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特定建設業許可の財産的基礎|4基準の計算式と当てはめ【岡山】

特定建設業許可の財産的基礎|4基準の計算式と当てはめ【岡山】

特定建設業の許可でつまずく場所は、ほとんどの会社で決まっています。技術者ではなく、決算書です。

特定建設業が必要になるのは、元請として下請に出す額の総額が一定の水準(その他の工事業は5,000万円、建築一式工事は8,000万円)に達するときです(この線引きそのものは下請から元請になるための建設業許可に整理しています)。そこまでは分かった。では自社は取れるのか——を決めるのが、本記事で扱う「より高度な財産的基礎(財務要件)」です。

岡山県の手引は、この財務要件を4つの基準として掲げ、さらに法人用・個人用それぞれの計算式を1ページの表にして載せています(手引 PDF p.11・p.12)。結論を先に言えば、判定はこの4式に自社の決算書の数字を代入するだけで終わります。ただし、代入の段階で次の3つを取り違えると、答えがまるごと逆になります。

  1. 欠損比率の分母は「資本金」(個人は期首資本金)です。自己資本でも純資産合計でもありません。
  2. 流動比率の分母は「流動負債合計」です。負債合計ではありません。
  3. 判定に使う決算書は、原則として「許可申請時直前の決算期」のものです。今日の預金残高ではありません。特定建設業には、一般建設業のような残高証明書で示すルートがありません(建設業許可の残高証明書はいつ・いくら必要?)。

本記事では、岡山県で建設業に特化する行政書士が、4基準の計算式を法人・個人それぞれについて分解し、自社の決算書のどの行を代入するのか、そして数字が揃ったあとに待っている「特定営業所技術者をどう証明するか」という書類の実務を整理します。

※ 財産的基礎を満たすかどうかは、決算書の科目の取り方・事業年度の区切り・申請の種類といった個別の実態によって判断が分かれます。本記事は岡山県知事許可・書面(窓口へのご持参・郵送)による申請を前提とした一般的な整理であり、特定の会社について結論を保証するものではありません。最終判断は有資格者(行政書士)または岡山県の担当窓口にご確認ください。

1. 判定は「どの決算書を開くか」から始まる

計算式に入る前に、そもそもどの数字が見られるのかを確定させます。ここを間違えると、正しい式に間違った数字を入れることになります。

1-1. 原則は「許可申請時直前の決算期の財務諸表」

手引は、特定建設業の許可基準として一般建設業の基準に加えて必要になるものを2つ挙げ、その2つ目を「(2)より高度な財産的基礎を有すること(財務要件)」としています。そして判定に用いる資料を、次のように限定しています(手引 PDF p.11)。

「許可申請時直前の決算期の財務諸表(新規設立の場合は創業時の財務諸表)で、次の全ての要件を満たすこと」

読み取るべき点が2つあります。

第一に、「直前の決算期」です。 期の途中でどれだけ数字が改善していても、原則として反映されません。申請の時期を決める前に、どの決算期の数字で勝負するのかを決める——これが特定建設業の準備の出発点です。決算をまたぐかどうかで、着手時期の意味そのものが変わります。

第二に、「全ての要件を満たすこと」です。 4つのうち3つを満たして1つを落とした場合、平均や総合評価で救われる構造にはなっていません。4つすべてが独立した足切りです。

1-2. 更新・業種追加のときは、申請書に財務諸表が付かない

見落とされやすいのがここです。岡山県の審査要領は、特定建設業に係る更新および業種追加の申請については、申請書に財務諸表が含まれないため、申請者から提出されている直近の事業年度終了報告書によって財産的要件を満たしているかどうかを判断するとしています(審査要領 PDF p.26)。

つまり、毎年の事業年度終了報告に添付した財務諸表が、そのまま特定建設業の更新審査の判定資料になります。 この論点そのものは決算変更届(事業年度終了報告)とは|毎年の提出義務と流れに詳しく整理していますので、ここでは「特定建設業者にとって、毎年の報告は取得後の生命線でもある」という接続だけ示しておきます。

1-3. 設立したばかりで決算がないとき

特定建設業に係る新規申請で、まだ設立したばかりで決算をしたことがない場合には、創業時の財務諸表で基準を満たしているかどうかを判断するとされています(審査要領 PDF p.26-27)。手引 PDF p.11 の括弧書き(新規設立の場合は創業時の財務諸表)と同じ趣旨です。

設立時の資本金の設計が、そのまま①②の答えになるということです。ただし、これは「決算を経ていない会社」の話であり、1期でも決算を締めていれば §1-1 の原則に戻ります。

1-4. ⛔ 特定には「残高証明書ルート」がない

一般建設業の財産的基礎は、3つの選択肢のいずれかを満たせばよい構造になっています(手引 PDF p.9-10。3択の中身と使い分けは建設業許可の残高証明書はいつ・いくら必要?が本家です)。これに対して、特定建設業の財務要件には「いずれか」がありません。 判定資料は財務諸表であり、残高証明書によって代えるという定めは置かれていませんので、「申請の直前に口座へ入金して説明する」という組み方は、特定建設業では成り立ちません。

1-5. 数字の作り方(税込・税抜)で結論が動くことがある

同じ会社の同じ期でも、財務諸表を税込処理で作るか税抜処理で作るかによって、各科目の金額は変わります。 岡山県の審査要領は、この消費税の取扱いについて定めを置いています(審査要領 PDF p.26)。「あと少しで基準に届く」という会社ほど、作成方式の選び方と統一が効いてきます。

