Column|建設業許可

常勤役員等を直接に補佐する者とは|経管を補佐者体制で満たす【岡山】

常勤役員等を直接に補佐する者とは|経管を補佐者体制で満たす【岡山】

建設業許可の相談で、いちばん多い行き止まりが経営業務の管理責任者(経管)です。そして、その行き止まりを抜ける道のうち、もっとも知られていないのが「補佐者体制」です。

結論から言います。

経管の要件は、1人で満たす必要がありません。「建設業に関する経営経験を持つ常勤役員等」と、「その人を直接に補佐する者」を組み合わせたチーム体制でも満たせます。建設業法施行規則第7条第1号に規定されたルートで、岡山県の手引にも要件がそのまま掲げられています(手引 PDF p.7)。

ただし、このルートにはイ(1)(1人で建設業5年)には無い、性格の違う条件が2つあります。

  1. 補佐する者の経験は「申請事業者における経験に限られる」(手引 PDF p.65)。つまり、よそで培った経験を持ち込めません。自社に5年以上いる人でなければ補佐者になれない、という強い縛りです。
  2. 申請の前に、岡山県土木部監理課建設業班への事前相談が求められます(手引 PDF p.7・p.63・p.65)。岡山県は「事前審査は一切行いません」と明記している行政庁ですが(手引 PDF p.16)、事前相談が求められるのはイ(2)(3)とロで(手引 PDF p.7)、そのうちロについては手引の3箇所で繰り返し求められています

この2つを知らずに「うちは経理も労務も長い人がいるから使えそうだ」と走り出すと、書類を作り込んだ後で組み替えになります。本記事では、岡山県で建設業に特化する行政書士が、ロ要件の条文の読み方・「直接に補佐する」の意味・3つの業務経験の組み方・様式第7号の2の構造・岡山県での進め方を、手引と審査要領の現物に沿って整理します。

はじめに、本記事の守備範囲を線引きしておきます。 経管が不在のときの打ち手全体——社内や身内に埋もれた経験の掘り起こし(イ(1)(2)(3))、外部から経営経験を持つ方を常勤役員として招へいする方法、そして本記事のロ(補佐者体制)という3ルートの比較——は、経営業務の管理責任者がいない場合はどうする?が扱います。本記事は、その3ルートのうち「補佐者体制」の1本だけを取り出し、体制の設計(誰を常勤役員等に据え、誰をその直属に置くか)と、証明資料の組み立て(様式第7号の2の四面構成・事前相談で何を決めるか)まで掘り下げる記事です。 どのルートで行くかがまだ決まっていない段階なら、先に上の記事で見取り図を取ってから戻っていただくほうが早く進みます。

※ 経管(常勤役員等)およびこれを直接に補佐する者の要件充足は、会社ごとの組織体系・在籍年数・書類の残り方という個別の実態によって判断が分かれます。本記事は岡山県知事許可・一般建設業を前提とした一般的な整理であり、特定の会社について結論を保証するものではありません。最終判断は有資格者(行政書士)または岡山県の担当窓口にご確認ください。

1. 補佐者体制(ロ要件)とは——「1人で5年」以外のもう一つの入口

1-1. 経管の要件は、許可要件6つのうちの1つ

まず位置づけを確認します。岡山県の手引は、一般建設業の許可要件の筆頭に「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を置き、これを満たすために次の①②が必要だとしています(手引 PDF p.7-8)。

  • 建設業に関し経営業務の管理経験等を有する常勤役員等を置くこと
  • 適切な社会保険に加入していること

このうち①が、いわゆる「経管」の要件です。本記事が扱うのは①のなかの「ロ」のルートです。②の社会保険については建設業許可に社会保険の加入は必須?に、許可要件全体の見取り図については建設業許可の6つの要件(取れるか診断)にまとめています。

なお、経管と並ぶもう1つの人的要件が営業所技術者(旧:専任技術者)です。こちらは経管とはまったく別の要件で、資格や実務経験で判定されます。混同されやすいので先に線を引いておきます。技術者側で詰まっている場合は営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?をご覧ください。

1-2. 「イ」と「ロ」は選択関係——どちらか一方を満たせばよい

手引は、①の常勤役員等について「『常勤役員等』のうち一人が、次の『イ』か『ロ』のいずれかに該当する者であることが必要です」と書いています(手引 PDF p.7)。

区分考え方中身
1人で完結する型(1) 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験/(2) 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として5年以上経営業務を管理した経験/(3) 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験
チームで満たす型(本記事)一定の役員等経験を持つ常勤役員等を置き、かつ、その者を直接に補佐する者(財務管理・労務管理・業務運営の業務経験をそれぞれ5年以上)を置くこと

イとロは、どちらか一方を満たせば足ります。 「イがだめだからロ」という順序で検討して構いません。

イの3類型(社内・身内に埋もれた経験の掘り起こしを含む)と、外部から常勤役員を招へいする方法まで含めた打ち手全般の比較——どのルートを選ぶか——は、導入でご案内した記事の担当です。本記事はルート選びには立ち入らず、ロを選んだ後の話——体制をどう設計し、5年の経験を何で証明するか——だけを深く見ます。経管そのものの基本要件・経験年数・証明方法は経営業務の管理責任者とは|要件・経験年数・証明方法が正典です。

1-3. ロ要件が効くのは、どういう会社か

ロ要件は「経営経験が足りない会社の救済措置」と説明されることがありますが、条文を読むとそうではありません。ロにも、建設業での役員等経験は必要です(詳細は2章)。ロが本当に効くのは、次のような会社です。

  • 他業種で長く会社を経営してきた方が、建設業に参入した(建設業での役員経験は数年だが、経営者としての経験は長い)
  • 他業種の会社が建設部門を立ち上げた(親会社・既存事業での役員経験が長い)
  • 代表者が事業承継で就任して間もないが、財務・労務・現場運営を長年支えてきた社員が社内にいる

逆に言えば、建設業での役員等経験がまったくゼロの会社では、ロも使えません。 ここは誤解が多いところで、後の2章で条文に即して確認します。

本記事の前提:以下、条文の引用はすべて岡山県「建設業許可の手引」(令和7年9月1日改訂)および「審査要領」(令和7年9月1日)の現物によります。ページ番号はPDF通しページです。

2. ロ要件を条文で分解する——2階建ての要件と、見落とされる「建設業で2年」

ロ要件は、上の階(常勤役員等)と下の階(直接に補佐する者)の2階建てでできています。どちらか片方だけでは成立しません。

2-1. 上の階|常勤役員等の側((1)か(2)のいずれか)

手引の要件本文は次のとおりです(手引 PDF p.7)。

  • (1) 建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営を担当する者に限る)としての経験を有する者
  • (2) 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者

並べると違いが見えます。

(1)(2)
建設業での役員等経験2年以上2年以上
もう一方の経験5年以上の「役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位」5年以上の「役員等」
もう一方の経験に付く限定財務管理・労務管理又は業務運営を担当する者に限る限定なし

