

「うちは下請しかやっていないので、建設業許可は関係ない」——現場で今もよく聞く言葉ですが、これは誤りです。
結論から言います。建設業法は、許可が必要かどうかを「元請か下請か」で分けていません。 判定は、自分が請け負った工事1件の請負代金が「軽微な建設工事」の範囲に収まるかどうか、その一点で決まります。したがって、下請でも1件の請負代金が税込500万円以上(建築一式工事は税込1,500万円以上の工事。ただし延べ面積150㎡未満の木造住宅工事は、請負代金にかかわらず軽微な建設工事に当たります)になれば許可が必要ですし、逆に元請であっても軽微な範囲に収まっていれば許可は不要です。二次下請でも孫請でも、この判定基準は変わりません。
そのうえで、実務ではもう1つの軸があります。法律上は許可が不要な規模でも、注文者(元請)の側の事情によって、取引の条件として許可が実質的に求められる場面です。この2つを混ぜて考えると、「要るのか要らないのか」が永久に決まりません。
本記事では、岡山県で建設業に特化する行政書士が、①法律上の要否(立場では変わらない)と②取引上の要否(立場によって変わる)を切り分けたうえで、下請が許可を取ると何が増えるのかまで整理します。なお、500万円ラインそのものの制度説明と、受注が決まってからの取得ロードマップは500万円以上の工事を受注したい|建設業許可取得までのロードマップに、金額判定の細かな実務は軽微な工事(500万円未満)とは?建設業許可が不要になる範囲にまとめています。本記事はそれらを繰り返さず、立場の話だけを扱います。
※ 個別の工事について許可が必要かどうかは、契約の単位・請負代金の内訳・工事の内容という個別の実態によって判断が分かれます。本記事は岡山県知事許可・一般建設業を前提とした一般的な整理であり、特定の案件について結論を保証するものではありません。最終判断は有資格者(行政書士)または岡山県の担当窓口にご確認ください。
1. 建設業法は「元請か下請か」で許可の要否を分けていない
まず、制度の出発点を確認します。岡山県の「建設業許可の手引」は、冒頭で次のように定めています(手引 PDF p.5)。
「建設業を営もうとする者は、その業種ごとに建設業の許可が必要です。ただし、工事一件の請負金額が次のもの(「軽微な建設工事」)については、許可がなくても請け負うことができます。」
主語は「建設業を営もうとする者」です。ここに「元請の場合は」「下請の場合は」という条件は付いていません。許可の要否を分けているのは立場ではなく、工事1件の請負金額です。
1-1. 軽微な建設工事の範囲(この記事で使う前提)
手引が示す「軽微な建設工事」は次のとおりです(手引 PDF p.5)。同じ定義は、工事経歴書の記載要領のなかでも「建設業法施行令第1条の2第1項に規定する軽微な建設工事」として繰り返されています(手引 PDF p.51)。
| 工事の種類 | 許可がなくても請け負える範囲 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が税込1,500万円に満たない工事、または延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事 |
| 建築一式工事以外(専門工事・土木一式) | 1件の請負代金が税込500万円に満たない工事 |
金額はいずれも消費税及び地方消費税を含む額で判断します。さらに手引には、注文者や元請業者が材料を支給する場合は材料費も含めて判断するという注記が付いています(手引 PDF p.5)。この注記は下請にとって決定的に重要なので、§2-2 で改めて扱います。
この表のどこにも「元請」「下請」という言葉は出てきません。 下請だから緩くなる、孫請だからさらに緩くなる、という構造にはなっていません。
1-2. 「下請だから要らない」が誤りである理由
「下請は元請の指示で動いているだけだから、責任は元請にある」という感覚は理解できますが、建設業法はそう作られていません。下請契約も請負契約であり、下請負人は自らが請け負った範囲の工事の完成について責任を負う立場です。だからこそ、下請負人にも技術者の配置義務が課され(§5-1)、一括下請負の禁止も及びます(§5-3)。
もう1つの誤解が、「元請が許可を持っているから、下請はその許可の下で工事ができる」というものです。許可は会社ごと・業種ごとに与えられるもので、他社の許可を借りて工事をするという仕組みはありません。むしろ、無許可の業者と一定の下請契約を締結した元請の側が監督処分の対象になるという運用が置かれており(§4-1)、元請が下請の許可の有無を気にするのはそのためです。
1-3. 「元請の工事が大きいから、うちも許可が要る」も誤り
逆方向の誤解もあります。「元請が請け負っているのは1億円の現場だから、そこに入る自分も許可が要るのではないか」という相談です。
判定に使うのは、自分が結んだ契約の請負代金です。 元請の受注総額でも、現場全体の工事費でもありません。1億円の現場に入っていても、自社の下請契約が税込300万円であれば、その工事1件について許可は不要です(他に許可が必要となる事情がない限り)。
つまり、下請の立場は、要否を「厳しくも緩くもしない」というのが正確な理解です。見るのは常に自分の契約書1枚です。
1-4. 二次下請・孫請でも同じ。そして許可は「業種ごと」
一次下請・二次下請・孫請という階層も、要否の判定を変えません。二次下請として税込600万円の内装仕上工事を請け負えば、内装仕上工事業の許可が必要になります。
あわせて押さえておきたいのが、許可は業種ごとだという点です(手引 PDF p.5)。「建設業の許可」という1つの免許があるのではなく、29業種のうち自社が営む業種について取得します。下請専門の会社は、実際には複数業種にまたがって仕事を受けていることが多く、「許可は持っているが、今回の工事の業種は持っていない」という取り違えが起こりがちです。業種の一覧と区分の考え方は建設業許可の業種一覧|29業種の区分と選び方にまとめています。
この章のまとめ:法律上の要否は「立場」ではなく「自分の契約1件の請負代金」と「業種」で決まる。下請であることは、要否判定において有利にも不利にも働かない。
