落としが多いところです。申請書に添付する誓約書(様式第6号)の文面を確認してください。

誓約の対象は「建設業法第8条各号(同法第17条において準用される場合を含む。)に規定されている欠格要件に該当しないこと」であり、誓約する者として掲げられているのは、申請者(許可の承継の場面では譲受人・合併存続法人・分割承継法人)の役員等、建設業法施行令第3条に規定する使用人、法定代理人及び法定代理人の役員等です(手引 PDF p.56・様式第6号。様式は該当しないものを抹消する選択式になっています)。

誓約しているのは欠格要件についてだけです。誠実性についての誓約欄はありません。同じく、登記されていないことの証明書・身分証明書・医師の診断書も、いずれも欠格要件(成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者)に対応する書類です(審査要領 PDF p.29-31)。

つまり、誠実性は「書類で潰せる要件」ではありません。 書類を全部そろえても誠実性を示したことにはならず、逆に、誠実性のために追加で集める書類もない。この「書類で決着しない」という性質が、誠実性という要件のいちばんの特徴です。

なお、誓約書は「申請者本人が作成するものであり、申請者による訂正以外は認められません」とされています(手引 PDF p.56)。行政書士が代理で申請する場合でも、誓約の内容は申請者ご本人に確認していただく必要があります。

3-4. 「書類がない」ことは「見られない」ことではない

誠実性に専用書類がないと聞くと、「では実質的に審査されないのでは」と考えたくなりますが、それは違います。誠実性は申請書全体と、県民局の営業所調査で確認される会社の実態から評価されると理解してください。

  • 役員等の一覧表(様式第1号 別紙1)で、誰が対象者かが確定します
  • 様式第12号(許可申請者の住所、生年月日等に関する調書)の賞罰欄に、行政処分・行政罰・刑罰その他の賞罰を記載します(手引 PDF p.88-89)
  • 令3条の使用人については様式第13号の調書に、同じく賞罰欄があります(手引 PDF p.90)
  • 常勤役員等については様式第7号別紙(常勤役員等の略歴書)に賞罰欄があり、この場合は様式第12号の作成が不要になります(手引 PDF p.89)

この賞罰欄が、誠実性の審査における事実上の入口です。詳しくは §6 で扱います。

3-5. 混同がもたらす実害

最後に、両者を取り違えたときに何が起きるかを整理しておきます。

混同①「誠実性も5年で切れるはず」

欠格要件の「5年」を誠実性にも当てはめてしまう誤りです。手引・審査要領のいずれにも、誠実性について期間の定めはありません。時期を根拠に「もう大丈夫」と判断するのは危険です。

混同②「誓約書を出したから誠実性もクリアした」

§3-3 のとおり、誓約書は欠格要件についての誓約です。誠実性を誓約する書面ではありません。

混同③「賞罰欄に書くべきか迷ったので空欄にした」

これがもっとも重い誤りです。賞罰欄は「特に賞罰に該当する事項がない場合でも、この欄は空白とせず、…『特記事項なし』と記載します」とされています(手引 PDF p.88)。判断に迷って空欄にすると、記載漏れになります。そして、申請書や添付書類の重要な事項に虚偽の記載があるとき、あるいは重要な事実が書かれていないときも、許可の対象にはなりません(手引 PDF p.10)。誠実性の問題を避けようとして記載を落とすと、より重い問題に振り替わるという構造です。

4. 「不正又は不誠実な行為」の輪郭——岡山県の監督処分基準から逆算する

手引には「不正な行為」「不誠実な行為」の定義がありません。では輪郭をどうつかむか。唯一の手がかりが、手引の巻末に収録されている「岡山県建設業者等の不正行為等に対する監督処分の基準」です(手引 PDF p.200〜208)。

4-1. 岡山県独自の基準として制定されている

この基準は、平成19年9月11日 監第595号として制定され、平成20年・21年・24年・25年、令和2年・3年(2回)・4年・5年と繰り返し改正されてきた岡山県の要綱です(手引 PDF p.200)。趣旨には次のように書かれています。

「本基準は、…建設業者等による不正行為等について、岡山県知事が監督処分を行う場合の統一的な基準を定めることにより、建設業者等の行う不正行為等に厳正に対処し、もって建設業に対する国民の信頼確保と不正行為等の未然防止に寄与することを目的とする。」(手引 PDF p.200)

この基準が手引の巻末に丸ごと収録されていること自体が、岡山県の運用の特徴です。許可を取ろうとする事業者に、処分の基準まで含めて開示されています。

4-2. ★「請負契約に関する不誠実な行為」の4類型

基準の「三 建設業者に対する監督処分の基準」のなかに、(3) 請負契約に関する不誠実な行為という節があります(手引 PDF p.204)。ここが、手引で「誠実性」という語が使われるもう1か所です。