(2)は、役員としての経験が5年以上ある人向けです。異業種で会社を経営してきた方、他社で取締役を務めてきた方が該当し得ます。
(1)は、役員そのものではなく「役員等に次ぐ職制上の地位」での経験も5年に算入できる代わりに、その経験が財務管理・労務管理・業務運営のいずれかを担当するものであった、という限定が付きます。部長級で財務や労務を担ってきた人を役員に上げて常勤役員等に据える、という設計に効きます。

2-2. ★見落とされる共通条件——「建設業に関し2年以上役員等」は両方に必要

上の表で最も重要なのは1行目です。(1)も(2)も、「建設業に関し2年以上役員等としての経験」を共通して要求しています。

ここを読み落とすと、設計が根本から崩れます。「補佐者体制なら、建設業の経験がまったく無くても大丈夫」という理解は誤りです。建設業で役員等を2年以上務めた人が、社内(または迎え入れる人のなかに)いることが、ロ要件の出発点になります。

裏を返せば、もう一方の「5年以上」の側には、条文上、業種の限定が付いていないということでもあります。ロ(1)の「5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位」も、ロ(2)の「5年以上役員等」も、「建設業に関し」という限定を伴わずに書かれています(手引 PDF p.7)。したがって、建設業以外での経験だけを想定した規定ではなく、建設業での役員等としての期間もその5年に含まれ得る読み方になります。「建設業で2年」と「業種を問わない5年」が重なる形で組み立てられる点が、「イ(1)=建設業で5年」に届かない会社にとって現実的な差になります。

ただし、どこまでが「役員等」に当たるか、どの期間を算入できるかは個別の実態で判断が分かれます。条文の文言に限定が無いことと、実際にその期間が認定されることは別の話です。ここは断定できる領域ではありませんので、個別にご確認ください。

2-3. 「役員等」の範囲——執行役員の期間を年数に算入できるか

上の階の年数を数える前に、「役員等」に誰が入るかを押さえておく必要があります。「役員等」には取締役等のほか、相談役・顧問など、名称を問わず役員と同等以上の支配力を持つ者も含まれます(建設業法第5条第3号/手引 PDF p.9)。誰が含まれ誰が含まれないかの全体像は建設業許可の欠格要件とはで整理していますので、そちらをご覧ください。

ロ要件の体制設計で効いてくるのは、そのうちの1点です。執行役員は原則として役員に含まれませんが、取締役会の決議で具体的な権限委譲を受けている場合は対象になり得ます(手引 PDF p.37/審査要領 PDF p.5)。

つまり「執行役員だったから役員等の経験になる」とは言えず、取締役会の決議という証跡の有無で扱いが変わります。 ロ要件の常勤役員等側の年数を執行役員の期間で埋めようとする設計は、この証跡の現存確認から始めることになります。

2-4. 下の階|直接に補佐する者の側

要件本文はこう書かれています(手引 PDF p.7)。

当該常勤役員等を直接に補佐する者(申請者(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者)において、建設業の財務管理、労務管理、業務運営の業務経験をそれぞれ5年以上有し、常勤役員等を直接に補佐する者(同一人でも3名別々でも可。ただし、常勤役員等とは別の者であること。))を置くこと。

分解すると、条件は4つです。

  1. 3つの業務経験(財務管理・労務管理・業務運営)を、それぞれ5年以上
  2. その経験は「申請者において」=申請する会社での経験(→5章で詳述)
  3. 同一人でも3名別々でもよい(1人が3役を兼ねてもよい)
  4. 常勤役員等とは別の者であること(常勤役員等が自分で自分を補佐することはできない)

2-5. 全員が常勤——ここも要件

手引は、①の柱書きに続けて、太い一文を置いています(手引 PDF p.7)。

なお、常勤役員等及び直接に補佐する者については常勤であることが必要です。

補佐者は「協力してくれる誰か」ではなく、常勤の要件を課された当事者です。岡山県が新規申請時に提示を求める確認資料でも、常勤役員等・補佐する者・営業所技術者のいずれについても、健康保険証や標準報酬決定通知書で常勤性が確認されます(手引 PDF p.169)。補佐する者が名指しで対象に入っている以上、3名別々で組めば人数分の常勤性を示すことになります。 提示の仕方は常勤性の確認資料として何を提示するかにまとめています。

様式第7号の2の記載例にも、常勤役員等の欄と補佐者の欄の双方に「ここに記載した方については、厚生年金標準報酬決定通知書等、常勤性を確認できる書面を提示する必要があります」という注記が付いています(手引 PDF p.63・p.64)。

常勤性そのものの判定(他社役員との兼務、遠隔地からの通勤、出向など、判断が割れるケース)は他社役員との兼務・遠隔地居住でも常勤と認められる?にまとめています。補佐者を選ぶ段階でその論点に当たりそうなら、先にそちらをご確認ください。

3. 「直接に補佐する」とは——組織体系上の位置そのものが要件になる

ロ要件でもっとも独特なのが、この「直接に補佐する」という条件です。経験年数でも資格でもなく、組織のなかでの位置関係が要件になっています。

3-1. 手引の定義(※4)

※4 「直接に補佐する」とは、常勤役員等との間に他の者を介在させることなく、組織体系上及び実態上当該常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を行うことをいいます。(手引 PDF p.8)

同じ定義が、様式第7号の2の説明にも再掲されています(手引 PDF p.65)。手引が2箇所で同じ定義を置いているのは、それだけ判定の中心になるということです。

この一文には、要素が3つ入っています。

要素意味実務で見るところ
他の者を介在させることなく常勤役員等と補佐者の間に、指揮命令上の第三者がいない組織図の階層。間に1人でも挟まれば要件から外れる読み方になる
組織体系上形式(組織図・職制)としての直属組織図、職務分掌、職名
実態上実際に、その常勤役員等から指示を受けて動いている日々の指揮命令、決裁の流れ

形式と実態の両方が求められている点が重要です。組織図だけ直属にしても、実際は別の役員の指示で動いているなら「実態上」を満たしません。逆に、実質的に直属で動いていても、組織図の上で間に部長が挟まっていれば「組織体系上」で外れます。

3-2. 詰まりやすい3つの配置

ロ要件を検討するとき、組織図を見た段階で組み替えが必要になりやすいのは、典型的には次の3つの配置です。

パターンA|間に管理職が挟まっている

「常勤役員等(専務)→ 管理部長 → 経理課長」という並びで、経理課長を財務管理の補佐者にしようとするケース。常勤役員等と経理課長の間に管理部長が介在しているため、定義に照らすと直接補佐の関係にありません。管理部長自身を補佐者にするか、指揮命令系統を組み替えるか、という判断になります。

