

「事務所を借りていない。自宅の一室でやっている。それでも建設業許可は取れるのか」——一人親方や個人事業主、設立したばかりの会社が、いちばん最初に突き当たりやすい論点です。
結論から言えば、自宅であることそれ自体を理由に建設業許可が取れなくなるわけではありません。 岡山県は「住居と建設業の営業所を兼ねている場合」の判定基準を審査要領のなかに正面から置いており(審査要領 PDF p.5)、兼用そのものを禁じてはいないからです。
ただし、通る形と通らない形の差ははっきりしています。判定の軸は3つです。
- 居住のスペースと営業のスペースが明確に区分されているか(審査要領 PDF p.5)
- 建物を営業に使う権原があるか——賃貸なら契約書または賃貸人の同意書で営業利用が認められていること。公営住宅は認められません(審査要領 PDF p.4)
- 見積り・契約という実態的な業務を常時行う場所として、看板・机・電話・什器が備わっているか(手引 PDF p.6、審査要領 PDF p.5、手引 PDF p.17)
そして、岡山県で特に重いのが確認の方法です。岡山県では、申請受付後に所轄の県民局が現地に来て営業所調査を行います(手引 PDF p.16-17)。写真を添えて済ませる審査ではなく、看板・机・電話・ファクシミリ・賃貸借契約書の原本を、その場で見られる審査です。しかも「いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません」と明記されています(手引 PDF p.17)。
本記事では、岡山県で建設業に特化する行政書士が、自宅兼事務所を軸に「営業所として認められる形」を、手引と審査要領の記述だけで組み立てます。6つの許可要件の全体像は建設業許可の6つの要件|自社が取れるか診断にまとめています。
※ 営業所として認められるかどうかは、建物の構造・使用権原・実際の業務の行われ方という個別の実態によって判断が分かれます。本記事は岡山県知事許可・一般建設業を前提とした一般的な整理であり、特定の物件について結論を保証するものではありません。最終判断は有資格者(行政書士)にご確認ください。
1. まず前提:建設業法上の「営業所」とは何を指すのか
「営業所」という言葉は日常語と法律用語でずれています。ここを取り違えたまま物件を決めてしまうと、後戻りに費用がかかります。最初に定義を確認します。
1-1. 定義——「常設の事務所」で「見積り・契約等の実態的な業務を常時行っている場所」
岡山県の手引は、営業所を次のように定義しています(手引 PDF p.6)。
「営業所とは 本社、本店、支店等名称のいかんを問わず、建設業を営むための常設の事務所をいい、看板の表示等、外観上営業所としての形態を備えていることはもちろんのこと、見積り・契約等の実態的な業務を常時行っている場所を指します。したがって、現場作業所や連絡事務所、通常は居住の用に供しているものなどは、営業所とはみなされません。
ただし、少額の工事についての営業しか行わない事務所も営業所には含まれます。」
この定義から、実務上の要点が3つ読み取れます。
要点①:名称は関係ない。 「本社」「支店」といった呼び名ではなく、実態で判断されます。自宅の一室に「◯◯建設 事務所」という名前を付けていなくても、建設業を営むための常設の事務所として機能していれば営業所です。逆に、名刺に「本社」と刷ってあっても、契約行為を行っていない場所は営業所になりません。
要点②:判定要素は「外観」と「業務の実態」の両方。 看板等で外から営業所と分かること(外観)と、見積り・契約等を常時行っていること(実態)の両方が求められます。片方だけでは足りない、という構造です。
要点③:「通常は居住の用に供しているもの」は営業所とみなされない。 ここが自宅兼事務所を考えるときの出発点です。ただしこの一文は、「自宅の建物は一切ダメ」という意味ではありません。後述のとおり、岡山県は審査要領のなかで「住居と建設業の営業所を兼ねている場合」の基準を別に置いており(審査要領 PDF p.5)、居住の用に供している”その空間”をそのまま営業所と呼ぶことはできない、という読み方になります。区分の話は3章で詳しく扱います。
なお、少額の工事しか扱わない事務所も営業所に含まれるという一文にも注意が必要です。「うちは小さい工事しかしていないから営業所ではない」という整理は、この定義では通りません。
1-2. 営業所の所在地が、知事許可か大臣許可かを決める
営業所は「要件」であると同時に、どこに申請するかを決める基準でもあります。手引は次のように整理しています(手引 PDF p.6)。
- 同一の都道府県内にのみ営業所を設けて建設業を営む場合 → 都道府県知事許可
- 複数の都道府県に営業所を設けて建設業を営む場合 → 国土交通大臣許可
したがって、岡山県内のみに営業所を設ける場合は岡山県知事許可、岡山県内に主たる営業所を置き他の都道府県にも営業所を置く場合は国土交通大臣許可になります。国土交通大臣許可の許可申請書等は、直接、中国地方整備局に提出することとされています(手引 PDF p.6)。
自宅を営業所にする多くのケースは、岡山県内の1か所のみ=岡山県知事許可です。本記事も岡山県知事許可を前提に書いています。
1-3. 営業所は「1か所とは限らない」——ただし本記事は主たる営業所に限定します
建設業法上、建設業を営む全ての営業所に、その業種の営業所技術者(旧:専任技術者)を専任で配置することが必要です(手引 PDF p.8)。つまり、営業所を増やすということは、そのぶん技術者を増やすということでもあります。
主たる営業所以外に営業所を置く場合には、別途の要件と書類が発生します。 本記事は自宅兼事務所を軸に「主たる営業所ひとつ」を前提として書きますので、従たる営業所の要件はここでは展開しません。複数拠点を検討している場合は、拠点構成を決める前にご相談ください。
なお、従たる営業所がない場合でも、申請書の別紙二(1)営業所一覧表は白紙で添付します(審査要領 PDF p.6。6-5で詳述)。
1-4. 許可要件の全体像と、本記事が扱う「営業所」の位置づけ
建設業許可の要件は、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力(常勤役員等と適切な社会保険)、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎、欠格要件に該当しないこと——という柱で構成されています(手引 PDF p.7-10)。
営業所は、この柱のなかに単独の項目として並んでいるわけではありません。 営業所は、①営業所技術者等を専任で配置する単位であり(手引 PDF p.8)、②知事許可か大臣許可かを決める基準でもあります(手引 PDF p.6)。そのうえで岡山県は、審査要領で営業所としての実体的要件を別に定め、県民局の営業所調査でその充足を確認しています(審査要領 PDF p.4-5、手引 PDF p.17)。本記事が扱うのは、この「営業所という場所そのものの要件」だけです。 要件の全体像は HUB-A に委譲します。
- 6要件の全体像 → 建設業許可の6つの要件|自社が取れるか診断
- 営業所技術者を確保できないとき → 営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?確保の方法
- 常勤性・通勤可能性・他社役員との兼務の境界 → 他社役員との兼務・遠隔地居住でも常勤と認められる?
- 社会保険の加入要件 → 建設業許可に社会保険の加入は必須?