2. 判定の単位は「自分が結んだ1件の請負契約」——下請が読み違える3点
要否が「1件の請負代金」で決まる以上、「1件」をどう数えるかが実務の焦点になります。ここで下請の立場に固有の読み違えが3つ起こります。金額判定そのものの詳細(税込判定・支給材料・分割の限界)は軽微な工事(500万円未満)とは?建設業許可が不要になる範囲が正典なので、本章では下請の立場だからこそ起きる読み違えに絞ります。
2-1. 読み違え①:元請の受注額や現場全体の規模で判断してしまう
§1-3 で触れたとおりです。実務では「大きな現場に入ったから許可が要るのでは」という相談と、「小さな現場だから大丈夫」という思い込みの両方が起こります。現場の規模ではなく、自社が結んだ契約の額です。
同じ現場でも、追加工事を別契約で受ければ、その契約は別の1件として金額を見ることになります(ただし §2-3 の分割の問題があります)。逆に、当初契約に追加分を含めて1本の契約に変更すれば、変更後の請負代金で判断することになります。「1件」は現場単位でも月単位でもなく、契約単位という感覚を持ってください。
なお、手引は一括下請負に該当するかどうかの判断に関して「建設工事一件の範囲は、原則として請負契約単位で判断されます」と述べています(手引 PDF p.187)。これは一括下請負の場面についての説明ですが、建設業法の運用が「請負契約単位」を基本に置いていることを示す記述です。
2-2. 読み違え②:元請支給の材料費を外して判断してしまう(下請に直撃する論点)
本記事で最も注意していただきたいのがここです。 手引 PDF p.5 の軽微な建設工事の注記には、次のように書かれています。
「金額はいずれも消費税及び地方消費税を含む額。注文者や元請業者が材料を支給する場合は材料費も含めて判断する。」
下請の工事では、主要材料を元請が支給し、下請は施工だけを請け負うという形が広く行われています。このとき、契約書に書かれる請負代金は施工分だけになりますが、軽微な建設工事に当たるかどうかの判断では、支給された材料の価格も含めて見るということです。
たとえば、契約書上の請負代金が税込450万円で、元請から支給された材料が税込100万円相当であれば、判定に用いる額は合計の税込550万円となり、軽微な建設工事の範囲を超えます。契約書の金額だけを見て「500万円未満だから大丈夫」と判断していると、ここで取り違えが起きます。
なお、手引の書きぶりは「注文者や元請業者が材料を支給する場合」であり、注文者(発注者)が材料を支給する場合——官公庁工事の官給材料など——も含まれます。したがって「支給材料の加算は下請だけの話」ではありません。ただし、主要材料を元請が支給し、施工だけを請け負うという形は下請の工事で特に多く見られ、契約書に載る金額と判定に用いる額が離れやすいのも下請です。支給材料の扱いは、下請の立場でとりわけ取り違えが起きやすい論点だと理解してください。
実務上の確認手順:支給材料がある工事では、①支給される材料の品目と数量、②その価格が分かる資料(発注書・納品書・見積内訳)を、契約前に元請へ確認しておくのが安全です。「いくら相当か分からないまま着工した」という状態が、後から最も揉めます。判定の考え方の詳細は軽微な工事(500万円未満)とは?建設業許可が不要になる範囲をご覧ください。
2-3. 読み違え③:契約を分ければ回避できると考えてしまう
「1件が500万円を超えるなら、250万円ずつ2本の契約に分ければよいのではないか」——これは通りません。
岡山県の「建設業者等の不正行為等に対する監督処分の基準」は、無許可で軽微でない工事を請け負った場合の基準を定めたうえで、同一の無許可業者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負った場合については、各契約の請負代金の額の合計額をもって判断額とすると明記しています(手引 PDF p.207)。分割しても合計で見る、ということです。
同じ発想は一括下請負の禁止にも置かれています。手引は、建設業法第22条第1項の「いかなる方法をもってするかを問わず」について、「契約を分割したり、あるいは他人の名義を用いるなどのことが行われていても、その実態が一括下請負に該当するものは一切禁止する」と説明しています(手引 PDF p.185)。形式を整えても実態で判断されるという運用が、建設業法には一貫しています。
2-4. 「1件」を確定させるには、契約が書面で残っている必要がある
ここまでの3点は、いずれも「契約の単位と金額」が明確であることを前提にしています。ところが下請の現場では、契約書を交わさないまま口頭やメールのやりとりで着工しているケースが少なくありません。
建設業法第19条は、建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際し、同条第1項各号に掲げられた事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないと定めており、原則として契約書の作成が義務付けられています(手引 PDF p.183)。
実務で広く行われている注文書及び請書による契約についても、手引は要件を整理しています(手引 PDF p.183-184)。おおまかには次の2通りです。
- 基本契約書を締結したうえで、個別の取引は注文書・請書の交換による方法。基本契約書に法第19条第1項各号の事項(個別の注文書・請書に記載する事項を除く)を記載して相互に交付し、注文書・請書には同項第1号から第3号までの事項その他必要な事項を記載する。注文書・請書には「記載されている事項以外は基本契約書の定めによる」旨を明記し、注文書には注文者が、請書には請負者が署名又は記名押印する。
- 注文書・請書の交換のみによる方法。注文書・請書のそれぞれに同内容の基本契約約款を添付または印刷し、約款に法第19条第1項各号の事項(個別的記載事項を除く)を記載する。複数枚に及ぶ場合は割印を押し、個別的記載欄には第1号から第3号までの事項その他必要な事項を記載したうえで、「個別的記載欄に記載されている事項以外は基本契約約款の定めによる」旨を明記する。注文書には注文者が、請書には請負者が署名又は記名押印する。
