

建設業許可の相談で、要件そのものは満たしているのに最後で止まる論点があります。「常勤性」です。
「経営業務の管理責任者(経管)になれる人はいる。営業所技術者(旧:専任技術者)の資格を持つ人もいる。ただし、その人は他社の役員を兼ねている/県外に住んでいる/親会社からの出向者だ」。
結論から言えば、これらのケースは「一律にダメ」でも「一律に大丈夫」でもありません。 岡山県の手引と審査要領は、判定が割れるパターンごとに、確認する書類と考え方をかなり具体的に書き分けています。押さえるべき骨格は次の3つです。
- 常勤性は「その会社1社に、常時勤務している」ことの実証であり、社会保険・給与・出勤の記録で確認される。書式を整えるだけでは通らない。
- 兼務は「できる/できない」の二択ではなく、「どの兼務なら残せるか」の設計問題。岡山県は代表者の兼務について「1社で常勤なら他の法人では非常勤」と定めており、他法令の専任資格との兼任は同一法人・同一事業所なら認められる余地がある。
- 遠隔地居住は距離だけで機械的に切られるわけではない。岡山県は「聞き取りを行った上で常識上通勤不可能」と判断された場合に専任と認めない運用で、申請書の様式自体が単身赴任(住民票住所と居所が違う状態)を想定している。
本記事では、岡山県で建設業に特化する行政書士が、判定が割れる6つのケース(他社役員との兼務/他法令で専任を要する資格との兼務/遠隔地居住・単身赴任/出向/非常勤役員・無報酬/個人事業との兼業)について、手引・審査要領の記述と、ケースごとに追加で求められる疎明資料を整理します。
※ 常勤性の判断は、勤務の実態・保険や給与の処理・組織の実情という個別の事情によって分かれます。本記事は岡山県知事許可・一般建設業を前提とした一般的な整理であり、特定のケースについて結論を保証するものではありません。最終判断は有資格者(行政書士)または岡山県の担当窓口にご確認ください。
なお、常勤性そのものの基本(誰に常勤性が求められるのか、通常どんな書類で証明するのか)は、本記事では繰り返しません。 経管側の基本要件と証明方法は経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法、営業所技術者側の実務経験と証明手続は営業所技術者(旧:専任技術者)の実務経験10年を証明する方法にまとめています。本記事は、その上で「うちのケースは判定が割れるのではないか」と感じた方のための記事です。要件全体の地図が必要な方は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)からご覧ください。
1. 常勤性とは何か——「常勤」と「専任」は別の言葉として読む
境界事例を扱う前に、言葉を分けておきます。手引は「常勤」と「専任」を別の場面で使っており、これを混ぜると議論が噛み合わなくなります。
1-1. 誰に常勤性が求められるのか
岡山県の手引が「常勤であること」を求めているのは、次の人たちです。
| 立場 | 求められる状態 | 出典 |
|---|---|---|
| 常勤役員等(経営業務の管理責任者等) | 法人の場合は常勤の役員、個人の場合はその者又は支配人 | 手引 PDF p.7・※1 |
| 常勤役員等を直接に補佐する者(規則第7条第1号ロのルート) | 常勤であることが必要 | 手引 PDF p.7 |
| 営業所技術者等 | 営業所ごとに専任で配置=その営業所に常勤して専らその職務に従事する | 手引 PDF p.8 |
手引は、常勤役員等の要件の冒頭に「なお、常勤役員等及び直接に補佐する者については常勤であることが必要です」と明記しています(手引 PDF p.7)。補佐者体制(ロ要件)で組む場合、補佐する側にも常勤性が要るということです。補佐者体制そのものの組み方は経管を補佐者体制で満たすには|常勤役員等を直接に補佐する者に整理しています。
一方で、常勤性の確認を要しない立場もあります。岡山県の審査要領は、建設業法施行令第3条に規定する使用人について、「常勤性の確認、営業所調査を不要とする」と定めています(審査要領 PDF p.25)。ここでいう令3条の使用人とは、手引の記載要領によれば「支配人及び支店又は常時建設工事の請負契約を締結する営業所の代表者(支配人である者を除く。)」です(手引 PDF p.87)。誰に常勤性が求められ、誰には求められないのかを取り違えると、集める書類がまるごとずれます。
1-2. 「専任」の定義は、そのまま境界事例のチェックリストになっている
営業所技術者について、手引は「専任」を次のように定義しています(手引 PDF p.8)。
※専任とは
その営業所に常勤して専らその職務に従事することをいいます。次のような場合は、原則として「専任」とは認められません。
・技術者の住所が営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能である。
・他の営業所において専任を要する職務を行っている。
・建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等、他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている(建設業許可を受けた営業所が他の法令により専任を要する事務所等と兼ねている場合を除く。)。
(建設業許可事務ガイドラインから)
この3行が、本記事の3章・4章・5章にそのまま対応します。 岡山県が「専任とは認められない」典型として挙げているのは、①遠距離=通勤不可能、②他の営業所での専任、③他法令の専任資格との兼務、の3つです。裏を返せば、この3つに当たらない限り、兼務や遠隔地居住だけで機械的に切られるわけではないということでもあります。
なお、営業所技術者の「常勤」については、手引が国のガイドラインを引用して「営業所に常勤(テレワークを行う場合を含む。)して専らその職務に従事することを要する者」としています(手引 PDF p.181)。常勤=毎日物理的に机に座っていること、という理解だけでは狭すぎる、という点は押さえておいてください。
1-3. 常勤性を欠くと、許可はその時点で危うくなる
常勤性は「申請のときだけ整っていればよい」ものではありません。手引は、経管・営業所技術者等を欠く状態になれば代わりになる方がいない限り許可を失うとしたうえで、その「欠く」状態には退職・死亡だけでなく毎日出勤することができなくなった場合が含まれ、長期入院のように社会保険等の資格が継続していても「欠く」状態とみなされると明記しています(手引 PDF p.22。変更届は変更後2週間以内)。
籍があることと、常勤していることは別だと制度の側が明言している——ここが常勤性の本質です。境界事例を「なんとか形だけ整える」方向で処理すると、取得後にこの規定が効いてきます。常勤性の設計は、取得の話であると同時に、維持の話です。 「欠く」状態の定義と、欠員が出たとき(退職・交替・空白期間)にどう動くかは営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?確保の方法に詳しく整理しているので、そちらをご覧ください。
2. 判定の物差し|岡山県が常勤性を確認する手段と、確認のタイミング
境界事例を考えるうえで先に知っておくべきなのは、「岡山県は何を見て常勤性を判断しているのか」です。ここが分かると、どのケースでどんな疎明資料を用意すべきかが逆算できます。
なお、通常の申請で用意する基本の常勤性確認書類そのものは、既存記事(経営業務の管理責任者とは/営業所技術者の実務経験10年証明)の担当です。 ここでは「境界事例で何が効くか」という観点に絞ります。
2-1. 確認は2段階で行われる(申請窓口と、県民局の営業所調査)