- 財産的基礎の残高証明の段取り → 建設業許可の残高証明書はいつ・いくら必要?
2. 岡山県が定める営業所の実体的要件——ア〜オの5項目
ここからが本記事の中心です。岡山県は審査要領のなかで、営業所としての実体があると認められるための要件を5項目(ア〜オ)にわたって具体的に列挙しています(審査要領 PDF p.4-5)。手引の定義(1-1)は総論、この5項目が実際の判定基準です。
前置きとして重要な一文があります。
「営業所としての実体があると認められるためには、次の要件を全て具備することが必要である(テレワークで無人の状態が多い営業所であっても同様とする。)。」(審査要領 PDF p.4)
「全て具備」であり、どれか1つで代替できるものではありません。 そして「テレワークで無人でも同様」と明示されている点も押さえてください。近年の働き方に合わせて基準が緩むという書きぶりにはなっていません。
2-1. ア|営業所としての建物が存すること
「ア 常時契約行為を締結するために必要な営業所としての建物が存すること。」(審査要領 PDF p.4)
この「ア」には、実務に直結する注記が3つ付いています。
注1|公営住宅は営業所として認められない
「公営住宅については、公営住宅法第27条第3項及び岡山県営住宅条例第27条等の規定により、住宅以外の用途に使用することができないため、営業所としては認めない。」(審査要領 PDF p.4)
これは可否がはっきりしている数少ない類型です。県営住宅・市営住宅等の公営住宅にお住まいで、そこを営業所にする前提で計画を立てている場合は、計画そのものを組み直す必要があります。建設業許可の側の運用ではなく、住宅側の法令・条例が用途を制限しているためです。
注2|民間の賃貸マンション等は「営業を認めている」ことの確認が要る
「民間の賃貸マンション等については、契約書又は賃貸人の同意書等により、同所で営業を行うことを認めていることが確認できること。
許可後は、公衆の見やすい場所に建設業の許可票を掲示することができること。」(審査要領 PDF p.4)
賃貸物件を営業所にする場合、必要なのは2つです。①営業利用の可否(契約書に書いてあるか、書いていなければ賃貸人の同意書等を取れるか)と、②許可票を掲示できるか(4章で詳述)。居住専用の条項が入ったままの賃貸借契約書では、①で止まります。
手引の側も、営業所調査の確認事項として同じ点を挙げています。
「賃貸借契約を締結している場合には、契約書上で営業活動に利用することが認められていることが必要です(営業所変更の場合も確認は必要となります。)。」(手引 PDF p.17)
注3|建築確認・農地転用等の他法令手続は「審査の前提としない」——ただし後が怖い
「営業所の建物について、建築確認申請や農地転用申請等、他法令に基づく許認可手続きが完了しているかどうかについては、建設業許可の審査の前提とはしない。ただし、許可後に営業所建物が他法令に違反する建築物であり、監督行政庁から行政処分を受けた場合等には、許可を取消しすることがある。」(審査要領 PDF p.4)
ここは読み方を間違えやすい箇所です。「他法令の手続が終わっていなくても建設業許可の審査は進む」——これは事実です。しかし後段が重く、許可を取った後に建物側で行政処分を受けると、建設業許可が取り消されることがあるとされています。「建設業許可の審査では見られないから大丈夫」という理解は、この一文の前半だけを読んだ結果です。プレハブ・倉庫の一部・農地上の建物などを営業所にする計画では、建物側の適法性も別途ご確認ください。
2-2. イ|同一の営業所に複数の建設業者が存在しないこと
「イ 同一の営業所において複数の建設業者が存在しないこと。
ただし、例外として、一つの建物の内部が壁により別室として完全に仕切られており、人的にも設備的にも別の事業者であることが明確になっているものと認められる場合は、同一の建物内でも差し支えない。」(審査要領 PDF p.4)
自宅を営業所にするケースで、これが効くのは次の場面です。
- 親族が同じ住所で建設業を営んでいる(父の会社と息子の会社が同じ実家に登記されている等)
- 兄弟でそれぞれ会社を持ち、実家の同じ部屋を事務所として使っている
- 知人の会社の事務所の一角を間借りしている
原則は「同一の営業所に複数の建設業者は存在できない」です。例外が認められるのは、①壁により別室として完全に仕切られていること、②人的にも設備的にも別の事業者であることが明確であること——この2つを満たす場合とされています。カーテンやパーティションで区切っただけ、机が同じ部屋に2つ並んでいるだけ、電話やコピー機を共用している、といった状態は「完全に仕切られ」「設備的にも別」とは読みにくい構成です。
事業承継の場面で、この論点は静かに効いてきます。 個人事業主だった先代の事務所をそのまま使いながら、新会社を同じ住所で立ち上げる——という設計は、承継の形(廃業+新規申請か、事業承継の認可か)によって扱いが変わります。個人と法人のどちらで進めるかは個人事業主の建設業許可|個人で取る?法人化してから取る?、法人成りの引き継ぎは法人成りで建設業許可は引き継げる?に整理しています。
2-3. ウ|住居と兼ねる場合はスペースが明確に区分されていること(★自宅兼事務所の核心)
本記事のいちばん重要な一文です。
「ウ 住居と建設業の営業所を兼ねている場合は、居住用のスペースと建設業の営業に使用するスペースが明確に区分されていること(出入口についても別であることが望ましい。ただし、居住専用のスペースを通ることなく営業所に行ける場合は、出入口の区分が明確にされていなくても、申請書を受理する。)。」(審査要領 PDF p.5)
この一文から読み取れることを、順に押さえます。
①「住居と兼ねる」ことは想定されている。 岡山県は自宅兼事務所という形態を前提に基準を書いています。手引の「通常は居住の用に供しているものなどは、営業所とはみなされません」(手引 PDF p.6)や「営業所は居住部分と共用することはできません」(手引 PDF p.17)と合わせて読むと、禁じられているのは「居住空間との共用」であって、「同じ建物であること」ではない、という整理になります。
②求められるのは「明確な区分」。 居住用のスペースと営業用のスペースが、どこからどこまでか分かる形で分かれている必要があります。リビングのテーブルで見積りを作っている、という状態は「区分されている」とは言いにくい構成です。
③出入口は「別であることが望ましい」——必須ではない。 ここが実務上いちばん助かる部分です。玄関が1つしかない一般的な戸建てでも、直ちに不可とはされていません。
④受理の分かれ目は「動線」。 出入口の区分が明確でなくても、居住専用のスペースを通ることなく営業所に行ける場合は申請書を受理する、とされています。つまり見られているのは扉の数ではなく、来客が居住空間を通らずに事務所スペースへ到達できるかという動線です。玄関を入ってすぐ右手の部屋を事務所にしている、玄関ホールから直接その部屋に入れる——という間取りは、この条件に近い形です。逆に、リビングや寝室を横切らないと辿り着けない奥の部屋を事務所にする設計は、この文言に照らして説明が難しくなります。
