Column|建設業許可

自己資本500万円が足りないとき|増資・借入・残高証明【岡山】

自己資本500万円が足りないとき|増資・借入・残高証明【岡山】

建設業許可の相談で、経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者(旧:専任技術者)の目処が立った次に出てくるのが、この一言です。

「決算書の純資産が500万円に届いていない。うちはもう無理ですか」

結論から言えば、自己資本が500万円に届かないというだけで許可申請が終わるわけではありません。岡山県の手引が定める財産的基礎の要件は、①500万円以上の資金調達能力があると認められること ②自己資本の額が500万円以上あること ③許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有することのいずれかを満たせばよい、という構造だからです(手引 PDF p.9-10)。「自己資本が足りない」は②が使えないという話であって、①が残っています。

そこで実際の打ち手は、次の3つに整理できます。

  1. 増資する(=②の自己資本そのものを増やす)
  2. 借り入れる(=②は増えないが、①の資金調達能力として示す)
  3. 残高証明の基準日を調整する(=①を、いつの時点の残高で示すかを申請日から逆算する)

この3つは「どれでも同じ」ではありません。効く事業者が違い、判定される時点が違い、失敗の仕方も違います。 本記事は、岡山県の手引と審査要領で確認できる事実だけを使って、この3択を成立条件・証明のさせ方・失敗しやすい点で並べます。

そしてもう1つ、相談の場で非常に多い取り違えを先に潰します。「軽微な建設工事の500万円」と「財産的基礎の500万円」はまったくの別物です。 同じ500万円という数字ですが、条文の場所も、判定のタイミングも、満たせなかったときの結果も違います(§1)。

なお、財産的基礎という要件そのものの中身(何が要件で、どの書類で示すのか)は建設業許可の財産的要件|500万円・残高証明の準備に整理しています。本記事はそれを繰り返さず、「足りないときに何をするか」だけを扱います。要件全体の見取り図は建設業許可の6つの要件|自社が取れるか診断からご確認ください。

※ 財産的基礎の充足は、決算の内容・申請の種類・提出のタイミングという個別の実態によって判断が分かれます。本記事は岡山県知事許可・一般建設業を前提とした一般的な整理であり、特定の会社について結論を保証するものではありません。最終判断は有資格者(行政書士)または岡山県の担当窓口にご確認ください。

1. まず整理|「軽微な工事の500万円」と「財産的基礎の500万円」は別物

建設業許可の相談で、もっとも頻度が高い取り違えがこれです。500万円という数字が2か所に出てくるため、片方の話をもう片方の答えだと思い込んでしまうのです。まずここを切り離します。

1-1. 軽微な建設工事の500万円=「許可が要るかどうか」のライン

手引は冒頭で、建設業を営もうとする者は業種ごとに許可が必要としたうえで、次の「軽微な建設工事」については許可がなくても請け負うことができる、と定めています(手引 PDF p.5)。

  • 建築一式工事:1,500万円に満たない工事、又は延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事
  • その他の工事:500万円に満たない工事

いずれも金額は税込で、注文者や元請業者が材料を支給する場合は材料費も含めて判断するとされています(手引 PDF p.5)。同じ定義は、工事経歴書の記載要領のなかでも「建設業法施行令第1条の2第1項に規定する軽微な建設工事」として繰り返し示されています(手引 PDF p.51)。

つまりこの500万円は、「許可を持たずにどこまで請け負えるか」の上限です。会社の財産とは何の関係もありません。

1-2. 財産的基礎の500万円=「許可を取るために示す財産」

一方、許可の要件としての500万円は、まったく別の場所にあります。手引は許可要件の(4)として「請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有すること」を掲げ、倒産することが明白である場合を除き、①500万円以上の資金調達能力 ②自己資本の額500万円以上 ③許可申請直前の過去5年間の許可継続営業実績のいずれかを満たせばよいとしています(手引 PDF p.9-10)。要件そのものの逐条の中身と提出書類は建設業許可の財産的要件|500万円・残高証明の準備の担当ですので、本記事では再掲しません。

こちらの500万円は、「許可を取るために会社の財産をいくら示すか」です。受注する工事の金額とは無関係です。

1-3. 2つの500万円の対比

観点軽微な建設工事の500万円財産的基礎の500万円
何のための数字か許可がなくても請け負える工事の上限許可を受けるための要件
手引の場所PDF p.5(許可制度の入口)・p.51(工事経歴書の記載要領)PDF p.9-10(許可要件の(4))
何を測るか1件の工事の請負代金(税込・支給材料込み)会社の財産または資金調達能力
判定のタイミング契約のたび(工事ごと)許可申請のとき(原則として直近の決算・または受付日から1か月以内の残高)
建築一式工事の扱い1,500万円未満(又は150㎡未満の木造住宅)業種による違いはない
満たせないとその工事は許可がなければ請け負えない許可が受けられない

1-4. 混同から生まれる3つの誤解

誤解①「500万円未満の工事しかしないから、自己資本500万円も要らないはずだ」

違います。前者は「許可がなくても請け負える」という話であり、許可を取ろうとする以上、財産的基礎は別途必要です。「小さい工事しかしていない会社には許可の財産要件も緩い」という制度にはなっていません。

誤解②「口座に500万円あるから、軽微な工事の枠を超えて受注してよい」

これも違います。残高証明で示す500万円は、許可の要件であって、無許可で受注できる金額を広げるものではありません。 許可を受けていない状態で税込500万円以上の工事(建築一式工事は1,500万円以上等)を請け負えば、それは残高とは無関係に無許可営業の問題になります。

誤解③「元請から500万円の許可が要ると言われたから、まず500万円を貯める」

順序が逆になっているケースです。元請が求めているのは許可そのものであり、そのための要件の1つが財産的基礎です。財産的基礎は手引の要件③(実績ルート)や要件①(資金調達能力)でも満たせるため、「貯まるまで待つ」が最短とは限りません。