契約を変更する場合も、変更内容が個別的記載事項に係るもののみであれば、注文書・請書の双方に変更内容を明記し、それぞれ注文者・請負者が署名又は記名押印する方法によることができます。個別的記載事項以外の変更が含まれる場合は、その内容を書面に記載して相互に交付する必要があります(手引 PDF p.184)。
書面が残っていない工事は、「1件がいくらだったのか」を後から誰も確定できません。 許可を取る段階になって実務経験や工事実績を証明しようとしたときにも、同じ書面が求められます(§6-1)。要否判断の前提として、契約の書面化は最初に整えるべき土台です。
3. 立場より先に間違えやすいもの——業種と「そもそも建設工事か」
要否判断で立場の次に効くのが、業種の切り分けと、そもそもその仕事が建設工事に当たるのかという論点です。ここを間違えると、金額の計算をいくら正確にやっても結論が狂います。
3-1. 下請の工事でも「一式工事」になる場合がある
一式工事(土木一式・建築一式)は、総合的な企画、指導及び調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事で、大規模又は施工内容が複雑な工事を総合的にマネージメントする事業者向けの許可とされています(手引 PDF p.5・p.162)。イメージとしては元請の許可ですが、手引は下請工事でも一式工事となる場合があることを明記しています(手引 PDF p.162)。
- 土木一式工事:例外的に、民間工事における合法的な一括下請負工事や、公道下の下水道本管埋設工事(一括下請負に当たらず、かつ、複数の孫請業者を使用する一次下請業者)等については、下請工事であっても土木一式工事となる場合がある
- 建築一式工事:例外的に、民間工事における合法的な一括下請負工事等については、下請工事であっても建築一式工事となる場合がある
一式工事に当たると判断されれば、軽微な建設工事のラインは税込1,500万円未満(または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)に変わります。「下請=専門工事=500万円ライン」と機械的に当てはめられないということです。
なお建築一式工事については、手引が「①建物の躯体(柱、梁など建物本体の構造を支える部分)に変更を加える場合(耐震補強を含む)」「②軽微ではない専門工事(500万円以上)を2つ以上有機的に組み合わせた1つの建築工事」のいずれかに該当するものと判断される、という基準を示しています(手引 PDF p.162)。一式工事と専門工事の切り分けは一式工事と専門工事の違いに整理しています。
3-2. 一式の許可があっても、専門工事は別
もう1つ、手引が「誤りやすいので注意してください」として掲げているのがこれです(手引 PDF p.162)。
- 土木一式工事(土木工事業)の許可を有していても、土木系の各専門工事(500万円以上)の施工に当たっては、各専門工事の許可が必要
- 建築一式工事(建築工事業)の許可を有していても、建築系の各専門工事(500万円以上)の施工に当たっては、各専門工事の許可が必要
下請の立場では、「元請が建築一式の許可を持っているから現場は問題ない」という説明を受けることがありますが、自社が請け負う専門工事について、自社が許可を持っているかどうかは別の話です。
3-3. そもそも「建設工事」ではない仕事
要否判断の最初のふるいがこれです。手引は、次のようなものは「建設工事」に該当せず「兼業事業」に当たると例示しています(手引 PDF p.162)。
草刈り・雑木伐採/樹木のせん定・庭木管理/緑地・公園の管理/機械・設備等の保守・点検、部品(電球、パッキン等の消耗品)の交換等/溝掃除(水路の堆積物の除却等)/除雪/測量・コンサルタント業務/試掘/土砂の撤去/土砂の仮置き(土のう製作・設置を含む)/産業廃棄物の運搬処分/浄化槽清掃/工事現場の清掃/路面清掃/不動産販売/委託管理業務/建設資材の販売・賃貸等/船舶、自動車、建設機械等に係る作業/道路パトロール/警備
これらは建設工事ではないため、金額がいくらであっても建設業許可の要否の問題にはなりません。除雪・草刈り・清掃は下請として受注する機会が多い仕事なので、「うちは年間で相当な金額を受けているが許可が要るのか」という相談がよく出ますが、建設工事に当たらなければ、そもそも土俵が違います。
ただし、手引は同じページで「業種の区分については、無許可営業、技術者配置義務違反、一括下請負等の法令違反に直結するため、関係法令等に基づき適切に整理する必要があります」とし、疑義がある場合は工事台帳・現場写真・施工体制台帳・施工体系図等、工事内容や施工体制の詳細が分かる資料を示して個別に監理課建設業班へ相談するよう求めています(手引 PDF p.162)。自己判断で「これは建設工事ではない」と決め切らないことが重要です。
落とし穴:兼業事業に当たるものを誤って完成工事高に計上した場合、事業年度終了報告書の訂正と経営分析のやり直しが必要になります。経営事項審査の虚偽申請となる場合には監督処分の対象になるとも明記されています(手引 PDF p.162)。許可を取った後の話ですが、区分の誤りは尾を引きます。
4. 法律上は不要でも実質的に求められる場面——注文者側の事情を整理する
ここからが、冒頭で述べたもう1つの軸です。法律上は許可が不要な規模の工事でも、注文者(元請)の側の事情で許可が取引の条件になることがあります。「法律で決まっているわけではないのに、なぜ求められるのか」を理解しておくと、交渉の場でも、社内の意思決定でも判断が速くなります。
4-1. 元請側が負っている処分リスク
岡山県の「建設業者等の不正行為等に対する監督処分の基準」には、「(7) 無許可業者等との下請契約」という項目があり、建設業者が建設業法第3条第1項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を締結したときは7日以上の営業停止処分を行うこととされています(手引 PDF p.206。ただし、建設業者に酌量すべき情状があるときは必要な減軽を行う旨の但書きがあります)。