⑤ただし「受理する」は「許可される」ではありません。 この一文は申請書の受理についての取扱いです。営業所の実体があるかどうかは、他の項目(ア・イ・エ・オ)と合わせて、県民局の営業所調査で確認されます。個別の建物ごとに判断が分かれる部分ですので、間取りが微妙な場合は事前にご相談ください。
2-4. エ|什器・備品——「帳簿を保存」「営業所技術者等が常駐」から逆算される
「エ 常時契約を締結する場所であること、建設業法第40条の3で定める帳簿(契約書を含む。)を保存していること及び営業所技術者等が常駐すること等を踏まえ、そのために必要な程度の什器、備品を備えていること。」(審査要領 PDF p.5)
この項目は「机を1つ置けばよい」という趣旨ではありません。3つの機能から逆算して什器・備品を判断するという書き方になっています。
| 求められる機能 | 逆算される備品の例 |
|---|---|
| 常時契約を締結する場所であること | 打合せ・押印・書類作成ができる机と椅子 |
| 建設業法第40条の3で定める帳簿(契約書を含む)を保存していること | 契約書・帳簿を保管できる書庫、鍵のかかるキャビネット等 |
| 営業所技術者等が常駐すること | 常駐する人が執務できる什器・通信手段 |
とくに見落とされやすいのが帳簿・契約書の保存場所です。営業所調査は「営業所の所在確認のために必要なもの」として看板・机・電話・ファクシミリ・賃貸借契約書原本を挙げていますが(手引 PDF p.17)、審査要領の「エ」は保存機能まで求めています。自宅の一室を営業所にするなら、契約書を綴じて置いておける棚まで含めて用意しておくのが、この文言に沿った準備です。
なお、建設業法第40条の3等に違反する行為は、監督処分の基準上、指示処分の対象として例示されています(手引 PDF p.203)。帳簿の保存は許可後も続く義務です。
「営業所技術者等が常駐すること」については、手引が「専任」の意味を定義しています。
「※専任とは その営業所に常勤して専らその職務に従事することをいいます。」(手引 PDF p.8)
つまり「エ」が求めているのは、その人がその場所で日常的に執務できる状態です。什器・備品は、その状態を成り立たせるためのものとして見られます。なお、遠隔地からの通勤・他社役員との兼務・他法令で専任を要する資格との兼任といった常勤性の境界事例は、本記事の担当ではありません。 詳しくは他社役員との兼務・遠隔地居住でも常勤と認められる?をご覧ください。
2-5. オ|電話回線——ここが自宅事務所で最も引っかかる
審査要領は、連絡先とする電話回線について、他の項目より詳細な運用を書いています(審査要領 PDF p.5)。
- 申請者(法人の場合は契約が法人名義であること)が契約者となっている携帯電話は、建設業許可における連絡先として認める
- ペーパーカンパニーを排除するため、一つの電話回線(FAXを含む)について、複数の業者で共有することは認めない
- 他者名義の電話回線を借用することも認めない
- 転送電話は、テレワークによる業務に使用する場合を除き、認めない
- 電話代行、秘書サービス等の利用も認めない
- 留守番電話は問題ないが、返答の連絡がない場合には、郵送による連絡や立入検査により、営業所の実態について確認を行う
自宅を営業所にする方にとって、ここは朗報と警告が同居しています。
朗報:固定電話を引かなくても、申請者名義の携帯電話でよい。 「事務所には固定電話が要る」と思い込んで固定回線の工事見積りを取る、という誤解が生じやすい箇所です。法人の場合は法人名義であることが条件です。個人名義の携帯を法人の連絡先にする構成は、この文言に沿いません。
警告①:家族や別会社と1つの番号を共有できない。 「一つの電話回線(FAXを含む)について、複数の業者で共有することは認めない」とされています。親族の会社と同じ番号を使っている、実家の固定電話を2社で使っている——という状態は、この文言に当たります。FAX番号も対象である点に注意してください。
警告②:他者名義の番号を借りられない。 家族名義の固定電話をそのまま申請書に書く、という形は「他者名義の電話回線を借用」に当たります。個人事業主本人の名義であれば申請者名義ですが、配偶者名義・親名義のままでは異なります。
警告③:電話代行・秘書サービス・テレワーク以外の転送電話では要件を満たせない。 「電話代行、秘書サービス等の利用も認めない」「転送電話は、テレワークによる業務に使用する場合を除き、認めない」と明示されています。住所と電話番号だけを借りるサービスで営業所要件を満たそうという設計は成立しません。そもそも「営業所としての建物が存すること」(ア)と「什器・備品」(エ)が別に求められています。
警告④:留守番電話は可。ただし折り返さないと立入検査に発展し得る。 「留守番電話は問題ない」とされている一方、返答の連絡がない場合には郵送による連絡や立入検査により営業所の実態について確認を行う、と書かれています。現場に出ていて電話に出られない一人親方の事業形態そのものは否定されていませんが、折り返しの連絡を欠かさない運用にしてください。
3. 自宅兼事務所で実際に詰まる6つのポイント
2章の要件を、自宅を営業所にする場面に当てはめます。詰まりやすい論点から順に並べます。
3-1. 公営住宅に住んでいる
これは最初に確認すべき項目です。 前述のとおり、公営住宅は住宅以外の用途に使用することができないため、営業所として認められません(審査要領 PDF p.4)。県営・市営等の公営住宅にお住まいの場合、営業所は別に確保する必要があります。
判断の起点は「今住んでいる住宅が公営住宅に当たるか」です。ここが該当する場合、事務所を借りる/親族の持ち家の一部を営業所にする/別の物件へ移るといった選択肢の比較になり、必要な期間も費用も変わります。計画の初期段階で確認してください。
3-2. 賃貸物件だが、契約書に営業利用の記載がない
賃貸マンション・アパート・借家を営業所にする場合、契約書または賃貸人の同意書等により、同所で営業を行うことを認めていることが確認できる必要があります(審査要領 PDF p.4)。営業所調査でも、営業所の賃貸借契約書(原本)が確認対象として明記されています(手引 PDF p.17)。
住宅用の賃貸借契約書は、使用目的が「居住用」に限定されていることが一般的です。この場合の打ち手は、賃貸人(オーナー・管理会社)から営業利用についての同意書等を取得することになります。同意書の取得は相手方の判断次第であり、こちらの都合だけで期間が読めない工程です。申請時期から逆算して早めに動く必要があります。
あわせて、許可後に公衆の見やすい場所へ許可票を掲示できるかも条件に含まれています(審査要領 PDF p.4)。集合住宅で共用部への掲示が管理規約で制限されている場合、この点も同意の対象として相談しておくと、後で困りません。
3-3. 間取り上、事務所スペースまでリビング等を通る
審査要領の「ウ」は、居住専用のスペースを通ることなく営業所に行ける場合は、出入口の区分が明確にされていなくても申請書を受理するとしています(審査要領 PDF p.5)。裏を返せば、居住専用スペースを通らないと事務所に行けない間取りは、この文言の枠外です。
現実的な打ち手は次のとおりです。
- 玄関ホールから直接入れる部屋(多くの戸建てで玄関脇にある洋室)を営業所に充てる