「建設業者が請負契約に関し(入札、契約の締結・履行、契約不適合責任の履行その他の建設工事の請負契約に関する全ての過程をいう。)、社会通念上建設業者が有すべき誠実性を欠くものと判断されるものについては、次のとおり監督処分を行うこととする。」(手引 PDF p.204)

続けて並ぶのが、次の4類型です。

類型内容(手引 PDF p.204)
① 虚偽申請ⅰ 公共工事の一般競争・指名競争で、競争参加資格確認申請書・確認資料その他の入札前の調査資料に虚偽の記載をしたとき等/ⅱ 完成工事高の水増し等の虚偽の申請により得た経営事項審査結果を公共工事の発注者に提出し、発注者が資格審査に用いたとき(監査の受審状況で加点され、かつ対象となった計算書類・財務諸表等の内容に虚偽があったときはさらに重い扱い)
② 主任技術者等の不設置等建設業法第26条に違反して主任技術者又は監理技術者を置かなかったとき(資格要件を満たさない者を置いた場合を含む)/技術検定の受検や監理技術者資格者証の交付申請に際し虚偽の実務経験の証明を行って不正に資格等を取得した者を工事現場に置いていた場合/専任義務違反
③ 粗雑工事等による重大な瑕疵施工段階での手抜きや粗雑工事を行ったことにより、工事目的物に重大な瑕疵が生じたとき(低入札価格調査が行われた工事である場合はさらに重い扱い)
④ 施工体制台帳等の不作成施工体制台帳・施工体系図の作成を怠ったとき、又は虚偽の施工体制台帳・施工体系図の作成を行ったとき

この4類型から読み取れる「誠実性を欠く」の輪郭は、次のように整理できます。

  • 書面を偽ること(①虚偽申請・②虚偽の実務経験証明・④虚偽の台帳)
  • 配置すべき人を置かないこと(②)
  • 約束した品質で仕事をしないこと(③)
  • 体制を記録しないこと(④)

いずれも「請負契約を、契約どおり・法令どおりに運ぶ」という一点に集約されています。誠実性という言葉から連想されがちな抽象的な人柄の評価ではなく、契約と施工の実務が対象だということです。

⚠️ 読み替えの注意:この基準は「許可を受けた後の建設業者に対する監督処分」の基準であって、許可審査で誠実性を当てはめるための基準ではありません。「この類型に当たらないから誠実性を満たす」「当たるから満たさない」と機械的に読み替えることはできません。あくまで「岡山県が『建設業者が有すべき誠実性を欠く』と評価する行為はこういうものだ」という輪郭を知るための材料として使ってください。

4-3. 隣接する類型——他法令違反・信用失墜行為は別枠

基準には、(3) と並んで (4) 建設工事の施工等に関する他法令違反という節があります(手引 PDF p.204-206)。ここには労働安全衛生法違反、建築基準法違反、労働基準法違反、宅地造成及び特定盛土等規制法違反、廃棄物処理法違反、特定商取引に関する法律違反、信用失墜行為等(法人税法・消費税法等の税法違反、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反)、健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法違反などが並びます。

重要なのは、これらの扱い方について基準が置いている次の一文です。

「他法令違反の例は次のとおりであるが、監督処分に当たっては、他法令違反の確認と併せて、当該違反行為の内容・程度、建設業の営業との関連等を総合的に勘案し、建設業者として不適当であるか否かの認定を行うこととする。

なお、法人に係る他法令違反については、役員等若しくは政令で定める使用人又は法人自体に他法令違反が認められる場合に監督処分を行うこととする。」(手引 PDF p.204)

「建設業の営業との関連等を総合的に勘案」——つまり、他法令違反があれば自動的に処分、というつくりではありません。そして対象は、ここでも役員等・政令で定める使用人・法人自体です。誠実性の対象者(手引 PDF p.9)と同じ顔ぶれが出てきます。

4-4. 無許可で工事を請け負うことも「不正行為等」に位置づけられている

基準には「四 無許可業者に対する監督処分の基準」という独立した節があり(手引 PDF p.206〜)、そのなかに(2) 軽微ではない工事を無許可で請け負った場合が置かれています。

「建設業法第3条第1項及び建設業法施行令第1条の2第1項の規定に違反し、無許可で工事一件の請負代金の額が 500 万円以上(建築一式工事にあっては、請負代金の額が 1,500 万円以上又は延べ面積が 150 平方メートル以上の木造住宅工事)を請け負った場合については、3日以上の営業停止処分を行うこととする。なお、…同一の無許可業者が工事の完成を二以上の契約分割して請け負った場合については、各契約の請負代金の額の合計額をもって上記の判断額とする。」(手引 PDF p.207)