岡山県では、常勤性の確認が2つの場面で行われます。
① 申請時(岡山県土木部監理課建設業班の窓口)
申請書には、常勤役員等・常勤役員等を直接に補佐する者・営業所技術者等について、健康保険被保険者証(有効期限内のもの)又は直近の厚生年金標準報酬決定通知書の写しを「確認資料」として提示します。これはつづらずに1部だけ提示するもので、提出は不要です(手引 PDF p.151・p.169)。
② 申請受付後(所轄の県民局による営業所調査)
許可申請受付後、半月程度で所轄の県民局から営業所調査の連絡が入ります(手引 PDF p.17)。ここで「現在の常勤性」を確認する書類は手引 PDF p.18 に区分ごとに列挙されていますが、境界事例で効いてくるのは、そのうち次の3点です。
- 社会保険(法人なら健康保険証〈有効期限内のもの〉、被保険者標準報酬決定通知書 又は 被保険者資格取得確認通知書の原本)——どの会社で加入しているかが、そのまま「どこに常勤しているか」の推認材料になります
- 賃金台帳——いくら支払われているかが、7章で見る報酬の論点に直結します
- 出勤簿——実際にいつ出勤していたか。出向のケース(6章)では、これが常勤性認定の必須書類そのものになります
つまり、常勤性の物差しは「社会保険」「賃金台帳」「出勤簿」の3点セットです。 兼務や遠隔地といった境界事例は、この3点セットのどこかに矛盾が出ることで表面化します。
なお、手引 PDF p.18 の区分のうち、通常とは扱いが異なるものが2つある点だけ先に触れておきます。①個人事業主本人が常勤役員等又は営業所技術者等となる場合は、雇用保険及び社会保険関係の書類が不要(8章で扱います)、②建設国保に加入している場合は、組合員証と厚生年金関係の書類で確認するという2点です。それ以外の通常の区分(法人・個人の別による必要書類の一覧)は、経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法および営業所技術者(旧:専任技術者)の実務経験10年を証明する方法をご覧ください。
2-2. 社会保険が使えない・足りない場合の代替手段
境界事例では、社会保険だけでは判断できないことがあります。岡山県はその場合の扱いも定めています。
なお、社会保険の「未加入期間」そのものの扱い——実務経験年数の始期をどこに置くか、未加入だった期間をどの書類で埋めるか——は本記事の担当外です。 要件としての社会保険は建設業許可に社会保険の加入は必須?未加入だと取れない理由、実務経験の立証側の埋め方は実務経験の証明書類が揃わないとき|廃業・紛失時の代替立証をご覧ください。ここでは、加入したくてもできない立場の人をどう確認するかに絞ります。
| 状況 | 確認される書類 | 出典 |
|---|---|---|
| 経管等が後期高齢者(75歳以上)で被用者保険に加入できない | ①後期高齢者医療資格確認書 又はマイナンバーカード(提示)②直前5年間の賃金台帳及び源泉徴収票(提示)③常勤していること等についての申立書(提出) | 審査要領 PDF p.15/手引 PDF p.77 |
| 経管等が70歳以上で厚生年金の被保険者になれない(建設国保加入者) | 当該経管等が記載された建設国保の加入証明書の提示 | 審査要領 PDF p.11 |
要するに、社会保険は「常勤性を推認させる最も強い材料」であって、唯一の材料ではありません。 保険で示せない場合には、賃金台帳・源泉徴収票・出勤簿・申立書という別ルートが用意されています。境界事例の疎明は、この構造の上に組み立てます。
2-3. 面談・立入検査という最終手段もある
書面で判断がつかない場合の手段も明記されています。審査要領は、無報酬又は低報酬の常勤役員等について「経管本人との面談や出勤簿等で常勤性を信用するに足りる状況であれば、初回に限り申請又は届出を認める」とし、必要な顛末書の提出に応じない場合には「実態を確認する必要があるため、立入検査等により経管の常勤性の確認を行う」としています(審査要領 PDF p.12)。
また、営業所の実態確認についても、電話連絡に返答がない場合には「郵送による連絡や立入検査により、営業所の実態について確認を行う」とされています(審査要領 PDF p.5)。
常勤性は、書面で押し切れる論点ではありません。 ここを理解しておくことが、境界事例で無理な構成を避ける最大の防波堤になります。
2-4. 「後から見つかる」経路がある——事業年度終了報告と工事経歴書
常勤性の破綻は、申請時に見つからなくても、その後の毎年の届出で表面化します。
手引は、工事現場への専任義務違反について「事業年度終了報告時に、大きな工事と掛け持ちしていることが分かる例が散見されます」と書いています(手引 PDF p.181)。
遠方配置についても同じで、営業所技術者等を隣接県を超える遠方の工事に配置していたことは、毎年提出する工事経歴書から後日検出されます(審査要領 PDF p.7。この場合は業務改善報告書を徴したうえで申請等が受け付けられます)。工事経歴書で問われる配置技術者の違反類型と、そもそも営業所技術者を現場に出せるのかという論点は営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?確保の方法に整理しています。
押さえておきたいのは、常勤性の判定は申請の日で終わらない、という点です。 境界事例を「今回の申請だけ乗り切る」発想で処理すると、翌年以降の事業年度終了報告で自分の首を絞めます。
3. ケース①|他社役員との兼務——常勤は1社にしか置けない(代表者の兼務の場合)
ここから、判定が割れる具体的なケースに入ります。まず最も相談が多い他社役員との兼務です。
3-1. 出発点:兼務そのものは禁止されていない
岡山県の審査要領は、営業所の実体的要件を定めた箇所のなお書きで、次のように書いています(審査要領 PDF p.5)。
「なお、建設業法上の代表者については、法人の役員が2社以上の代表者を兼務することができるが、この際、1社で常勤の役員となっていれば、その他の法人では非常勤の役員でなければならない。」
押さえるべきは3点です。
- 兼務そのものは可能。2社以上で代表者を兼ねること自体を岡山県は否定していません。
- 代表者については「常勤」を1社にしか置けない。1社で常勤の役員である以上、その他の法人では非常勤の役員でなければならないとされています。したがって、代表者を兼務している方について「A社でもB社でも常勤役員です」という整理は、この規定と正面から衝突します。
- この規定は「建設業法上の代表者については」と射程を限定して書かれています。 代表者以外の役員(非代表の取締役同士の兼務など)について、常勤を1社に限る旨を定めた規定は、手引・審査要領のいずれにも見当たりません。
つまり、代表者の兼務は明文で答えが出る一方、代表者以外の役員の兼務は明文がなく、実態に即した個別判断になるということです。後者について「制度上できません」と断定することも、「問題ありません」と請け合うことも、一次資料からはできません。判断の材料は、2章で見た物差し——社会保険・賃金台帳・出勤簿、そして次の 3-2 で見る岡山県固有の推定規定——に戻ります。いずれの場合も、兼務の相談は実質的に「どちらの会社に常勤を置くか」という選択の問題に翻訳される点は変わりません。個別のケースは必ずご確認ください。
なお、営業所技術者側には、これとは別に明文があります。手引は「専任」と認められない場合の1つとして「他の営業所において専任を要する職務を行っている」を挙げています(手引 PDF p.8)。役員としての兼務ではなく、技術者として複数の営業所の専任を掛け持ちする形は、この記述で直接に否定されるという整理です。
3-2. 岡山県固有の運用|同一事務所・同一建物内に他法人があるとき