パターンB|補佐者が代表取締役の直属になっている

見落とされやすいのがこれです。ロ要件で求められるのは「当該常勤役員等を直接に補佐する」ことです。常勤役員等が代表取締役ではない場合(たとえば専務や常務を常勤役員等に据える場合)、補佐者はその専務・常務の直属でなければなりません。代表取締役の直属だと、要件で求められている関係と別の関係になってしまいます。

パターンC|3名別々にしたら、うち1人だけ系統が違う

財務・労務・業務運営を3人に分けるとき、たとえば業務運営だけ現場サイドの部長が担当していて、その部長は別の役員の下にいる、というケース。3名別々にできるということは、3名それぞれが直接補佐の関係にある必要があるということでもあります。1人でも系統が外れれば、その業務経験は使えません。

3-3. 「常勤役員等とは別の者」——自分では自分を補佐できない

条文は「ただし、常勤役員等とは別の者であること」と明記しています(手引 PDF p.7)。

これは当たり前に見えて、小規模の会社では起こりやすい構図です。「社長が経理も労務も全部やってきた」という会社では、財務管理・労務管理・業務運営の5年を持っているのが常勤役員等本人しかいないことがあるためです。この場合、ロ要件は成立しません。ロは「1人ではどうしても足りないときに、別の人の経験を足す」という発想の制度だからです。

その場合は、イのルート(1人で完結する型)に戻って年数を組めないか、外部から経営経験を持つ人を常勤役員として招へいする方法がとれないか、という検討に移ります。

3-4. 実務的な意味——これは「人事の話」になる

3章をまとめると、ロ要件の検討は途中から申請書の話ではなく、組織の話になります。

  • 誰を常勤役員等に据えるか(登記が必要になる場合がある)
  • その人の直属に、誰をどう配置するか
  • 組織図・職務分掌をどう整えるか

そして、この組み替えを申請直前にやると、「実態上」の要件が薄くなります。組織図の日付だけ整えても、実態としてその指揮命令で動いてきた期間が説明できなければ意味がありません。ロ要件を視野に入れるなら、早い段階で体制の話に入る——これが実務上の結論です。

4. 財務管理・労務管理・業務運営——3つの業務経験の中身と、1人3役の組み方

4-1. 3つの業務の定義(※5)

手引は、3つの業務経験をそれぞれ定義しています(手引 PDF p.8)。

業務手引の定義
財務管理の業務経験建設工事を施工するに当たって必要な資金の調達施工中の資金繰りの管理下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験
労務管理の業務経験社内や工事現場における勤怠の管理社会保険関係の手続きに関する業務経験
業務運営の業務経験会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験

定義を読むと、財務管理と労務管理は「日々の管理業務」であるのに対し、業務運営だけ抽象度が一段高いことが分かります。「経営方針や運営方針の策定、実施」ですから、単なる事務処理では説明が付きにくい領域です。

3つのうち、担当者を特定しにくいのがこの業務運営です。 経理を長く見てきた人、社会保険手続きをずっとやってきた人は社内にいても、「経営方針の策定と実施に5年関わってきた」と説明できる人がいない、という形で止まります。手引の記載例が業務運営について「<経営方針及び運営方針の策定等の業務運営を担当>」という一行を職歴に書き添える形をとっているのも(手引 PDF p.67)、役職名だけでは業務運営の担当が読み取れないためだと考えられます。

4-2. 1人3役でもよい——ただし証明書は業務経験ごと

条文は「同一人でも3名別々でも可」としています(手引 PDF p.7)。そして、様式第7号の2の説明が、この扱いをさらに具体化しています(手引 PDF p.65)。

常勤役員等を直接に補佐する者が、財務管理、労務管理又は業務運営のうち複数の業務経験を有する者であるときは、その1人の者が当該業務経験に係る常勤役員等を直接に補佐する者を兼ねることができますが、証明書は業務経験ごとに作成が必要です。また、財務管理、労務管理又は業務運営のうち複数を担当する地位での経験については、それぞれの業務経験としてその期間を計算することができます

ここには、実務上きわめて大きい2つの取扱いが書かれています。

① 期間の重複計算ができる

「総務課長として、勤怠管理も資金繰りも見ていた」という5年間は、労務管理の5年であると同時に財務管理の5年として計算できます。3つの業務を順番に5年ずつ、合計15年やっていなければならない、という制度ではありません。

② 証明書は業務経験ごとに作る

期間は重複計算できても、書類は3本必要です。1人が3役を兼ねる場合、その1人について財務管理・労務管理・業務運営の3つ分の証明を作ることになります(様式の構造は6章)。

4-3. 手引の記載例が示す「積み上げ方」

手引に載っている別紙2(補佐する者の略歴書)の記載例は、この積み上げ方の見本になっています(手引 PDF p.67)。職歴欄には、次のような趣旨で3段が書かれています。

  1. 総務課主任として財務管理、労務管理等の総務事務に従事(約9年)
  2. 総務課長として、従業員の勤怠管理、社会保険関係手続等の労務管理を担当(約6年)
  3. 経理部長として、資金の調達、代金の支払い等の財務管理を担当(現在まで)

そして、同じ職歴(従事した職務内容)欄の中に、総務課主任の職歴に続けて「<経営方針及び運営方針の策定等の業務運営を担当>」という一行が書き添えられています。様式の外の余白ではなく、職歴欄の中に担当業務を書き足すという形式です。

読み取れるのは、1つの職歴が複数の業務経験を兼ねる形で書かれていること、そして役職名だけでなく「何を担当したか」を書き添える形式になっていることです。手引の記載要領も「財務管理、労務管理及び業務運営の経験については、その業務内容や経験期間が明らかになるよう具体的に記載してください」と指示しています(手引 PDF p.67)。

つまり、略歴書は「肩書きの履歴」ではなく「担当業務の履歴」として書く書類です。 ここを役職の羅列で済ませると、5年の中身が読み取れず、追加の説明を求められることになります。

4-4. 3人に分ける設計の注意点

3名別々にする設計は、1人3役が難しい会社では現実的な選択肢です。ただし、次の点が付いて回ります。

  • 3名それぞれが5年以上(財務の人が5年、労務の人が5年、業務運営の人が5年)
  • 3名それぞれが常勤(手引 PDF p.7)
  • 3名それぞれが常勤役員等の直属(3章のパターンC)
  • 3名それぞれについて略歴書を作成——手引は「補佐する者が複数名いる場合は、補佐する者ごとに分けて作成してください」と明記しています(手引 PDF p.67)
  • 3名それぞれについて常勤性の確認資料の提示(手引 PDF p.169)

人数が増えるほど、要件を維持する難易度が上がります。 3名のうち1人が退職すれば、その時点で体制が崩れます(9章)。1人3役で組める会社は、原則としてそちらのほうが維持は楽です。