つまり、許可が必要な規模の工事を無許可の下請に出した元請は、自らも処分の対象になり得るということです。元請が下請の許可の有無を確認するのは、道義の問題ではなく自社防衛です。元請側から見たリスクの全体像はゼネコンの協力会社になるには|取引口座開設と建設業許可に整理しているので、そちらをご覧ください。
実務上の帰結はこうです。元請は、個別の工事ごとに金額を確認して「この工事は500万円未満だから無許可でよい」と管理するより、取引先を許可業者に統一するほうが安全です。だから、法律上は軽微な工事しか出していない相手にも「許可を取ってほしい」と言うことになります。この要求は、制度の理解不足から出ているのではなく、制度を理解しているからこそ出ていると考えたほうが実態に合います。
4-2. 公共工事では、下請金額の大小によらず体制が可視化される
公共工事に下請として入る場合、事情がさらに変わります。手引は施工体制台帳等の作成義務について、次のように区別しています(手引 PDF p.198)。
| 工事 | 施工体制台帳等の作成義務 |
|---|---|
| 民間工事 | 特定建設業者が元請となって5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の工事を下請に出す場合 |
| 公共工事 | 工事を受注した建設業者が下請契約を締結する場合は、下請負額の大小によらず全ての工事で作成義務がある |
施工体制台帳には、自社及び下請業者等、施工に関わる全ての業者の名称、それぞれの工事の具体的内容・工期・配置技術者等が記載されます(手引 PDF p.198)。公共工事の受注者は、作成した施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければならないとされています。さらに、令和2年10月1日の法改正に伴い、監理技術者補佐を置く場合の記載と、施工体制台帳の一部としての作業員名簿の作成が追加されています(手引 PDF p.198)。
公共工事に下請として入るということは、自社の名称・工事内容・配置技術者が発注者に提出される台帳に載るということです。金額の大小にかかわらず体制が可視化されるため、元請が下請の資格を厳しく見るのは当然の帰結になります。公共工事そのものの入り方は公共工事を受注するには|建設業許可から経審・入札までにまとめています。
4-3. 施工体制台帳が作成される工事では、下請業者の側にも義務がある
見落とされやすい点です。施工体制台帳が作成される工事において、下請業者が、自らが請け負った工事の一部を更に再下請した場合には、その再下請工事の具体的内容及び工期・配置技術者等を、元請業者に書面で通知しなければなりません(建設業法第24条の8第2項/手引 PDF p.199)。あわせて、再下請業者に対しては、元請業者の名称、再下請負通知を行う義務があること及び再下請負通知書の提出先を通知する義務もあります。
「台帳は元請が作るもの」という理解は半分だけ正しく、再下請負通知書の提出義務は下請自身にあります。自社が二次下請を使う立場になった時点で、書類上の当事者になるということです。
4-4. 協力会社登録・取引口座という入口
ゼネコンや中堅元請との取引を新規に始める場合、協力会社登録や取引口座の開設という手続きが入口になります。ここで許可通知書の写しを求められることが多く、事実上、許可の有無が取引開始の可否を決めます。登録手続きの中身はゼネコンの協力会社になるには|取引口座開設と建設業許可に、既存の元請から許可取得を求められた場合の進め方は元請から建設業許可を求められたら|岡山の下請業者が取る手順に整理しています。
4-5. 2軸で整理する——「法律上」と「取引上」を混ぜない
ここまでを1つの表にまとめます。縦軸が法律上の要否、横軸が取引上の要否です。自社がどのマスにいるかを先に決めてください。
| 取引上は求められていない | 取引上、許可が求められている | |
|---|---|---|
| 法律上は許可が必要(1件が軽微な範囲を超える) | ★最も危険。無許可営業の状態。速やかに是正が必要 | ★取得一択。時期の逆算が論点になる |
| 法律上は許可が不要(軽微な範囲に収まる) | 取得は経営判断。将来の受注方針しだい | ★取引継続のために実質必須。取得か、取引の縮小かの二択 |
- 左上のマスにいる場合は、要否判断ではなく是正の問題です。金額の線引きを見直したうえで、無許可で500万円以上を受注してしまったら|今すぐ取るべき対処をご覧ください。
- 右下のマスは、下請にいちばん多いパターンです。「法律上は要らないのに、なぜ取らなければいけないのか」という不満が出やすい位置ですが、§4-1 のとおり元請側にも理由があります。ここは感情論ではなく、取得コストと、取引を失うコストの比較で決める場面です(§7-4)。
- 左下のマスは、時間の余裕がある唯一の位置です。焦って動かなくてよい代わりに、いつ動くかを自分で決められるという利点があります。判断の目安は建設業許可を取るタイミング|取得を判断する目安に整理しています。
5. 許可を取ると、下請の立場でも増える義務
要否判断のもう半分は、「取ったら何が変わるのか」です。許可は資格の付与であると同時に、義務の発生でもあります。下請の立場で特に効くものを整理します。
5-1. 技術者の配置義務は「元請・下請の別や請負金額の多寡を問わない」
下請にとって最も重い変化がこれです。 手引は次のように明記しています(手引 PDF p.180)。
「許可を受けた業種については元請・下請の別や請負金額の多寡を問わず技術者配置の義務がありますので、元々は許可を要しない小規模の工事であっても、それぞれきちんと配置しなければなりません。」
建設業法第26条第1項により、建設工事の施工に当たっては技術上の管理を行う主任技術者を工事現場に配置しなければなりません。許可を取った業種については、税込100万円の工事でも主任技術者が要るということです。無許可のうちは配置義務がなかった小規模工事にも、許可を取った瞬間から義務が及びます。