軽微な建設工事のライン(1件の請負代金でどう判定するか、税込・支給材料込みの扱い、分割発注の合算など)は軽微な工事(500万円未満)とはに整理しています。500万円以上の工事を受けるために許可を取るまでの道筋そのものは500万円以上の工事を受注したい|取得までのロードマップをご覧ください。本記事はここから先、財産的基礎の500万円だけを扱います。

2. 「足りない」の判定|何をどう計算して500万円を見ているのか

「自己資本が足りない」と判断する前に、そもそも何を計算した結果なのかを確認します。ここを取り違えたまま増資や借入の相談に進むと、必要のない資金調達をすることになります。

2-1. 「足りない」という前提が、そもそも外れることがある

判断ポイントは2つだけです。

法人は、資本金の額ではなく純資産合計を見ます。 手引が定める法人の自己資本は「貸借対照表における純資産合計の額」です(手引 PDF p.10)。資本金が1,000万円あっても、累積の欠損で純資産合計が300万円になっていれば要件②は満たしません。逆に資本金300万円でも、利益を積み上げて純資産合計が500万円を超えていれば要件②を満たします。「資本金が500万円ないから駄目だ」という思い込みは、まずここで外れます。

個人事業主は、事業主借勘定がプラス要素として効きます。 手引が定める個人の計算式では、事業主が事業に持ち込んだ資金(事業主借勘定)が自己資本を押し上げる側に立ち、事業主貸勘定は逆に差し引かれます(手引 PDF p.10)。つまり、事業主自身が事業に入れた資金と、金融機関からの借入とでは、この式のなかでの扱いが違います。 「うちは元入金が小さいから要件②は無理」と決めつける前に、実際に式を当てて計算し直す価値があります。

計算式そのもの(法人・個人それぞれの項目の立て方)は建設業許可の財産的要件|500万円・残高証明の準備に整理していますので、そちらでご確認ください。

個人と法人のどちらで許可を取るかという論点自体は、個人事業主の建設業許可|個人で取る?法人化してから取る?と法人成りで建設業許可は引き継げる?に整理しています。

2-2. ★どの時点の財務諸表で見るのか——ここが打ち手を決める

3つの打ち手のうちどれが効くかは、「いつの数字を見られるのか」で決まります。手引は自己資本の額の確認について、次の注記を置いています(手引 PDF p.10)。

「(※要件の確認については、原則として既存の企業については直近の事業年度終了報告の、新規設立の企業については創業時の財務諸表により行います。)」

これは非常に重い一文です。読み替えると次のようになります。

  • すでに決算を経ている会社は、直近の事業年度終了報告に添付した財務諸表で自己資本が見られる
  • 設立したばかりの会社は、創業時の財務諸表で見られる

したがって、新規設立の会社は「設立時の資本金をいくらにするか」で②を満たせる一方、すでに決算を経ている会社が期の途中で増資しても、直近決算の数字がすぐに置き換わるわけではないという非対称が生まれます。§3で詳しく扱いますが、増資という打ち手の当たり外れは、ほぼこの一文で決まります。

新規設立の会社が設立時にいくらの資本金を置くかという設計は、新設法人でも建設業許可は取れる?の担当範囲です。本記事では「決算を経ている会社が足りない場合」を中心に扱います。

2-3. 「倒産することが明白である場合を除き」という前提

見落とされがちですが、手引の書きぶりは「倒産することが明白である場合を除き、次のいずれかの要件を満たすこと」です(手引 PDF p.9)。①〜③のいずれかを形式的に満たしていれば無条件、という構造ではありません。財産的基礎は「請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用」を求める要件であり、その趣旨から外れる状態は想定されていない、という前提を押さえておいてください。

2-4. 財務諸表そのもののチェックポイント

自己資本の額は、提出した財務諸表から読み取られます。岡山県の審査要領は、財務諸表について次の確認を行うとしています(審査要領 PDF p.26-27)。

  • 法人:直前3年の各事業年度における工事施工金額の施工金額合計と、損益計算書の完成工事高が等しいこと/完成工事原価報告書の原価合計と損益計算書の完成工事原価が等しいこと/負債純資産合計と資産合計が等しいこと/株式会社は当該決算期の事業報告書を添付すること(審査要領 PDF p.27)
  • 個人:直前3年の各事業年度における工事施工金額の施工金額合計と損益計算書の完成工事高が等しいこと/負債純資産合計と資産合計が等しいこと/損益計算書の事業主利益と純資産の部の事業主利益が等しいこと(審査要領 PDF p.27)
  • 消費税の取扱い:経営事項審査を受審しない場合は税込処理でも税抜処理でも差し支えないが、課税業者は原則として税抜き方式で記載する。財務諸表と、工事経歴書・直前3年の各事業年度における工事施工金額の表とで取扱いを統一すること(審査要領 PDF p.26)
  • 千円未満を切り捨てるため、タテ計は合わなくても差し支えない(審査要領 PDF p.27)

税込で作るか税抜で作るかによって、純資産合計の額そのものが変わることがあります。 「あと少しで500万円」という会社ほど、この作成方式の統一が効いてきます。決算書をそのまま転記すればよいという書類ではない、という点は先に知っておいてください。

3. 打ち手①|増資——自己資本そのものを増やす

まず、もっとも直感的な打ち手から見ます。増資して純資産合計を500万円以上にするという方法です。

3-1. 何が変わるのか

増資は、株主から払い込まれた資金がそのまま純資産の部に入るため、貸借対照表における純資産合計の額を直接押し上げます(手引 PDF p.10)。借入と決定的に違うのはここです。借入は負債が増えるだけで純資産合計は変わりませんが、増資は純資産合計そのものが増えます。

したがって、②のルートで財産的基礎を満たしたい法人にとって、増資は唯一まっすぐな手段です。

3-2. ★最大の落とし穴——「増資した直後の申請」で効くとは限らない

ここが本章の核心です。§2-2で見たとおり、手引は自己資本の確認を「原則として既存の企業については直近の事業年度終了報告の、新規設立の企業については創業時の財務諸表により行います」としています(手引 PDF p.10)。