財務諸表の様式(第15号〜第19号)そのものの作り方・勘定科目の立て方・消費税の処理は兄弟記事の建設業許可の財務諸表|様式・勘定科目と決算書との違いの担当ですので、本記事では「出来上がった財務諸表の、どの行を4式に代入するか」に集中します。

2. 4つの基準——何と何を比べているのかを先に固定する

手引が掲げる4つの基準は次のとおりです(手引 PDF p.11)。数値そのものは、他の記事でも繰り返し出てくる有名な数字です。本記事の価値は数値の列挙ではなく、「その数値を、何で割った結果と比べるのか」を確定させることにあります。

#基準★何を分母・比較対象にするか(ここを取り違える)
①資本金の額が 2,000万円以上比較対象は資本金そのもの(個人は期首資本金)
②自己資本の額が 4,000万円以上法人は純資産合計。資本金ではない
③欠損の額が資本金の額の 20%を超えない分母は資本金(個人は期首資本金)。自己資本でも純資産でもない
④流動比率が 75%以上分母は流動負債合計。負債合計ではない

2-1. ★③の分母は「資本金」——自己資本ではない

実務でもっとも多い取り違えがこれです。「欠損の額が自己資本の20%」と覚えている方が少なくありませんが、手引の文言は「欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと」です(手引 PDF p.11)。手引 PDF p.12 の計算式表でも、③の分母は法人が「資本金」、個人が「期首資本金」と印字されています。

②で見るのが純資産合計、③で見るのが資本金——同じ貸借対照表の純資産の部を見ているのに、参照する行が違うという点を、先に固定してください。

2-2. ★④の分母は「流動負債合計」——負債合計ではない

手引は「流動比率」を次のように定義しています(手引 PDF p.11)。

「※「流動比率」とは 流動資産を流動負債で割ったものに 100 をかけた数をいいます。」

計算式表でも「流動資産合計 ÷ 流動負債合計 ×100 ≧ 75%」と示されています(手引 PDF p.12)。長期借入金などの固定負債は、この分母に入りません。 「借入が多いから流動比率は絶望的だ」と思い込んでいた会社が、実際に計算してみると余裕で基準を超えていた——というケースは珍しくありません。逆に、短期借入金や買掛金・未払金が膨らんでいる会社は、負債総額が小さくてもここで落ちます。

2-3. ★不等号の向きと境界値

境界ちょうどの扱いは、資料の文言どおりに読みます。

基準手引の文言境界の扱い
① 資本金2,000万円以上2,000万円ちょうどは満たす
② 自己資本4,000万円以上4,000万円ちょうどは満たす
③ 欠損比率20%を超えない(計算式表は ×100≦20%)20.0%ちょうどは満たす
④ 流動比率75%以上(計算式表は ×100≧75%)75.0%ちょうどは満たす

③だけが「以下」方向で、他の3つが「以上」方向です。表計算で判定式を組むときに、③の不等号を反転させたまま作ってしまう——という取り違えは、実務でも起こります。

2-4. ⛔ 特定の財務要件に「5年」という基準はない

念のため潰しておきます。建設業許可の資料には「5年」という数字が何度も出てきますが、特定建設業の財務要件には5年という基準が1つもありません(手引 PDF p.11 の4基準に、期間の要件は存在しません)。

混同のもとになっているのは、一般建設業の財産的基礎の3択の1つ「許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること」(手引 PDF p.9-10)です。これは一般建設業の話であって、特定建設業の4基準とは別の制度です。「5年続けていれば財務要件は緩む」という取扱いは、特定建設業には書かれていません。

3. 法人の4式|貸借対照表のどの行を代入するか

ここからが本記事の中核です。手引 PDF p.12 には「<財務要件の計算式(特定建設業)> ※以下の式を全て満たしていればOK」という見出しの下に、法人・個人の2列で計算式がまとめられています。まず法人から分解します。

3-1. 法人の4式

#事項計算式(法人)代入する数字の出どころ
①資本金額資本金 ≧ 2,000万円貸借対照表 純資産の部の「資本金」
②自己資本純資産合計 ≧ 4,000万円貸借対照表「純資産合計」
③欠損比率{繰越利益剰余金の負の額(正の額に置換え)−(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く))} ÷ 資本金 ×100 ≦ 20%純資産の部の各行
④流動比率流動資産合計 ÷ 流動負債合計 ×100 ≧ 75%資産の部・負債の部それぞれの「流動」小計

(出典:手引 PDF p.12 の計算式表。①〜④の基準そのものは手引 PDF p.11)

3-2. ★③の分子は「引き算の結果」——繰越利益剰余金がマイナスでも即アウトではない

③でつまずく会社が多いのは、分子が単なるマイナスの額ではなく、引き算の結果だからです。手引は「欠損の額」を次のように定義しています(手引 PDF p.11)。

「【法人の場合】 貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の合計額を上回る額」

日本語で書き下すとこうなります。

  1. まず、繰越利益剰余金がマイナスかどうかを見ます。プラスなら、そもそも「欠損の額」は発生しません(③は自動的に満たします)。
  2. マイナスであれば、その額を資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金の合計額と比べます。
  3. 合計額の範囲に収まっていれば、「上回る額」は生じません。 つまり欠損の額は0で、③は満たします。
  4. 合計額を超えてはみ出した分だけが「欠損の額」です。これを資本金で割って100を掛け、20%以下かどうかを見ます。