兼務の判定で、岡山県がとくに具体的な基準を置いているのがここです(審査要領 PDF p.11)。
「同一事務所又は同一建物内に他の法人(事業所)がある場合で、建設業の許可を申請している法人以外の法人で健康保険に加入している場合には、基本的に当該業者において常勤していることが推定されるので、申請のあった建設業者で常勤しているものとは認められない。」
この規定には、見落とすと判断を誤る条件が2つ入っています。
- 場所的な限定:「同一事務所又は同一建物内に他の法人がある場合」という前提が付いています。無条件の規定ではありません。
- 推定である:「基本的に…推定される」という書きぶりです。反証の余地がまったくないという規定ではありませんが、この構図では常勤性を認めてもらうハードルが高いと理解すべきです。
グループ会社・関連会社を同じ建物に置いている岡山県内の事業者は珍しくありません。「同じビルの別法人で健康保険に入ったまま、こちらの経管や営業所技術者になる」という設計は、原則として通らないと考えて組み立ててください。
なお、これは「人」の話です。「場所」の側では、同一の営業所に複数の建設業者が併存することは原則として認められず、同一建物内でも、壁で完全に仕切られ人的・設備的に別の事業者と認められる場合は差し支えないとされています(審査要領 PDF p.4)。営業所側の物的要件は自宅を営業所にして建設業許可は取れる?営業所の要件と写真にまとめていますので、「人(常勤性)」と「場所(営業所)」の両面から見る必要がある点だけ押さえてください。
3-3. 落とし穴|申請書のあちこちに「常勤・非常勤」を書かされる
兼務のケースで実務上いちばん多い事故は、書類間の食い違いです。岡山県の様式は、常勤・非常勤を何度も書かせる構造になっています。
| 様式 | 何を書くか | 出典 |
|---|---|---|
| 様式第1号 別紙一(役員等の一覧表) | 役員等の氏名・役名等とあわせて常勤・非常勤の別(株主等のみに該当する者は記載不要) | 手引 PDF p.36 |
| 様式第7号 別紙(常勤役員等の略歴書) | 職歴欄に、経営を管理した経験期間について常勤又は非常勤の別を明記 | 手引 PDF p.61・p.62 |
| 様式第7号の2 別紙一(常勤役員等の略歴書・ロ要件) | 役員等としての経験期間について常勤又は非常勤の別を明記 | 手引 PDF p.66 |
| 様式第7号(常勤役員等証明書) | 経験年数は「非常勤」の期間を含みません | 手引 PDF p.57 |
| 様式第7号の3(健康保険等の加入状況) | 従業員数は常勤・非常勤の別に関係なく全ての従業員数(建設業以外に従事する者を含む) | 手引 PDF p.71/審査要領 PDF p.19 |
とくに効くのが4行目です。 様式第7号の記入例には「経験年数は『非常勤』の期間を含みません」と明記されています(手引 PDF p.57)。他社で非常勤役員だった期間を経管の経験年数に足して5年を作る、という組み立ては成立しません。「役員だった期間」ではなく「常勤の役員だった期間」で数え直す必要があります。
もう1つ、審査要領は役職名の記載についても「単なる役員であった期間と代表取締役の期間がある場合、現在の役職のみ記載していないか」を審査の着眼点として挙げています(審査要領 PDF p.11)。兼務・転籍を繰り返した経歴では、ここが乱れやすい箇所です。
3-4. 非常勤役員でも「義務」からは外れない
兼務の相談でしばしば誤解されるのが、「非常勤なら書類も要らない」という理解です。これは違います。
手引は、様式第12号(許可申請者の住所、生年月日等に関する調書)について、「許可申請の場合、常勤・非常勤を問わず、様式第1号別紙1(役員等の一覧表)に記載した役員等(監査役は含まれない。)全員について本調書の作成が必要です」としています(手引 PDF p.89)。
そして欠格要件は、「役員等、支配人、従たる営業所の代表者のうちに上記事項に該当する者がいるもの」にも及びます(手引 PDF p.10)。非常勤役員は常勤性の要件には使えないが、欠格要件のチェック対象には入る——この非対称は、他社から役員を受け入れる/他社へ役員として出す場面の両方で効いてきます。欠格要件そのものの読み方は建設業許可の欠格要件とは|破産・前科があっても取れる?に整理しています。
なお、「常勤役員等の略歴書」または「常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書」に記載のある者については、様式第12号の作成は不要とされています(手引 PDF p.88・p.89)。経歴を書くのは略歴書、賞罰と誓約を書くのは調書、という役割分担です。
3-5. 判断材料|兼務のまま進めるか、常勤を移すか
兼務のケースで実際に決めるべきことは、次の3点に整理できます。
| 決めること | 判断の軸 | 効いてくる規定 |
|---|---|---|
| どちらの会社に常勤を置くか | 許可を取る(維持する)必要性が高いのはどちらか。他方の会社の許可要件が崩れないか | 代表者の兼務は1社で常勤なら他は非常勤(審査要領 PDF p.5)。代表者以外は明文がなく実態判断 |
| 健康保険をどちらに寄せるか | 同一事務所・同一建物内に他法人がある構図になっていないか | 同一建物内の他法人での健保加入は常勤性を否定する方向(審査要領 PDF p.11) |
| 常勤を移した側の要件は誰が埋めるか | 移した後、他方の会社の経管・営業所技術者が空かないか。空くなら変更後2週間以内の変更届 | 欠く状態と変更届(手引 PDF p.22) |
3点目が最も抜けやすい項目です。 「こちらの会社の経管を確保する」ことだけを考えて動くと、人を引き抜かれた側の会社の許可が要件を欠くという事態が起きます。兼務の整理は、必ず両社を並べて設計してください。経管の候補そのものが足りていない場合の打ち手は経営業務の管理責任者がいない|外部招へい・補佐者体制の3ルートにまとめています。
4. ケース②|他の法令で専任を要する資格との兼務(建築士・宅建士)
3章が「他社の役員」との兼務だとすれば、こちらは「他の法令が専任を求めている職」との兼務です。岡山県はこの論点に、国のガイドラインより一歩踏み込んだ運用を置いています。
4-1. 原則——他法令で専任を要する立場は、営業所技術者と両立しない
このケースは、1-2 に挙げた「専任とは認められない」3類型のうち③——管理建築士や専任の宅地建物取引士のように、他の法令が特定の事務所等での専任を求めている立場——に当たります(手引 PDF p.8)。
要点は、この③に付いているカッコ書きの除外です。 その立場にあること自体が失格事由なのではなく、「建設業の営業所」と「他法令で専任を要する事務所」が別の場所になっているときに問題になる、という構造です。建設業の営業所がその事務所等を兼ねている場合は除かれる、と明記されています。
4-2. 岡山県固有の運用|「同一法人、かつ、同一事業所」
ここに岡山県の審査要領が、より具体的な条件を足しています(審査要領 PDF p.21)。
「建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等他の法令により特定の事務所に専任を要する者とされている者が営業所技術者等を兼任する場合は、同一法人、かつ、同一事業所の場合のみ可とし、同一営業所でも、別法人の場合は、兼任できないものとする。」
「同一営業所でも、別法人の場合は兼任できない」——この1文が、岡山県で建設業と設計・不動産を兼営する事業者にとっての分水嶺です。
よくある構図を当てはめてみます。
| 構図 | 判定の方向 |
|---|---|