すでに決算を経ている会社が期の途中で増資しても、直近の事業年度終了報告に添付済みの財務諸表は過去の数字のままです。 つまり、増資した事実が②の判定にただちに反映されるとは限りません。

この読み方を補強するのが、特定建設業の資本金要件に置かれた例外の明文です。手引は、特定建設業の財務要件(資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上・欠損比率・流動比率)について、次のように注記しています(手引 PDF p.11)。

「本項目についてのみ、直前決算時において基準に達していなくても、その後の増資により申請前に要件を満たしていれば差し支えありません(資本金の額の変更届の提出が必要です。)。」

この注記は「資本金の額が2,000万円以上であること」という項目にのみ付けられており、一般建設業の自己資本500万円について同じ趣旨の明文は置かれていません。手引がわざわざ「本項目についてのみ」と限定していること自体が、他の項目では同じ扱いにならないことを示唆しています。

したがって、「決算後に増資したので、その事業年度の決算を待たずに②で申請したい」という構成は、資料の範囲では明文の根拠として読み取れません。 ここは事案によって扱いが分かれ得るところなので、その構成を採るなら事前に岡山県土木部監理課建設業班に確認する必要があります。当事務所にご依頼いただく場合も、この確認は要件設計の最初に行います。

そして現実的には、この論点があるからこそ、決算を経ている会社の多くは②(自己資本)ではなく①(資金調達能力=残高証明)で財産的基礎を満たしています。 §5がその話です。

3-3. 増資に付いてくる届出——資本金変更届

増資は「お金を入れて終わり」ではありません。すでに許可を持っている会社が増資した場合、資本金の額の変更届が必要です。手引は、その注意点を具体的に挙げています(手引 PDF p.141)。

  • 変更年月日:資本金の変更日を商業登記事項証明書により確認する。記載するのは実際に資本金の変更を行った日(登記簿上の変更日)であり、登記年月日ではない
  • 商業登記事項証明書:変更後の資本金額及び変更直前の額について登記事項証明書で確認する。履歴事項全部証明書だけでは確認できないことがあるため、必要に応じて閉鎖事項証明書を添付する
  • 株主の増減がある場合:資本金変更と同時に、総株主の議決権の100分の5以上を有する株主又は出資の総額の100分の5以上に相当する出資をしている者(個人であるものに限る)が新たに加わったり減ったりした場合は、役員等変更届も併せて必要

3つ目は特に見落とされます。増資に新しい出資者が入れば、資本金の変更届だけでは足りないということです。

届出期限は、手引の「変更届出事項及び提出書類等一覧表」(手引 PDF p.170)に事項ごとに定められています。期限内の提出を怠っている場合には、許可の更新・追加申請等ができません(手引 PDF p.22)。さらに岡山県の審査要領は、資本金額の変更を含む届出について、届出書の提出日が法定の提出期限の2倍を超えて遅延した場合には、業務改善報告書の提出を受けた上で届出を受付するという運用を定めています(審査要領 PDF p.36-37)。

増資は登記の話で終わりではなく、許可の側の届出とセットである——ここを工程に入れておいてください。

3-4. 欠損があると増資額がそのまま乗るとは限らない

②が見るのは純資産合計です(手引 PDF p.10)。累積の欠損(繰越利益剰余金のマイナス)を抱えている会社では、増資した額から欠損分が相殺された結果が純資産合計になります。「500万円足りないから500万円増資する」では届かないことがあります。

なお、欠損の額そのものを基準として明文で置いているのは特定建設業の財務要件(欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと・流動比率75%以上)であり、一般建設業の財産的基礎にこれらの基準はありません(手引 PDF p.11)。一般建設業では、あくまで純資産合計が500万円以上かどうかです。混同しないでください。特定建設業が視野に入る場合の話は下請から元請になるための建設業許可に整理しています。

3-5. 増資が「効く」のはどんな会社か

まとめると、増資が素直に効くのは次のケースです。

ケース増資の効き方
これから法人を設立する創業時の財務諸表で確認されるため(手引 PDF p.10)、設立時の資本金の設計がそのまま②を満たす。もっとも素直に効く
決算を経ている法人が、次の決算に向けて体制を整える増資した事業年度の決算を経れば、その財務諸表で②を満たせる。時間はかかるが、判定の根拠がもっとも安定する
決算を経ている法人が、増資直後に申請したい§3-2のとおり資料の範囲では読み取れない。事前確認が必要。現実的には①(残高証明)との併用を検討
個人事業主そもそも「増資」という手続きがない。式に当てはめて②を満たすか、①で示すか

4. 打ち手②|借入——自己資本は増えないが、資金調達能力は示せる

次に、資金調達で足りない分を埋めるという打ち手です。ここは誤解がもっとも多い領域なので、順を追って整理します。

4-1. ★借入で「自己資本」は増えない

まず前提です。金融機関からの借入では、②の自己資本は増えません。

借入をすると、資産(預金)が増えると同時に、負債(借入金)も同額増えます。貸借対照表のうえでは両建てで増えるだけで、純資産合計の額は変わりません。②が見ているのは「貸借対照表における純資産合計の額」ですから(手引 PDF p.10)、借入は②の答えにはならないということです。

「銀行から500万円借りて口座に入れれば自己資本が500万円になる」は成り立ちません。 ここを取り違えたまま融資の相談に進むと、目的と手段がずれます。

4-2. ただし①の「資金調達能力」は別の話

一方で、手引の要件①は「500万円以上の資金調達能力があると認められること」であり、その示し方として「取引金融機関の預金残高証明等を添付」と書かれています(手引 PDF p.9)。ここで求められているのは残高であり、その資金がどこから来たか(自己資金か、借入金か、事業主が入れた資金か)について、手引・審査要領のいずれにも区別を設ける定めは見当たりません。

つまり、借入は手引の要件②のルートでは効かないが、要件①のルートを通すための手段としては機能し得る、という構造です。ただし資金の出所について明文の定めがない以上、「借入金でも当然に通る」と断定することもできません。 構成が固まる前に個別にご確認ください。