主任技術者になるには、一般建設業の営業所技術者(旧:専任技術者)等になることができる資格及び経験を有する必要があります(手引 PDF p.180・p.21)。したがって、現場を動かせる有資格者・実務経験者が社内に何人いるかが、そのまま同時に動かせる現場の数の上限になります。1人しかいない会社が許可を取ると、複数現場を並行して受けられなくなる、という事態が起こり得ます。
あわせて、監理技術者は特定建設業者が元請として一定額(税込5,000万円、建築一式工事は8,000万円)以上の工事を下請させる場合に別途配置するものです。手引は「このような工事の場合には、元請からは監理技術者を、下請もそれぞれ主任技術者を配置する必要がある」と説明しています(手引 PDF p.180)。下請だから配置しなくてよい、というのが原則ではありません(特定専門工事など、法令上の例外が定められている場面を除きます)。
5-2. 専任が求められる工事——下請でも例外ではない
工事1件の請負代金が税込4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上の公共性のある施設若しくは工作物、又は多数の者が利用する施設若しくは工作物の建設工事(個人住宅を除くほとんどの工事)については、主任技術者及び監理技術者はその工事現場ごとに専任でなければならないとされています(建設業法第26条第3項/手引 PDF p.180-181)。
専任とは、その工期が終了するまでの間、現場を離れることが認められないという意味であり、他の工事と掛け持ちして配置することはできません(監理技術者に関し、これを補佐する者(1級技士補等)を置いたときなど、技術者が2現場まで兼務できる場合があるとされています)。手引は「公共性のある工事」の例として、国・地方公共団体発注の施設又は工作物、鉄道・索道・道路・上下水道などの公共性のある施設又は工作物、電気事業用施設・ガス事業用施設、学校・図書館・寺院・工場・病院・デパート・事務所・ホテル・共同住宅などを挙げています(手引 PDF p.181)。
さらに、営業所技術者等は営業所に常勤でなければならないため、専任性を求められる工事に配置することは原則できません(手引 PDF p.181)。営業所技術者を工事現場に配置することは、主任技術者・監理技術者としてはもちろん、一般作業員としても原則的にはできないとされています(手引 PDF p.181)。「社長が営業所技術者を兼ねて、現場にも出る」という体制は、許可取得後は成り立たなくなる場面があるということです。
なお手引は、専任義務違反について「事業年度終了報告時に、大きな工事と掛け持ちしていることが分かる例が散見されます」とし、建設業法に基づく監督処分等を受けることになると注意を促しています(手引 PDF p.181)。毎年の報告で体制が点検される構造です。
5-3. 一括下請負の禁止は、下請にも及ぶ
建設業法第22条は、建設業者が受注した建設工事を一括して他人に請け負わせること(同条第1項)及び建設業を営む者が他の建設業者が請け負った建設工事を一括して請け負うこと(同条第2項)を禁止しています(手引 PDF p.185)。
ただし、共同住宅を新築する建設工事以外の民間工事については、事前に発注者の書面による承諾を得た場合は適用除外となります(同条第3項)。一方、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の適用対象となる公共工事および共同住宅を新築する建設工事には同条第3項が適用されず、全面的に禁止とされています(手引 PDF p.185)。§3-1 で触れた「民間工事における合法的な一括下請負工事」とは、この適用除外に当たる場合を指します。
ここで重要なのは、手引の次の一文です。
「同条第2項の禁止の対象となるのは、『建設業を営む者』であり、建設業の許可を受けていない者も対象となります。」(手引 PDF p.185)
一括下請負の禁止は、許可の有無にかかわらず及びます。 「許可がないから建設業法は関係ない」という理解は、この点で明確に誤りです。
また、実質的な関与についても、元請だけでなくそれ以外の建設業者(=下請)に求められる内容が具体的に列挙されています。請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成、進捗管理、立会確認(原則)と元請負人への施工報告、協議組織への参加・現場巡回への協力、作業員の配置等の法令遵守と実地の技術指導、注文者との協議・下請負人からの協議事項への判断・対応・コスト管理などを「主として行うことが必要」とされています(手引 PDF p.186)。
さらに、元請負人において適格な技術者が配置されず実質的に関与しているといえない場合には、原則として下請負人も建設業法に基づく監督処分等の対象となる(下請負人にとって元請負人の適格な技術者が配置されていると信じるに足りる特段の事由があり、事後に適格性がないことが判明した等やむを得ない事情がない限り)と明記されています(手引 PDF p.190)。元請の体制不備の影響が下請にも及ぶという運用です。
5-4. 標識(許可票)——下請は現場掲示が不要、店舗は必要
ここは下請にとって数少ない「軽い」項目です。建設業法第40条により、許可を受けた建設業者は、その店舗及び建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に標識(許可票)を掲示しなければならないとされています(手引 PDF p.194)。ただし、手引は次のように限定しています。
「② 建設工事の現場において掲示義務を負う者 工事現場への掲示は、発注者から当該建設工事を直接請け負ったものに限り、掲示が必要となります。」(手引 PDF p.194)
現場の標識は元請の義務であり、下請は現場ごとの掲示義務を負いません。一方、店舗(営業所)への掲示は許可業者共通の義務です。「公衆の見やすい場所」とは、事務所内への掲出ではなく、事務所が面する道路等、第三者の視点からでも記載内容が容易に確認できる場所と解されています(手引 PDF p.194)。標識は許可を受けた者が自身で作成するもので、表示事項とサイズは規定されていますが材質等の規定はなく、県から交付されるものではないとされています。