5. 最大の制約——補佐者の5年は「申請事業者における経験」に限られる

ここがロ要件の分水嶺です。この一文を知っているかどうかで、検討にかかる時間がまるで変わります。

5-1. 手引の明文

様式第7号の2の説明は、期間の重複計算を認めた直後に、はっきり限定を置いています(手引 PDF p.65)。

ただし、これらの経験は、申請事業者における経験に限られます。

要件本文の側にも、同じ限定が組み込まれています。「申請者(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者)において、建設業の財務管理、労務管理、業務運営の業務経験をそれぞれ5年以上有し」(手引 PDF p.7)。

つまり、補佐者の5年は「この会社での5年」でなければなりません。

5-2. 上の階と下の階で、扱いが正反対である

これがロ要件の構造上、いちばん重要な非対称です。

常勤役員等(上の階)直接に補佐する者(下の階)
他社での経験使える(他社での役員等経験が前提の制度設計)使えない(申請事業者における経験に限られる)
根拠手引 PDF p.7(ロ(1)(2)の要件本文)手引 PDF p.7・p.65
確保の方法迎え入れる/登記する、という選択肢がある社内にいるかどうかがすべて。外から連れてきても年数は積み上がらない

常勤役員等は「連れてこられる」が、補佐者は「連れてこられない」。 ロ要件の設計は、この一点を軸に組み立てることになります。

5-3. だから、ロ要件が現実的になりにくい会社がある

制約から逆算すると、次のような会社ではロ要件は現実的ではありません。

  • 設立から5年経っていない会社。自社での5年が物理的に存在しません。設立直後の会社が要件をどう組むかは設立したばかりの会社で建設業許可は取れる?にまとめています。
  • 経理・労務を外部に全面委託してきた会社。税理士事務所や社会保険労務士事務所に任せてきた場合、その経験は自社の従業員の経験にはなりません。
  • 管理部門を直近で中途採用した会社。前職で20年経理をやってきた人でも、自社での在籍が1年なら、財務管理の5年にはなりません。
  • 法人成りして間もない会社。個人事業主時代の経験をどこまで引き継げるかは、実態と書類の残り方によります。個別性が高いので断定できません。法人成りの一般論は法人成りで建設業許可は引き継げる?、個人と法人のどちらで取るかは個人事業主の建設業許可をご覧ください。

5-4. 逆に、ロ要件が刺さる会社

同じ制約は、次の会社では強みに変わります。

  • 創業から長い同族会社。配偶者や親族が経理・総務を10年、20年と担ってきたケース。
  • 番頭格の従業員がいる会社。工事の段取りから資金繰りまで見てきた人が長く在籍しているケース。
  • 他業種から建設業に参入して数年。代表者に他業種での長い役員経験があり、建設業でも2年以上役員を務めており、かつ管理部門の社員が長く在籍しているケース。

5-5. 検討の起点は「在籍年数の逆算」

以上を踏まえると、ロ要件を検討するときに最初に手を付けるべきは、組織図でも書類でもなく、社員名簿です。

  1. 自社に5年以上在籍している従業員・役員を全員書き出す(雇用形態と常勤・非常勤の別も)
  2. その各人について、財務管理・労務管理・業務運営のどれを、いつからいつまで担当していたかを埋める
  3. 3つとも5年以上を埋められる組み合わせ(1人/2人/3人)があるかを見る
  4. その人(たち)が常勤役員等の直属に置けるかを組織図で確認する

この4ステップで「使えない」と分かるなら、その時点で別のルートに切り替えたほうが早い。 逆に、この逆算を後回しにして書類の作成から入ると、5年に届かないことが後から判明して手戻りになりやすい構造です。

6. 様式と証明書類——様式第7号の2の四面構成と、書式が定まっていない部分

6-1. イなら様式第7号、ロなら様式第7号の2

提出する様式が、イとロで分かれます。手引の必要書類一覧表は「いずれか該当するものを提出」としたうえで、「第7号を提出する場合:第7号別紙を提出/第7号の2を提出する場合:第7号の2別紙1及び別紙2を提出」と整理しています(手引 PDF p.169)。

ルート証明書略歴書
様式第7号(常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書)様式第7号 別紙(常勤役員等の略歴書)
様式第7号の2(常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書)様式第7号の2 別紙1(常勤役員等の略歴書)+別紙2(常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書)

手引は様式第7号の2について「【注意!】規則第7条第1号ロに該当する場合はこの新様式で提出してください」と明記しており、同じ注意書きが別紙2(補佐する者の略歴書)の説明にも重ねて置かれています(手引 PDF p.65・p.68)。なお手引は更新申請の注意点として「令和2年10月1日以降の提出分から様式等が変更されていますので注意してください」とも促しています(手引 PDF p.155)。手元の古い様式を使い回さず、その時点の手引に綴じられている様式を使ってください。

6-2. 様式第7号の2は「四面」でできている

ここは実物を見ないと分かりにくい部分です。様式第7号の2は、1枚ではなく複数面の構成になっています。

  • 第一面:常勤役員等について。「下記の者は、次のとおり第7条第1号ロに掲げる経験を有することを証明します」という証明欄と、「下記の者は、許可申請者で第7条第1号ロに該当する者であることに相違ありません」という誓約欄(手引 PDF p.63)
  • 第二面財務管理について。「下記の者は、次のとおり5年以上の建設業の財務管理の業務経験を有し、上記の常勤役員等を直接に補佐する者として適切に配置するものであることに相違ありません」(手引 PDF p.64)
  • 第三面労務管理について(同様に作成)
  • 第四面業務運営について(同様に作成)

手引の記載例は、第二面の欄外に「第三面(労務管理)、第四面(業務運営)も同様に作成してください」と指示しています(手引 PDF p.64)。4章で見た「証明書は業務経験ごとに作成が必要」(手引 PDF p.65)は、この面の構成として表れているわけです。

各面には、それぞれ証明者欄と経験年数欄があります。 常勤役員等の経験(第一面)を証明するのは過去に在籍した会社の代表者になることがあり、補佐者の3業務(第二面〜第四面)を証明するのは自社の代表者になる——というように、面ごとに証明者が異なり得る構造です。

細部の書き方も面ごとに指定されています。第一面にはロ(1)かロ(2)かを選ぶ欄があり、手引の記載例は「建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者の場合は(1)に該当/5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し2年以上役員等としての経験を有する者の場合は(2)に該当」と案内しています(手引 PDF p.63)。2章で分解した条文が、そのまま様式の選択欄になっているわけです。経験年数欄は「平成27年4月から令和2年10月まで 満5年7月」のように始期・終期と満年月で記載し、第二面以降の役職名等の欄については「財務管理を行った期間における役職名を具体的に記載します」と指示されています(手引 PDF p.64)。

なお、証明者欄には省略規定があります。審査要領は、当該申請者・届出者が過去に提出している証明書の記載内容と同一の場合は、証明者欄(証明日を含む)の記載を省略できる。ただし省略する場合には、過去に提出した証明書の写しを添付すること、と定めています(審査要領 PDF p.15)。ロ要件で提出する様式第7号の2にこの取扱いがどこまで及ぶかは明示されていないため、更新時に省略できるかどうかは事前相談で確認してください。