許可を取る前の段階の話ですが、「これから許可を申請しようとしている会社が、その直前まで無許可で金額ラインを超える工事を受けていた」というケースは実在します。すでに受けてしまった場合の考え方は無許可で500万円以上を受注してしまったらに整理していますので、そちらをご覧ください。

⚠️ 監督処分基準は手引 PDF p.200〜208 にまたがる1本の基準です。複合する場合の基準=p.201/建設業者に対する基準=p.202〜/無許可業者に対する基準=p.206〜と、節ごとに対象が違います。「無許可業者に対する基準」の内容を「建設業者に対する基準」として引用しないよう、出典のページを確認してお読みください。

5. 監督処分の仕組み——指示・営業停止・取消しの三段と、加重の効き方

誠実性を欠くと判断された場合に何が起きるのか。ここを知っておくと、「なぜ誠実性が要件として置かれているのか」が腑に落ちます。

5-1. 基本の三段構造

段階どういうときか(手引 PDF p.202-203)
指示処分建設業法第28条第1項各号の一に該当する不正行為等があり、故意又は重過失以外の事由によるとき(原則)
営業停止処分同じ事由で、故意又は重過失によるとき(原則)
許可の取消し不正行為等に関する建設業者の情状が特に重い場合、又は建設業者が営業停止処分に違反した場合(建設業法第29条の規定により)

そして基準は「個々の監督処分を行うに当たっては、情状により、必要な加重又は減軽を行うことを妨げない」としています(手引 PDF p.202)。同じ行為でも、内容・程度・社会的影響・情状を総合的に勘案して判断されるということです(手引 PDF p.200)。

5-2. ★営業停止で「止まるもの」と「止まらないもの」

経営インパクトを測るうえで、いちばん実務的な規定がこれです。

「営業停止処分により停止を命ずる行為は、請負契約の締結及び入札、見積り等これに付随する行為とする。」(手引 PDF p.202)

つまり、営業停止で止まるのは新しく仕事を取る行為です。すでに契約済みの工事の施工そのものが直ちに止まるわけではありません(基準は、停止期間中に行えない行為と行える行為の例を別表で示しています)。

ここから読み取るべきは、営業停止の実害は「工事が止まること」ではなく「受注が止まること」だという点です。数日から数十日、見積りも入札も契約もできない期間が生じる——請負業の資金繰りにとって、これがどれほど重いかは説明の必要がないでしょう。

もうひとつ、対象範囲についての規定があります。

「建設工事の請負契約に関する不正行為等に対する営業停止処分は、公共工事…の請負契約…に関して不正行為等を行った場合はその営業のうち公共工事に係るものについて、それ以外の工事の請負契約に関して不正行為等を行った場合はその営業のうち公共工事以外の工事に係るものについて、それぞれ行うものとする。」(手引 PDF p.200)

不正行為が公共工事で起きたか民間工事で起きたかによって、止まる営業の範囲が分かれるという設計です。公共工事の比率が高い会社ほど、入札に関わる書類の作り方が経営リスクに直結することが分かります。公共工事・入札の全体像は公共工事に入りたい|建設業許可が入札参加への第一歩をご覧ください。

5-3. 加重の構造——「一度きり」で終わらない設計

基準は、繰り返しや複合に対して段階的な加重を定めています。数値はいずれも監督処分(行政処分)の期間に関するもので、刑事罰とは別のものです。

場面扱い(出典)
一の不正行為等が二以上の処分事由に該当するとき最も重い処分を課すこととなる基準に従う(手引 PDF p.201)
複数の不正行為等が二の営業停止処分事由に該当するときそれぞれの営業停止の期間の合計により処分。ただし一方が他方の手段又は結果として行われたことが明らかなときは、重いほうの期間を2分の3倍に加重(手引 PDF p.201)
複数の不正行為等が三以上の営業停止処分事由に該当するとき情状により、上記にさらに必要な加重(手引 PDF p.201)
複数の不正行為等が一の営業停止処分事由に2回以上該当するとき営業停止の期間を2分の3倍に加重した上で処分(手引 PDF p.202)
営業停止処分を受けた者が、期間満了後3年を経過するまでに再び同種の不正行為等を行ったとき情状により、必要な加重(手引 PDF p.202)
指示処分を受けた者が指示を実行しなかった、又は指示処分の日から3年を経過するまでに指示に違反して再び類似の不正行為等を行ったとき情状を重くみて、営業停止処分を行う(手引 PDF p.202)