「累積赤字があるから特定は無理だ」と決めつける前に、この3段階を実際に計算してください。 過去に積み上げた利益準備金やその他利益剰余金、増資に伴う資本剰余金が厚い会社では、繰越利益剰余金がマイナスでも欠損の額が0になることがあります。ここは、決算書を1枚開けば数分で確定する論点です。

なお、計算式表の分子側では「その他利益剰余金」から繰越利益剰余金を除くと明記されています(手引 PDF p.12)。繰越利益剰余金はその他利益剰余金の内訳ですから、これを両側に入れると二重計上になります。表計算で組む場合、ここが最も事故りやすい箇所です。

3-3. ②は「資本金」ではなく「純資産合計」

②の自己資本は、計算式表では純資産合計とされています(手引 PDF p.12)。

したがって、次の2つはどちらも起こり得ます。

  • 資本金2,000万円・純資産合計4,500万円 → ①②とも満たす(利益を積み上げてきた会社)
  • 資本金5,000万円・純資産合計3,200万円 → ①は満たすが②で落ちる(増資はしたが赤字を重ねた会社)

「資本金を4,000万円にすれば②も満たせる」とは限りません。 ②は、その資本金がその後どう使われたかまで含んだ結果の数字です。

3-4. ①だけに置かれている例外

4つの基準のうち、①資本金についてだけ、直前決算時に基準に達していなくてもその後の増資により申請前に要件を満たしていれば差し支えない旨が手引に明記されています(手引 PDF p.11。資本金の額の変更届の提出が必要です)。②③④に同じ趣旨の記載はありません。 この例外の読み方と、増資という打ち手そのものの当たり外れについては自己資本500万円が足りないとき|増資・借入・残高証明で扱っていますので、そちらをご覧ください。

3-5. 4式を並べたときに見える「詰まり方の型」

法人の場合、落ち方には型があります。

落ちる基準よくある会社の姿
①だけ資本金1,000万円のまま成長してきた会社。純資産は厚い
①②設立から日が浅く、利益の蓄積がまだ薄い会社
③だけ過去に大きな赤字を出し、剰余金でカバーしきれていない会社
④だけ手元資金が薄く、買掛金・短期借入金・未払金が厚い会社。売上規模とは無関係に起こる
②③④債務超過に近い状態。財務要件の手前の問題として整理が必要

どこで落ちたかによって、次にやることがまったく変わります。 §5でこの分岐を整理します。

4. 個人事業主の4式|法人とは項目が違う

特定建設業は法人でなければ取れない、という制度にはなっていません。手引 PDF p.12 の計算式表には、個人の列が法人と並べて掲げられています。ただし、代入する項目は法人とまったく別物です。

4-1. 個人の4式

#事項計算式(個人)
①資本金額期首資本金 ≧ 2,000万円
②自己資本(期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)− 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金・準備金 ≧ 4,000万円
③欠損比率{事業主損失(正の額に置換え)−(事業主借勘定 − 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金・準備金)} ÷ 期首資本金 ×100 ≦ 20%
④流動比率流動資産合計 ÷ 流動負債合計 ×100 ≧ 75%(法人と共通)

(出典:手引 PDF p.12)

4-2. ★①③の基準は「期首資本金」

法人の①③が「資本金」であるのに対し、個人は「期首資本金」です(手引 PDF p.12)。期末ではありません。期中に事業主が資金を入れても、①の判定に使う期首資本金そのものは動かないという構造になっています。

4-3. ②で効くのは事業主借勘定

②の式を見ると、事業主借勘定はプラス側、事業主貸勘定はマイナス側に立っています。事業主が事業に持ち込んだ資金は自己資本を押し上げ、事業から引き出した資金は押し下げる、という考え方です。「元入金が小さいから4,000万円には遠い」と決めつける前に、実際に式を当ててください。

4-4. 「欠損の額」の個人版

個人の欠損の額は、次のように定義されています(手引 PDF p.11)。

「【個人の場合】 事業主損失が事業主借勘定の額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額」

法人と同じ構造です。事業主損失が出ていても、(事業主借−事業主貸+利益留保性の引当金・準備金)の範囲に収まっていれば、「上回る額」は生じません。 超えた分だけが欠損の額であり、それを期首資本金で割って20%以下かどうかを見ます。

4-5. 一般建設業の500万円版とは式の役割が違う

一般建設業の自己資本500万円についても、個人には同じ考え方の式が置かれています(手引 PDF p.10)。ただし、そちらは500万円という水準を、①資金調達能力・③継続営業実績という他の選択肢と並べて使うものであり、特定建設業の4,000万円は他に代替手段のない単独の足切りです。同じ形をした式でも、突破の意味がまったく違います。一般建設業の500万円で詰まっている段階の方は自己資本500万円が足りないとき|増資・借入・残高証明をご覧ください。

5. 自社の決算書に当てはめるワークシート——落ちた基準で打ち手が変わる

ここまでの式を、実際の作業手順に落とします。用意するのは、許可申請時直前の決算期の貸借対照表1枚(法人なら様式第15号、個人なら様式第18号に相当するもの)です。