6-3. 補佐者は役員である必要がない

手引の記載例で、補佐者として例示されているのは「経理部長」で、証明者との関係欄は「従業員」です(手引 PDF p.64)。

つまり、補佐する者は役員である必要がありません。 常勤の従業員で構いません。「補佐者も役員にしないといけないのでは」という前提で人選を狭めてしまうと、社内にいる適任者を見落とすことになります。様式の記載例がその前提を否定している、と読んでください。

なお、常勤役員等の側の記載例には次の注記が添えられています(手引 PDF p.63)。

・この記載例の場合は、別に建設業に関して役員等の経験を証明することが必要となります(個別にご案内します。)。

記載例の第一面が証明しているのは経験の一部であり、建設業での役員等経験(2章で見た「建設業に関し2年以上」)は別に証明が要る、という趣旨です。「(個別にご案内します。)」という表現が使われていること自体が、この論点の個別性の高さを示しています。

6-4. 別紙2(補佐する者の略歴書)の書き方

別紙2は、補佐する者本人に関する書類です。手引の説明を整理します(手引 PDF p.67-68)。

手引の指示
現住所単身赴任等で住民票上の住所と居所が異なる場合は、両方を併記
職名申請時の職名を記載(現在の役職名)
職歴建設業に関して、現在に至るまでの全ての職歴を記載し、建設業に係る財務管理・労務管理・業務運営についてその業務経験内容を具体的に記載
賞罰建設業の行政処分、行政罰はもちろん、刑罰その他の賞罰の有無を明記。該当がなければ「特記事項なし」等。罰金刑も記載。賞を書いた場合は「罰なし」等と罰の有無も必ず記載。資格等はこの欄に記載しない
誓約欄日付欄に誓約日を必ず記載。補佐する者本人が記載事項を確認した上で記名

そして、この様式には訂正の制限があります

本様式のうち、現住所、氏名、生年月日、賞罰、誓約日及び署名欄は本人以外による訂正は認められません。(手引 PDF p.68)

同じ制限は審査要領にも置かれています。代理申請で書類の訂正について委任を受けた代理人であっても、様式第7号の2 別紙一・別紙二の「現住所、氏名、生年月日、賞罰、誓約日及び署名」については本人以外による訂正を認めない、という取扱いです(審査要領 PDF p.3)。

実務上の意味は明快です。別紙2は、補佐する者本人の協力なしには作れませんし、直せません。 「本人には言わずに体制だけ組む」ということができない書類だ、と理解してください。ロ要件を検討する段階で、補佐者になる方への説明と同意は必須の工程になります。

6-5. 様式第12号(調書)との関係

役員等については、原則として全員分の「許可申請者の住所、生年月日等に関する調書」(様式第12号)が必要です。ただし手引は例外を置いています(手引 PDF p.89)。

申請や変更届において、「常勤役員等の略歴書」及び「常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書」の提出がある場合、当該略歴書に記載された者についてのみ、この様式は作成不要です。

様式第12号の記載例の側にも「『常勤役員等(経営業務管理責任者等)』及び『常勤役員等を直接に補佐する者』に該当する場合は、本様式の代わりに様式第7号別紙及び第7号の2別紙1・2を作成してください」という注記があります(手引 PDF p.88)。

補佐者が役員でもある場合に、調書と略歴書を二重に作ってしまう——これは書類作成でよくある無駄です。略歴書があれば調書は要りません。

6-6. ★書式が定まっていない部分がある——ここがロ要件の難所

そして、ロ要件の最大の実務的難所がこれです。手引は次のように書いています(手引 PDF p.65)。

【財務管理等の業務経験の確認方法】 常勤役員等や常勤役員等を直接に補佐する者の財務管理等の業務経験については、別に経験を証明する書類が必要となります。 本様式を用いた申請(届出)については、事前に建設業班にご相談ください。

「別に経験を証明する書類が必要」とだけ書かれていて、その書類が何であるかは特定されていません。

この非対称は、他のルートと比べると際立ちます。イ(2)(準ずる地位・執行役員型)とイ(3)(準ずる地位・補佐型)については、審査要領が確認書類を具体的に列挙しているからです(審査要領 PDF p.14-15)。

ルート確認書類の定め
イ(2) 準ずる地位で5年審査要領が確認書類を5項目に分けて具体的に列挙(審査要領 PDF p.14)
イ(3) 準ずる地位で6年(補佐)審査要領が確認書類を4項目に分けて具体的に列挙(審査要領 PDF p.15)
補佐者体制審査要領に同種の列挙は置かれていない。手引が「別に経験を証明する書類が必要」とし、事前相談を求めている(手引 PDF p.65)

イ(2)(3)は「この書類を集めればよい」と分かるのに、ロは「相談して決める」という構造になっています。これがロ要件で事前相談が求められている実質的な理由であり、次章の内容につながります。

なお、イ(2)(3)については工事実績の確認密度(何件の原本を提示し、何件の写しを提出するか)まで審査要領が指定していますが(審査要領 PDF p.14・p.15。書類名の内訳と確認密度はイ(2)(3)で必要になる確認書類と工事実績の確認密度)、ロの補佐者の3業務について、同種の指定は置かれていません。 どの程度の粒度で確認されるのかも、事前相談で確認すべき事項に入ります。

この「書式が定まっていない」という性格は、様式の説明の書きぶりからも読み取れます。手引は様式第7号の2について、要件そのものは要件のページを参照するよう促したうえで、「基本的な記載の仕方については、『様式第7号 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書』の説明を参考にしてください」と、イ用の様式の説明を流用する形をとっています(手引 PDF p.65)。ロ専用に書き下ろされているのは、業務経験ごとに証明書を作るという構造・経験を申請事業者内に限る限定・事前相談の指示の3点であり、肝心の「何を出せば5年が認められるか」は、様式の説明にも審査要領にも書かれていません。この空白を埋める場所が事前相談だ、という構造になっています。

7. 事前相談が求められる理由——「書類を作る前に相談する」が岡山県の順序

7-1. 手引は3箇所で事前相談を求めている

ロ要件について、手引は事前相談を3箇所で求めています。ここまで繰り返される要件は多くありません。

  1. 要件本文の直後:「注)「ロ」での申請(届出)については、事前に建設業班にご相談ください。」(手引 PDF p.7)
  2. 様式第7号の2の記載例の欄外:「本様式を用いた申請を行う場合は、必ず事前に建設業班へご相談ください」(手引 PDF p.63)
  3. 様式第7号の2の説明:「本様式を用いた申請(届出)については、事前に建設業班にご相談ください。」(手引 PDF p.65)

(同じ注記は、イ(2)(3)についても要件本文に置かれています=手引 PDF p.7。事前相談が求められるのは、ロとイ(2)(3)です。)