指示処分で済んだからといって、それで終わりではありません。 指示に従わなければ営業停止に上がり、営業停止に違反すれば取消しに上がる——という一方向の階段が設計されています。

5-4. ★会社を作り直しても、承継者に処分が及ぶ

これは知られていない規定です。

「不正行為等を行った建設業者等…が、不正行為等の後に建設業法第17条の2の規定による建設業の譲渡及び譲受け、合併若しくは分割を行った場合又は同法第17条の3の規定による相続をした場合は、行為者の建設業者としての地位を承継した建設業者等…に対して監督処分を行う。

また、行為者の営業を…規定によらずに承継した場合であっても承継者の建設業の営業が、行為者の建設業の営業と継続性及び同一性を有すると認められるときは、① 行為者が当該建設業を廃業している場合には、承継者に対して監督処分を行う。② 行為者及び承継者がともに当該建設業を営んでいる場合には、両者に対して監督処分を行う。」(手引 PDF p.202)

法的な承継の手続を踏んでいなくても、営業に継続性・同一性があれば承継者に処分が及ぶ——という書きぶりです。「別会社を作って移る」という発想が通らない設計になっている、と理解しておいてください。

なお、許可の取消しを受けた後にいつから取り直せるのかという時期の論点は、許可取消のあと建設業許可を取り直せる?欠格期間の考え方で扱います。

5-5. 監督処分は公表される

基準の「五 その他」に、次の規定があります。

「監督処分の内容については、岡山県ホームページで速やかに公表することとする。また、建設業法第29条の5第1項の規定による公告も併せて岡山県ホームページで行うものとする。」(手引 PDF p.208)

処分の事実は、元請にも、発注者にも、取引金融機関にも見えます。 営業停止の期間が終われば営業は再開できますが、公表された記録が消えるわけではありません。経営上の実害は、停止期間そのものより、その後の取引関係に出ることがあります。

あわせて、基準は次のようにも定めています。

「建設業許可又は経営事項審査に係る虚偽申請等建設業法に規定する罰則の適用対象となる不正行為等については、告発をもって臨むなど、法の厳正な運用に努めることとする。」(手引 PDF p.208)

5-6. 罰則については、条文番号まで

手引は、監督処分と罰則の関係を次のように書いています。

「建設業法及び関連諸法令に違反した場合は、監督処分の対象となります。…特に、下記に該当する場合には許可を取り消すことになりますので、注意してください。① 不正手段で許可を取得した場合 ② 許可行政庁の営業停止処分に従わない場合

なお、事案によっては、監督処分とともに、建設業法第47条等の罰則の適用により拘禁刑又は罰金刑に処せられる可能性があります。」(手引 PDF p.23)

本記事では、罰則の法定刑(年数・金額)は扱いません。 手引に具体的な数値の記載がないためです。ここでは「監督処分とは別に、建設業法第47条等の罰則の対象となり得る」という事実までを押さえてください。刑事の見通しに関わる判断は弁護士の領域です。

6. 誠実性は申請書のどこに現れるか——賞罰欄と役員等の一覧表

専用書類がない要件は、他の書類のなかに顔を出します。誠実性が申請書に現れる場所は、実質的に次の2つです。

6-1. 役員等の一覧表(様式第1号 別紙1)——対象者を確定させる書面

まず、誰が誠実性の対象者なのかを確定させるのが、役員等の一覧表です。個人事業主の場合は添付不要ですが、法人の場合は必須です(手引 PDF p.37)。

ここに載せる範囲は §2-2 のとおりで、登記された取締役だけではありません。相談役・顧問・株主等・権限委譲を受けた執行役員等まで含みます。名簿を狭く作ると、対象者を取りこぼしたまま申請することになります。

なお、株主等については審査要領が「自己株式を有している場合、その株数を除いた残数の5%を保有するかどうかで『株主等』の該当有無を判断する」と定めています(審査要領 PDF p.26)。自己株式のある会社は、発行済株式総数で数えると顔ぶれが変わることがあります。

6-2. 賞罰欄——書き方のルールは細かく決まっている

対象者が確定したら、その一人ひとりについて調書を作ります。誠実性の観点でいちばん効くのが賞罰欄です。

■ 様式第12号(許可申請者の住所、生年月日等に関する調書)