なお、審査要領には「取引金融機関の融資証明書又は預金残高証明書等」という表現が出てきます(審査要領 PDF p.28-29)。ただしこれは、許可の有効期限が切れた直後に新規申請を行う場合の添付省略を定めた条項のなかの語であり、融資証明書を一般的な提出書類として位置づけた記述ではありません。どの書類で示すかは、申請の種類と事情に応じて事前に確認するのが安全です。

4-3. 個人事業主は構造が違う——事業主借勘定はプラス要素

§2-1で触れた点をもう一度置きます。手引が定める個人事業主の自己資本の計算式には、「事業主借勘定」がプラス要素として入っています(手引 PDF p.10)。したがって、事業主本人が事業に持ち込んだ資金は、この式のうえでは自己資本を押し上げる側に立ちます。金融機関からの借入(負債)とは、式のなかでの位置が違うということです。

個人事業主の方が「うちは自己資本が足りない」と判断する場合、この式を実際に当てて計算し直したかどうかを確認してください。 会計ソフトの画面上の「元入金」だけを見て判断していると、結論が変わることがあります。

4-4. ★一時的に残高を作るという発想の落とし穴

「基準日にだけ500万円あればよいのだから、一時的に借りて、証明を取ったら返す」——相談の場で出てくることのある発想ですが、これは打ち手として推奨できません。理由は3つあり、いずれも制度側の設計に根拠があります。

理由1|要件の趣旨と合わない

そもそも財産的基礎の要件は「請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有すること」であり、手引は「倒産することが明白である場合を除き」という前置きのうえで①〜③を掲げています(手引 PDF p.9)。基準日だけ数字を作るという発想は、この趣旨から外れます。

理由2|岡山県は営業所調査で財務内容そのものを確認する

これが実務上いちばん効きます。岡山県では、申請受付後に所轄の県民局による営業所調査があり、新規申請の場合の調査確認事項に「(5)財務内容の確認のための必要書類」が明記されています(手引 PDF p.18)。確認されるのは残高証明書ではなく、確定申告書の控えと決算書原本等です(詳細は§8-2)。

残高証明を1枚整えれば財務は見られない、ということにはなっていません。 決算の内容そのものが調査の対象です。

理由3|許可後も毎年の財務諸表が出続ける

許可を取得すると、決算日から4か月以内に事業年度終了の変更届出書(事業年度終了報告)の提出が必要になります(手引 PDF p.22)。財務諸表は毎年提出され、しかも業種追加でも、直前5年間の許可継続営業実績がなく、かつ直前決算の自己資本が500万円未満であれば、あらためて残高証明書が必要になります(審査要領 PDF p.28。詳細は§7-3)。一度きりの見せかけでは続かない仕組みです。

4-5. 借入という打ち手の現実的な位置づけ

以上を踏まえると、借入は「要件を通すための一時的な操作」ではなく、本来必要な運転資金を調達したうえで、その結果として①を満たすという順序で考えるのが妥当です。許可を取れば、これまで請け負えなかった規模の工事に入ることになります。その工事を実際に回すための資金は、いずれにせよ必要になります。

返済負担が増える点にも留意が必要です。借入は将来の損益に効き、その結果は毎年の財務諸表として提出されます。経営事項審査を受審する場合には財務内容が評価の対象になります(経審の詳細は経審申請を岡山で依頼するならをご覧ください)。「許可を取るための借入」ではなく「事業を回すための借入」として組めるかどうかが、この打ち手の分かれ目です。

5. 打ち手③|残高証明の基準日調整——受付日から逆算して残高を用意する

3つ目が、実務でもっとも使われている打ち手です。手引の要件①(資金調達能力)を、いつの時点の残高で示すかを、申請日から逆算して組むという方法です。

★この章の範囲:残高証明書を実際に取得する段取り(どの窓口で、どの様式で、原本をどう扱い、複数の金融機関とどう日程を合わせるか)は建設業許可の残高証明書|取得のタイミングと注意点の担当範囲です。本章は「3択のうちの1つとして選ぶときに知っておくべき制約」だけを扱います。

5-1. 制度の骨格——「受付日から1か月以内の時点」

手引は、要件①のカッコ書きで次のように定めています(手引 PDF p.9)。

「(取引金融機関の預金残高証明等を添付・・受付日から1か月以内の時点の500万円以上の残高を証明したもの(複数の金融機関の証明書による場合は、証明日が同日付であること。)。)」

この一文に、打ち手③を選ぶかどうかの判断に効く制約が3つ入っています。

  1. 1か月以内なのは「発行日」ではなく「残高の基準日(証明日)」です。 審査要領も「証明書の発行日が1か月以内という意味ではない」と名指しで注意を促しています(審査要領 PDF p.28)。発行日だけ新しくても、証明している残高が1か月より前の時点のものであれば要件を満たしません。なお、添付する証明書類は特に指定がない場合でも受付日において発行から3か月以内である必要がありますが、残高証明書だけは「1か月以内の時点の残高」という別扱いです(手引 PDF p.26・p.149)。
  2. 複数行を合算するなら、証明日を同日付にそろえる必要があります(手引 PDF p.150/審査要領 PDF p.28)。「A銀行は月曜に、B信用金庫は水曜に取った」という組み方は、そのままでは通りません。1つの口座で500万円に届かない場合は、合算そのものを避けられないかを先に検討することになります。
  3. 補正が長引いた場合の救済枠はありますが、外枠は申請時から2か月です(審査要領 PDF p.28)。無制限に伸びるわけではなく、超えれば取り直しになります。

この3つは、いずれも「どう取得するか」の段取りに属する話です。 どの窓口でどの様式を頼むか、何通取って正本・副本にどう綴じるか、複数の金融機関とどう日程を合わせるか、補正で枠を超えたときにどう立て直すか——といった実務は建設業許可の残高証明書|取得のタイミングと注意点にまとめていますので、打ち手③を採ると決めた段階でそちらをご覧ください。本章では、3択の1つとして打ち手③を選ぶかどうかの判断に話を戻します。