7-2. 「事前相談」と「事前審査」は別物

ここを取り違えると、期待外れになります。岡山県は事前審査を一切行わない運用です。手引は、正本・副本を必要部数そろえ、日付の記入や納付済証の貼付に遺漏がないかを確認したうえで、書類が完全に整った状態にしてから提出するよう求めています(手引 PDF p.16)。

つまり、様式第7号の2の一式を作り込んでから持ち込み、内容を先に見てもらうという進め方は、岡山県では成立しません。窓口での書面審査は受付時に行われ、限られた時間で行われるため、受付後にも書類の訂正等について追加で連絡が来ることがある、という運用です(手引 PDF p.16)。

事前相談で決めるのは「書類の中身」ではなく「方針」です。

  • この体制(常勤役員等+補佐者の配置)でロ要件を組む方向で問題ないか
  • 補佐者の財務管理・労務管理・業務運営の5年を、何で証明するか(手引が特定していない部分=6-6)
  • 常勤役員等の「建設業に関し2年以上役員等」を、何で証明するか(手引 PDF p.63 の「別に建設業に関して役員等の経験を証明することが必要」)

この3点は、書類を集め始める前に決まっていないと手戻りになります。

7-3. 進める順序

ロ要件を検討する場合の順序を、実務の流れで並べます。

  1. 社員名簿と在籍年数の棚卸し(5-5の4ステップ)
  2. 組織図の確認と、必要なら組み替えの検討(3章)
  3. 常勤役員等側の年数の当たり付け(建設業で2年/もう一方で5年をどう組むか=2章)
  4. 現存する書類の確認(組織図・職務分掌・人事発令書・給与や社会保険の記録など、何が今も残っているか)
  5. 建設業班への事前相談(方針と、証明に使える書類の当たりを持って行く)
  6. 書類作成(様式第7号の2 四面+別紙1・別紙2+関係書類)
  7. 提出(本庁一元。8章)

4と5を飛ばして6に入ると、作り直しになります。 手引が3箇所で事前相談を求めているのは、この順序を守らせるためだと読めます。

7-4. 当事務所の関わり方

当事務所は、建設業許可に特化した行政書士事務所(行政書士登録番号 第20300974号)として、この工程を最初からご一緒します。

  • 要件設計:在籍年数の棚卸し、組織体系の確認、常勤役員等と補佐者の組み合わせの検討
  • 事前相談の準備:方針と持参書類の設計。何を確認しに行くかを固めたうえで臨みます
  • 書類作成と代理申請:様式第7号の2・別紙1・別紙2を含む一式を作成し、代理申請まで行います
  • 営業所調査の対応:準備確認と当日の同席は報酬に含みます

無料相談は、方向性の見立てまで(初回30〜60分)です。資料の精査・要件設計・工程表の作成は受任後に行います。ロ要件は「その場で可否を言い切れる」種類の論点ではないため、まず見立てを取りに来ていただくのが現実的です。他の事務所で進めていた案件の引き継ぎにも応じています。

8. 岡山県での手続き——提出先・営業所調査・法定手数料と期間

ここからは、ロ要件に限らず岡山県知事許可に共通する手続きです。ロ要件特有の注意点だけを補いながら整理します。

8-1. 提出先は本庁一元——県民局では受け付けない

申請書・変更届の提出先は次のとおりです(手引 PDF p.16)。

  • 提出先:岡山県土木部監理課建設業班(県庁6階)
  • 所在地:〒700-8570 岡山市北区内山下2-4-6
  • 電話:直通 086-226-7463
  • 窓口受付時間:9:00〜11:30、13:00〜16:30(閉庁日を除く)

郵送での提出も受け付けています(送付先は同じ)。本記事は書面(窓口へのご持参・郵送)による申請を前提に整理しています。

そして、ここが誤解の多い点です。手引は、許可申請と変更届の受付を出先機関では行わず、本庁の監理課建設業班で扱うと明記しています(手引 PDF p.168)。県民局は申請の窓口ではありません。

窓口の時間についても運用が明記されています。11時30分から13時00分まで、および16時30分から翌開庁日の9時00分までは窓口を閉じ、審査を休止します。原則として、審査の途中であっても窓口閉鎖の時刻をもって審査は終了します(手引 PDF p.16)。ロ要件のように書類の点数が増える申請では、時間の余裕は特に効きます。

8-2. 受付後は所轄の県民局による営業所調査

申請が受け付けられると、許可申請受付後、半月程度で所轄の県民局から営業所調査実施の連絡があります(手引 PDF p.17)。

調査で確認されるものは手引に列挙されています(手引 PDF p.17-18)。営業所については、看板・机・電話・賃貸借契約書の原本などが確認され、営業所を居住部分と共用することはできません(手引 PDF p.17)。確認されるもの一式と、自宅兼事務所の可否を含む営業所の要件は自宅を営業所にして建設業許可は取れる?にまとめています。

人については、次の3項目です。

  • 常勤役員等の過去の経営を管理した経験等:法人の役員等なら商業登記事項証明書(履歴事項全部証明書等)、社会保険関係書類(加入履歴等)、ほか出勤簿・賃金台帳等。請負工事実績は工事請負契約書(原本)又は注文書(原本)及び請書(写し)又は建設業の許可通知書等
  • 営業所技術者等の資格等:国家資格等なら免状・合格証明書等(いずれも原本)、実務経験なら様式第9号(実務経験証明書)に記入した工事の請負契約書(原本)又は注文書(原本)及び請書(写し)等(手引 PDF p.17-18)
  • 常勤役員等及び営業所技術者等の現在の常勤性:法人の場合は社会保険(有効期限内の健康保険証、被保険者標準報酬決定通知書又は被保険者資格取得確認通知書の原本)、ほか賃金台帳・出勤簿等(手引 PDF p.18)

手引は「※いずれも確認できるものがなければ、許可を受けることができません」と明記しています(手引 PDF p.17)。

ロ要件の場合に、この営業所調査で補佐者がどこまで確認されるかは、手引の列挙からは読み取れません。(2)は「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)の過去の経営を管理した経験等」として書かれ(手引 PDF p.17)、(4)の現在の常勤性も「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)及び営業所技術者等」までで(手引 PDF p.18)、いずれも補佐する者は明示されていないためです。他方で、申請時に提示を求められる社会保険の確認資料には、補佐する者が名指しで入っています(手引 PDF p.169・2-5)。この差をどう読むかも、事前相談で確認しておくべき事項に入ります(6-6・7-2)。

なお、営業所調査が早く終わったからといって、許可が早くなるわけではありません。 本庁の土木部監理課でも別途調査を行うため、営業所調査が受付後間もなく実施されても許可が早く取得できることはない、と手引が明記しています(手引 PDF p.16)。