あわせて、建設業法第40条の2により、許可を受けていない者が、許可を受けていると誤認されるおそれのある表示をしてはならないとされています(手引 PDF p.194)。手引は誤認表示の例として、①許可を全く受けていない者が一般建設業又は特定建設業の許可を受けているように表示すること、②一般建設業の許可のみを受けている者が特定建設業の許可を受けているように表示すること、③許可を受けている者がその許可業種以外の業種について許可を受けているように表示することを挙げています。名刺・会社案内・ウェブサイト・見積書の表記は、許可の状況と一致させておく必要があります。
5-5. 許可を維持するための期限
許可は取得後に維持義務が発生します。下請専業でも同じです。
| 事項 | 期限 | 出典 |
|---|---|---|
| 事業年度終了報告 | 決算日から4か月以内(毎年) | 手引 PDF p.22 |
| 変更届出書(許可申請書・添付書類の内容に変更が生じたとき) | 事項ごとに定められた期限内 | 手引 PDF p.22 |
| 常勤役員等・営業所技術者等が欠けた場合の変更届 | 変更後2週間以内 | 手引 PDF p.22 |
| 更新許可申請 | 有効期間満了の日の30日前までに受付(申請は満了の日の3か月前から可能) | 手引 PDF p.13・p.21 |
| 廃業届(許可を受けた建設業を廃止したとき等) | 30日以内(一部業種のみの廃業は営業所技術者等の変更届が必要なため2週間以内) | 手引 PDF p.22 |
手引は、期限内の提出を怠っている場合には許可の更新・追加申請等ができず、監督処分や罰則の対象にもなると明記しています(手引 PDF p.22)。また、許可の有効期間は許可日から5年間で、更新許可申請をすることなく有効期間が満了した場合は、改めて新規に許可を取得することになります(手引 PDF p.21)。
5-6. 表で整理——下請が許可を取ると、何が増えて何が変わらないか
| 項目 | 無許可のとき | 許可取得後(下請の立場) |
|---|---|---|
| 受注できる金額 | 1件が軽微な建設工事の範囲まで | 制限なし(一般建設業は自社の請負額に制限がない/手引 PDF p.6) |
| 主任技術者の配置 | 義務なし | 元請・下請の別や請負金額の多寡を問わず必要(手引 PDF p.180) |
| 専任が必要な工事 | — | 税込4,500万円(建築一式9,000万円)以上の公共性のある工事等では現場ごとに専任(手引 PDF p.180-181) |
| 現場の標識(許可票) | — | 不要(掲示義務は直接請け負った元請のみ/手引 PDF p.194) |
| 店舗の標識 | — | 必要(手引 PDF p.194) |
| 一括下請負の禁止 | 既に及ぶ(第22条第2項は「建設業を営む者」が対象/手引 PDF p.185) | 及ぶ(第22条第1項・第2項の双方) |
| 再下請負通知 | — | 施工体制台帳が作成される工事で再下請したとき書面で元請へ通知(手引 PDF p.199) |
| 毎年の届出 | なし | 事業年度終了報告(決算後4か月以内)ほか変更届(手引 PDF p.22) |
| 更新 | なし | 5年ごと。満了30日前までに受付(手引 PDF p.13・p.21) |
「増える義務」を見てから取得を判断するのが、下請の立場では特に大切です。とりわけ §5-1 の技術者配置は、社内の人員構成を変えないまま許可だけ取ると現場が回らなくなるという形で効いてきます。許可申請の前に、誰を営業所技術者に置き、誰を現場の主任技術者に立てるのかを設計しておく必要があります。
6. 「軽微な範囲で続ける」を選ぶときの現実——過去は後から表に出る
要否判断の結論は、必ずしも「取る」ではありません。軽微な建設工事の範囲で受注を続けるという選択も、法律上は成り立ちます。ただし、そこには2つの現実があります。
6-1. 過去の受注は、後日の申請書類のなかで見える
いずれ許可を取ろうとした場合、あるいは既に許可があって業種を追加しようとした場合、工事経歴書を作成することになります。手引は、工事経歴書の「その他」工事について「許可を有しない業種の施工実績を計上してください」とし、「その他」工事の総額が税込500万円以上の場合は請負金額の大きいものから順に明細を10件以上記載するか合計の7割を超えるまで記載する(総額が税込500万円未満の場合は作成不要)としています(手引 PDF p.51)。
そして岡山県の審査要領には、次の運用が置かれています。
「工事経歴書に記載されている工事について、その業種について許可を有していないのに、許可が必要な軽微でない工事を受注していた場合には、業務改善報告書を徴した上で申請等を受け付ける。」(審査要領 PDF p.8)
つまり、「軽微な範囲でやってきた」という前提が事実と違っていた場合、その事実は許可申請の場で書類として表に出ます。隠して進む道はありません。もっとも、岡山県の運用は「受け付けない」ではなく「業務改善報告書を徴した上で受け付ける」となっており、是正して前へ進む枠組みは制度として用意されているということでもあります。既に軽微な範囲を超えて受注してしまっている場合の具体的な進め方は無許可で500万円以上を受注してしまったら|今すぐ取るべき対処に整理しています。
6-2. 「軽微な範囲に収める」は、単価が上がると自動的に崩れる
もう1つの現実がこれです。軽微な建設工事のラインは金額で決まっているため、資材価格や労務費が上がれば、同じ内容の工事でも請負代金がラインを超えていきます。数年前は税込400万円で収まっていた工事が、いま同じ仕様で500万円を超える、ということが起こります。
しかも、§2-2 のとおり元請支給材料の価格も判定に含めます。支給材料の比率が高い下請ほど、契約書上の金額は小さいのに判定額は大きい、というギャップが生じます。
「軽微な範囲で続ける」は、受注を選別し続けることとセットです。断る仕事が出てくる、単価交渉のたびに金額を気にする、追加工事を受けにくい——このコストを織り込んだうえで選ぶなら、それは合理的な経営判断です。逆に、断ることのコストのほうが大きいと感じ始めたら、それが取得を検討する合図です。
6-3. 今すぐ取らない場合に、それでもやっておくこと