  • 記載対象は、許可申請の場合、様式第1号 別紙1(役員等の一覧表)に記載した役員等(監査役は含まれない。)全員(手引 PDF p.89)
  • 賞罰欄には「建設業の行政処分、行政罰はもちろん、刑罰その他の賞罰の有無」を明記する。該当がない場合は「特記事項なし」等と記載する(手引 PDF p.89)
  • 記載例の注記はさらに具体的で、「刑罰については、罰金刑も記載してください」「特に賞罰に該当する事項がない場合でも、この欄は空白とせず…『特記事項なし』と記載します」「賞を記載した場合は、罰についても『罰なし』等と必ず記載してください」とされています(手引 PDF p.88)
  • 顧問、相談役、株主等(株主又は出資者)だけに該当する方の場合、賞罰欄の記載と誓約欄の記名は不要です(手引 PDF p.37・p.88・p.89)
  • 本様式のうち住所・氏名・生年月日・賞罰・誓約日及び署名欄は、本人以外による訂正が認められません(手引 PDF p.89)
  • 様式第7号別紙(常勤役員等の略歴書)又は様式第7号の2別紙に記載のある者については、本様式の作成を要しません(手引 PDF p.88・p.89)

審査要領も、この様式のチェックポイントを列挙しています。

「(7)賞罰の欄を必ず記載する。なお、賞を記載している場合には、罰の有無も必ず記入すること。

(8)誓約の年月日は必ず記入する。」(審査要領 PDF p.25)

■ 様式第13号(建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書)

支店長など従たる営業所の代表者・支配人については、こちらの調書に賞罰欄があります。記載要領は様式第12号と同じく「『賞罰』の欄は、行政処分等についても記載すること」とされ、注記も「刑罰については、罰金刑も記載してください」「特記事項なし」の扱いまで同じです(手引 PDF p.90)。

なお、役員が令3条の使用人を兼任している場合は、様式第12号をもって様式第13号に代えることができます(審査要領 PDF p.26。この場合、様式第12号に職名を記載します)。逆に、令3条の使用人が様式第12号に記載済みで職名を書いているなら、様式第13号は省略して差し支えないとされています(審査要領 PDF p.25)。

6-3. ★迷ったら空欄、が最悪手である理由

賞罰欄の運用で、実務上いちばん危ないのが「書くべきか迷ったので空欄にした」というパターンです。

理由は §3-5 で触れたとおりで、記載を落とすと、誠実性の問題が虚偽記載の問題に振り替わるからです。手引は欠格要件の説明に続けて、申請書やその添付書類のなかで重要な事項に虚偽の記載があるときだけでなく、重要な事実の記載が欠けているときも許可の対象にならないと明記しています(手引 PDF p.10)。

さらに、監督処分基準は「建設業許可又は経営事項審査に係る虚偽申請等…については、告発をもって臨むなど、法の厳正な運用に努める」としています(手引 PDF p.208)。

書けば評価の対象になるだけですが、書かなければ別の問題になります。 どちらが軽いかは明らかです。判断に迷う事情がある場合は、空欄で出す前にご相談ください。

6-4. 申請前に自社で当てる確認の順序

誠実性は「潰す」ものではなく「整理して臨む」ものです。申請前に、次の順で当ててください。

  1. 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)で、現在の取締役を全員洗い出す
  2. 登記に出てこない人を足す——相談役、顧問、権限委譲を受けた執行役員等、その他役員と同等以上の支配力を有する者(手引 PDF p.37)
  3. 株主名簿を当てる——自己株式を除いた残数の5%以上を持つ個人(審査要領 PDF p.26)
  4. 支配人・従たる営業所の代表者を確認する(手引 PDF p.87)
  5. ここまでで確定した名簿の全員について、賞罰欄に何を書くことになるかを本人に確認する(行政処分・行政罰・刑罰。罰金刑も含む/手引 PDF p.88-89)
  6. 会社としての契約実務を点検する——見積・契約書の交わし方、工期と施工の管理、不具合対応の記録。誠実性は「法人そのもの」も対象です(手引 PDF p.9)
  7. 公共工事に関わる書類の作り方を点検する——入札前の調査資料、経営事項審査の完成工事高(手引 PDF p.204 の①虚偽申請)

1〜4は欠格要件の名簿づくりとまったく同じ作業なので、二度手間にはなりません。5以降が誠実性固有の点検です。

外部から役員を迎える場合はとくに順序が重要です。 招へいの合意を先に固めてしまうと、5の段階で事情が出てきたときに引き返しにくくなります。役員に迎える話を進める前に、賞罰欄に何を書くことになるかを確認してください。

7. 岡山県での手続き——提出先・営業所調査・法定手数料と期間

誠実性という要件の性質上、岡山県の窓口運用を知っているかどうかが、そのまま結果を左右します。

7-1. ★事前審査は一切行われない——だから「出してから直す」ができない

岡山県の手引は、申請書の提出について次のように明記しています。

「事前審査は一切行いません。 正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。」(手引 PDF p.16)