5-1. 転記する数字(法人)

手順拾う行記入欄
1資本金____________ 円
2資本剰余金(合計)____________ 円
3利益準備金____________ 円
4その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)____________ 円
5繰越利益剰余金(マイナスなら符号ごと)____________ 円
6純資産合計____________ 円
7流動資産合計____________ 円
8流動負債合計____________ 円

5-2. 判定(法人)

基準判定式結果
①〔1〕≧ 20,000,000□満たす □満たさない
②〔6〕≧ 40,000,000□満たす □満たさない
③〔5〕がプラスなら自動的に満たす。マイナスなら、その絶対値 −(〔2〕+〔3〕+〔4〕)を求め、0以下なら満たす。プラスならその額 ÷〔1〕×100 ≦ 20 か□満たす □満たさない
④〔7〕÷〔8〕×100 ≧ 75□満たす □満たさない

5-3. 転記する数字(個人)

手順拾う行記入欄
1期首資本金____________ 円
2事業主借勘定____________ 円
3事業主貸勘定____________ 円
4事業主利益(または事業主損失)____________ 円
5負債の部に計上されている利益留保性の引当金・準備金____________ 円
6流動資産合計____________ 円
7流動負債合計____________ 円

判定は、①〔1〕≧2,000万円/②(〔1〕+〔2〕+〔4〕)−〔3〕+〔5〕≧4,000万円/③事業主損失が出ている場合に、その絶対値 −(〔2〕−〔3〕+〔5〕)が0以下なら満たす。プラスならその額 ÷〔1〕×100 ≦ 20 か/④〔6〕÷〔7〕×100 ≧ 75 か、の順に見ます。

5-4. ★落ちた基準ごとの意味

判定が終わったら、どこで落ちたかを見てください。落ちた場所によって、次に検討する内容が変わります。

落ちた基準何を意味するか次に検討すること
①資本金資本の額そのものが足りない手引 PDF p.11 が①についてのみ置いている例外の扱い(→自己資本500万円が足りないとき)。資本金の額の変更届が伴う
②自己資本蓄積が足りない、または過去の損失で目減りしている決算をまたぐ設計。申請時期そのものを次期以降に置き直す判断
③欠損比率剰余金で吸収しきれない累積損失がある損失の解消は決算の積み上げに依存する。時間がかかる類型
④流動比率短期の資金構成の問題。売上規模とは無関係決算期の資金の持ち方・短期借入と長期借入の構成

①だけで落ちている会社と、③で落ちている会社では、必要な時間の桁が違います。 ①は申請前に手当てできる余地が資料上に明記されている唯一の項目ですが、③は決算を重ねて解消していく話になります。「まず何か月かかるのか」を知りたい方は、この判定結果をお持ちのうえでご相談ください。

5-5. ⛔ 「割ったら許可が取り消される」とは書かれていない

不安をあおる記述をよく見かけるので、資料の書きぶりを正確に置いておきます。手引は、特定建設業の取得後について「これらの要件を確保できなくなった際には特定建設業の許可を維持できなくなります」としています(手引 PDF p.12)。

「取り消す」と明記されているのは別の場面です。 手引が「許可を取り消すことになります」と書いているのは、①不正手段で許可を取得した場合、②許可行政庁の営業停止処分に従わない場合です。さらに同じページには、③許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、又は引き続いて1年以上営業を休止した場合等も取消処分の対象になると書かれています(いずれも手引 PDF p.23)。いずれも財務要件とは別の場面であり、「財務要件を割ったら直ちに取消し」という明文は、手引にも審査要領にもありません。 一方で、更新のときに要件を欠いていれば更新はできませんので、「取消し」ではなく「更新できない」という形で効いてくると理解するのが正確です。

なお、更新の時期に財務要件を欠いてしまった場合の取扱いについては、審査要領に別の定めがあります。この論点は建設業許可が失効するとどうなる|更新を忘れたときの影響が扱っていますので、更新期限が迫っている方はそちらもあわせてご覧ください。更新そのものが難しくなったときの立て直しは、兄弟記事の建設業許可が更新できないとき|残り日数別の立て直し手順に整理しています。

6. 数字が揃ったら人|特定営業所技術者を「どう証明するか」

財務要件を満たせる見込みが立ったら、次は技術者です。特定建設業では、営業所ごとに置く営業所技術者(旧:専任技術者)の要件が上がり、特定営業所技術者が必要になります。

どの資格があれば特定営業所技術者になれるのか(指定建設業7業種では1級の国家資格者・技術士・大臣認定者に限られること、指定建設業以外では指導監督的実務経験を上乗せする道があること)は、営業所技術者になれる資格一覧|業種別の対応国家資格が本家です。本記事は、その先の「その人を、どの書類で、どう証明するのか」だけを扱います。

6-1. 1級の資格者・大臣認定者以外を立てるときに使う書類

手引は、指導監督的実務経験証明書(様式第10号)について、作成が必要な場合を次のように定めています(手引 PDF p.85)。

「【作成が必要な場合】指定建設業(土、建、電、管、鋼、舗、園)以外の業種について特定建設業の許可を得ようとする場合で、1級相当の国家資格を有する者又は大臣認定者以外の者を特定営業所技術者として申請する場合に用います。ただし、監理技術者資格者証で指導監督的実務経験を確認できる場合は、この証明書の代わりに監理技術者資格者証の写しを添付してください。」