5-2. 逆算のしかた——受付日と基準日を先に固める

基準日調整は、次の順序で組むことになります。

  1. 申請書類を完成させる日を決める(岡山県は事前審査を一切行わない運用で、書類を完全に整えた上で提出することが求められます/手引 PDF p.16)
  2. その日を起点に受付日を置く
  3. 受付日から1か月以内の時点に収まるように、残高の基準日(証明日)を決める
  4. その基準日に500万円以上の残高がある状態を作る(複数行なら証明日を揃える)
  5. 受付後、概ね2か月程度で許可(特に問題がないケース/手引 PDF p.16)

この順序の要は、1番と2番です。 「先に残高証明だけ取っておいて、書類は後からゆっくり作る」という進め方は、岡山県の運用ではもっとも崩れやすいパターンです。事前審査がない以上、書類の完成が遅れれば受付日が後ろに動き、後ろに動けば基準日が範囲から外れます。

申請全体をいつから逆算すべきかは建設業許可を取るタイミングをご覧ください。

5-3. ③を選ぶ条件——決算をまたげないときの第一候補

以上を踏まえると、打ち手③が現実的な選択肢になるのは、次の3つが同時に成り立つときです。

  1. 決算をまたぐ時間がない。 元請から期限を切られている、公共工事の入札参加資格申請の日程が決まっている——といった事情で、増資して次の決算を迎えるまで待てない。打ち手③は、決算を待たずに使える唯一のルートです。
  2. 基準日に500万円以上の残高を用意できる見込みがある。 一時的にでも用意できないなら、そもそも打ち手③は成立しません(その場合の考え方は§6-3)。
  3. 受付日と基準日を、自分の側で先に固められる。 §5-2の1番と2番が動くようなら、打ち手③はもっとも崩れやすい選択肢に変わります。

そのうえで、打ち手③の最大の強みは可逆性です。 増資は資本金を戻すのが容易ではなく、借入は返済負担と利息が残りますが、基準日調整は「いつの時点の残高で示すか」を動かすだけで、会社の資本構成にも負債にも痕跡を残しません。時間がないときに真っ先に検討すべき打ち手である理由は、ここにあります。

6. 3択の比較|成立条件・証明のさせ方・失敗しやすい点

ここまでの3つを、意思決定に必要な観点で並べます。

6-1. 比較表

観点打ち手①増資打ち手②借入打ち手③残高証明の基準日調整
満たしにいく要件手引の要件②「自己資本の額が500万円以上」手引の要件①「500万円以上の資金調達能力」手引の要件①「500万円以上の資金調達能力」
貸借対照表への効果純資産合計が増える資産と負債が両建てで増え、純資産合計は変わらない残高が増えるだけ(自己資本は動かない)
使える事業者法人のみ(個人事業主に増資はない)法人・個人法人・個人
判定の基準時点原則として直近の事業年度終了報告の財務諸表/新規設立は創業時の財務諸表(手引 PDF p.10)同左(手引の要件①で示す場合は残高の基準日)受付日から1か月以内の時点の残高(手引 PDF p.9)
証明のさせ方財務諸表(貸借対照表等)/営業所調査で決算書原本・確定申告書の控え(手引 PDF p.18)残高証明書等/営業所調査で財務内容の確認(同左)残高証明書(複数行なら証明日が同日付・審査要領 PDF p.28)
付随して必要になる手続資本金変更届(既許可業者の場合)/登記/出資者が増えれば役員等変更届(手引 PDF p.141)融資手続き(金融機関の審査期間)金融機関での残高証明の取得(複数行なら日程調整)
主な失敗増資直後の申請で手引の要件②に反映されるとは限らない(§3-2)/欠損で相殺され届かない/変更届の遅延自己資本が増えたと誤解する/一時的な残高作りに走る証明日と発行日の取り違え/複数行の証明日不一致/補正が長引き1か月超過
コスト払込資金+登記費用(登記は司法書士の領域)支払利息・返済負担残高証明の発行手数料(金融機関により異なる)
可逆性低い(資本金を戻すのは容易でない)中(返済すれば戻るが利息は残る)高い(基準日を動かすだけ)
向いている局面これから設立する/次の決算までに体制を整えられる許可取得後の運転資金がいずれ必要今期の決算を待たずに申請したい/一時的に資金を用意できる

6-2. 検討の順序

3つを並べたうえでの、現実的な検討順序は次のとおりです。ここでは、手引が定める要件の側を「手引の要件①〜③」、本記事が比較している3つの選択肢を「打ち手①〜③」と、毎回書き分けます(同じ丸数字が2系統あるため、混ぜると打ち手の選択そのものを誤ります)。

第1に、そもそも財産的基礎を新たに示さなくてよくないかを確認する。 すなわち、手引の要件③(許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績)に当たるかどうかです。ここに当たれば、増資も借入も残高証明も要りません(§7)。更新申請や、すでに許可を持っている会社の業種追加では、ここに当たることがあります。

第2に、手引の要件②(自己資本の額が500万円以上)の計算をやり直す。 法人なら純資産合計(資本金ではありません)、個人なら事業主借勘定がプラス要素として入る式で計算し直します(§2-1)。「足りない」という前提そのものが外れることがあります。

第3に、打ち手③(残高証明の基準日調整)で届くかを見る。 これは手引の要件①(500万円以上の資金調達能力)を、いつの時点の残高で示すかという話です。一時的にでも500万円以上の残高を用意できるなら、もっとも可逆的で、決算を待つ必要もありません。ただし基準日と受付日の関係を先に固めることが条件です(§5-2・§5-3)。

第4に、打ち手①(増資)または打ち手②(借入)を検討する。 打ち手①の増資は手引の要件②を直接押し上げる手段で、新規設立か、次の決算に向けた体制整備として効きます(§3-5)。打ち手②の借入は手引の要件②には効かず、要件①を示すための手段です。「許可を通すため」ではなく「許可後に必要になる運転資金として」組めるかを先に考えます(§4-5)。