取得を先送りする場合でも、次の3つは今から着手できます。いずれも、後で取得すると決めたときに時間を短縮する準備になります。
- 契約の書面化を整える(§2-4)。注文書・請書の様式を元請と揃えておくと、後の実務経験の証明でそのまま使えます。
- 工事の記録を残す。契約書(原本)、注文書(原本)及び請書(写し)、工事台帳といった資料は、営業所調査で請負工事実績の確認に使われます(手引 PDF p.17)。廃棄しないでください。
- 要件の当たりを付ける。経営業務の管理責任者(常勤役員等)と営業所技術者を誰で満たすのかを先に見ておきます。要件の全体像は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)から確認できます。財産的基礎で詰まりそうな場合は自己資本500万円が足りないとき|増資・借入・残高証明もあわせてご覧ください。
7. 岡山県で下請が許可を取るときの手続き——提出先・調査・費用と期間
取ると決めた場合の、岡山県固有の運用です。ここは下請・元請で違いはありませんが、下請専業の会社が特に詰まりやすい点を明示します。
7-1. 提出先は本庁一元。事前審査は一切行われない
申請書・変更届の提出先は岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)です。窓口受付時間は9:00〜11:30、13:00〜16:30(閉庁日を除く)で、時間的な余裕がある申請等については郵送による提出も受け付けています(送付先は同じ/手引 PDF p.16)。本記事は書面(窓口へのご持参・郵送)による申請を前提に整理します。
手引は「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記しています(手引 PDF p.168)。岡山県では、所在地に応じて3つの県民局建設部ごとに担当区域を設け、建設業に関わる事務の一部を行っていますが、受付は本庁の一元運用です。
そして、下請の会社にとって最も重要なのがこの一文です。
「事前審査は一切行いません。 正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。」(手引 PDF p.16)
窓口で相談しながら書類を整えていく、という進め方は想定されていません。 11:30〜13:00 及び 16:30〜翌開庁日9:00 の間は窓口を閉じるとともに審査を休止し、原則として審査の途中であっても窓口閉鎖の時刻をもって審査は終了するとされています(手引 PDF p.16)。書類が整わないまま持ち込むと、その日は前に進みません。不受理・不許可になる典型的な理由は建設業許可が不許可・不受理になる主な理由に整理しています。必要書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧|新規・一般をご覧ください。
7-2. 営業所調査——下請専業の会社がいちばん詰まるところ
申請受付後、半月程度で所轄の県民局から営業所調査実施の連絡があります(手引 PDF p.17)。調査では、営業所の所在確認のために次のものが確認されます。
- 看板(容易に確認できるもの)、机、電話及びファクシミリ、営業所の賃貸借契約書(原本)等
- 営業所は居住部分と共用することができません
- 賃貸借契約を締結している場合には、契約書上で営業活動に利用することが認められていることが必要(営業所変更の場合も確認が必要)
手引は「※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません」と明記しています(手引 PDF p.17)。
現場中心で動いてきた下請の会社ほど、ここが弱点になります。 事務所を構えず自宅の一室で見積り・契約を行ってきた、看板を出していない、電話は携帯のみ——というケースは珍しくありません。金額要件や技術者要件をクリアしていても、この物的な部分で止まります。申請の準備は、この点の確認から始めるのが現実的です。
なお、営業所調査が早く終わったからといって許可が早く取得できるわけではありません。本庁の土木部監理課でも所要の調査が別途行われ、全ての許可要件を充足していると認められて初めて許可されます(手引 PDF p.16)。
7-3. 法定手数料と納付方法
岡山県知事許可の法定手数料は次のとおりです(手引 PDF p.14)。
| 許可申請の種類 | 岡山県知事許可 |
|---|---|
| 新規(許可換え含む)・般特新規 | 90,000円 |
| 更新・追加 | 50,000円 |
- 手数料の額は申請する業種の数とは関係ありません(何業種でも同額)
- 変更届出書の提出に手数料は不要です
- 複数の申請を同時に行う場合はそれぞれの額の合計額になります(例:一般許可更新5万円+一般許可追加5万円=10万円)
納付方法は、岡山県手数料等(POS)納付連絡票をホームページから印刷し、収納専用窓口に持参して支払う方式です。支払い後に納付済証を受け取り、許可申請書の正本非閲覧用の「(様式第1号の)別紙三」に貼り付けて提出します(手引 PDF p.14)。
7-4. 期間と費用の逆算——「取引を失うコスト」との比較で決める
申請が受け付けられてから許可になるまでは、特に問題がないケースで概ね2か月程度かかります(手引 PDF p.16)。営業所調査の連絡は受付後半月程度です(手引 PDF p.17)。これは「書類が完全に整った状態で受け付けられてから」の期間であり、その手前の準備期間(要件の確認、証明書類の収集、営業所の整備)は別途必要です。
費用の目安は次のとおりです(税込・当事務所の報酬は目安であり、案件内容により変動します。正確な金額は事前にお見積りします)。
| 区分 | (A) 行政書士報酬 | (B) 法定手数料 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 建設業許可申請(法人・新規) | 132,000円 | 90,000円 | 222,000円 |
| 建設業許可申請(個人・新規) | 110,000円 | 90,000円 | 200,000円 |