つまり、この書類が登場するのは1つの型のときだけです。1級の国家資格者を立てるなら不要、指定建設業なら使えない、監理技術者資格者証で確認できるなら写しで足りる——という三方向の絞り込みがかかります。監理技術者資格者証の記載から特定営業所技術者になれるかどうかを読み取る方法は、営業所技術者になれる資格一覧|業種別の対応国家資格に整理しています。

6-2. ★手引の記載例に書かれている「認められない経験」

手引 PDF p.84 には様式第10号の記載例が掲げられ、その余白に注記が入っています。ここに、実務でもっとも効く一文があります。

「・営業所に常駐して各現場の進行状況等を指導監督していたような経験では実務経験とは認められません。」(手引 PDF p.84)

これは「現場に出ていない管理職の経験は使えない」という趣旨の注記です。 会社の中で最も工事全体を把握しているのが営業所にいる幹部だ、という会社は多いのですが、その立場での指導監督は、様式第10号の経験としては数えられないと明記されています。誰を特定営業所技術者に立てるかを決める段階で、この一文を先に当ててください。

同じ記載例には、あわせて次の注記も置かれています(いずれも手引 PDF p.84)。

  • 「元請負人として請け負った工事のみ記載できます。」
  • 「指定建設業(土・建・電・管・鋼・舗・園)では使えません。」
  • 「実際に建設工事の技術面を総合的に指導監督する実務に携わった経験のみ記載できます。」
  • 「工事内容は冒頭に記載した業種(A)に合致していなければなりません。」
  • 「同じ工事について過去に事業年度終了報告、他の技術者の実務経験証明等で報告したものと違う業種で記載することは認められません。」

6-3. ★最後の1点が効く——過去の提出書類と突き合わされる

上の5点のうち、準備段階で見落とされるのが最後の注記です。同じ工事を、過去に事業年度終了報告や他の技術者の実務経験証明で「別の業種」として報告していれば、今回それと違う業種で記載することは認められません。

これは、特定建設業の申請が、過去に自社が提出してきた書類と照合される構造になっていることを意味します。毎年の工事経歴書にどの業種で載せたか、他の技術者の実務経験証明でその工事をどう使ったか——過去の提出物が、そのまま今回の制約になります。 手元に控えが残っていない会社は、ここで組み立てが止まります。

したがって、特定建設業を検討し始めた段階でやるべきことは、決算書と並んで「過去に提出した申請書・変更届の副本を集めること」です。 岡山県では、許可申請の場合は6部とも預かられ、許可になったら許可通知書とともに副本2部が返却されます(手引 PDF p.26)。その控えが手元にあるかを確認してください。

6-4. 機械器具の製造と据付けを一括で請け負った場合

審査要領には、判断に迷いやすい場面についての明示的な取扱いが1つ置かれています(審査要領 PDF p.25)。

「(3)機械器具製造・設置に係る実務経験について

(例)機械器具の製造費 4,500 万円+据付け工事費 200 万円= 4,700 万円

この場合において、製造・設置工事を一括して、発注者から直接、請け負う場合には、当該工事において指導監督を行った技術者の経験は、特定建設業の許可に必要な指導監督的実務経験として認められる。」

据付け工事費だけを見れば200万円の工事ですが、製造費と一括して元請で請け負っているのであれば、その工事における指導監督の経験は認められるという取扱いです。機械器具設置工事を扱う会社では、この一文の有無で証明できる工事の件数が変わります。自社の受注形態が「製造+据付けの一括請負」であるなら、必ず確認してください。

なお、期間の計算方法(各工事期間から1か月を差し引いて積み上げること、施工期間の重複が認められないこと、実務経験証明書(様式第9号)の証明期間とは重複してよいこと)は実務経験は業種をまたいで通算できる?が本家ですので、そちらをご覧ください。この文脈で出てくる4,500万円は、特定建設業の許可が必要になるかどうかのラインではありません(要否のラインについては下請から元請になるための建設業許可をご確認ください)。

6-5. 様式第8号の「一般か特定か」の書き分け

技術者を証明する様式第8号(営業所技術者等証明書)には、一般建設業と特定建設業の両方の文言があらかじめ印字されています。手引の記載例は、次のように指示しています(手引 PDF p.78)。

「・該当しない方を抹消します。(一般建設業の営業所技術者の場合は下段を抹消し、特定建設業の場合は上段を抹消)」

「特定なのに下段を抹消してしまう」という単純な取り違えが、そのまま補正の対象になります。 様式を1枚ずつ確認するときの、地味ですが外せないチェックポイントです。

6-6. ⚠️ 有資格区分のコードは「5つだけ」と決めつけない

様式第8号には、その技術者が建設業法のどの規定に該当して技術者になっているかを示すコードを記入します。特定建設業について、手引 PDF p.80 と審査要領 PDF p.7 が掲げているのは「9」「3」「8」「5」「2」の5つです(コード表そのものの読み方は営業所技術者になれる資格一覧|業種別の対応国家資格に整理しています)。

ただし、手引 PDF p.45 の法定の記載要領には、この5つに含まれないコードがもう1つ実在します。

「「6」 ・・・ 法第15条第2号ハ該当(同号ロと同等以上)」(手引 PDF p.45)