判断の分かれ目は「決算をまたげるか」です。 元請から期限を切られている、公共工事の入札参加資格申請の日程が決まっている——といった事情で決算を待てない場合、選べるのは実質的に打ち手③(と、それを支えるための資金調達)になります。逆に半年〜1年の余裕があるなら、増資して決算をまたぐほうが、その後の経営事項審査や金融機関との関係まで含めて筋がよいことが多い、という整理になります。

6-3. 3つとも難しい場合にどうするか

「一時的にも500万円を用意できない」という場合、財産的基礎で止まっていることになります。この場合に検討することは2つです。

  1. 申請時期を決算後にずらす(増資して決算をまたぐ・利益を積む)。時間はかかりますが、その後の維持まで含めるといちばん安定します。
  2. 許可が要る仕事と、要らない仕事を切り分ける。 許可が下りるまでの間に受注できる範囲は、軽微な建設工事の枠内です。ここを取り違えて無許可で税込500万円以上の工事を受けてしまうと、財産的基礎とはまったく別の問題が上乗せされます(判定の実務は軽微な工事(500万円未満)とは)。

やってはいけないのは、足りないまま「とりあえず出してみる」ことです。 岡山県は事前審査を一切行わず、書類を完全に整えたうえでの提出を求めています(手引 PDF p.16)。不備のある申請が受け付けられない場合や、受け付けられても要件を満たさず許可されない場合に何が起きるかは、建設業許可が不許可・不受理になる主な理由に整理しています。

7. そもそも500万円を示さなくてよい場合|実績要件と、申請の種類による違い

ここまで3つの打ち手を見てきましたが、手引の要件③(実績ルート)に当たれば、そもそも残高証明も増資も要りません。3択を検討する前に、まずここで降りられないかを確認してください。この要件③は「自分が当たるかどうか」の判定が意外と難しく、見落としも起きやすい部分です。

7-1. 手引の要件③——過去5年間の継続営業実績

手引の要件③は「許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること」です(手引 PDF p.10)。ポイントは「許可を受けて」の部分です。無許可で5年営業していた実績ではありません。

7-2. 財産的基礎のために新たな書類が「不要」になる場合

手引は、①直近の財務諸表により500万円以上の自己資本を有することが確認できる場合と、②更新・追加・般特新規申請で許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績を有する場合は、残高証明書を添付する必要がないことを明示しています(手引 PDF p.149・p.169)。

したがって更新申請では、原則として財産的基礎のために新たな書類を用意する必要はありません。 5年間許可を受けて営業してきたこと自体が、手引の要件③に当たるためです。「自己資本が足りない」と焦る前に、自社がこの2つに当たらないかを先に確認してください。

7-3. ★業種追加でも、条件によっては再び500万円が問われる

ここが本章でもっとも見落とされる点です。審査要領は、業種追加の申請でも、許可申請の直前5年間に許可を受けて継続して営業した実績がなく、かつ直前決算における自己資本(純資産)の額が500万円未満である場合は、残高証明書の添付が必要であると定めています(審査要領 PDF p.28)。2つの条件がそろったときにだけ問われるという構造です。

「一度許可を取ったのだから、業種追加では財産要件はもう問われない」というのは誤りです。 許可を受けてからまだ5年経っていない会社が業種を追加する場合、直近決算の純資産が500万円未満であれば、あらためて残高証明書が必要になります。

なお、審査要領は「継続して営業した実績」の確認方法についても、「既存の企業にあっては申請時の直前の決算期における財務諸表によって基準を満たしているかどうかの判断となる」というガイドラインを引いたうえで、財務諸表が事業年度終了報告の添付資料として提出されることから、業種追加の申請の審査に当たっては「許可を受けて継続して営業した実績」は許可取得後の事業年度終了報告で確認を行うとしています(審査要領 PDF p.28)。毎年の事業年度終了報告を出していることが、ここで効いてきます。

さらに、新規設立法人が1度目の決算を迎えないままに追加申請(般特新規申請)をする場合、自己資本の額は設立時の財務諸表により確認するとされています(審査要領 PDF p.28)。

7-4. 申請の種類別・財産的基礎の見られ方

申請の種類財産的基礎の扱い
新規許可申請手引の要件①〜③のいずれかを満たす必要がある。多くは要件①(残高証明)か要件②(自己資本)
更新許可申請5年間許可を受けて営業した実績があるため手引の要件③に該当し、原則として残高証明書は不要(手引 PDF p.149)
追加許可申請・般特新規許可申請直前5年間の継続営業実績がなく、かつ直前決算の自己資本が500万円未満なら残高証明書が必要(審査要領 PDF p.28)
許可切れ直後の新規申請有効期間満了日から1か月以内の受理で不要。ただし1か月を経過する日が閉庁日に当たると期限は前倒しになる(審査要領 PDF p.28-29/具体例と省略時の記載方法は建設業許可の残高証明書|取得のタイミングと注意点)
新規設立法人の追加(般特新規)申請で1度目の決算前設立時の財務諸表で自己資本を確認(審査要領 PDF p.28)

8. 岡山県での手続き|提出先・営業所調査での財務確認・費用と期間

打ち手が決まったら、岡山県の運用に合わせて工程を組みます。財産的基礎に関わる部分を中心に整理します。

8-1. 提出先と提出の作法——本庁一元・事前審査なし

申請書・変更届の提出先は岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)で、手引は受付を「出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記しています(手引 PDF p.168)。本記事は書面(窓口へのご持参・郵送)による申請を前提に整理します。手引は「事前審査は一切行いません」として、書類を完全に整えた上での提出(送付)を求めています(手引 PDF p.16)。

この2点が、残高証明の基準日調整に直接効きます。 「窓口で相談しながら整える」ことはできない以上、基準日を決めた時点で書類の完成日も確定していなければなりません(§5-2)。

8-2. ★営業所調査では財務内容そのものが確認される

申請が受け付けられると、所轄の県民局による営業所調査があります。本記事の論点に直結するのは、新規申請の場合の調査確認事項に、営業所の所在確認・常勤役員等の経験確認・営業所技術者の資格等の確認と並んで(5)財務内容の確認のための必要書類が置かれていることです。確認されるのは次のものです(手引 PDF p.18)。