| 同じ法人・同じ事業所で、建設業の営業所技術者と管理建築士を1人が兼ねる | 同一法人かつ同一事業所に当たるため、兼任が認められる余地がある |
| 建設業はA社、建築士事務所はB社(別法人)。事務所の場所は同じ | 別法人のため兼任できないとされている(審査要領 PDF p.21) |
| 同一法人だが、建設業の営業所と建築士事務所を別の場所に置いている | 「同一事業所」に当たらず、原則として専任と認められない方向(手引 PDF p.8) |
| 宅建業を別会社にして、専任の宅地建物取引士を兼ねてもらう | 別法人のため兼任できないとされている(審査要領 PDF p.21) |
注意していただきたいのは、この表が「当てはめの結論」ではなく「どの規定が効くか」の整理だという点です。 実際の判断は、営業所の実態・法人の構成・届出の状況によって分かれます。個別のケースは必ずご確認ください。
4-3. 落とし穴|法人を分けた過去の判断が、そのまま兼任不可に直結する
このケースの怖さは、問題の原因が「今回の申請」ではなく「何年も前に法人を分けたこと」にある点です。
- 節税や事業リスクの分散のために、建築士事務所や宅建業を別法人にしている
- グループの中で、設計部門だけ別会社にしている
- 親族がそれぞれ代表を務める形で、施工と設計を分けている
こうした構成はいずれも合理的な理由で作られたものですが、建設業許可の営業所技術者を誰にするかという場面で、突然「別法人だから兼任できない」という壁になります。 そして、この壁は申請書の書き方では回避できません。
打ち手は、おおむね次の3方向です。
- 別の有資格者を営業所技術者として確保する(採用・社内育成・実務経験ルートの再点検)
- 兼任している人の専任先を整理する(他法令側の届出を見直す。ただし、そちらの事業の要件が崩れないか先に確認が必要)
- 法人・事業所の構成そのものを見直す(影響範囲が大きく、税務・登記を含む検討が必要)
1が最も現実的で、リードタイムも読みやすい選択肢です。 営業所技術者を確保する3つの方法(有資格者の常勤採用/既存社員の資格取得/実務経験ルートの再点検)とその判断順序は営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?確保の方法に整理しています。業種別にどの資格が使えるかは営業所技術者になれる資格一覧|業種別の対応国家資格をご覧ください。
5. ケース③|遠隔地居住・単身赴任——「常識上通勤不可能」の線引き
「経管(または営業所技術者)が県外に住んでいる」「単身赴任で住民票と実際の住まいが違う」——このケースは、思われているほど機械的には切られません。 ただし、押さえるべき規定が2つあります。
5-1. 手引と審査要領の書きぶりを並べる
手引(PDF p.8)——専任と認められない例の1つ目:
「技術者の住所が営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能である。」
審査要領(PDF p.21)——岡山県が足している条件:
「住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、聞き取りを行った上で常識上通勤不可能な者については、営業所に『専任』する者とは言えないものとして取り扱う(ガイドライン参照)。」
差分は「聞き取りを行った上で」の一句です。 岡山県は、住所と営業所の距離だけを機械的に当てはめるのではなく、聞き取りを経て「常識上通勤不可能」と判断された場合に専任を否定するという順序を明記しています。裏返せば、距離が離れていても、通勤の実態を説明できる余地があるということです。
5-2. ⛔ 距離・時間の閾値は書かれていない
ここは断定を避けなければならない箇所です。「片道○km以内」「通勤○時間以内」といった数値基準は、岡山県の手引にも審査要領にも書かれていません。 判断の基準は「著しく遠距離」「常識上通勤不可能」という評価的な文言だけです。
参考として、営業所と工事現場の「近接」についても、手引は所在地により個別に判断せざるを得ず、一律の距離基準は示せないという趣旨を明記しています(手引 PDF p.182)。
距離の話は、制度の側が明確に「一律には言えない」と宣言している領域です。 ネット上の記事で見かける具体的な数値は、他都道府県の運用や過去の解説の孫引きであることが多く、岡山県の一次資料に根拠を持ちません。ここを鵜呑みにして体制を組むと、聞き取りの場で説明が破綻します。
5-3. 岡山県の様式は、単身赴任を想定して作られている
見落とされがちですが、申請書の様式そのものが「住民票の住所と実際の住まいが違う」ケースを前提にしています。
| 様式 | 記載要領 | 出典 |
|---|---|---|
| 様式第7号(常勤役員等証明書) | 住民票の個人の住所を記載。居所が異なる場合は、両方記載(住民票住所(居所住所)の形式) | 手引 PDF p.57 |
| 様式第7号 別紙(常勤役員等の略歴書) | 「単身赴任等で住民票上の住所と居所が異なる場合には( )書きで居所も併記」/「【住民登録と居所が異なる場合】『現住所』欄に両方を併記」 | 手引 PDF p.61・p.62 |
| 様式第7号の2 別紙一・別紙二(ロ要件の略歴書) | 同上(単身赴任等の場合は居所を併記) | 手引 PDF p.66・p.67・p.68 |
| 様式第12号(許可申請者の住所、生年月日等に関する調書) | 「単身赴任等で住民票上の住所と居所が異なる場合には( )書きで居所も併記」/「【住民登録と居所が異なる場合】『住所』欄に両方を併記」 | 手引 PDF p.88・p.89 |
| 様式第13号(令3条使用人の調書) | 同上 | 手引 PDF p.90 |
「単身赴任等」という語が、記載要領に繰り返し出てきます。 制度は、住民票を動かさずに営業所の近くへ移り住む働き方を想定済みだ、ということです。
したがって、このケースの実務対応は明快です。
- 住民票の住所と居所が違うなら、隠さずに両方書く。 併記が求められている以上、居所を書かないほうが不自然です。
- そのうえで、通勤の実態を説明できるように準備する。 実際にどこから通勤しているかは、5-1 で見たとおり聞き取りで確認されます(審査要領 PDF p.21)。住民票住所だけを書いて「遠距離」に見えたまま提出すると、説明の機会を自分で失うことになります。ただし、居所を併記したことで距離の論点が解消されるかどうかまでは、手引にも審査要領にも記述がありません。判定は個別にご確認ください。
なお、営業所技術者については、様式第8号(営業所技術者等証明書)に営業所技術者等の住所を記載し、あわせて所属する営業所の名称を記載する構造になっています(手引 PDF p.78)。住所と営業所の関係は、様式の上で必ず突き合わせられると考えてください。
5-4. もう1つの「遠隔地」——営業所技術者を遠方の現場に出す問題
「遠隔地」という言葉には、実は2つの意味があります。①人の住まいが営業所から遠い(5-1〜5-3)と、②その人を遠方の工事現場に配置する(本節)です。相談の場でこの2つが混ざることが非常に多いので、分けて理解してください。
この2つはまったく別の問題です。 ①住まいが遠いこと(本記事の主題)は聞き取りを経た個別判断ですが、②その人を遠方の工事現場に出すことは原則として認められず、近接した現場での例外も限定的に解釈されます(手引 PDF p.181-182)。現場に配置できる例外の条件、専任が必要な工事の線引き、違反したときの扱いは営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?確保の方法に整理していますので、②に当たる方はそちらをご覧ください。