8-3. 期間の目安

申請が受け付けられてから許可までは、特に問題がないケースで概ね2か月程度です(手引 PDF p.16)。

ただし、ロ要件では「受付までの時間」のほうが長くなるのが通常です。在籍年数の棚卸し、組織体系の確認、証明書類の当たり付け、事前相談——これらは受付前の工程だからです。期間は事案によって幅が大きく、時点によっても変動します。元請から許可取得を求められている、といった期限がある場合は、逆算して早めに着手してください。

8-4. 法定手数料と費用

岡山県知事許可の法定手数料は次のとおりです(手引 PDF p.14)。

申請の種類岡山県知事許可
新規(許可換え含む)・般特新規90,000円
更新・追加50,000円
  • 手数料の額は申請する業種の数とは関係ありません(何業種でも同額)
  • 変更届出書の提出に手数料は不要です
  • 納付方法は、岡山県手数料等(POS)納付連絡票をホームページから印刷し、収納専用窓口に持参して支払い、納付済証を許可申請書の正本非閲覧用の「様式第1号 別紙三」に貼り付けて提出します(手引 PDF p.14)

当事務所の報酬(税込・目安)は次のとおりです。

業務内容(A)行政書士報酬(B)法定手数料合計
建設業許可申請(法人・新規)132,000円90,000円222,000円
建設業許可申請(個人・新規)110,000円90,000円200,000円
変更届(経営業務の管理責任者)33,000円33,000円
  • 証明書等の取得実費は当事務所が立て替え、後日精算します
  • 法定手数料90,000円はご依頼者のご負担ですが、納付は当事務所が代行します
  • 金額は税込の目安です。案件の内容により変動しますので、正確な金額は事前にお見積りします

新規許可全体の費用の内訳・総額の考え方は建設業許可の費用はいくら?岡山県知事許可の総額目安に整理しています。

8-5. 他の要件も並行して確認する

ロ要件が組めても、他の要件が欠けていれば許可には至りません。並行して見ておくべき主なものを挙げます。

新規申請で必要になる書類の全体像は建設業許可の必要書類一覧にまとめています。

9. 体制を組んだあと——維持・変更届と、許可のその先

9-1. 「欠く」状態になると許可を失う

ロ要件は体制で満たす要件です。したがって、体制が崩れれば要件も崩れます。

常勤性を要する経管や営業所技術者等を「欠く」状態になれば代わりになる方がいない限り許可を失いますが、この「欠く」は退職・死亡だけでなく、毎日出勤することができなくなった場合も含みます(手引 PDF p.22)。長期入院の扱いや、後任が就任するまでに空白期間が生じたときの実務まで含めた「欠く」状態の詳細は、営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?にまとめていますので、そちらをご覧ください。

ロ要件で組んだ会社にとって、これは上の階(常勤役員等)だけの話ではありません。 3名別々の補佐者で組んでいれば、要件を支えている人が合計4名いることになります。人数が増えるほど、誰か1人が抜けるリスクは上がります。 4章の最後で「1人3役で組める会社は、原則としてそちらのほうが維持は楽」と書いたのは、この理由からです。

なお、常勤役員等(経管)が入院等のやむを得ない事情で営業所に出勤していなかったことが事後に判明した場合の取扱いも、審査要領に定めがあります。交替できる者がいれば業務改善報告書を添付のうえ変更届を提出して受理となり、交替できる者がいなければ原則として自主廃業を求められます(指導に従わない場合には許可取消し)。ただし不在の期間が2か月未満であれば、業務改善報告書を徴したうえで営業の継続が認められます(審査要領 PDF p.11-12)。

9-2. 変更届の期限と様式

変更届は、指定された期限内の提出が必要です。手引は「期限内の提出を怠っている場合には許可の更新・追加申請等はできません。また、監督処分や罰則の対象にもなります」と明記しています(手引 PDF p.22)。変更届に手数料は不要です(手引 PDF p.22)。

手引の「変更届出事項及び提出書類等一覧表」(手引 PDF p.170)を見ると、常勤役員等(経営業務管理責任者等)の変更は「二週間以内」の区分に置かれており、提出書類には様式第7号 又は 様式第7号の2、および様式第7号 別紙 又は 様式第7号の2 別紙1・別紙2が「いずれか該当するものを提出」として掲げられています。

また、婚姻等による氏名変更については、変更届出書(様式第22号の2)の記載要領に次の指示があります(手引 PDF p.138)。

届出の内容が、第7条第1号に規定する常勤役員等又は常勤役員等を直接に補佐する者の氏名に係る場合には、「備考」の欄にその旨を記載すること。

補佐する者の氏名変更が、変更届の対象として明文で想定されているわけです。

なお、氏名変更一般の確認資料としては、役員等、経営業務管理責任者又は営業所技術者等について、婚姻等により氏名変更があった場合に、戸籍謄本(写し可)など当人の氏名に変更があったことが分かる資料をつづらず1部提示する、という取扱いが定められています(手引 PDF p.151。役員等については、登記事項証明書等の記載で変更内容が確認できれば戸籍謄本等の提示は不要です)。この記載に補佐する者は挙げられていないため、補佐する者の氏名変更で同じ資料が必要になるかどうかは、事前相談または届出前に窓口でご確認ください。

また、様式第7号の2には「申請又は届出の区分」欄があり、第二面以降には「1.新規/2.変更/3.常勤役員等を直接に補佐する者の更新等」という区分が用意されています(手引 PDF p.64)。補佐する者の異動が、様式の側でも独立した届出事由として想定されている、ということです。

ロ要件で組んだ会社は、「経管1人の異動」ではなく「体制の異動」を管理することになります。 誰かが辞める、産休に入る、部署が変わる——いずれも要件に触れる可能性がある、という前提で運用してください。

9-3. 毎年の維持管理と期限管理

許可を取った後は、毎年の届出が続きます。

  • 事業年度終了報告:決算日から4か月以内に、事業年度終了の変更届出書の提出が必要です(手引 PDF p.22)
  • 更新申請:許可の有効期間満了の日の30日前までに受付(書類上不備がなく、受付印が押印された状態)を済ませる必要があります。申請は有効期間満了の日の3か月前から可能です(手引 PDF p.13)

当事務所では、これらの期限をまとめて管理する顧問契約をご用意しています。月額5,500円(税込)〜の3プランです。

プラン月額(税込)
ライト5,500円
スタンダード11,000円
フル15,000円

フルに含まれるのは、事業年度終了報告(単体なら44,000円)+経審 経営状況分析(33,000円)+経審 経営規模等評価・総合評定値請求(55,000円)+入札参加資格更新(33,000円・2年に1回)+月次相談・期限管理です。更新業務だけでも毎年132,000円、これに入札参加資格更新(2年に1回・33,000円)が乗ることを踏まえると、フルの年額180,000円は定額化の効果が見えやすい形になります。ライト・スタンダードは必要な業務の範囲に合わせてご案内しますので、ご相談ください(いずれも税込・目安です)。