誠実性は「窓口で相談しながら詰める」ことができない要件です。対象者の確定も、賞罰欄に何を書くかも、提出前に決着させておく必要があります。

窓口では書面審査が行われ、記載事項に不備がなければ受け付けられます。ただし「窓口での書面審査は、限られた時間で行うことから、受付後にも書類の訂正等について追加で連絡することがあります」とされています(手引 PDF p.16)。

なお、受付後に軽微な誤りが見つかった場合は補正書で直せますが、補正書による補正を不可とする案件が審査要領に列挙されており、その筆頭が「役員等に欠格要件に該当する者があり、役員等の届出内容を変更する場合」です(審査要領 PDF p.31)。役員の顔ぶれに関わる問題は、出してから差し替えるという処理が想定されていません。

7-2. 提出先は本庁一元

申請書・変更届の提出先は、岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)です。手引は「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記しています(手引 PDF p.168)。県民局は申請の窓口ではありません。 郵送での提出も受け付けています(送付先は同じ・手引 PDF p.16)。

窓口受付時間は 9:00〜11:30、13:00〜16:30(閉庁日を除く)。11時30分から13時00分まで、および16時30分から翌開庁日9時00分までの間は窓口を閉じ、審査を休止します。原則として、審査の途中であっても窓口閉鎖の時刻をもって審査は終了します(手引 PDF p.16)。新規申請は書類量が多いため、時間的な余裕を持って臨む必要があります。

7-3. 所轄県民局の営業所調査

申請受付後、半月程度で所轄の県民局から営業所調査実施の連絡があります(手引 PDF p.17)。ここで確認されるのは、営業所の所在(看板(容易に確認できるもの)、机、電話及びファクシミリ、営業所の賃貸借契約書(原本)等。営業所は居住部分と共用できません)、常勤役員等の経営経験、営業所技術者の資格等です。手引は「いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません」としています(手引 PDF p.17)。

誠実性そのものを確認する調査項目はありませんが、会社の実態が対面で確認される機会であることは意識しておいてよいでしょう。なお、営業所調査が早く終わっても許可が早くなるわけではありません(本庁の調査が別途進行するため・手引 PDF p.16)。

7-4. 法定手数料と期間

項目内容出典
新規(許可換え含む)・般特新規90,000円手引 PDF p.14
更新・追加50,000円手引 PDF p.14
業種数との関係手数料の額は申請する業種の数とは関係ない手引 PDF p.14
変更届出書手数料は不要手引 PDF p.14・p.22
納付方法岡山県手数料等(POS)納付連絡票をホームページから印刷 → 収納専用窓口に持参して支払 → 納付済証を受け取り、様式第1号 別紙三に貼付して提出手引 PDF p.14
標準的な期間申請が受け付けられてから許可までは、特に問題がないケースで概ね2か月程度手引 PDF p.16
更新の受付期限有効期間満了の日の30日前までに受付(書類に不備がなく受付印が押印された状態)。申請は満了の日の3か月前から可能手引 PDF p.13

当事務所の報酬(税込目安)は、建設業許可申請(法人・新規)132,000円+法定手数料90,000円=222,000円、(個人・新規)110,000円+90,000円=200,000円です。申請は代理申請まで行い、営業所調査の準備確認と同席も報酬に含みます。 費用の全体像は建設業許可の費用はいくら?岡山県知事許可の総額目安に整理しています。金額・期間は案件の内容や時点により変動しますので、事前にお見積りします。

誠実性の観点でこの章をまとめると:岡山県は事前審査を行わないため、「対象者の確定」と「賞罰欄の内容の確認」を提出前に終わらせておく必要があります。そして役員等に関わる事項は、受付後の補正で差し替えるという処理が想定されていません(審査要領 PDF p.31)。準備の順序が結果を決める、という意味で、誠実性は他の要件以上に段取りの要件です。

8. 許可のその先——誠実性は「取った後」に問われ続ける要件

8-1. 他の要件との決定的な違い——ゴールがない

経営業務の管理責任者も営業所技術者も、要件を満たす人を置き続けることが求められますが、「満たしている/いない」を書類で示せます。財産的基礎も、更新のたびに確認されます。

誠実性だけは違います。許可を取った瞬間から、日々の請負契約の運び方がそのまま要件の中身になります。 §4-2 で見た4類型——虚偽申請、主任技術者等の不設置、粗雑工事等による重大な瑕疵、施工体制台帳等の不作成——は、いずれも許可を持って営業しているからこそ起きるものです。

8-2. 経審・入札に進むと、誠実性の当たり判定が広がる

監督処分基準の「①虚偽申請」を読み直してください(手引 PDF p.204)。対象になっているのは、公共工事の競争参加資格確認申請書・確認資料等への虚偽記載と、完成工事高の水増し等の虚偽申請により得た経営事項審査結果を発注者に提出することです。