この論点の受注上の意味は明確です。 「営業所技術者が1人しかいない会社」は、その1人を現場に出せないため、現場に配置する技術者を別に確保しない限り、事実上の制約を抱えたまま許可を持つことになります。許可を取る設計と、取った後に工事を回す設計は、同時に考える必要があります。
6. ケース④|出向(在籍出向)——常勤性は認められても、現場に出せない
親会社・グループ会社から人を出す構成は、常勤性の論点のなかでもとくに誤解が多い領域です。結論を先に言うと、「経管・営業所技術者にはなれる。ただし現場には出せない」という非対称があります。
6-1. 岡山県が定める出向者の常勤性の認定方法
審査要領は、出向者の常勤性について次のように定めています(審査要領 PDF p.14)。
「(8)出向者に係る常勤性の認定
出向元(X)から出向先(Y)に出向している取締役(A)について、社会保険の加入・給与の支払いともXで行っている場合、AのYにおける常勤性の確認については次の書類を確認する。
・Aに係るXとYとの間の出向契約又はXからYへの出向辞令
・YにおけるAの出勤簿
なお、この取扱いは、新規許可申請及び変更届で新たに経管に就任しようとする場合の現在の常勤性の認定と、経管経験の認定の際に確認する過去の常勤性の認定の両方に適用する。また、出向者である営業所技術者等の常勤性の認定についても同様に取り扱う。」
押さえるべき点は4つあります。
- 社会保険・給与が出向元に残っていても、常勤性は認められうる。 これが最大のポイントです。2章で見たとおり、常勤性の物差しは通常「社会保険」が中心ですが、出向のケースには別ルートが用意されています。
- 必要なのは2点セット——①出向契約または出向辞令 ②出向先での出勤簿。どちらか片方では足りません。
- 経管の「現在の常勤性」と「過去の常勤性」の両方に適用される。 つまり、過去に出向していた期間を経管の経験年数に算入したい場合にも、同じ2点セットが要ります。
- 営業所技術者にも同じ扱いが適用される。
6-2. 落とし穴|出勤簿は「これから付ける」では間に合わない
出向のケースで実務上いちばん多い事故が、これです。出向契約や辞令は後から整えられることがありますが、出勤簿は「その期間、実際に出勤していた記録」でなければ意味がありません。
とくに、過去の常勤性(出向していた期間を経管の経験年数に入れる場合)では、当時の出勤簿が現存しているかどうかがそのまま可否を決めます。過去の記録が残っていない場合の代替立証の考え方は実務経験の証明書類が揃わないとき|廃業・紛失時の代替立証に整理していますので、あわせてご覧ください。
現在の常勤性についても、出向を検討している段階で「いつから出勤簿を付け始めるか」を決めておく必要があります。就任してから慌てて記録を開始すると、申請時点で示せる期間が足りません。
6-3. ★最大の落とし穴|在籍出向者は現場に配置できない
ここが、出向構成を選ぶ際の決定的な論点です。手引は次のように書いています(手引 PDF p.182)。
「(4)出向社員・派遣社員等の取扱い
① 現場に配置する技術者にはなれない
現場に配置する主任技術者又は監理技術者については、直接かつ恒常的な雇用関係にあることが要件とされていますので、他の会社からの在籍出向社員(社会保険等を出向元に残したままの社員。ただし、一の親会社及びその連結子会社からなる企業集団内での出向を除く。)や派遣社員を主任技術者又は監理技術者として現場に配置することは認められません。
② 営業所技術者等になれるか
在籍出向社員であっても、当該技術者の勤務状況・給与の支払状況・当該技術者に対する人事権の状況等により専任性が認められれば、営業所技術者等となることはできます。しかしながら、ある許可業種について営業所技術者等となる要件を満たす者が在籍出向社員等しかいない場合、その者を営業所技術者等とすることによって許可自体は取得/継続できますが、現場に配置させる技術者がいませんから、現実的には当該業種については請負金額の多寡を問わず、全く請負契約を行うことができないということになりますので注意が必要です(合併、事業譲渡及び会社分割を行った場合においては例外的に経過措置があります。)。」
「許可は取れるが、その業種の請負契約が事実上できない」——手引がここまで踏み込んで警告している箇所は多くありません。これは、出向構成を検討している会社が最初に知るべき事実です。
同じ趣旨は審査要領にも置かれており、配置技術者は申請(届出)のあった建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係を有していなければならず、在籍出向者・派遣社員・一つの工事のみの短期雇用者はこれに当たらないとされています(審査要領 PDF p.7-8)。
カッコ書きの例外も重要です。手引は「一の親会社及びその連結子会社からなる企業集団内での出向を除く」としています(手引 PDF p.182)。純粋な親子会社グループ内の出向は、現場配置の制約から外れる余地があるということです。ただし、この例外に当たるかどうかは資本関係の確認が必要ですので、個別にご確認ください。
6-4. 判断材料|出向で通すなら、現場技術者の確保をセットで設計する
以上を踏まえた実務的な結論は次のとおりです。
| 検討事項 | 確認すること |
|---|---|
| 常勤性は通せるか | 出向契約(辞令)と出向先での出勤簿の2点を、申請時までに用意できるか(審査要領 PDF p.14) |
| 人事権・勤務・給与の実態はどうか | 勤務状況・給与の支払状況・人事権の状況等から専任性が説明できるか(手引 PDF p.182) |
| 現場に出す技術者は別にいるか | 出向者を営業所技術者にした場合、主任技術者として現場に出せる別の人がいるか。いなければ、その業種の受注が事実上止まる(手引 PDF p.182) |
| 企業集団内の出向に当たるか | 一の親会社及びその連結子会社からなる企業集団内の出向であれば、現場配置の制約から外れる余地がある(手引 PDF p.182) |
3行目を飛ばしたまま許可を取ると、「許可は下りたのに仕事が受けられない」という最悪の結果になります。 出向を含む体制は、必ず「取得後に誰が現場に立つのか」まで含めて設計してください。
7. ケース⑤|非常勤役員・無報酬——「役員に名前がある」と「常勤である」は別
3章でも触れましたが、非常勤役員の扱いは独立した論点として整理する価値があります。ここは、名義貸しの入口にもなりやすい領域だからです。
7-1. 非常勤の期間は、経験年数に入らない
繰り返しになりますが、様式第7号(常勤役員等証明書)の記入例には「経験年数は『非常勤』の期間を含みません」と明記されています(手引 PDF p.57)。そして略歴書の職歴欄には、常勤・非常勤の別を明記させます(手引 PDF p.61・p.62)。
このため、経管の候補者を選ぶ段階で必ず確認すべきことがあります。
- その人が役員だった期間のうち、常勤だったのはいつからいつまでか
- その期間だけで、5年(またはロ要件の年数)に届くか
- 常勤・非常勤が入れ替わっている場合、略歴書でそれをどう書くか
「登記上は10年役員だったから大丈夫」という思い込みが、書類を作り始めてから崩れるのが典型的な失敗です。経験年数の一般的な計算ルールは経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法をご覧ください。