なお、期限管理(いつ何を出すかのご案内)は顧問の範囲で、申請の代理実行はスポット報酬という切り分けです。

9-4. 許可のその先——公共工事へ進むなら

ロ要件で許可を取得したあと、次の段階として視野に入るのが公共工事です。公共工事を元請として受注するには、経営事項審査(経審)と入札参加資格の登録が必要になります。

経審は事業年度終了報告が前提になるため、許可取得の直後から、毎年の届出を落とさない運用が効いてきます。ロ要件で組んだ会社は、体制の維持と届出の維持という2本を同時に回すことになるため、期限管理を仕組みにしておく価値が特に大きいと言えます。

よくある質問(FAQ)

Q「常勤役員等を直接に補佐する者」とは、どういう人ですか?
A建設業法施行規則第7条第1号ロで求められる人で、申請する会社において建設業の財務管理・労務管理・業務運営の業務経験をそれぞれ5年以上持ち、常勤役員等を直接に補佐する立場にある方をいいます。同一人でも3名別々でも構いませんが、常勤役員等とは別の者である必要があり、常勤役員等と補佐する者はいずれも常勤であることが必要です(手引 PDF p.7)。「直接に補佐する」とは、常勤役員等との間に他の者を介在させることなく、組織体系上および実態上、当該常勤役員等から直接指揮命令を受け業務を行うことをいいます(手引 PDF p.8)。役員である必要はなく、手引の記載例では従業員である経理部長が補佐者として例示されています(手引 PDF p.64)。
Q補佐する者の5年は、前職での経験を通算できますか?
Aできません。手引は「これらの経験は、申請事業者における経験に限られます」と明記しています(手引 PDF p.65)。要件本文でも「申請者において、建設業の財務管理、労務管理、業務運営の業務経験をそれぞれ5年以上有し」と規定されています(手引 PDF p.7)。したがって、前職で20年経理を担当していた方でも、自社での在籍が短ければ財務管理の5年にはなりません。常勤役員等の側は他社での役員等経験を使える一方、補佐する者の側は自社での経験に限られる——この非対称がロ要件の設計上いちばん重要な点です。設立から5年経っていない会社では、ロ要件は現実的ではありません。
Q1人で財務管理・労務管理・業務運営の3つを兼ねることはできますか?
Aできます。条文は「同一人でも3名別々でも可」としています(手引 PDF p.7)。さらに手引は、複数の業務経験を持つ方が1人で兼ねられること、複数を担当する地位での経験はそれぞれの業務経験としてその期間を計算できることを明記しています(手引 PDF p.65)。たとえば総務課長として勤怠管理と資金繰りの両方を見ていた5年間は、労務管理の5年であると同時に財務管理の5年として計算できます。ただし、証明書は業務経験ごとに作成が必要です(手引 PDF p.65)。様式第7号の2は第一面(常勤役員等)・第二面(財務管理)・第三面(労務管理)・第四面(業務運営)という構成になっています(手引 PDF p.63-64)。
Q補佐者体制で申請する場合、どの様式を使いますか? 事前相談は必要ですか?
A規則第7条第1号ロに該当する場合は、様式第7号の2(常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書)と、別紙1(常勤役員等の略歴書)・別紙2(常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書)を提出します(手引 PDF p.65・p.68・p.169)。別紙2は、補佐する者が複数名いる場合は補佐する者ごとに分けて作成し、職歴欄には財務管理・労務管理・業務運営の業務経験内容を具体的に記載します(手引 PDF p.67-68)。現住所・氏名・生年月日・賞罰・誓約日・署名欄は本人以外による訂正が認められません(手引 PDF p.68/審査要領 PDF p.3)。事前相談については、手引が3箇所(PDF p.7・p.63・p.65)で「事前に建設業班にご相談ください」と求めています。岡山県は事前審査を一切行わない運用ですので(手引 PDF p.16)、書類を作り込む前に方針を固めるための相談、という位置づけになります。
Q補佐者が退職したら、許可はどうなりますか?
Aロ要件は体制で満たす要件のため、体制が崩れれば要件も崩れます。手引は、常勤性を要する経営業務の管理責任者等や営業所技術者等を欠く状態になった場合、代わりになる方がいなければ許可を失うとし、変更届は変更後2週間以内に提出しなければならないと定めています(手引 PDF p.22)。「欠く」状態には、退職・死亡だけでなく毎日出勤することができなくなった場合も含まれます(長期入院時の扱いなど「欠く」状態の詳細は営業所技術者がいないと建設業許可は取れない?へ)。補佐する者を3名別々で組んでいる場合は、要件を支える人が増える分だけ欠員のリスクも増えます。取得の時点で、誰が抜けたときに誰が引き継ぐのかを設計しておくことをおすすめします。

まとめ

「経管になれる人が1人もいない」——この行き止まりに対して、建設業法施行規則第7条第1号ロはチームで満たすという答えを用意しています。ただし、条文をそのまま読むと、次の5点が浮かび上がります。

  • ロは2階建て。 上の階=常勤役員等((1)または(2))、下の階=直接に補佐する者(財務管理・労務管理・業務運営 各5年)。どちらか片方では成立しません(手引 PDF p.7)。
  • ロにも「建設業に関し2年以上役員等」が必要。 (1)(2)の共通条件です。建設業での役員等経験がゼロの会社では、ロも使えません。逆に2年あれば、もう一方の「5年以上」の側には条文上の業種の限定が無く、他業種での経験も含めて組み立てられる可能性があります(算入の可否は個別の実態によります)。
  • 「直接に補佐する」は組織の話。 常勤役員等との間に他の者を介在させず、組織体系上および実態上、直接指揮命令を受けて業務を行う関係が要ります(手引 PDF p.8)。間に部長が挟まる配置、代表取締役の直属になっている配置は組み替えが必要になります。
  • 補佐者の5年は「申請事業者における経験に限られる」(手引 PDF p.65)。常勤役員等は連れてこられるが、補佐者は連れてこられない。 設立5年未満、管理部門を中途採用したばかり、経理を外部委託してきた——こうした会社ではロは現実的ではありません。
  • 書式が定まっていない部分があり、事前相談が求められる。 イ(2)(3)には審査要領が確認書類を列挙しているのに(審査要領 PDF p.14-15)、ロについては手引が「別に経験を証明する書類が必要」とするにとどまります。事前相談が求められるのはイ(2)(3)とロですが(手引 PDF p.7)、ロについては手引の3箇所で繰り返し求められています(手引 PDF p.7・p.63・p.65)。岡山県は事前審査を一切行わないため(手引 PDF p.16)、方針は書類を作る前に固める必要があります。

そして、検討の起点は組織図でも書類でもなく、社員名簿と在籍年数の逆算です(5-5)。ここを最初にやれば、ロが使えるかどうかは短時間で判定できます。使えないと分かったなら、経管がいない場合の3ルート比較で他のルートに切り替えたほうが早く進みます。要件全体の見取り図は建設業許可の6つの要件(取れるか診断)からご確認いただけます。

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