つまり、民間工事だけをやっている会社には存在しなかった当たり判定が、経審・入札に進んだ瞬間に増えるということです。完成工事高の計上、工事経歴書の書き方、財務諸表の作り方——これらが「誠実性」の文脈で見られる領域に入ります。

経営事項審査の全体像は経審申請を岡山で依頼するなら、入札参加資格については入札参加資格をご覧ください。

8-3. 元請に回ると、さらに義務が乗る

「④施工体制台帳等の不作成」も、誰にでも当たる類型ではありません。施工体制台帳・施工体系図の作成義務は、元請として一定規模の下請契約を結ぶ場面で生じるものです。下請専業だった会社が元請に回ると、これまで存在しなかった義務が乗ります。

元請になると何が変わるのかは、下請から元請になるための建設業許可|変わることで扱います。

8-4. 期限管理を落とすと、それ自体が監督処分の対象になる

見落とされがちですが、届出の期限を守ることも「取った後」の話に含まれます。

手引は、許可を取得した後に許可申請書や添付書類等の内容に変更が生じたときは、指定された期限内に変更届出書を出すよう求めています。そして、その期限を守らずにいると、許可の更新や追加の申請等ができなくなるうえ、監督処分や罰則の対象にもなると明記しています(手引 PDF p.22)。

主な期限は次のとおりです。

届出期限出典
事業年度終了報告決算日から4か月以内(毎年)手引 PDF p.22
常勤役員等・営業所技術者等が欠けた場合の変更届変更後2週間以内手引 PDF p.22
更新申請の受付有効期間満了の日の30日前まで手引 PDF p.13
廃業届(全部廃業等)30日以内(一部業種の廃業は営業所技術者等の変更届が必要なため2週間以内)手引 PDF p.22

届出事項ごとの期限と提出書類は、手引の「変更届出事項及び提出書類等一覧表」(手引 PDF p.170)にまとまっています。

なお、「欠く」状態とは「退職、死亡した場合はもちろんのこと、毎日出勤することができなくなった場合も含みます」とされ、長期入院は社会保険等の資格が継続していても「欠く」状態とみなされます(手引 PDF p.22)。役員等に変更があった場合も届出が必要で、役職名のみの変更であっても様式の提出が必要とされています(審査要領 PDF p.26)。

誠実性を守るとは、突き詰めれば「約束したことを、決められた期限で、記録の残る形でやる」ということです。届出の期限管理はその一部です。当事務所では、変更届・事業年度終了報告・更新の期限をまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています(期限管理=いつ何を出すかのご案内は顧問の範囲、申請の代理実行はスポットの報酬です)。