同じ資料の中で運用上の一覧(p.80・審査要領 p.7)と法定の記載要領(p.45)の粒度が違うということです。「特定のコードは5つしかない」と決めつけて記入すると、大臣認定の内容によっては当てはまるコードがない、という事態になり得ます。 大臣認定を受けた方を特定営業所技術者に立てる場合は、認定の内容とコードの対応を個別に確認してください。

なお、岡山県は事前審査を一切行わない運用です(§8-2)。様式のコード1つでも、出す前に確定させておく必要があります。

7. 同じ業種で一般と特定は併有できない——判定結果が持つ重み

§5の判定と§6の証明が揃ったとして、最後に確認しておくべき構造的な事実があります。

7-1. 1つの業種について、一般と特定の両方は持てない

岡山県の審査要領は、事業承継の認可要件を説明する箇所で、1つの建設業者が同一業種について一般建設業と特定建設業の両方の許可を受けることはできないと明記しています(審査要領 PDF p.35)。原文の引用と、この一文をどこまで一般則として読めるかは、兄弟記事般特新規とは|建設業許可を一般と特定で切り替える区分判定に整理しています。

この一文は事業承継の文脈に置かれていますが、述べている内容は区分そのものの構造です。「その業種で特定を取る」ということは、「その業種の一般を手放す」ことと同じ意味になります。

したがって、業種ごとに一般と特定を使い分けるという設計はできません。たとえば「とび・土工工事業は一般のまま、電気工事業は特定」という組み合わせは業種が違うので可能ですが、「電気工事業について一般と特定を両方持ち、案件によって使い分ける」という設計は成り立たない、ということです。

7-2. だから「取れるか」の判定が重い

§5の判定は、単なる可否の確認ではありません。特定に上げるかどうかは、その業種の許可の姿を一方向に変える判断です。判定結果を見て検討すべきなのは、次の3点です。

  1. その業種で、下請に出す総額が線に届く工事は年に何件あるか。 1件もない年が続くなら、特定を維持するための財務要件の負担だけが残ります。
  2. その財務水準を、来期以降も維持できるか。 判定資料は毎年の決算です(§1-2)。
  3. 1級相当の特定営業所技術者を、退職リスクも含めて確保し続けられるか。

7-3. 要件を欠いても、自動で一般には戻らない

手引は、特定の要件を確保できなくなったときについて、当然に一般許可に移行するものではなく、改めて新規許可申請(別の業種で一般許可を有している場合には追加許可申請)を行う必要があるとしています(手引 PDF p.12)。この論点は下請から元請になるための建設業許可が扱っていますので、ここでは「上げるのも下ろすのも申請が要る」という点だけ押さえてください。

7-4. 手続きそのものは兄弟記事へ

判定の結果「取れる」となったら、次はどの申請区分で出すかです。一般の許可を持っている業種を特定に切り替えるのか、まだ許可のない業種で特定を取るのか、既に無許可になっているのか——時点によって申請区分と様式の書き分けが変わります。 ここは兄弟記事の般特新規とは|建設業許可を一般と特定で切り替える区分判定が担当です。法定手数料の額・更新と一冊にする場合の期限も、そちらに整理しています。

本記事の役割は「取れるかどうかを、決算書と技術者の書類で確定させること」までです。 そこが決まれば、手続きは工程の話になります。

8. 岡山県での手続き|提出先・営業所調査・費用と期間

8-1. 提出先は本庁一元

岡山県知事許可の申請書・変更届の提出先は、岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)です。手引は「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記しています(手引 PDF p.168)。所轄の県民局は申請の受付窓口ではありません。

窓口受付時間は9:00〜11:30、13:00〜16:30(閉庁日を除く)で、11時30分から13時00分まで、および16時30分から翌開庁日の9時00分までは窓口を閉じるとともに審査を休止し、原則として審査の途中であっても窓口閉鎖の時刻をもって審査は終了します(手引 PDF p.16)。時間的な余裕がある申請等については、郵送での提出も受け付けられています(送付先は同じ/手引 PDF p.16)。

8-2. 事前審査は一切行われない

「事前審査は一切行いません。 正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。」(手引 PDF p.16)

特定建設業の申請では、この運用の重みが特に大きくなります。 財務要件の当てはめ(§3・§4)も、様式第10号の記載制約(§6-2)も、出す前に決着させておかなければならないということです。

8-3. 法定手数料の納め方

岡山県では、岡山県手数料等(POS)納付連絡票をホームページから印刷し、収納専用窓口に持参して支払います。支払い後に納付済証を受け取り、許可申請書の正本非閲覧用の「(様式第1号の)別紙三」に納付済証を貼り付けた上で提出します(手引 PDF p.14)。

申請の種類ごとの法定手数料の額は、申請区分の選択と一体の論点ですので、兄弟記事の般特新規とは|建設業許可を一般と特定で切り替える区分判定をご覧ください。なお、変更届出書の提出に手数料は不要です(手引 PDF p.14・p.22)。

8-4. 所轄県民局の営業所調査

申請受付後、半月程度で所轄の県民局から営業所調査実施の連絡が来ます(手引 PDF p.17)。調査で確認されるのは、看板(容易に確認できるもの)・机・電話及びファクシミリ・営業所の賃貸借契約書(原本)等で、営業所は居住部分と共用することはできません。手引は「いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません」としています(手引 PDF p.17)。