- 車庫・離れ・増築部分など、独立した出入口を持つ空間を営業所に充てる
- 事務所部分に外部からの出入口を確保する(工事を伴う場合はリードタイムを見込む)
「部屋の使い方を変えれば済む」場合と、「建物側の工事が要る」場合とでは、必要な期間がまったく違います。 ここは物件を見て判断する部分ですので、間取り図の段階でご相談いただくのが結果的にいちばん早くなります。
3-4. 同じ住所に、親族の建設業者がいる
原則として、同一の営業所において複数の建設業者が存在することは認められません(審査要領 PDF p.4)。例外は、壁により別室として完全に仕切られており、人的にも設備的にも別の事業者であることが明確な場合です。
実家を拠点に親子・兄弟がそれぞれ事業を営んでいる、という構成もあります。この場合に確認するのは、次の3点です。
- 2つの事業者の事務所スペースが、壁で別室として完全に仕切られているか
- 人的に別か(従業員・役員が重複していないか、経理や電話応対が同じ人になっていないか)
- 設備的に別か(電話回線・FAXが別か、什器・書庫が別か)
とくに3点目は、2-5で見た「一つの電話回線(FAXを含む)を複数の業者で共有することは認めない」と重なります。同じ住所・同じ番号のまま2社で許可を持つ設計は、この2つの規定に同時に当たります。
3-5. 電話が家族名義・1回線しかない
2-5のとおり、他者名義の電話回線の借用は認められません。個人事業主として申請する場合は本人名義、法人として申請する場合は法人名義の回線(携帯可)が必要です。
「実家の固定電話をそのまま連絡先にする」「代表者個人の携帯を法人の連絡先にする」という構成は、いずれも名義の点で沿いません。法人設立と同時に、法人名義の携帯回線を1本作るのが、最も手戻りの少ない進め方です。設立直後の会社が押さえるべき論点は設立したばかりの会社で建設業許可は取れる?新設法人の要件にまとめています。
3-6. 「常時業務を行っている場所」と言えるか
最後は、要件の表と裏です。営業所の定義は「見積り・契約等の実態的な業務を常時行っている場所」であり、「現場作業所や連絡事務所」は営業所とみなされません(手引 PDF p.6)。
一人親方・少人数の会社では、日中はほぼ全員が現場に出ています。これ自体が問題になるわけではありません(前述のとおり、留守番電話は認められています)。問われているのは、見積り・契約という営業行為が、その場所を拠点として行われているかです。
- 見積書・請求書をその場所で作成しているか
- 契約書・注文書・請書をその場所に保存しているか(審査要領 PDF p.5「エ」)
- 発注者・元請からの連絡先がその場所(その番号)になっているか
現場の詰所や資材置場を営業所として申請する構成は、「現場作業所」に当たる可能性が高くなります。 資材置場と事務所を分けて考えてください。
3-7. 自宅で行くか、借りるか——判断材料
以上を踏まえて、選択肢を並べます。費用だけでなく、要件を満たすまでに必要な期間で比べてください。
| 観点 | ①自宅の一室をそのまま営業所にする | ②自宅を改修・区分して営業所にする | ③外部に事務所を借りる |
|---|---|---|---|
| 前提条件 | 玄関等から居住専用スペースを通らずに行ける部屋がある(審査要領 PDF p.5) | 動線または区分が現状では説明しづらい | 公営住宅に居住/同居親族が建設業者/賃貸人の同意が得られない 等 |
| 使用権原の確認 | 持ち家なら追加手続は基本的に不要。賃貸なら契約書または賃貸人の同意書等(審査要領 PDF p.4) | 同左 | 新規契約時に営業利用可の条項を入れる(審査要領 PDF p.4) |
| 追加コスト | 看板・机・電話・什器・書庫の実費 | 上記+改修費用と工期 | 上記+賃料(許可を維持する限り継続)・敷金等 |
| 期間の読みやすさ | 読みやすい | 工期に左右され読みにくい | 物件探しと契約に左右される |
| 許可票の掲示 | 道路から見える位置に掲示できるか(手引 PDF p.194) | 同左 | 契約時に掲示可否を確認(審査要領 PDF p.4) |
| 主な注意点 | 電話の名義・共有(審査要領 PDF p.5) | 営業所調査の時点で区分・動線ができている必要がある(手引 PDF p.17) | 賃料が継続的な固定費になる |
優先順位としては、①→②→③の順に検討するのが、費用面でも期間面でも合理的です。③は要件を整えやすい一方、許可を維持し続ける限り賃料が発生するという不可逆性があります。②は要件を満たせる形にできますが、営業所調査は申請受付後、半月程度で所轄の県民局から実施の連絡が来ます(手引 PDF p.17)。調査の時点で区分・動線が要件を満たす形になっている必要がありますので、工期から逆算して申請時期を決めてください。 元請から期限を切られている案件では、ここがボトルネックになりやすい部分です。元請要求から逆算する進め方は元請から建設業許可を求められたらに整理しています。
4. 看板と許可票——「自宅に社名を出したくない」への答え
自宅を営業所にするとき、要件の次に迷いやすいのがこれです。「近所に知られたくない」「集合住宅なので看板は無理」——ここは申請時の看板と許可後の許可票(標識)を分けて考える必要があります。
4-1. 申請時:営業所調査で「看板(容易に確認できるもの)」が確認される
岡山県では、申請受付後に県民局が行う営業所調査で、看板(容易に確認できるもの)が確認対象に挙げられています(手引 PDF p.17)。調査で確認されるもの一式と、確認できない場合にどうなるかは5-3にまとめました。
「看板は無くてもよい」という運用ではありません。 手引の営業所の定義も「看板の表示等、外観上営業所としての形態を備えていることはもちろんのこと」と書いています(手引 PDF p.6)。
一方で、看板のサイズ・材質・設置場所についての定めは、手引・審査要領のいずれにも見当たりません。 要求されているのは「容易に確認できるもの」です。豪華な袖看板を作る必要がある、という趣旨には読めません。表札の隣に商号を掲げる形が「容易に確認できる」と言えるかは、個別の現地の状況によって判断が分かれる部分ですので、心配な場合は事前にご相談ください。
4-2. 許可後:標識(許可票)の掲示は法律上の義務
こちらは義務です。手引は「Ⅲ 許可取得後の注意事項」の冒頭に置いています。
「建設業の許可を受けたときは、店舗及び建設工事の現場(元請工事のみ)ごとに、標識を作成し、公衆の見やすい場所に掲示しておかなければなりません。標識の様式など詳細は……を参考に各自で作成してください。なお、色及び材質に規定はありません。」(手引 PDF p.21)
根拠は建設業法第40条です。手引の資料編は、掲示義務の中身をさらに具体化しています(手引 PDF p.194)。
★「公衆の見やすい場所」の意味が、実務上いちばん重要です。
「① 公衆の見やすい場所とは
事務所内への掲出ではなく、事務所が面する道路等、第三者の視点からでも許可票の記載内容が容易に確認できる必要があると解されます。」(手引 PDF p.194)