「確定申告書の控え(税務署での収受印のある原本又は申告書等情報取得サービスで取得した税務署提出日が分かる申告書控え)、決算書原本等」

そして手引は、営業所調査の確認事項について「※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません」と明記しています(手引 PDF p.17)。

残高証明書を添付したから財務は見られない、ということにはなりません。 決算書の原本と申告書の控えが手元にあるかを、申請前に確認しておいてください。特に個人事業主の方は、税務署の収受印がある控え(または申告書等情報取得サービスで取得した控え)が必要になる点に注意が必要です。 電子申告のみで控えを保存していない場合、取得に時間がかかることがあります。

8-3. 費用と期間

法定手数料は、新規(許可換え含む)・般特新規が90,000円、更新・追加が50,000円で、申請する業種の数とは関係なく同額、変更届出書の提出には手数料は不要です(手引 PDF p.14)。納付は岡山県手数料等(POS)納付連絡票による岡山県固有の方式で、支払い後に受け取った納付済証を申請書に貼り付けて提出します(手引 PDF p.14)。

期間は、申請が受け付けられてから許可になるまで、特に問題がないケースで概ね2か月程度です(手引 PDF p.16)。ただしこれは書類が完全に整った状態で受け付けられてからの話であり、財産的基礎で詰まっているケースでは、その手前——増資なら払込みと登記、借入なら金融機関の審査、残高証明なら基準日の設計——のほうが長くなることがあります。事案による幅が大きい部分ですので、日数を断定せず、余裕をもった逆算をおすすめします。

当事務所の報酬(税込目安)は次のとおりです。

業務内容行政書士報酬法定手数料合計
建設業許可申請(法人・新規)132,000円90,000円222,000円
建設業許可申請(個人・新規)110,000円90,000円200,000円
建設業許可申請(業種追加)55,000円50,000円105,000円
変更届(役員・その他)22,000円―22,000円

法定手数料90,000円は依頼者のご負担ですが、納付は当事務所が代行します。 証明書等の実費は事務所で立て替え、後日精算します。当事務所では代理申請まで行い、営業所調査の準備確認と同席も報酬に含みます。金額は案件内容により変動しますので、正確な金額は事前にお見積りします。費用の全体像は建設業許可の費用はいくら?岡山県知事許可の総額目安に整理しています。

なお、増資に伴う登記は司法書士の領域であり、許可申請とは別の期間・別の費用が発生します。本記事の資料範囲外のため金額は示しません。

必要書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧をご覧ください。

9. 許可のその先|毎年の財務諸表と、業種追加でもう一度問われる500万円

財産的基礎は「取得のときだけ乗り越えればよい要件」ではありません。許可を取ったあと、財務は毎年提出され続けます。

9-1. 事業年度終了報告——決算日から4か月以内

許可取得後は、決算日から4か月以内に事業年度終了の変更届出書の提出が必要です(手引 PDF p.22)。ここには財務諸表が含まれます。様式と書類名の対応は、法人用の貸借対照表が様式第15号、損益計算書及び完成工事原価報告書が様式第16号、株主資本等変動計算書が様式第17号、注記表が様式第17号の2、個人用の貸借対照表が様式第18号、個人用の損益計算書が様式第19号です(手引 PDF p.169)。届出事項ごとに何を出すかは、手引の「変更届出事項及び提出書類等一覧表」(手引 PDF p.170)にまとまっています。

そして手引は、変更届全般について「期限内の提出を怠っている場合には許可の更新・追加申請等はできません」と明記しています(手引 PDF p.22)。事業年度終了報告を溜めると、更新のときに動けなくなります。

9-2. その財務諸表が、次の判定に使われる

§7-3で見たとおり、業種追加の審査では「許可を受けて継続して営業した実績」を許可取得後の事業年度終了報告で確認する運用になっています(審査要領 PDF p.28)。毎年の報告が、次の申請のときの財産的基礎の答えになるという構造です。

逆に言えば、事業年度終了報告を出していない期間があると、③の実績ルートの説明が難しくなり、そのぶん残高証明を用意し直すことになります。財産的基礎の負担を減らす一番の方法は、期限管理を仕組みにすることです。

9-3. 経審・入札を視野に入れるなら

公共工事の入札に参加する場合は、経営事項審査(経審)を受審します。経審では財務内容が評価の対象になるため、「許可を通すためだけの一時的な資金」では評価につながりません。§4-5で「事業を回すための資金として組めるか」と書いたのは、この先まで見た話です。

経審の詳細は経審申請を岡山で依頼するならと経営事項審査、入札参加資格については入札参加資格をご覧ください。

9-4. 期限管理を仕組みにする

事業年度終了報告(決算日から4か月以内)、更新申請(有効期間満了の30日前までに受付。申請は3か月前から可能/手引 PDF p.13)、増資したときの資本金変更届(手引 PDF p.141・p.170)——財産的基礎に関わる期限だけでも複数あります。

当事務所では、これらの期限をまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。期限管理(いつ何を出すかの案内)は顧問の範囲、申請の代理実行はスポット報酬という切り分けです。フルプラン(月額15,000円・税込)には、事業年度終了報告、経審の経営状況分析、経営規模等評価・総合評定値請求、入札参加資格更新(2年に1回)と月次相談が含まれます。