なお、役員の任期満了に伴う重任手続を怠っていたために、登記上は退任・就任と記録されてしまった期間については、岡山県が救済の運用を置いています。①登記上退任していたとされる期間も厚生年金標準報酬決定通知書等により常勤性が確認できること、②会社法第346条第1項又は第403条第3項の規定により役員としての権利義務を有していたものと認められること——この両方を満たせば、その期間も経管としての経験期間に算入できるとされています(審査要領 PDF p.19)。ここでも判断の軸は「常勤性が確認できるか」です。 略歴書には、退任と就任の年月日およびその旨を明記し、間に1行設けて、その空白の期間も経管として会社の運営を行っていた旨を、3行にわたって記載する運用が示されています(審査要領 PDF p.16)。
7-2. 役員を退任するとき——営業所技術者は「常勤の職員」として残る必要がある
見落とされやすい規定がこれです。審査要領は、退任する役員が経管・営業所技術者等である場合の扱いを次のように定めています(審査要領 PDF p.33)。
「退任する役員が経管である場合には、必ず経管の変更届を併せて提出すること。また、営業所技術者等である場合には、当該者が、会社に常勤の職員として残ることが必要であり、退職又は非常勤職員等となる場合には、営業所技術者等の変更届と同時に役員の変更届を受付する。」
ここから2つのことが読み取れます。
- 営業所技術者は役員である必要はない。 常勤の職員として残るのであれば、役員を降りても営業所技術者を続けられます。
- 一方で「非常勤職員」になるなら、営業所技術者は続けられない。 非常勤への切り替えは、営業所技術者の変更届とセットで扱われます。
世代交代の場面で「会長職に退いて、しばらくは非常勤で技術面を見てもらう」という設計を検討されることがありますが、その人が営業所技術者である場合、この設計は成立しません。 後任の技術者を先に決める必要があります。
7-3. 無報酬・低報酬の常勤役員等——岡山県は下限を定めている
常勤性を「形だけ」整える構成を防ぐため、岡山県は報酬についても運用を明文化しています(審査要領 PDF p.12)。
- 原則として、無報酬では申請・届出は認めない(経管本人との面談や出勤簿等で常勤性を信用するに足りる状況であれば、初回に限り認める)
- 名義貸しによる虚偽申請を防ぐため、報酬の額について下限を定め、これを常勤性認定の条件とする(審査要領が報酬額の下限を定めています。具体額は面談でご案内します)
- 無報酬又は低報酬の場合、その理由と今後は適正な報酬等を支払う旨を誓約する顛末書を3部提出(申請書の非閲覧用の綴の表紙の次に綴り込む)
- 誓約に反して再度該当した場合は、交替できる者の有無・出勤簿等の資料を確認したうえで、廃業指導を含めた個別対応(財務状況により役員全員の報酬を抑える合理的な理由が見いだせる場合は、2回目の顛末書提出により認める)
- 1回目の顛末書提出後に一部期間だけ低報酬の時期があるものの以後改善している場合は、聞き取り調査のうえ、報酬額の変更に取締役会を経る必要があったなど合理的な理由が確認できたときに限り、2回目の顛末書提出は求めない
- 顛末書の提出に応じない場合は、立入検査等により経管の常勤性の確認を行う
この規定が示しているのは、「常勤性は報酬という継続的なコストを伴う」という現実です。 他社から役員を迎える、身内に名前だけ入ってもらう——といった構成を検討する際は、報酬を継続的に支払える体力があるかを事業計画の側で先に確認してください。
なお、報酬さえ払えば常勤と認められるわけでもありません。 報酬は常勤性認定の「条件」の1つであり、社会保険・出勤簿・賃金台帳・面談・立入検査という他の確認手段と組み合わせて判断されます。実際に出勤し、業務に従事している実態がなければ、報酬額を整えても常勤性の説明にはなりません。
7-4. 一時的に出勤できなくなった場合の取扱い
「常勤していなかった」ことが後から判明した場合の処理も定められています(審査要領 PDF p.11-12)。経管が入院等のやむを得ない事情により営業所に出勤していなかったことが事後に判明した場合、
- 交替できる者あり:業務改善報告書を添付のうえ変更届を提出。資格・経験等を調査して問題がなければ受理
- 交替できる者なし:原則として自主廃業を求める(指導に従わない場合には許可取消し)。ただし不在の期間が2か月未満であれば、業務改善報告書を徴したうえで営業の継続を認める
「やむを得ない入院」ですらこの扱いです。 意図的に常勤していない人を置いた場合に、これより緩い扱いを期待できる理由はありません。そして1章で見たとおり、「欠く」状態には毎日出勤することができなくなった場合が含まれ、長期入院は社会保険等の資格が継続していても「欠く」状態とみなされます(手引 PDF p.22)。
8. ケース⑥|個人事業との兼業——事業主本人が動くときの注意
最後のケースは、個人事業を営んでいる人が関わる場面です。ここは、常勤性の確認方法そのものが他のケースと違います。
8-1. 個人事業主本人が経管・営業所技術者になる場合、社会保険の書類は要らない
手引は、県民局調査での常勤性確認について次のように書いています(手引 PDF p.18)。
「<個人事業主本人が常勤役員等(経営業務の管理責任者等)又は営業所技術者等となる場合>
雇用保険及び社会保険関係の書類は不要です。」
審査要領も、建設国保加入者の常勤性確認の規定のなかで「(個人事業主本人が経管となる場合を除く。)」と繰り返し括弧書きを置いています(審査要領 PDF p.11)。
理由は単純です。事業主本人は自分を雇用していないため、雇用保険や被用者保険で常勤性を示す構造になっていません。 個人で許可を取る場合の全体像は個人事業主の建設業許可|個人で取る?法人化してから取る?、一人親方の場合は一人親方が建設業許可を取るにはをご覧ください。
8-2. 個人事業を続けたまま、他社の常勤になれるか
ここは、一次資料に明文の規定がありません。 手引・審査要領のいずれにも、「個人事業を営みながら他社の常勤役員等になれるか」を直接に定めた条文は見当たりません。
したがって、「できます」とも「できません」とも書けません。 ただし、判断がどう行われるかは、これまで見てきた規定から推測できます。
- 常勤性は社会保険・賃金台帳・出勤簿で確認される(手引 PDF p.18)
- 判断がつかない場合は面談・立入検査が行われる(審査要領 PDF p.12・p.5)
- 「欠く」状態には毎日出勤することができなくなった場合が含まれる(手引 PDF p.22)
つまり、問われるのは「その会社に常時勤務している実態があるか」の一点です。 個人事業の規模・稼働状況によって答えは変わりますし、その説明は聞き取りの場で求められます。この構成を検討している場合は、事前に整理してから動くことを強くおすすめします。
8-3. 会社側に兼業事業(建設業以外)がある場合の書き方
「兼業」という語は、人の兼業だけでなく会社の兼業事業の意味でも使われます。混同しやすいので整理しておきます。
- 健康保険等の加入状況(様式第7号の3)の従業員数は、法人にあってはその役員、個人にあってはその事業主を含め、常勤・非常勤の別に関係なく全ての従業員数(建設業以外に従事する者を含む)を記載し、( )内には役員の数又は個人事業主(同居親族である従業員を含む)の人数を内数として記載します(手引 PDF p.71/審査要領 PDF p.19)
- ただし、兼業のみの営業所は様式第7号の3に記載しないため、当該営業所に勤める従業員は表に記載する必要がありません(審査要領 PDF p.20)
- 使用人数(様式第4号)は、建設業に従事している人数のみを記載し、兼業分は含めません。代表権を有する役員・個人事業主も人数に含めます(審査要領 PDF p.10)
様式ごとに「兼業を含むか含まないか」が逆転しているため、ここは機械的に転記すると必ずずれます。社会保険の要件そのものは建設業許可に社会保険の加入は必須?未加入だと取れない理由に整理しています。
8-4. 法人成り(事業承継)の場面——常勤性が切れる瞬間がある