つまり、部屋の中に貼っておく形では足りないと解されています。自宅を営業所にする場合、道路から許可票の記載内容が読める位置に掲示することが前提になります。「近所に知られたくないので室内に貼る」という運用は、この解釈に沿いません。自宅を営業所にすると決める前に、この点を家族と共有しておいてください。 集合住宅の場合は、掲示できる場所があるかを賃貸人・管理組合と相談する必要があります(審査要領 PDF p.4 でも許可後の掲示可否が条件として挙げられています)。
なお、工事現場への掲示は、発注者から当該建設工事を直接請け負った者(元請)に限り必要とされています(手引 PDF p.194)。下請として入る現場に、自社の許可票を掲げる義務はありません。
許可票そのものについては、表示事項及びサイズは規定されているが材質等については特に規定はないとされ、「降雨等で判読できなくならないように作成すれば構いません」「許可を受けた者が自身で作成するもので、特に県から交付しているものではなく、特定の業者を斡旋することもありません」と書かれています(手引 PDF p.194)。県から送られてくるものではない、という点を誤解しないでください。
4-3. デジタルサイネージによる掲示も可能
令和4年1月から、標識の掲示は書面ではなくデジタルサイネージ等ICT機器を活用した掲示も、次の①〜③の要件を満たす場合には活用できることとなりました(手引 PDF p.195)。
- 公衆が必要な時に標識を確認できるものであること
- 当該デジタルサイネージ等において標識を確認することができる旨の表示が常時分かりやすい形でなされていること(画面の内外は問わない)
- 施工時間内のみならず施工時間外においても公衆が標識を確認することができるよう、人感センサーや画面に触れること等により画面表示ができるものであること
住宅地の工事現場について、周辺環境への配慮から施工時間外に一定時間の消灯が必要な場合には、デジタルサイネージ等の周囲にインターネット上で標識の閲覧が可能である旨を掲示することを条件に、施工時間外はインターネット上で標識を閲覧する措置を講じることができる、とされています(手引 PDF p.195)。
4-4. 誤認されるような表示は禁止されている
許可を受けていない者が、許可を受けていると誤認されるおそれのある表示をしてはならないとされています(建設業法第40条の2/手引 PDF p.194)。手引が挙げているのは次の3類型です。
- 建設業の許可を全く受けていない者が、一般建設業又は特定建設業の許可を受けているように表示すること
- 一般建設業の許可のみを受けている者が、特定建設業の許可を受けているように表示すること
- 一般又は特定建設業の許可を受けている者が、その許可建設業以外の業種の建設業について許可を受けているように表示すること
看板やホームページに「建設業許可申請中」といった表示を出す場合は、この規定に触れない書き方かどうかを確認してください。
5. 営業所の写真は必要か——岡山県の確認は「実地の営業所調査」
「営業所の写真を撮って添付するのですか」という疑問が生じやすい箇所ですが、ここは岡山県の運用として、はっきり整理できます。
5-1. 手引・審査要領には、写真の添付を求める定めが置かれていません
本記事が根拠としている岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)と「審査要領」(令和7年9月1日)には、建設業許可の申請書に営業所の写真を添付するよう求める定めは置かれていません。 手引のなかで「写真」が出てくるのは、工事の内容や施工体制の詳細が分かる資料としての現場写真の文脈です(手引 PDF p.50、PDF p.162)。営業所の写真ではありません。
5-2. 代わりに行われるのが、県民局による実地の営業所調査
岡山県では、確認は現地で行われます。
「営業所調査については、許可申請受付後、半月程度で所轄の県民局から実施の連絡を行います。調査においては、許可要件確認のため必要な書類の提出等を求めますので、担当者の指示に従ってください。」(手引 PDF p.17)
つまり、写真を用意して済ませる審査ではなく、来てもらって見せる審査です。ここが岡山県の運用の特徴であり、自宅兼事務所を検討する方が最も準備を要する部分でもあります。
なお、上の引用にあるとおり、調査では「許可要件確認のため必要な書類の提出等を求め」られ、「担当者の指示に従ってください」とされています。個別の事案で写真等の提出を求められる可能性まで否定されているわけではありません。 定型の添付書類として写真が求められているわけではない、というのが正確な理解です。
5-3. 営業所調査までに揃えておくもの
新規申請の場合の調査確認事項として手引が挙げているもののうち、営業所の所在確認に関するものは次のとおりです(手引 PDF p.17)。
| 確認されるもの | 準備のポイント |
|---|---|
| 看板(容易に確認できるもの) | 調査日までに設置しておく。サイズ・材質の定めは手引・審査要領には見当たらない |
| 机 | 契約・見積りの事務ができる什器(審査要領 PDF p.5「エ」の什器・備品と対応) |
| 電話 | 申請書に記載した番号と一致していること。名義に注意(審査要領 PDF p.5「オ」) |
| ファクシミリ | 手引 PDF p.17 に明記。回線の共有不可(審査要領 PDF p.5「オ」) |
| 営業所の賃貸借契約書(原本) | 原本。契約書上で営業活動に利用することが認められていること(手引 PDF p.17) |
そして繰り返しになりますが、「※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません」(手引 PDF p.17)。
営業所調査では、このほか常勤役員等の経営経験を確認する書類、営業所技術者等の資格等を確認する書類、常勤性を確認する書類、財務内容の確認のための書類も確認されます(手引 PDF p.17-19)。「その他確認すべき事項のために必要と認めた書類(個別に指示します。)」という項目も置かれています(手引 PDF p.19)。
当事務所のご依頼者について:営業所調査の準備確認と当日の同席は、当事務所の報酬に含まれています。何を出しておくか、当日どこを見られるかを事前に整理したうえで、調査当日も同席します。自宅を営業所にするケースでは、間取りと動線の説明が必要になる場面があるため、ここを一緒に通せることの価値は小さくありません。
5-4. 営業所調査が早く終わっても、許可が早くなるわけではない
期待値の調整として、もう1点。
「営業所調査が終わったからといって本庁における調査が終わっているとは限りませんので、仮に営業所調査が申請受付後から間もなく実施されたとしても、許可が早く取得できるということはありません。」(手引 PDF p.16)
営業所調査は所轄の県民局、それとは別に本庁の土木部監理課でも所要の調査が行われ、全ての許可要件を充足していると認められると許可されます(手引 PDF p.16)。県民局の調査が終わった時点で「あとは通知を待つだけ」とは限りません。
6. 申請書に何と書くか——所在地・電話番号の記載でつまずかない
営業所が要件を満たしていても、申請書の書き方でつまずくと受付で止まります。審査要領は、営業所に関する記載についても具体的な指示を置いています。