なお、営業所調査が申請受付後から間もなく実施されたとしても、許可が早く取得できるということはありません(本庁の調査が別途進行するため/手引 PDF p.16)。申請=本庁、営業所調査=所轄の県民局という役割分担です。

8-5. 期間の目安

  • 申請受付から許可まで:特に問題がないケースで概ね2か月程度(手引 PDF p.16)
  • 営業所調査の連絡:申請受付後半月程度(手引 PDF p.17)

この2か月は「書類が完全に整った状態で受け付けられてから」の期間であり、その手前の決算の確定・技術者の書類集めはここに含まれません。特定建設業の場合、実際の律速は決算期です。 直前決算の数字で判定が決まる以上(§1-1)、次の決算を待つ判断をした時点で、着手時期は決算期に拘束されます。

8-6. 当事務所にご依頼いただく場合

当事務所の報酬(税込の目安)は次のとおりです。

業務内容行政書士報酬(税込の目安)
建設業許可申請(般・特新規)110,000円
建設業許可申請(業種追加)55,000円
建設業許可申請(法人・更新)66,000円
建設業変更届出(事業年度終了報告)44,000円
変更届(営業所技術者)資格要件22,000円

上記のほかに法定手数料がかかります(額は般特新規とは|建設業許可を一般と特定で切り替える区分判定をご覧ください)。金額は税込の目安で、案件の内容により変動します。正確な金額は事前にお見積りします。

役割としては、書類作成の代行にとどまらず、代理申請まで行います。 また、所轄県民局による営業所調査の準備確認と当日の同席は報酬に含みます。 証明書等の実費は当事務所が立て替えて精算し、法定手数料はご依頼者のご負担ですが、納付は当事務所が代行します。

無料相談は方向性の見立てまで(初回30〜60分)とし、資料の精査・要件設計・工程表の作成は受任後に進めます。§5のワークシートを埋めた状態でお越しいただければ、初回の場で「今期の数字で行けるか、次期を待つか」の見立てまで進められます。 行政書士登録番号は第20300974号です。

9. 許可のその先|毎年の決算が、次の判定資料になる

9-1. 特定建設業者にとって、事業年度終了報告は判定資料そのもの

§1-2で見たとおり、特定建設業の更新・業種追加では、直近の事業年度終了報告書によって財産的要件が判断されます(審査要領 PDF p.26)。毎年決算日から4か月以内に提出しているその報告のうち、直近のものが、そのまま更新審査の判定資料になるということです(提出期限と全体像は建設業許可を取った後の手続き全体像(更新・決算変更届・変更届カレンダー)、報告そのものの中身は決算変更届(事業年度終了報告)とは|毎年の提出義務と流れをご覧ください)。

一般建設業には、財産的基礎の選択肢として「許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること」という道が置かれています(手引 PDF p.10③)。特定建設業の4基準には、これに代わる選択肢がありません。 ここが、区分を上げたあとに最も効いてくる違いです。

9-2. 数字が落ちてきたときに、早く気づける仕組みを持つ

4基準のうち、②自己資本と③欠損比率は、悪化してから立て直すまでに決算を何期か重ねる必要があります。 つまり、更新の直前に気づいても間に合いません。決算が固まった時点で毎年4式に当ててみる——これだけで、更新の5年前から兆候が見えます。

この定点観測は、事業年度終了報告を作る作業とほぼ同じ材料でできます。 当事務所では、事業年度終了報告・変更届・更新の期限をまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。期限管理(いつ何を出すかのご案内)は顧問の範囲、申請の代理実行はスポットの報酬という切り分けです。プランはライト(月額5,500円・税込)・スタンダード(月額11,000円・税込)・フル(月額15,000円・税込)の3段階で、ライトは期限管理と月次相談が中心、フルには事業年度終了報告、経営事項審査の経営状況分析、経営規模等評価・総合評定値請求、入札参加資格更新(2年に1回)が含まれます。

9-3. 経審・入札との関係

公共工事の入札に参加するには、経営事項審査(経審)の受審と、各自治体の入札参加資格が必要です(手引 PDF p.24)。経審では財務内容が評価の対象になりますので、財務要件を満たすための数字づくりは、そのまま経審の評点にもつながります。 経審の流れは経審申請を岡山で依頼するならと経営事項審査に、入札参加資格については入札参加資格に整理しています。