| 建設業許可申請(業種追加) | 55,000円 | 50,000円 | 105,000円 |
費用の内訳と総額の考え方は建設業許可の費用はいくら?岡山県知事許可の総額目安に詳しくまとめています。
§4-5 の右下のマス(法律上は不要だが取引上は求められている)にいる場合、判断はこの数字の比較になります。 取得にかかる費用と、社内で技術者を配置できる体制を作る手間。それに対して、許可を取らないことで失う取引の年間売上と、その取引先から今後受けられたはずの仕事。どちらが大きいかは会社によって違うので、一般論では決まりません。 ただし、比較の材料はこの2つだけです。感覚で先送りするより、数字を並べて決めるほうが早く終わります。
動く時期そのものを決めかねている場合は、建設業許可を取るタイミング|取得を判断する目安に、決算期や受注予定から逆算する考え方をまとめています。
8. 許可を取ったその先——下請の立場から広がるもの
許可は取得がゴールではなく、下請の立場から見ると選択肢が増える起点になります。
8-1. 元請として受注する道
許可を取ると、一般建設業でも自社の請負額に制限はありません(手引 PDF p.6)。制限があるのは「下請に出す額の総額」の側です。一般建設業の許可では、元請として1件の工事について下請に出せる額は合計で5,000万円未満(建築一式工事については8,000万円未満)までとされています(手引 PDF p.6)。発注者から直接請け負う建設工事につき、下請代金の額(下請契約が2以上あるときはその総額)が建築工事業は8,000万円以上、その他の工事業は5,000万円以上となる下請契約を締結して施工する場合には、特定建設業の許可が必要になります(手引 PDF p.10)。
下請から元請へ移ると何が変わるのか——請負額の考え方、必要になる許可の種類、乗ってくる別の義務については、下請から元請になるための建設業許可|変わることに整理しています。
8-2. 公共工事・入札という道
公共工事を直接受注するには、許可の次に経営事項審査(経審)と入札参加資格が必要になります。下請として公共工事に関わってきた会社が、元請として入札に参加する側へ移るときの順序は公共工事を受注するには|建設業許可から経審・入札までと経審申請を岡山で依頼するなら、入札参加資格をご覧ください。
8-3. 業種の追加という道
下請専業の会社は、実際には複数業種にまたがる仕事を受けていることが多く、まず主力1業種で取得し、実績が整った業種を後から追加するという進め方が現実的です。追加申請の法定手数料は50,000円です(手引 PDF p.14)。業種の切り分けは建設業許可の業種一覧|29業種の区分と選び方を参照してください。
8-4. 維持を仕組みにする
§5-5 のとおり、許可には毎年・5年ごとの期限が伴います。事業年度終了報告を落とすと更新・追加申請ができなくなる(手引 PDF p.22)ため、期限管理は取得と同じくらい重要です。当事務所では、変更届・事業年度終了報告・更新の期限をまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。期限管理(いつ何を出すかのご案内)は顧問の範囲、申請の代理実行はスポットの報酬という切り分けです。
なお、一人親方として下請で働いている方が許可を検討する場合は、個人で取るか法人化してから取るかという論点が先に来ます。一人親方が建設業許可を取るにはをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
「下請でも建設業許可は必要か」への答えを、3行にまとめます。
- 法律上の要否は、元請か下請かでは変わりません。 判定は自分が結んだ工事1件の請負代金が「軽微な建設工事」の範囲に収まるかどうか、そして業種が何かで決まります(手引 PDF p.5)。下請でも1件が税込500万円以上(建築一式工事は税込1,500万円以上の工事。ただし延べ面積150㎡未満の木造住宅工事は、請負代金にかかわらず軽微な建設工事に当たります)なら許可が必要です。
- 下請に固有の落とし穴は「支給材料」と「契約の単位」です。 注文者や元請業者が材料を支給する場合は材料費も含めて判断します(手引 PDF p.5)。契約を分割しても各契約の合計額で判断されます(手引 PDF p.207)。契約書・注文書・請書が残っていなければ、そもそも1件の額を確定できません(手引 PDF p.183-184)。
- 法律上は不要でも、取引上は実質必須になる場面があります。 無許可業者と一定の下請契約を締結した元請側にも監督処分の基準が置かれており(手引 PDF p.206)、公共工事では下請金額の大小によらず施工体制台帳等の作成義務があります(手引 PDF p.198)。元請が許可を求めるのには制度上の理由があります。
そして、取得を判断するときは「取ったら何が増えるか」まで見てください。許可を受けた業種については、元請・下請の別や請負金額の多寡を問わず主任技術者の配置義務が生じます(手引 PDF p.180)。小規模工事にも義務が及ぶため、人員体制の設計とセットで考える必要があります。
岡山県では、申請は本庁一元(手引 PDF p.168)、事前審査は一切行われず(手引 PDF p.16)、受付後半月程度で所轄県民局の営業所調査があり(手引 PDF p.17)、許可までは概ね2か月程度です(手引 PDF p.16)。現場中心で動いてきた下請の会社ほど、営業所の要件で時間を取られます。「今回の話に間に合うか」を判断するには、逆算が要ります。 要件の全体像は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)から確認できます。
「この工事は許可が要るのか」の切り分けは無料相談から
「元請から言われているが本当に必要なのか」——契約書と支給材料の有無から具体的に切り分けます。建設業に特化した行政書士が、要否の判断と、取ると決めた場合の工程まで一緒に整理します。「請負代金450万円+元請支給材料100万円は許可が要るのか」「二次下請でも要るのか」など、まず1問だけ聞きたい方はLINEでどうぞ。無料相談は30秒入力のフォームから。お電話は070-8567-3197。