6-1. 申請者欄の住所は「建設業に係る主たる営業所の所在地」
「申請者記入欄の住所は、建設業に係る主たる営業所の所在地を記載する。
登記上の本店が建設業の営業を行っていない場合は、建設業の営業を行っている事務所を記載する。」(審査要領 PDF p.3)
法人の場合、登記上の本店と実際の営業所が違うことがあります(設立時に自宅を本店として登記し、その後に事務所を借りた、あるいはその逆)。申請書に書くのは、建設業の営業を行っている事務所です。登記簿の住所を機械的に転記しないでください。
手引の側も、様式全般について同じ趣旨を書いています。
「【所在地の記載】各種様式で所在地を記入するものについては、建設業許可上の主たる営業所の所在地を記入してください。登記上の本店所在地であって建設業許可上の主たる営業所ではないものを記入する場合には、建設業許可上の主たる営業所の所在地も併記してください。」(手引 PDF p.26)
さらに、営業所の住所については次の運用があります。
「本店が建設業について指導監督を行わない場合は、申請書に記載する主たる営業所については、登記上の本店等ではなく、建設工事の請負契約を常時締結する事務所のうち主たる事務所を記載する。」(審査要領 PDF p.4)
6-2. マンション・アパートの号室の書き方
「例えば、岡山市北区内山下○-○-○旭川ビル305号が建設業法上の営業所の所在地の場合、申請書の『主たる営業所の所在地』(項番11)の記載については、番地までか、○-○-○-305のいずれかに記載とすること(その他の箇所の所在地の表記については、マンション名及び号室が記載されていても差し支えない。)。」(審査要領 PDF p.3-4)
集合住宅を営業所にする場合、項番11の欄には建物名を書かないという指定です。番地まで、または番地にハイフンで号室をつなぐ形になります。他の様式では建物名・号室が入っていても差し支えありません。この欄だけルールが違うという点を押さえてください。
6-3. 電話番号は「携帯可」。ただし法人は法人名義
「申請者名義(法人の申請の場合、当該法人名義に限る。)のものであれば、携帯電話の番号を連絡先として申請してもよい。」(審査要領 PDF p.3)
2-5で見たとおり、法人名義であることが条件です。共有・借用・転送・電話代行についての制限も2-5のとおりです(審査要領 PDF p.5)。
6-4. 兼業がある場合は「有」として内容を記載
「直近決算において兼業売上高が計上されている場合には『有』とし、その内容を記載する。」(審査要領 PDF p.3)
自宅で建設業以外の事業も営んでいる場合、この欄の記載が必要です。兼業のみの営業所は、健康保険等の加入状況の様式には記載しません(審査要領 PDF p.20)。
6-5. 従たる営業所がなくても、営業所一覧表は白紙で添付する
「ただし、従たる営業所を有しない場合は白紙の添付で可。(様式の添付自体は必須)」(審査要領 PDF p.6)
自宅1か所のみで申請する場合でも、別紙二(1)営業所一覧表は白紙で綴じます。「該当がないから外す」は不備になります。
必要書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧|新規・一般に整理しています。
7. 岡山県での手続き——提出先・営業所調査・費用と期間
営業所の要件が固まったら、手続きの流れに乗ります。岡山県固有の運用を、営業所の論点に関係する部分に絞って整理します。手続き全体の流れは建設業許可の6つの要件|自社が取れるか診断に委譲します。
7-1. 申請は本庁一元。県民局は申請窓口ではありません
「なお、建設業許可申請及び変更届の受付については出先機関ではなく、本庁の土木部監理課建設業班で行っています。」(手引 PDF p.168)
岡山県では、建設業許可の申請書・変更届は県民局では受け付けません。 提出先は岡山県土木部監理課建設業班(県庁)です(手引 PDF p.16)。県民局が担うのは営業所調査です(手引 PDF p.16-17)。この役割分担を取り違えると、書類を持って行った先で受け付けてもらえないという事態になります。
本記事は書面(窓口へのご持参・郵送)による申請を前提に整理しています。郵送の場合の送付先も同じとされています(手引 PDF p.16)。
7-2. 事前審査は一切行われない——ここが営業所要件では特に重い
「事前審査は一切行いません。 正本と副本を必要部数作成し、日付の記入、納付済証の貼付等の遺漏がないことを確認し、書類を完全に整えた上で提出(送付)してください。」(手引 PDF p.16)
「営業所として大丈夫か、窓口で相談しながら決める」という進め方はできません。営業所として成立する形を、申請前に確定させておく必要があります。
7-3. ★最大の落とし穴:営業所が要件を満たさない場合、補正書では直せない
これが、営業所要件を軽く見た場合にいちばん高くつくポイントです。
既に提出した申請や変更届に誤りがあった場合は「補正書による補正」を行うのが原則です(手引 PDF p.20)。ただし営業所が要件を満たさない場合、別の場所への変更は補正では処理されず、いったん取下げになります(審査要領 PDF p.31)。 補正不可の類型全体の並びは建設業許可の欠格要件とは|破産・前科があっても取れる?に整理しています。
補正が不可の場合は、申請又は届出を取下げし、再度申請又は届出を行うこととされています(審査要領 PDF p.31/手引 PDF p.20)。
つまり、営業所が要件を満たさないと判明して別の場所に変えるなら、その申請は取下げ=出し直しです。書類の作り直しと工程のやり直しが発生し、スケジュールは振り出しに戻ります。なお、取下げの場合に納付済みの法定手数料がどう扱われるかについては、手引・審査要領のいずれにも定めが置かれていません。取扱いは個別にご確認ください。 役員の欠格要件と並んで、「補正では救えない類型」に営業所が入っているという事実は、営業所の設計を申請前に固めるべき最大の理由です。
なお、県民局等の調査の結果、許可要件を満たさないことが判明した事項について、その内容を変更することは認めないとされています(審査要領 PDF p.32)。「調査で指摘されてから直す」という進め方は想定されていません。
7-4. 費用——法定手数料と当事務所の報酬
新規許可申請の法定手数料は90,000円(更新・追加は50,000円)です。手数料の額は申請する業種の数とは関係ありません(手引 PDF p.14)。
納付方法にも岡山県固有の手順があります。
「【手数料の支払方法】許可申請手数料は岡山県手数料等(POS)納付連絡票をホームページから印刷し、収納専用窓口に持参して支払います。支払い後、納付済証を受け取り、許可申請書の正本非閲覧用の「(様式第1号の)別紙三」に納付済証を貼り付けた上で提出してください。」(手引 PDF p.14)
当事務所の報酬(税込・目安)は次のとおりです。
| 業務内容 | (A)行政書士報酬 | (B)法定手数料 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 建設業許可申請(個人・新規) | 110,000円 | 90,000円 | 200,000円 |