なお、許可を持ち続けること自体の損得を整理したい方は建設業許可のメリット・デメリットを、そもそも自社が要件を満たすかの全体像は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q特定建設業の財務要件は、いつの決算書で判断されますか?
A手引は「許可申請時直前の決算期の財務諸表(新規設立の場合は創業時の財務諸表)で、次の全ての要件を満たすこと」としています(手引 PDF p.11)。期の途中で数字が改善していても、原則としてその決算期の数字で判断されます。また、特定建設業に係る更新および業種追加の申請では申請書に財務諸表が含まれないため、岡山県の審査要領は「申請者からの直近の事業年度終了報告書により、財産的要件を満たしているかどうかを判断する」としています(審査要領 PDF p.26)。設立したばかりで決算をしたことがない場合の新規申請は、創業時の財務諸表で判断されます(審査要領 PDF p.26-27)。どの決算期の数字で申請するかは、申請時期そのものの設計に直結しますので、個別にご相談ください。
Q欠損の額は「自己資本の20%」ですか、「資本金の20%」ですか?
A手引の文言は「欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと」です(手引 PDF p.11)。計算式でも、法人は分母が「資本金」、個人は「期首資本金」と示されています(手引 PDF p.12)。自己資本(法人は純資産合計)を分母にするのは誤りです。なお「欠損の額」自体も、繰越利益剰余金のマイナス額そのものではありません。手引は法人について「貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の合計額を上回る額」と定義していますので(手引 PDF p.11)、合計額の範囲に収まっていれば欠損の額は生じません。個別の決算書での当てはめはご相談ください。
Q累積の赤字がありますが、特定建設業は諦めるしかありませんか?
A計算してみないと分かりません。前問のとおり、欠損の額は「繰越利益剰余金の負の額から、資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計を差し引いた残り」です(手引 PDF p.11・p.12)。過去に積み上げた剰余金が厚ければ、繰越利益剰余金がマイナスでも欠損の額が0になり、③の基準を満たすことがあります。ただし③を満たしても、②自己資本4,000万円以上や④流動比率75%以上で落ちる可能性は別にありますので、4つを順に当ててみてください。
Q財務要件を満たせなくなったら、許可は取り消されますか?
A手引は「これらの要件を確保できなくなった際には特定建設業の許可を維持できなくなります」としており(手引 PDF p.12)、「財務要件を割ったら取り消す」という明文は手引にも審査要領にもありません。手引が許可の取消しを明記しているのは、不正手段で許可を取得した場合と、許可行政庁の営業停止処分に従わない場合であり、同じページには許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、又は引き続いて1年以上営業を休止した場合等も取消処分の対象になると書かれています(いずれも手引 PDF p.23)。いずれも財務要件とは別の場面です。実際には、更新の際に要件を欠いていれば更新ができないという形で影響が出ます。なお、特定の要件を欠いたときに当然に一般許可へ移行するものではなく、改めて新規許可申請(別の業種で一般許可を有している場合には追加許可申請)が必要とされています(手引 PDF p.12)。
Q1級の資格者がいなくても、経験で特定営業所技術者を立てられますか?
A業種によります。指定建設業(土・建・電・管・鋼・舗・園)では、指導監督的実務経験による方法は使えないと手引の記載例に明記されています(手引 PDF p.84)。指定建設業以外の業種で、1級相当の国家資格者または大臣認定者以外の方を立てる場合に、指導監督的実務経験証明書(様式第10号)を用います(手引 PDF p.85)。ただし記載例には「元請負人として請け負った工事のみ記載できます」「営業所に常駐して各現場の進行状況等を指導監督していたような経験では実務経験とは認められません」といった制約が並びます(手引 PDF p.84)。誰を立てられるかは、過去の工事の契約形態と本人の関わり方で決まりますので、資料をお持ちのうえでご相談ください。

まとめ

特定建設業の財産的基礎は、4つの基準を全て満たすことが求められる、独立した4つの足切りです。

  • 判定資料は、原則として許可申請時直前の決算期の財務諸表(新規設立は創業時)。更新・業種追加では直近の事業年度終了報告書で判断されます(手引 PDF p.11/審査要領 PDF p.26)。残高証明書で代えるルートは、特定建設業には置かれていません。
  • 4基準は ①資本金2,000万円以上 ②自己資本4,000万円以上 ③欠損の額が資本金の20%を超えない ④流動比率75%以上(手引 PDF p.11)。③の分母は資本金(個人は期首資本金)、④の分母は流動負債合計です。ここを取り違えると答えが逆になります。
  • ③は引き算の結果を見る基準です。繰越利益剰余金がマイナスでも、資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金の合計の範囲に収まっていれば欠損の額は生じません(手引 PDF p.11・p.12)。「累積赤字があるから無理」と決めつける前に、実際に計算してください。
  • 個人事業主にも計算式が用意されています(手引 PDF p.12)。①③の基準は期首資本金、②では事業主借勘定がプラス側に立ちます。
  • 技術者側の関門は「資格」より「証明」です。様式第10号の記載例には、営業所に常駐して各現場を指導監督していた経験は認められないこと、過去に別の業種で報告した工事を違う業種で書けないことが明記されています(手引 PDF p.84)。過去の提出書類の控えが、そのまま今回の制約になります。
  • 同じ業種で一般と特定を併有することはできません(審査要領 PDF p.35)。特定に上げる判断は、その業種の許可の姿を一方向に変える判断です。

「うちの決算書で特定に届くのか」は、貸借対照表1枚と§5のワークシートがあれば、その場で答えが出ます。 届かない場合も、どの基準で落ちたかが分かれば、次に何をすべきかと必要な期間が見えます。まずは無料相談でご一緒に当ててみてください。

決算書1枚で「特定に届くか」を確かめます

直近決算の貸借対照表を1枚ご用意いただければ、4基準のどこまで届いていて、どこで落ちているかを、建設業特化の行政書士が一緒に確認します。「繰越利益剰余金がマイナスでも特定は取れるか」「流動比率の分母はどこを見るのか」など、まず1問だけ聞きたい方はLINEでどうぞ(可否の断定はいたしかねますので、判定が必要な場合は面談をご案内します)。無料相談は30秒入力のフォームから。お電話は070-8567-3197。

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