個人事業から法人へ移行する場面には、常勤性が一瞬で崩れる危険が仕込まれています。法人の社会保険の加入日は事業承継日に合わせる必要があり、前後にずれると承継元・承継先いずれかの常勤性が失われ、許可取消しの対象になります(審査要領 PDF p.36)。
法人設立と同時に反射的に社会保険へ加入すると承継日とずれるため、タイミングの設計を先に決めてから登記・保険の手続きを進める必要があります。加入日の具体的な段取りと、建設国保に加入している場合の例外は建設業許可に社会保険の加入は必須?未加入だと取れない理由に整理しています。
法人成りそのものの手順・許可の引き継ぎ方は法人成りで建設業許可は引き継げる?、設立直後の会社で許可を取る場合の要件の揃え方は設立したばかりの会社で建設業許可は取れる?新設法人の要件にまとめています。
9. 判定が割れるケースの進め方|疎明資料の組み立てと、岡山県での手続き
最後に、ここまでの6ケースを実務の順序に落とし込みます。
9-1. ケース別|追加で求められる疎明資料の一覧
境界事例では、通常の常勤性確認書類(社会保険・賃金台帳・出勤簿)に「上乗せ」される資料があります。ケース別に整理します。
| ケース | 追加で問われること | 用意する資料・根拠 |
|---|---|---|
| 他社役員との兼務 | 両社の代表者を兼ねているか。どちらの会社で常勤か。健康保険をどちらで加入しているか。同一事務所・同一建物内に他法人がないか | 役員等の一覧表の常勤・非常勤の別(手引 PDF p.36)/略歴書の常勤・非常勤の別(手引 PDF p.61-62)/代表者の兼務の扱い(審査要領 PDF p.5)/健康保険の加入先(審査要領 PDF p.11) |
| 他法令の専任資格との兼務 | 同一法人かつ同一事業所か。建設業の営業所と他法令の事務所が同じ場所か | 営業所の所在と他法令上の事務所の所在の一致(審査要領 PDF p.21/手引 PDF p.8) |
| 遠隔地居住・単身赴任 | 実際にどこから通勤しているか。聞き取りにどう答えるか | 各様式に居所を併記(手引 PDF p.57・p.61-62・p.66-68・p.88-90)/出勤簿・賃金台帳(手引 PDF p.18) |
| 出向(在籍出向) | 出向の事実と、出向先での勤務実態 | ①出向契約又は出向辞令 ②出向先での出勤簿の2点(審査要領 PDF p.14)/現場配置技術者を別に確保できるか(手引 PDF p.182) |
| 非常勤役員・無報酬 | 常勤の期間はいつからか。報酬は継続して支払えるか | 略歴書の常勤・非常勤の別(手引 PDF p.61-62)/顛末書3部(審査要領 PDF p.12)/重任手続懈怠なら厚生年金標準報酬決定通知書等(審査要領 PDF p.19) |
| 個人事業との兼業/法人成り | 事業主本人か、雇用されている側か。承継のタイミング | 個人事業主本人は社会保険・雇用保険の書類不要(手引 PDF p.18)/社会保険の加入日=事業承継日(審査要領 PDF p.36) |
| 後期高齢者(75歳以上) | 被用者保険に代わる常勤性の裏付け | 後期高齢者医療資格確認書又はマイナンバーカード/直前5年間の賃金台帳・源泉徴収票/常勤していること等についての申立書(審査要領 PDF p.15/手引 PDF p.77) |
この表の使い方は1つです。「自社はどの行に当たるか」を先に決めてから、書類を集め始めてください。 順序が逆になると、集めた書類が丸ごと無駄になります。
9-2. 岡山県は事前審査を一切行わない——だから構成を先に決める
境界事例で最も損をするのが、「とりあえず出して、足りなければ言ってもらう」という進め方です。岡山県では、これが通りません。
「事前審査は一切行いません。 正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。」(手引 PDF p.16)
申請書・変更届の提出先は、岡山県土木部監理課建設業班(県庁)です。手引は「建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています」と明記しています(手引 PDF p.168)。県民局は申請の窓口ではありません。 窓口へのご持参のほか、郵送での提出も受け付けられています(手引 PDF p.16)。
なお、経管の経験ルートのうち、経営業務の管理責任者に準ずる地位での経験(規則第7条第1号イ(2)(3))と、常勤役員等+補佐者体制(同号ロ)については、手引が「事前に建設業班にご相談ください」と求めています(手引 PDF p.7・p.65)。常勤性の境界事例が、これらのルートと重なる場合は、事前相談を織り込んだスケジュールで進めてください。
9-3. 常勤性は県民局の営業所調査で確認される
申請受付後、半月程度で所轄の県民局から営業所調査実施の連絡が入ります(手引 PDF p.17)。ここで確認されるのは、常勤性だけではありません。
- 営業所の所在確認(本記事の担当外。物的要件は後述のとおり別記事に整理しています)
- 常勤役員等の過去の経営を管理した経験等:商業登記事項証明書、社会保険関係書類(加入履歴等)、出勤簿、賃金台帳等/請負工事実績(契約書原本 等)(手引 PDF p.17)
- 常勤役員等及び営業所技術者等の現在の常勤性:2-1で見た書類(手引 PDF p.18)
※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません(手引 PDF p.17)。
境界事例で意識しておきたいのは、「常勤性の確認だけは、他の要件を別ルートで通せた場合でも省略されない」という点です。審査要領は、実務経験によって営業所技術者等となる場合について、監理技術者証に「実経(○)」とあるものは監理技術者証の記載をもって実務経験を確認し、実務経験証明書の提出を不要とする一方で、「常勤性については別途県民局調査を行う」と明記しています(審査要領 PDF p.23)。資格や経験の立証が軽くなっても、常勤性の確認はそのまま残るということです。
確認の対象は経管に限りません。申請書の様式第1号 別紙四(営業所技術者等一覧表)に記載されている営業所技術者等についても、厚生年金標準報酬決定通知書等で常勤性を確認するとされ(審査要領 PDF p.6)、営業所技術者等証明書(様式第8号)の常勤性の取扱いは「常勤役員等証明書に係る取扱いと同じ」と定められています(審査要領 PDF p.24)。経管と営業所技術者は、常勤性については同じ物差しで見られると考えてください。境界事例が経管側だけの問題に見えても、技術者側で同じ矛盾が出ていないかを必ず併せて点検する必要があります。
申請=本庁、営業所調査=所轄の県民局という役割分担です(手引 PDF p.168)。なお、営業所調査が早く終わったからといって、許可が早く取得できるわけではありません(本庁における調査が別途進行するため/手引 PDF p.16)。営業所の物的要件と写真の準備は自宅を営業所にして建設業許可は取れる?営業所の要件と写真に整理しています。
9-4. 費用と期間の逆算
期間の目安:申請が受け付けられてから許可までは、特に問題がないケースで概ね2か月程度です(手引 PDF p.16)。営業所調査の連絡は受付後半月程度(手引 PDF p.17)。更新申請は、有効期間満了の日の30日前までに受付(書類上不備がなく、受付印が押印された状態)を済ませる必要があります(建設業法施行規則第5条/手引 PDF p.13)。
ただし、「概ね2か月」は書類が完全に整った状態で受け付けられてからの話です。 常勤性の境界事例では、その手前——構成の決定、疎明資料の収集(出勤簿・出向辞令・賃金台帳)、必要なら社会保険の切り替え、役員変更登記——のほうが長くなるのが通例で、事案による幅も大きい部分です。