| 建設業許可申請(法人・新規) | 132,000円 | 90,000円 | 222,000円 |
| 建設業許可申請(個人・更新) | 66,000円 | 50,000円 | 116,000円 |
| 建設業許可申請(法人・更新) | 66,000円 | 50,000円 | 116,000円 |
| 変更届(役員・その他) | 22,000円 | ― | 22,000円 |
- 法定手数料90,000円はご依頼者のご負担ですが、納付は当事務所が代行します(POS納付連絡票の印刷から収納窓口での納付、納付済証の貼付まで)。
- 証明書等の取得実費は当事務所が立て替え、精算します。
- 申請手続そのものを委託し、行政書士の責任において代理申請を行うことができます(手引 PDF p.19)。当事務所は代理申請までお受けします。
- 営業所調査の準備確認と当日の同席は報酬に含まれます。
- 営業所の所在地変更に伴う変更届など、上表に無い手続きの区分・金額は個別に事前にお見積りします。
- 金額は税込の目安です。案件内容により変動します。変更届の提出に法定手数料は不要です(手引 PDF p.22)。
自宅を営業所にする場合、これに加えて看板・机・電話・什器・書庫の実費が発生します。事務所を借りる場合は、さらに賃料が許可を維持する限り継続的にかかる固定費として乗ります。費用全体の内訳は建設業許可の費用はいくら?岡山県知事許可の総額目安に整理しています。
7-5. 期間——申請から許可まで概ね2か月。逆算はその手前から
「申請が受け付けられてから許可になるまでは、様々な調査やデータ処理を必要としますので、特に問題がないケースで概ね2か月程度かかります。」(手引 PDF p.16)
営業所の論点で逆算すべきなのは、この2か月の手前です。
| 工程 | 内容 | 期間の読みやすさ |
|---|---|---|
| ① 営業所の適否判断 | 間取り・動線・使用権原・電話名義の確認 | 物件を見れば判断できる |
| ② 使用権原の確保 | 賃貸人の同意書等の取得(賃貸の場合) | 相手方次第で読みにくい |
| ③ 物理的な準備 | 看板の作成・設置、机・書庫・電話回線の手配 | 数日〜数週間 |
| ④ 改修(必要な場合) | 出入口の確保、間仕切り等 | 工期に左右され読みにくい |
| ⑤ 申請書類の作成・提出 | 本庁へ持参または郵送(手引 PDF p.16) | ― |
| ⑥ 営業所調査 | 受付後半月程度で所轄の県民局から連絡(手引 PDF p.17) | ― |
| ⑦ 許可 | 特に問題がないケースで概ね2か月程度(手引 PDF p.16) | ― |
②と④が読みにくい工程です。 元請から期限を切られている場合は、この2つがボトルネックになります。所轄の県民局は主たる営業所の所在地で決まりますので、地域別の流れは岡山市で建設業許可を取るには、倉敷市で建設業許可を取るにはもあわせてご覧ください。
7-6. 書類の返却と部数
許可申請の場合は6部とも預かり、許可になったら許可通知書とともに副本2部を返却されます。変更届の場合は、営業所調査が必要な変更事項があれば6部とも預かり、調査完了後に副本2部を返却、営業所調査が不要な変更事項であれば受付後直ちに副本2部を返却、という扱いです(手引 PDF p.26)。営業所に関わる変更は、副本が手元に戻るまで時間がかかる類型だと理解しておいてください。
許可されると、許可通知書及び申請書副本が郵送されます。再発行はできませんので、大切に保存してください(手引 PDF p.19)。
8. 営業所が動くとき——引っ越し・法人成り・所在地変更の実務
営業所の論点は、許可を取った時点で終わりません。自宅を営業所にした会社ほど、その後に営業所が動く——事務所を借りる、実家から移る、法人成りする——という展開が起きやすいためです。ここを落とすと、せっかく取った許可の維持に傷がつきます。
8-1. 所在地の変更届は30日以内
営業所の所在地が変わったら、変更届が必要です。手引の「変更届出事項及び提出書類等一覧表」および変更届出書の記載例では、商号(法人)・名称(個人)・営業所の所在地等・従たる営業所の名称の提出期限は30日以内と示されています(手引 PDF p.30、PDF p.170)。
手引は、期限を守らなかった場合の効果も明記しています。
「期限内の提出を怠っている場合には許可の更新・追加申請等はできません。 また、監督処分や罰則の対象にもなります。」(手引 PDF p.22)
なお、届出書の提出日が法定の提出期限の2倍を超えて遅延した場合には、業務改善報告書の提出を受ける取扱いが定められています(審査要領 PDF p.36)。制度としてそういう仕組みがあるという位置づけでご理解ください。
8-2. 変更年月日は「登記の日」ではなく「営業所機能を移転した日」
ここは間違いが起きやすい箇所です。
「役員の異動、資本金の増額等、登記事項に係る変更の届出を行う場合には、変更年月日は登記年月日ではなく、役員の就任日等当該事項に関する変更の年月日を記載する。
なお、所在地変更についても原則として同様とするが、登記上の変更日と建設業の営業所機能の移転日が異なる場合は、実際に営業所機能を移転した日を記入する。」(審査要領 PDF p.31)
登記の日付をそのまま書くのではなく、実際に営業所として機能し始めた日を書きます。自宅から借りた事務所へ移る場合、登記の変更と実際の移転がずれることがあります。
8-3. ★電話番号の変更が終わってから変更届を出す
「また、所在地変更に伴って電話番号の変更がある場合、電話が営業所調査での確認事項となっていることから、電話番号の変更まで済んでから変更届を提出すること。」(審査要領 PDF p.31)
移転が決まった段階で急いで届出を出すと、順序を間違えます。 電話番号が変わるなら、番号の切替が済んでから提出する、という順番が指定されています。営業所調査で電話が確認事項になっているため、という理由まで書かれています。
8-4. 登記上の事務所でない営業所なら、登記事項証明書は不要
「(1)所在地の変更
営業所が登記上の事務所でない場合は、登記事項証明書の添付は不要とする。」(審査要領 PDF p.32)
自宅を営業所にしていて、登記上の本店は別(あるいはその逆)という会社では、この取扱いにより添付書類が1点減ります。
8-5. 法人成りすると、同じ場所でも営業所調査がやり直しになる
自宅を営業所にしている個人事業主が法人化する場合、場所が変わらなくても営業所調査が行われます。
「・法人成の場合、看板の変更や電話番号の法人名義への変更など確認が必要であるため、個人事業主時代の営業所をそのまま使う場合でも、承継日以降に営業所調査を実施する。なお、変更のない経管や営業所技術者等に関する要件調査は省略する。」(審査要領 PDF p.35)
確認されるのは、まさに本記事で扱ってきた2点です。 看板が法人名に変わっているか、電話が法人名義になっているか(審査要領 PDF p.5「オ」の「法人の申請の場合、当該法人名義に限る」と対応します)。同じ場所だから何もしなくてよい、とはなりません。
なお、個人から法人への切り替えに伴う許可そのものの扱い(新規申請か承継の認可申請か)は、本記事の担当ではありません。 法人成りで建設業許可は引き継げる?をご覧ください。