8-5. 不許可・不受理という別の入口

誠実性と直接の関係はありませんが、申請が通らない理由には書類の不備で受け付けられない(不受理)と受付後に許可されない(不許可)の2系統があります。岡山県が事前審査を行わない運用であることが、この2つを分ける鍵になります。詳しくは建設業許可が不許可・不受理になる主な理由をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q建設業許可の「誠実性」とは、具体的にどういう要件ですか?
A岡山県の手引は「法人にあっては法人、役員等、支店長など従たる営業所の代表者及び支配人が、個人にあっては事業主及び支配人が、請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です」と定めています(手引 PDF p.9)。「請負契約に関し」の範囲は、監督処分基準によれば入札、契約の締結・履行、契約不適合責任の履行その他の建設工事の請負契約に関する全ての過程です(手引 PDF p.204)。なお、手引・審査要領のいずれにも「不正な行為」「不誠実な行為」の定義規定は置かれていません。該当・非該当は個別の実態で判断が分かれますので、気になる事情がある場合は個別にご相談ください。
Q誠実性と欠格要件は何が違うのですか?
A3点で違います。①条文の形——欠格要件は建設業法第8条各号に事由が列挙され、当たれば許可されません(手引 PDF p.10)。誠実性は「おそれが明らかな者でないこと」という評価の規定です(手引 PDF p.9)。②期間——欠格要件は「取り消されてから後5年を経過しない者」のように期間で切れるものが多いのに対し、誠実性には手引・審査要領のいずれにも期間の定めがありません。③書類——誓約書(様式第6号)は「建設業法第8条各号に規定されている欠格要件に該当しないことを誓約します」という文面で、欠格要件についての誓約です(手引 PDF p.56)。誠実性には専用の書類も誓約欄もありません。欠格要件そのものについては別記事に整理しています。
Q誠実性を証明するには、どんな書類を用意すればよいですか?
A誠実性のためだけに用意する書類はありません。他の要件と違い、誠実性には専用の証明書類も誓約書も存在しないためです。実務上は、役員等の一覧表(様式第1号 別紙1)で対象者が確定し、様式第12号(許可申請者の住所、生年月日等に関する調書)や様式第13号(令3条の使用人の調書)の賞罰欄に、行政処分・行政罰・刑罰(罰金刑を含む)を記載する形で申請書に現れます(手引 PDF p.88-90)。該当がない場合でも空欄にせず「特記事項なし」等と記載してください(手引 PDF p.88)。記載を落とすと、申請書に重要な事実の記載が欠けている場合として扱われる可能性があります(手引 PDF p.10)。
Q役員のうち1人に過去の事情があります。会社全体の許可に影響しますか?
A誠実性の対象は、法人そのもの・役員等・支店長など従たる営業所の代表者・支配人です(手引 PDF p.9)。したがって代表者ご本人に問題がなくても、対象者に含まれる方の事情が審査の対象になり得ます。ただし、どのような事情がどう評価されるかは、手引・審査要領に当てはめの基準が置かれていないため、一般論として結論を申し上げることはできません。「この事情なら該当しません」といった断定は、本記事では行いません。事案ごとに個別の判断が必要ですので、書類を作り始める前にご相談ください。刑事責任に関わる見通しの判断は弁護士の領域です。
Q許可を取った後に不誠実な行為があると、どうなりますか?
A岡山県の監督処分基準では、建設業法第28条第1項各号の一に該当する不正行為等が故意又は重過失によるときは原則として営業停止処分、その他の事由によるときは原則として指示処分が行われ、情状が特に重い場合や営業停止処分に違反した場合は建設業法第29条の規定により許可の取消しが行われます(手引 PDF p.202-203)。営業停止で止まるのは「請負契約の締結及び入札、見積り等これに付随する行為」です(手引 PDF p.202)。処分の内容は岡山県ホームページで速やかに公表されます(手引 PDF p.208)。また、事案によっては監督処分とともに建設業法第47条等の罰則の対象となり得ます(手引 PDF p.23)。なお、具体的な法定刑は手引に記載がないため、本記事では扱っていません。

まとめ

建設業許可の「誠実性」について、押さえるべき点は5つです。

  • 要件の本文:法人にあっては法人・役員等・支店長など従たる営業所の代表者・支配人が、個人にあっては事業主及び支配人が、請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと(手引 PDF p.9)。「役員等」は登記された取締役に限らず、相談役・顧問・株主等・権限委譲を受けた執行役員等まで含みます(建設業法第5条第3号/手引 PDF p.9・p.37)。
  • 欠格要件とは別の要件:欠格要件は事由の列挙で、期間で切れ、誓約書(様式第6号)や証明書という書類がある。誠実性は「おそれが明らかな者でない」という評価で、期間の定めがなく、専用の書類が存在しない(手引 PDF p.9・p.10・p.56)。
  • 「不誠実な行為」の輪郭:岡山県の監督処分基準は「社会通念上建設業者が有すべき誠実性を欠く」行為として、①虚偽申請 ②主任技術者等の不設置等 ③粗雑工事等による重大な瑕疵 ④施工体制台帳等の不作成を挙げています(手引 PDF p.204)。ただしこれは許可後の監督処分の基準であり、許可審査の当てはめ基準ではありません。
  • 申請書での現れ方:役員等の一覧表(様式第1号 別紙1)で対象者が確定し、様式第12号・第13号の賞罰欄に行政処分・行政罰・刑罰(罰金刑を含む)を記載します。該当がなくても空欄にせず「特記事項なし」と書きます(手引 PDF p.88-90)。書かずに済ませると、虚偽記載という別の問題になります(手引 PDF p.10)。
  • 岡山県の運用:申請は本庁一元(県民局は受付窓口ではありません・手引 PDF p.168)、事前審査は一切行われません(手引 PDF p.16)。受付後に役員等の内容を差し替える補正は想定されていません(審査要領 PDF p.31)。だからこそ、対象者の確定と賞罰欄の確認は、提出前に終わらせておく必要があります。

誠実性は、書類を集めれば片づく要件ではありません。「誰が対象者か」を漏れなく確定し、「何を書くことになるか」を事前に把握しておく——この2つができていれば、この要件で慌てることはほとんどありません。逆に、ここを飛ばして書類作成に入ると、提出直前や受付後に手が止まります。

「うちの場合、誰まで対象になるのか」「この事情は賞罰欄に書くべきか」——判断に迷う点があれば、書類を作り始める前にご相談ください。要件の全体像は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)から確認できます。

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