異業種から建設業に参入して許可を取る場合の、財産的基礎を含めた組み立ての順序は異業種から建設業に参入して許可を取るにはに整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q決算書の純資産が500万円に届きません。建設業許可は諦めるしかありませんか?
A諦める必要はありません。岡山県の手引が定める財産的基礎は、①500万円以上の資金調達能力があると認められること、②自己資本の額が500万円以上あること、③許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること、のいずれかを満たせばよい構造です。自己資本が足りないのは②が使えないという話であり、①(取引金融機関の預金残高証明等で示す)が残っています。実務では、決算を経ている会社が①で満たす例が多くみられます。どのルートが現実的かは、決算の内容と申請したい時期によって変わりますので、個別にご相談ください。
Q銀行から500万円借りれば、自己資本の要件を満たせますか?
A自己資本(②)は満たせません。借入をすると資産(預金)と負債(借入金)が両建てで増えるだけで、法人の場合に見られる「貸借対照表における純資産合計の額」は変わらないためです。ただし①の「500万円以上の資金調達能力」は預金残高証明等で示す枠組みなので、そちらのルートを通す手段としては機能し得ます。なお手引・審査要領には残高の出所(自己資金か借入金か)を区別する定めが見当たらないため、「借入金でも当然に通る」と断定することもできません。構成が固まる前にご確認ください。また、岡山県では営業所調査で確定申告書の控えと決算書原本による財務内容の確認が行われますので、基準日だけ数字を作るという発想は現実的ではありません。
Q増資すれば、その直後に申請しても大丈夫ですか?
Aそこは注意が必要です。手引は自己資本の額の確認について「原則として既存の企業については直近の事業年度終了報告の、新規設立の企業については創業時の財務諸表により行います」としています。すでに決算を経ている会社が期の途中で増資しても、直近の事業年度終了報告に添付済みの財務諸表は過去の数字のままです。なお手引は、特定建設業の「資本金の額が2,000万円以上であること」という項目についてのみ、直前決算時に基準に達していなくてもその後の増資で申請前に要件を満たしていれば差し支えないと明記していますが、一般建設業の自己資本500万円に同じ趣旨の明文は置かれていません。増資直後の申請を検討される場合は、事前に岡山県土木部監理課建設業班へご確認ください。あわせて、すでに許可をお持ちの場合は資本金の額の変更届が必要です。
Q残高証明書は、いつ取ればよいのでしょうか。複数の銀行に分けても構いませんか?
A残高証明書は「受付日から1か月以内の時点の500万円以上の残高」を証明したものである必要があります。岡山県の審査要領は「証明書の発行日が1か月以内という意味ではない」と念を押しており、1か月以内なのは残高の基準日(証明日)です。複数の銀行に分けて合算すること自体は可能ですが、その場合は証明日を同日付にそろえる必要があります。取得の段取り(どの窓口でどう依頼するか、何通取るか、補正で枠を超えたときの扱いなど)は残高証明書の記事にまとめていますので、打ち手③を採ると決めた段階でそちらをご覧ください。
Q一度許可を取れば、業種追加のときに500万円の話は出てきませんか?
A出てくることがあります。岡山県の審査要領は「業種追加の申請においても、許可申請の直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績がなく、かつ、直前決算における自己資本(純資産)の額が500万円未満である場合は、残高証明書の添付が必要」と定めています。許可を受けてからまだ5年経っていない会社が業種を追加する場合は、あらためて確認されるということです。また「許可を受けて継続して営業した実績」は許可取得後の事業年度終了報告で確認される運用のため、事業年度終了報告(決算日から4か月以内)を毎年きちんと出していることが、次の申請のときに効いてきます。

まとめ

「自己資本500万円が足りない」で止まっている方に、本記事の結論をもう一度整理します。

  • まず、2つの500万円を切り離してください。 軽微な建設工事の500万円(手引 PDF p.5)は「許可がなくても請け負える工事の上限」、財産的基礎の500万円(手引 PDF p.9-10)は「許可を取るために示す財産」です。別の制度です。
  • 財産的基礎は①資金調達能力500万円 ②自己資本500万円 ③直前5年間の許可継続営業実績の「いずれか」です。 自己資本が足りないのは②が使えないという話にすぎません。
  • 打ち手①増資は純資産合計を直接増やしますが、確認は原則として直近の事業年度終了報告の財務諸表で行われます(手引 PDF p.10)。増資直後の申請でただちに反映されるかは資料の範囲では読み取れず、事前確認が要ります。既許可業者は資本金変更届もセットです(手引 PDF p.141)。
  • 打ち手②借入では、自己資本は増えません(資産と負債が両建てで増えるだけ)。示せるのは①の資金調達能力です。なお個人事業主の計算式では事業主借勘定がプラス要素として入ります(手引 PDF p.10)。
  • 打ち手③残高証明の基準日調整は、受付日から1か月以内の時点の残高で判定されます。1か月以内なのは発行日ではなく残高の基準日(証明日)であり、複数の金融機関で合算するなら証明日が同日付でなければなりません(手引 PDF p.9・p.150/審査要領 PDF p.28)。
  • そもそも示さなくてよい場合があります。 更新は原則不要、許可切れ直後の新規申請は有効期間満了日から1か月以内の受理で不要(閉庁日の例外あり/審査要領 PDF p.28-29)。逆に業種追加でも、5年の実績がなく直前決算の自己資本が500万円未満なら残高証明書が必要です(審査要領 PDF p.28)。
  • 岡山県では、申請の受付は本庁一元で事前審査を一切行わず(手引 PDF p.16・p.168)、受付後に所轄県民局の営業所調査があり、そこで確定申告書の控えと決算書原本による財務内容の確認が行われます(手引 PDF p.17-18)。残高証明1枚で財務が見られなくなるわけではありません。

どの打ち手を選ぶかは、「決算をまたげるか」「いつまでに許可が要るか」でほぼ決まります。金額や期間は目安であり、時点や個別の事情により変動します。「うちはどのルートなら現実的か」を、まずは無料相談で棚卸ししてみてください。要件全体の見取り図は建設業許可の6つの要件|自社が取れるか診断から確認できます。

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決算書を見ながら、①増資 ②借入 ③残高証明の基準日調整 のどれが現実的かを、建設業に特化する行政書士が個別に整理します。初回は30〜60分で方向性の見立てまで、資料の精査・要件設計・工程表の作成は受任後に承ります。「資本金は300万円だが純資産は600万円ある。これで足りるか」「複数の口座を合算してよいか」など、まず1問だけ聞きたい方はLINEでどうぞ。無料相談は30秒入力のフォームから。お電話は070-8567-3197。

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