8-6. 申請の審査中に営業所が変わったら
審査中に所在地や役員等を変更した場合は速やかに連絡して変更届を出す必要があります(審査要領 PDF p.31)。 そして許可申請の審査は、変更届の審査が終わるまで保留になります(審査要領 PDF p.31-32)。審査中の変更の取扱い全体は建設業許可の欠格要件とはにまとめています。
審査中の引っ越しは、許可申請の審査を止めます。「2か月程度」の見込みが延びる要因になりますので、申請から許可までの間に移転が予定されている場合は、移転を済ませてから申請するか、少なくとも工程を事前に整理しておいてください。
9. 許可のその先——掲示の維持・休止・毎年の報告
営業所を整えて許可が下りた後にも、営業所に紐づく義務が続きます。ここまで押さえて、はじめて「取って終わりにしない」形になります。
9-1. 標識の掲示は「維持」まで含めて義務
「許可業者であっても、許可の有効期間が満了した後や、廃業の届出を行った後には、従前から掲示していた許可票の掲示をやめたり、記載事項を速やかに修正しなければなりませんので十分に注意してください。」(手引 PDF p.195)
許可番号の後ろには許可を受けた年度が表示されており、許可の有効期間は5年間、更新のたびにこの数字は切り替わります(手引 PDF p.194)。更新のたびに許可票の記載も更新する、という運用になります。自宅の玄関先に掲げた許可票を5年間放置しない、ということです。
9-2. 1年以上営業を休止すると取消処分の対象
取得後1年以内に営業を開始しない、または1年以上休止すると取消処分の対象です(手引 PDF p.23)。 「元請に言われたので取っておいたが、その後1年以上使っていない」という状態は、この規定に触れます。許可は取得してから維持するものです。取得の時期そのものをどう設計するかは設立したばかりの会社で建設業許可は取れる?新設法人の要件に整理しています。
9-3. 事業年度終了報告は毎年
「(2)事業年度終了報告(毎年、提出が必要) 決算日から4か月以内に、事業年度終了の変更届出書の提出が必要です。」(手引 PDF p.22)
これも「期限内の提出を怠っている場合には許可の更新・追加申請等はできません」(手引 PDF p.22)の対象です。自宅を営業所にして一人で回している事業者ほど、この期限管理が抜けます。
当事務所では、変更届・事業年度終了報告・更新の期限をまとめて管理する顧問契約(月額5,500円(税込)〜の3プラン)をご用意しています。
| プラン | 月額(税込) | 主な内容 |
|---|---|---|
| ライト | 5,500円 | 必要な業務の範囲に合わせてご案内します |
| スタンダード | 11,000円 | 必要な業務の範囲に合わせてご案内します |
| フル | 15,000円 | 事業年度終了報告+経審(経営状況分析・経営規模等評価/総合評定値請求)+入札参加資格更新(2年に1回)+月次相談・期限管理 |
期限管理(いつ何を出すかのご案内)は顧問の範囲、申請の代理実行はスポット報酬という切り分けです。
9-4. 公共工事を目指すなら、営業所は「入口」に過ぎない
許可を取った後、公共工事の入札に進む場合は経営事項審査(経審)と入札参加資格の申請が必要になります。経審は経審申請を岡山で依頼するなら、入札参加資格は入札参加資格をご覧ください。
自宅を営業所として許可を取った会社が、その後に人を増やし事務所を借りる——という流れになったとき、所在地の変更届と営業所調査が再び発生します(8章)。拠点の移転は、単なる引っ越しではなく許可の手続きを伴うイベントだと押さえておいてください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
「自宅を営業所にして建設業許可は取れるのか」という問いに対する答えは、「自宅だから取れない、ということはない。ただし、営業所としての形が要件を満たしているかで結論が変わる」です。
- 判定の本体は、岡山県審査要領の実体的要件ア〜オ(審査要領 PDF p.4-5)。①建物が存すること(公営住宅は不可/賃貸は営業利用の同意が必要/他法令の許認可は審査の前提としないが許可後の取消し事由になり得る)、②同一営業所に複数の建設業者がいないこと(壁で完全に仕切られ人的・設備的にも別なら例外)、③住居と兼ねるなら居住スペースと営業スペースが明確に区分されていること(出入口は別が望ましい/居住専用スペースを通らずに行けるなら受理)、④帳簿保存と技術者常駐から逆算した什器・備品、⑤電話回線(申請者名義の携帯可/回線・FAXの共有不可/他者名義の借用不可/転送電話・電話代行・秘書サービス不可/留守番電話は可)。5項目すべてを具備する必要があり、テレワークで無人でも同様とされています。
- 岡山県の確認は、写真ではなく実地の営業所調査です。申請受付後半月程度で所轄の県民局から連絡があり、看板(容易に確認できるもの)・机・電話・ファクシミリ・営業所の賃貸借契約書(原本)が確認されます。いずれも確認できるものがなければ許可を受けることができません(手引 PDF p.17)。
- 許可後は、道路等から記載内容が読める位置に許可票を掲示する必要があります。「事務所内への掲出ではなく、事務所が面する道路等、第三者の視点からでも容易に確認できる必要があると解されます」(手引 PDF p.194)。自宅を営業所にすると決める前に、ここを家族と共有しておいてください。
- 最も高くつく落とし穴は、「営業所が要件を満たさないので別の場所に変える」が補正書では直せないことです(審査要領 PDF p.31)。取下げ=出し直しとなり、書類の作り直しと工程のやり直しが発生します(納付済みの法定手数料の取扱いは手引・審査要領に定めがなく、個別のご確認が必要です)。しかも岡山県は事前審査を一切行いません(手引 PDF p.16)。営業所の設計は、申請書を作り始める前に固める——これが結論です。
- 許可後に営業所が動くときも手続きが伴います。 所在地の変更届は30日以内(手引 PDF p.30・p.170)、変更年月日は登記日ではなく実際に営業所機能を移転した日、電話番号の変更まで済ませてから届出(審査要領 PDF p.31)。法人成りでは、同じ場所を使う場合でも看板と電話名義の確認のため承継日以降に営業所調査が行われます(審査要領 PDF p.35)。
自宅で行くか、区分の工事をするか、事務所を借りるか——この判断は費用よりも「要件を満たすまでに必要な期間」で決まります。間取り図と賃貸借契約書があれば、当てるべき論点はその場で見えます。要件の全体像は建設業許可の6つの要件|自社が取れるか診断から確認できます。
自宅を営業所にできるかのご相談は無料相談から
「この間取りで営業所として認められるか」「賃貸の契約書に営業利用が書いていない」「公営住宅に住んでいる」など、営業所まわりの見立てを建設業特化の行政書士がご案内します。初回は方向性の見立てまで(30〜60分)、資料の精査・要件設計・工程表の作成は受任後にお引き受けします。無料相談は30秒入力のフォームから。お電話は070-8567-3197。
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