法定手数料(岡山県知事許可):
| 申請の種類 | 金額 |
|---|---|
| 新規(許可換え含む)・般特新規 | 90,000円 |
| 更新・追加 | 50,000円 |
手数料の額は申請する業種の数とは関係ありません。変更届出書の提出には手数料は不要です。納付は、岡山県手数料等(POS)納付連絡票をホームページから印刷して収納専用窓口に持参して支払い、受け取った納付済証を許可申請書の正本非閲覧用の「(様式第1号の)別紙三」に貼り付けて提出します(手引 PDF p.14)。
当事務所の報酬(税込・目安):
| 業務内容 | 報酬(A) | 法定手数料(B) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 建設業許可申請(法人・新規) | 132,000円 | 90,000円 | 222,000円 |
| 建設業許可申請(個人・新規) | 110,000円 | 90,000円 | 200,000円 |
| 変更届(経営業務の管理責任者) | 33,000円 | ― | 33,000円 |
| 変更届(専任技術者)資格要件 | 22,000円 | ― | 22,000円 |
| 変更届(役員・その他) | 22,000円 | ― | 22,000円 |
いずれも税込の目安です。案件の内容により変動しますので、正確な金額は事前にお見積りします。証明書等の実費は当事務所が立て替えて後日精算し、法定手数料90,000円はご依頼者のご負担ですが、納付手続そのものは当事務所が代行します。当事務所は書類作成の代行にとどまらず、委任状をいただいたうえで代理申請まで行います。また、県民局による営業所調査の準備確認と当日の同席は報酬に含みます(行政書士登録番号 第20300974号)。
9-5. 常勤性を確保したあと——維持のほうが長い
常勤性は、取得したあとのほうが長く付き合う論点です。
- 常勤役員等・営業所技術者の変更届は、変更後2週間以内(手引 PDF p.22・p.170)。期限内の提出を怠っている場合には許可の更新・追加申請等ができません。監督処分や罰則の対象にもなります(手引 PDF p.22)
- 経管交替の変更届には、表紙、様式第22号の2(変更届出書)、様式第7号(常勤役員等証明書)、様式第7号別紙(常勤役員等の略歴書)等の提出と社会保険等の提示が必要です(手引 PDF p.144)
- 営業所技術者の変更届には、表紙、様式第22号の2、様式第1号別紙4(営業所技術者等一覧表)、様式第8号(営業所技術者等証明書)、資格を証明する書類の提出と社会保険等の提示が必要です。削除するだけで交替する者がいない場合は、様式第22号の3が必要です(手引 PDF p.144)
- 事業年度終了報告は決算日から4か月以内(手引 PDF p.22)。2-4で見たとおり、ここで提出する工事経歴書から、営業所技術者の配置の問題が発覚する経路があります
境界事例で常勤性を確保した会社ほど、その1人が抜けた瞬間に許可が消える構造を抱えています。取得の時点で「2人目」の設計をセットで行い、期限管理を仕組みにしておく価値は大きいと言えます。
当事務所では、変更届・事業年度終了報告・更新の期限をまとめて管理する顧問契約をご用意しています(税込・月額)。
| プラン | 月額 |
|---|---|
| ライト | 5,500円 |
| スタンダード | 11,000円 |
| フル | 15,000円 |
フルに含まれるのは、事業年度終了報告(単体なら44,000円)+経審 経営状況分析(33,000円)+経審 経営規模等評価・総合評定値請求(55,000円)+入札参加資格更新(33,000円・2年に1回)+月次相談・期限管理です。ライト・スタンダードは必要な業務の範囲に合わせてご案内しますので、ご相談ください(いずれも税込・目安です)。
なお、顧問契約の範囲は「期限管理(いつ何を出すかのご案内)」であり、申請の代理実行はスポット報酬となります。 更新業務だけで毎年132,000円、入札参加資格更新が2年に1回33,000円という前提に対し、フルプランは月15,000円(年180,000円)の定額です。
公共工事へ進む場合は経営事項審査が必要になります。手続きの流れは経審申請を岡山で依頼するならに、新規申請で用意する書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧にまとめています。
よくある質問(FAQ)
まとめ
「兼務しているから」「遠くに住んでいるから」という理由だけで、建設業許可を諦める必要はありません。一方で、「形だけ整えれば通る」領域でもありません。岡山県の一次資料から読み取れる結論を整理します。
- 他社役員との兼務:兼務そのものは可能です。岡山県は代表者の兼務について、法人の役員が2社以上の代表者を兼務できるとしたうえで、1社で常勤の役員となっていれば、その他の法人では非常勤の役員でなければならないとしています(審査要領 PDF p.5)。代表者以外の役員の兼務についてはこの規定に明文がないため、実態に即した個別判断になります。なお、同一事務所・同一建物内の他法人で健康保険に加入している場合は、そちらでの常勤が推定されます(審査要領 PDF p.11)。
- 他法令で専任を要する資格との兼務:管理建築士・専任の宅地建物取引士等との兼任は、岡山県では同一法人かつ同一事業所の場合のみ可とされ、同一営業所でも別法人なら兼任できないとされています(審査要領 PDF p.21)。法人を分けた過去の判断が、そのまま壁になります。
- 遠隔地居住・単身赴任:距離の数値基準は一次資料にありません。岡山県は「聞き取りを行った上で常識上通勤不可能」と判断された場合に専任を否定する運用です(審査要領 PDF p.21)。様式は単身赴任(住民票住所と居所の相違)を想定して居所の併記を求めており(手引 PDF p.61-62 ほか)、隠さずに書くことが正解です。別論点として、営業所技術者を隣接県を超える遠方の現場に配置すると、原則として「遠方に配置された」と判断されます(手引 PDF p.182)。
- 出向(在籍出向):出向契約(辞令)+出向先での出勤簿の2点で常勤性が確認されます(審査要領 PDF p.14)。ただし、在籍出向社員は主任技術者・監理技術者として現場に配置できないため、その業種の請負契約が事実上できなくなるおそれがあります(手引 PDF p.182)。現場に出せる技術者を別に確保する設計が必須です。
- 非常勤役員・無報酬:経験年数に非常勤の期間は含まれません(手引 PDF p.57)。営業所技術者が役員を退任する場合は常勤の職員として残ることが必要で、非常勤職員になるなら技術者の変更届とセットです(審査要領 PDF p.33)。無報酬は原則不可、審査要領は報酬額の下限を定めています(具体額は面談でご案内します/審査要領 PDF p.12)。
- 個人事業との兼業:個人事業主本人が経管・営業所技術者になる場合、雇用保険・社会保険関係の書類は不要です(手引 PDF p.18)。法人成りでは社会保険の加入日を事業承継日とする必要があり、前後にずれると常勤性が失われて許可取消しの対象になります(審査要領 PDF p.36)。
そして共通しているのは、常勤性は「その1社に常時勤務している実態」で判断され、社会保険・賃金台帳・出勤簿という記録で確認されるという点です。判断がつかなければ面談や立入検査も行われます(審査要領 PDF p.12)。岡山県は事前審査を一切行いません(手引 PDF p.16)。だからこそ、境界事例は書類を集める前に構成を決めることが結果的にいちばん早い進め方になります。
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